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◆ξ゚⊿゚)ξと全力発電所のようです その1

インデックスページ/次の話

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 15:12:41.73 ID:aUY+4nxsO
ξ#゚⊿゚)ξ「えいしゃあオラァ!」

(#゚ー゚)「おっしゃあコラァ!」

(#゚∀゚)「だらぁコンチクショウ!」

ガッチョン

ぎょるん

ぎょるんぎょるん

ぎょるんぎょるんぎょるん

ξ゚⊿゚)ξ「シャフト乗っかったぞー! 休憩ー!」


「うぇぇい」



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 15:18:24.18 ID:aUY+4nxsO
ξ-⊿゚)ξ「まったく骨が折れる」

从 ゚∀从「お疲れさまっす」

(*゚ー゚)「重機の一台やニ台くらい出してくれりゃあいいのによ」

ξ゚⊿゚)ξ「本社の連中がそんな手間ァかけるかよ」

(*゚ー゚)「俺ら人間扱いされないもんなあ」

从 ゚∀从「ヘイ、ヘイ、下向き発言はギルティーだ」


 ここは、次世代発電所だ。
 それも、おかしなことに「最先端なのに」見捨てられた施設。


从 ゚∀从「俺達は死ぬまでここから抜け出せないんだから」



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 15:25:25.81 ID:aUY+4nxsO
ξ゚⊿゚)ξ「从 ゚∀从の言葉も若干下降線描いてんぞ」

从;゚∀从「そっすか?」


 俺達はここから出られない。
 事実だ。

 物理的に脱出が不可能であるわけではない。
 高さ5mの塀など、俺等所員の体力を持ってすればなんとかなる。

 が、問題はそこにはない。


ξ゚⊿゚)ξ「休憩終了! 働けィ!」

(;゚∀゚)「早い!」

ξ゚⊿゚)ξ「メタトロン粒子撹拌開始!」


 メタトロンに汚染された人間が問題なのだ。

 俺達のような、人間が。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 15:35:14.55 ID:aUY+4nxsO
『――と、近頃稼働率落ちてませんか』

ξ゚⊿゚)ξ「はァ」

『困るんですよねぇ。需要というものがあるんですから』

ξ゚⊿゚)ξ「へぃ」

『分かってますか? 頼みますよお。他には――』


 勤務時間延長を対価に、ええと。
 ああ、あれがあったな。


ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございましたァ。失礼しぁす」

『チッ』


 おいこらテメェ若造、舌打ち聞こえてんぞ。



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 15:41:53.54 ID:aUY+4nxsO
从 ゚∀从「どうでした?」

ξ゚⊿゚)ξ「四時間稼働増やせとさ」

从 -∀从「っかぁー……」

ξ゚⊿゚)ξ「が、喜べ。肉の配給三割増しだ」

从*゚∀从「マジかよ!」

ξ゚ー゚)ξ「だから頼むぜ」


 楽しみの大半が食事に偏る閉鎖空間。
 だのに、晩飯のメニューすら自由に決められない現状。

 メタトロン汚染区域への食料は、配給というより、投下だ。
 一週間ごとに上空300mから投げ捨てられる食材。

 家畜の給餌に、それは似ている。



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 15:51:43.98 ID:aUY+4nxsO
 火星のテラフォーミングが進む過程で、人類は奇妙な物質を発見する。
 なんとびっくり、これは固体として安定しているくせに高エネルギーを内包していた。

 扱い易い立方体単位で存在し、それがゴロゴロ出てきたもんだからさあ大変。
 地球に持ち帰って使わないほうがおかしい。

 新物質「メタトロン」はひとまず5kg、地球の大地に下ろされた。

 俺達の発電所の作られた、まさにこの場所だ。

 その5kgが俺達所員を汚染したのも、しかり。



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:01:23.24 ID:aUY+4nxsO
(*;ー;)「おーいおいおい」

(*;∀;)「ぬあああああ!」

ξ゚⊿゚)ξ「うめぇか」

(*;ー;)「パテじゃない肉の塊なんて4年振りだ!」

(*;∀;)「牛肉の味がするうううう!」

ξ^⊿^)ξ「良かったなw」


 4年前。

 炉のメルトダウンが起きた年だ。



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:08:34.77 ID:aUY+4nxsO
 慢心、といわずしてなんというのだろう。
 なまじ安定した物質はそれを誘発した。


「ギャハハハハ!」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

コツコツ

ξ゚⊿゚)ξ「つついても、火はつかない、よな」


 例えば、バーベキュー用の燃料。
 これもまた、安定した物質だ。

 それでいて扱いやすい。


ξ-⊿-)ξ「チッ」


 だからこそ誰もが火事を目前にして思う。
 「こんなことになるとは」



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:24:52.65 ID:aUY+4nxsO
 火事といえば、綿の布団は焼け始めると酷いことになると知っているだろうか。
 じりじりと中で火の侵食が起こっても誰も見た目にはそれに気付かないのだ。

 俺達の「火事」もそうだった。

 変化はまず、性腺に表れた。


从 ゚∀从「どうしたんすか?」


 高岡。

 始めに陰茎に異常が認められた、顕在被汚染者、第1号。

 ヤツのペニスは、平たく言うと「腐って落ちた」。



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:29:14.94 ID:aUY+4nxsO
 隔離病棟で喉から血を吐かんばかりに絶叫した高岡の姿は今も忘れられない。


ξ゚⊿゚)ξ「あん?」

从 ゚∀从「しんみりしちゃって」

ξ゚⊿゚)ξ「しんみり? 久々の脂で胃がもたれただけだよ」

从 ゚∀从「あー、もう所長も順当にいってりゃオッサンですもんね」


 順当。
 俺達が女にならなかったら、って意味だ。



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:39:43.49 ID:aUY+4nxsO
 翌朝、勤務のない所員は寮から出るなり運動場に踊り出た。
 今日は所内野球大会の予選だった。


ζ(゚ー゚*ζ「勝つぞC班!」

「おうっ!」

「酒のためなら全力だ!」

ξ゚⊿゚)ξ「仕事はどうなんだよ」

「しご、仕事の次に全力だ!」


 詰まるなよ、そこ。



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:46:09.65 ID:aUY+4nxsO
 若い女共がもさい言葉を使い、汗くさいスポーツに興じる。
 見目麗しい(同時に言っていて気分の悪い)、中身オッサンの祭典。

 「ソフトボール」の大会ではない。
 オーバースローvs一本足打法。


ζ(゚ー゚#ζ「ずぅ、えぇいッシャア」

ズバンッ

「ットライク」


 沸いた勝利の歓声は、高い女性のそれだ。

 どれだけ男らしさを残そうとしても、そこは変えられない……。



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 16:53:15.40 ID:aUY+4nxsO
ζ(゚ー゚*ζ「ぬっふふふ。負けチームは分かってんよなww」

「夜勤……三日分代行……」

「畜生……」

ζ(^ー^*ζ「素直でよろしいw」


 古臭い、正午を告げるチャイム。


『昼休憩の時間です』


 ゾロゾロと、酷使した筋肉を揉みながら三々五々帰る職員達。
 俺はその様子を自室から眺めていた。



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:02:48.03 ID:aUY+4nxsO
 その日、午後から休日の始まる職員は健康診断を受けることになっていた。
 向かう先は高岡が入院していた病院だ。

 当該の病院だが、当然のように汚染区域内に指定されている。

 発電所周辺20kmにあった施設全てがそうなった。
 そして、人も閉鎖空間に閉じ込められた。


(´・ω・`)「やあ。おっぱいはどうかな」


 ふざけたことを口走る主治医・諸本。
 ヤツは、いたって真面目だし、加えてここらでは珍しい「男」だ。



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:08:50.36 ID:aUY+4nxsO
ξ゚⊿゚)ξ「異常無し。ただ、いつまでも違和感はあるよ」

(´・ω・`)「もともと君にはなかったもんだしね」

ξ゚⊿゚)ξ「まあな」

(´・ω・`)「マンモグラフィ撮ったけど、乳癌はできてないみたいだね。ん、他は特にー」


 諸本の指がファイルをなぞって止まった。


(´・ω・`)「筋力、測っとく?」

ξ-⊿-)ξ「……そうだな」


 検査結果を見て、ひとつため息。



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:17:49.25 ID:aUY+4nxsO
 メタトロンは人間を狂わせた。

 事故後、発見された性質がいくつかある。

・莫大な分子間力。
・軽微な遺伝子干渉。
・ホルモン様作用。

 等々。

 簡単に言ってしまえば、「空中に舞ってもすぐまとまるけど、人体に有害」なんだとか。
 俺にはその説明で上手いことが言えてるかわからなかった。


(´・ω・`)「筋繊維が超凝縮してる。ミオグロビンも増えてる」

ξ;゚⊿゚)ξ「ふう、はあ……つまり?」

(´・ω・`)「スーパーマンに近付いてるね」



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:22:52.02 ID:aUY+4nxsO
 んなこと分かってる。
 だからこの街は人口が減ったんだ。

 シャツの前を留めて、立ち上がる。


ξ゚⊿゚)ξ「ありがとよ」

(´・ω・`)「なんかあったらまた来てね」

ξ゚ー゚)ξ「あんたしか診てくれる医者はいないからな」

(´・ω・`)「まあね」


 街一番の名医。
 しかし、ランキングには彼以外の名前が載っていない。


从 ゚∀从「お、じゃあ次俺が診てもらいますね」

ξ゚⊿゚)ξ「おう。先に戻ってる」



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:27:36.99 ID:aUY+4nxsO
ξ゚⊿゚)ξ「……」


 空は抜けるように青い。
 清浄な大気が胸に満ちる。

 清浄?


ξ゚⊿゚)ξ「清浄ねェ」


 蹴飛ばした小石が廃屋の柱にめり込んだ。
 2075年式住居なのに、脆いことだ。

 ちらっと、廃屋の窓に人影を見た気がする。
 頭を振ると、ゴーストタウンで何を馬鹿な、と笑った。



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:37:19.74 ID:aUY+4nxsO
 機能しなくなった街中の電動スロープやエレベーター。
 砕けた強化アクリルの窓の破片。

 叩き壊された全自動タクシーは色褪せて、錆びている。
 ハイ・プラスチック素材はメタトロンにのみ腐蝕されるのだ。


ξ゚⊿゚)ξ「寄り道するか」


 美術館だけが当時の面影を残していると言っていい。
 大理石の床に積もった埃以外は懐かしい雰囲気のままだ。


川 ゚ -゚)『おや、また来たのか』



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:45:27.31 ID:aUY+4nxsO
 ガイド・ホログラム。


ξ゚⊿゚)ξ「その飯草はないだろうよ」

川 ゚ -゚)『限定された人間と話すための存在ではないのだが』

ξ゚⊿゚)ξ「AIを発展させたら憎まれ口ばかりだな」

川 ゚ -゚)『可愛さ余って、というヤツさ』


 このガイド・ホログラムの本体はメタトロンの腐蝕を免れた、地下のコンピュータルームにある。

 まあ、ただの余談だ。



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:50:28.66 ID:aUY+4nxsO
 何時間と彼女の、芸術歴史講座を聴くこともあれば、黙っていることもある。
 この日は二言三言交したら気が済んでしまった。


川 ゚ -゚)『素晴らしい文化はいつもここでお待ちしています』


 テンプレートな別れの挨拶に、俺は苦笑した。


ξ゚⊿゚)ξ「他人行儀だな」

川 ゚ー゚)


 彼女は何も、言わない。

 憎たらしい人工知能め。



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 17:56:13.19 ID:aUY+4nxsO
ミセ*゚ー゚)リ「皆さーん、今晩はカツカレーですよー」

「マジか! 良いのかカツだなんて!」

「衣が分厚くない! 感動した!」

(*;ー;)「うますぐる」

(*゚∀゚)「」

从 ゚∀从「」

ξ゚⊿゚)ξ「」

ミセ;゚ー゚)リ「絶句!?」


 料理番の芹澤は豚肉を豪勢に使った夕飯で皆を癒した。
 こいつの料理なくして俺達は激務を戦い抜けない。


ミセ*゚ー゚)リ「おかわりあるんでー」

ミセ;゚д゚)リ「ってカツだけ持っていくなっ」



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:00:15.97 ID:aUY+4nxsO
ζ(゚ー゚*ζ「で、俺のストレートが炸裂ってわけよw」


 次の対戦相手達に聞耳を立てられている。


从 ゚∀从「」


 仲間と無言でザクザク、カツカレーを頬張っている。


ミセ;゚A゚)リ「あばばばば」


 追加のライスをよそいながら、てんやわんやしている。


 この発電所ではそれぞれが人間らしく全力で生きていた。



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:10:24.56 ID:aUY+4nxsO
(; ∀ )『お、俺のせいじゃない! 俺が悪いんじゃない!』

『ただいま、――は封鎖されました』

『暴徒が壁際に集まり』

『上空からの映像です』

(; ∀ )『俺は悪くないィィ!』

『ライフラインの凍結が決定されました』

『やめろ! よせ!』



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:15:57.37 ID:aUY+4nxsO
ガバッ

ξ; ⊿ )ξ「はッ……はッ……」

ξ; ⊿ )ξ「ちく、しょ」


 駆け込んだ寮の共同トイレは、男性のマークにマジックでスカートが描かれている。
 皮肉を感じる暇もなく、便器にゲロを吐く。


ξ; ⊿ )ξ「……」

从 ゚∀从「また、あの夢っすか」

ξ ⊿ )ξ「高岡か」


 背中をさする手。



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:18:24.29 ID:aUY+4nxsO
从 ゚∀从「仕方ないんすよ。もう、仕方ないことなんすよ」


 俺は答えない。


从 ゚∀从「振り返ることだけはしちゃいけないんです」


 俺は答えない。


从 ゚∀从「……」


 沈黙から逃げるように、俺は寮を出て運動場に向かった。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:24:35.42 ID:aUY+4nxsO
 ナイター設備もある運動場では、出零が投球練習に精を出しているところだった。
 しかし、今晩アイツは……。

 俺は、頭に血が昇るのを自覚する前に出零に駆け寄っていた。



ζ(゚ー゚;ζ「あれ、所長どうし」


 がつん、とも、ごきっ、ともつかぬ音。

 俺の拳が出零の顔にまともに入っていた。



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:29:36.93 ID:aUY+4nxsO
ξ ⊿ )ξ「テメェ、夜勤どうした」


 怒りに満ちた視界で、出零の二重まぶたが片方腫れに腫れているが分かった。

 だのに、俺はさらに殴りつける。


ξ ⊿ )ξ「答えろテメェ」

ζ( Aメ;ζ「おっ、おれがばっ!」


 夜勤には一人も欠けてはならない。
 発電所では全てのケアレスミスが許されない。

 そう言ったはずだ。


ξ ⊿゚)ξ「なァにやってんだお前。なァ?」



59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:34:01.81 ID:aUY+4nxsO
从#゚∀从「アンタが何やってんだ!」

バッ

ξ ⊿゚)ξ「あァ?」

ζ( ーメ#ζ「おで、は、夜勤、代わってもらって」

从#゚∀从「野球で試合に勝ったら交代許すってアンタが決めたんだろ!」


 思考が鈍い。

 本当に、何をやってるんだ。

 畜生。

 畜生。

 すまねェ、と残して、俺は運動場を後にした。



61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:41:27.39 ID:aUY+4nxsO
川 ゚ -゚)『やあ』


 ガイド・ホログラムのくせに、彼女はパジャマにナイトキャップをつけていた。


川 ゚ -゚)『座りたまえ』

川 ゚ -゚)

川 ゚ー゚)

ξ ⊿ )ξ「なに、にやついてんだよ」

川 ゚ー゚)


 美術館のロビーには埃っぽいソファがある。
 彼女はそれを差して、静かに微笑む。



62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:46:09.04 ID:aUY+4nxsO
川 ゚ー゚)『寂しいんだな』


 月下で彼女が妖しく呟く。

 胸が、締め付けられた。


ξ ⊿ )ξ「うるせぇな」

川 ゚ -゚)『違うの?』


 頭が傾けられると、さらり、髪が揺れた。

 かつて愛した女性の姿で、それをやるな。

 やめてくれ。


川 ゚ -゚)『どうしたらいい?』


 耳を塞ぎ、眼を閉じる。
 見たくない、聞きたくない。



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:51:15.19 ID:aUY+4nxsO
 淳クールはもういない。
 淳クールはもう死んだ。

 彼女は手の届かないところに行った。
 彼女は二度と帰っては来ないんだ。

 そっ、と眼を開ける。


川 ゚ -゚)『?』


 下から上目使いで俺の顔を覗き込んでいる、ホログラム。
 いや、淳クールをモデルにしたAI。

 リアルな人間のように、柔らかな曲線を持つ映像。
 あたたかそうな唇。



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 18:57:41.83 ID:aUY+4nxsO
 ぐらぐらの視界に動悸が加わる。
 立っていられない。


川 ゚ -゚)『?』


 少女のような純真無垢な瞳が心をうがつ。
 自分から視線を切るなど、到底できない魔力を持つ、あの瞳。


ξ ⊿ )ξ「なんでもない。なんでも」


 じゃり、と靴音を背後に聴く。
 避けることもできず、電撃が頭に弾けた。

 気が、遠くなる。



68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:10:29.70 ID:aUY+4nxsO
  _
( ゚∀゚)「で、どうする」

ξ゚⊿゚)ξ「やだね。ものを頼む態度じゃあねェな」
  _
( ゚∀゚)「生き証人が必要なんだよ。特に、被験体が」

ξ゚⊿゚)ξ「死にてえらしいな」


 2075年式集合住居の六階に俺は監禁されている。
 目の前の男は長岡と名乗った。

 ジャーナリストだという。

  _
( ゚∀゚)「メタトロンの真実を世間に公表したいんだ。街が死んだ原因」
  _
( ゚∀゚)「いや、違うか」



69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:15:16.54 ID:aUY+4nxsO
ξ゚⊿゚)ξ「あァ?」
  _
( ゚∀゚)「……なんでもない。あんたらを助け出したいのもある」

ξ-⊿゚)ξ「はッ! 何から?」
  _
( ゚∀゚)「人権無視の奴隷労働、差別、隔離。それらからさ」


 コイツ、若いな。
 俺は単純にそう思う。


ξ ⊿ )ξ「は、ははは」


 とても若く、酷く浅はかだ。


ξ゚⊿゚)ξ「お前が何を救えるって?」



72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:21:10.41 ID:aUY+4nxsO
ξ#゚⊿゚)ξ「餓鬼がナマ言ってんじゃねェぞ」
  _
(;゚∀゚)「っ」

ξ゚⊿゚)ξ「外せ。メタトロン汚染区域に入ってきたタマ見込んで黙って帰らしてやる」


 じゃないと、力んで身体に巻き付けられた拘束具を軋ませた。
 こんなもの、俺達にはクソの役にも立たない。


ξ゚⊿゚)ξ「どうすんだ」


 胸の内で3つ数え始める。

 1

 2

 3

  _
(;゚∀゚)「か、帰らない!」



73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:26:08.75 ID:aUY+4nxsO
ξ ⊿゚)ξ

ブチィ

ξ ⊿゚)ξ「俺ァ気がなげぇ方じゃねんだよ」

ブチ ビリビリ

ξ ⊿゚)ξ「二度言わすな」


 床にへたりこんだ長岡を見下ろしながら、俺は4年前を思い出していた。
 あの時の俺はどんな表情をしていたんだろう。



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:37:22.66 ID:aUY+4nxsO
 街の人間の姿がフラッシュバックする。

 身近な武器を手に手に、足並みも揃えぬ行進。
 そうして発電所の人間を責めに来た彼ら。

 責任を取れ。

 それは死をもってのみ償われる罪であると、住民の眼は物語っていた。

 職員の何人かは自害を選んだ。
 多くは、発電所に立てこもった。

 それも職員の愛する者達が、焼かれるのを見るまでだ。



76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:40:49.79 ID:aGzOMzQ90
なかなか設定が練られてていいな
しえ


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:45:15.36 ID:aUY+4nxsO
 許しを乞うために投降した所員が三名。
 いずれも帰っては来なかった。

 火を放とうと、かなり古い化石燃料を持ち出した住民達が、ついに俺達を狂わせた。

 約120名の所員が、反撃に出た。

 当時、俺達は女のなり損ないだった。
 しかし、余りある力。

 制御する余裕もなく、俺達は全力で生きるために――。


ξ ⊿゚)ξ「外の人間が何を知った口聞いてやがる」



78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:52:10.51 ID:aUY+4nxsO
 多分、こんな顔をしていたんだ。
 あの時、最後の「人間」を目の前にした時。

 命乞いの言葉に呪咀の返しで大きな工具を振り上げた時――


ξ;⊿;)ξ「ふざけやがって!」


 「中にいた人間の恐怖も知らない奴らが!」


ξ;⊿;)ξ「くそがッ」


 「外野から好き勝手言いやがって!」


 「分かって、くれよ……」



80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:57:43.88 ID:13oOaZme0
これはいいな


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 19:57:51.70 ID:aUY+4nxsO
 情けない、顔をしていたんだ。


ξ ⊿ )ξ「行け」
  _
(;゚∀゚)「……」


 長岡は床材を砕いた俺の拳と、顔を交互に見た。
 開いた口が塞がる様子はない。


ξ ⊿ )ξ「これ以上、人間が首を突っ込むな」
  _
(;゚∀゚)「俺は、俺は」


 我に返ったように長岡は姿勢を前に乗り出してきた。

 その顔に、何か強い意志を感じとった。

  _
(;゚∀゚)「俺は!」

ξ ⊿゚)ξ「……着いてこい」



83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:06:52.87 ID:aUY+4nxsO
 幸い、出零は諸本の病院に運ばれ処置を受けたらしい。
 諸本には通話回線越しに叱られた。

 ヤツは静かに、内包した怒気を悟らせる言葉を練れる。
 直情型の俺とは真逆だ。

 上に立つ者としてはヤツの方が上等かもしれない。


ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず風呂にでも入れ。シャワー室なら空いてるだろ」
  _
(;゚∀゚)「あ、え? ああ」


 寮にある部屋で、俺が全裸になると長岡は分かりやすくドギマギした。
 明かりの下でようやっと確認できたが、コイツは本当に若かった。

 自称27歳とのことだが、いいとこ22歳だろう。
 ヒゲでなんとか誤魔化してはいるが。



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:12:23.07 ID:aUY+4nxsO
 作業後にメタトロンを流出させないためのシャワー室までは、少し歩く。

  _
(;゚∀゚)「なんか着ろよ」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ暑いんだ。めんどくせェ」
  _
(;゚∀゚)「だからって」

(゚、゚トソン「お、所長。何やってんですか」

ξ゚⊿゚)ξ「な?」
  _
(;゚∀゚)「ここでは風呂上がりに皆服着ないのかよ……」

(゚、゚トソン「あん? ボウズ、誰だお前」



85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:17:13.48 ID:aUY+4nxsO
(゚、゚トソン「久々に(´・ω・`)以外の男を見たぞ」
  _
(;゚∀゚)「恐縮です」


 俺達にとってはかなり懐かしいシンボルを萎縮させて、長岡は湯を浴びている。


ξ゚⊿゚)ξ「ミセ*゚ー゚)リはまだ起きてたか?」

(゚、゚トソン「芹澤まだキッチンにいますよ」

ξ゚⊿゚)ξ「長岡、飯食うか」


 長岡はそこでようやく表情を緩ませた。

 やはり、人は食べることである程度は安らぐのだ。



87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:22:33.97 ID:aUY+4nxsO
ミセ*゚ー゚)リ「あいよーどうぞー」


 午前一時だというのに、芹澤は元気だった。

  _
( ゚∀゚)「こんな美味いもんが……」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうよ、ミセ*゚ー゚)リ。後は片しとくから寝てくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい。あ、冷蔵庫にトマトゼリー作っておいたんで」
  _
( ゚∀゚)「うめぇなこれ」

ξ゚⊿゚)ξ「おい」


 長岡の頭をぐいと押し下げる。


ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございました、も言えねェのか」



90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:32:47.02 ID:L0wRrDJjO
面白いな 支援!


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:36:54.69 ID:aUY+4nxsO
 トマトがダメだ、とぬかした長岡にゼリーをぶちこむと、ようやく俺達は本題に入る。


ξ゚⊿゚)ξ「お前の目的を言え」
  _
( ゚∀゚)「第二のレイチェル・カーソンになるつもりだとさっき」

ξ-⊿゚)ξ「二度、言わせるな」


 ヤツの挙動が怪しくなる。
 どうやら考えをまとめているようだ。

  _
( ゚∀゚)「今は、今はまだ……言えない」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしてもか」


 まったく。
 若い内から頑固なヤツは後で苦労するぞ。



96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 20:42:37.01 ID:aGzOMzQ90
レイチェル・カーソンググッてきた
DDTまかなくなったのこいつのせいだったのか


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 21:45:33.48 ID:aUY+4nxsO
 明くる朝、俺は長岡を連れて病院に赴いた。
 見舞いに秘蔵のサケを持ってだ。

 出零は俺を認めるとあからさまに嫌な顔をした。
 しかし、何を言うでもなく、身体を起こす。


ξ-⊿-)ξ「すまなかった」

ζ(゚―#ζ「……」

ξ゚⊿゚)ξ「四日でどうだ?」

ζ(゚ー#*ζ「……まあ、いいでしょう」


 休暇を出したところで、コイツは野球の練習をするのだろうが。
 それに俺達の身体なら骨折くらい一週間で治る。

 内因性の疾患には対応していないのが残念だ、と言ったら多くを求め過ぎだろうか。



109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 21:52:13.97 ID:aUY+4nxsO
ζ(゚ー#*ζ「で、そっちは?」
  _
( ゚∀゚)「あ、俺は――」

(´・ω・`)「知ってる、馬鹿でしょ」


 長岡の自己紹介は諸本の説教に終始した。


(´・ω・`)「こんだけ汚染区域の媒介に触って食べて飲んで、帰るつもりなわけ」

(´・ω・`)「ねえねえ、馬鹿なの? 馬鹿でしょ。知ってる?」

(´・ω・`)「日本の黄泉の国っての」

(´・ω・`)「言い過ぎかもだけど、ここはそんな感じなわけ」

(´・ω・`)「ケガレを受けて普通でいられると思ってんの?」
  _
(;゚∀゚)「いやでも」

(´・ω・`)「何さ」



115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:01:37.31 ID:aUY+4nxsO
  _
(;゚∀゚)「中のことを知るのに、見ているだけじゃどうしようもないじゃないですか」


 正直、俺はコイツを少し見直した。
 これについて多くは語るまい。


(´・ω・`)「ふうん……」

 諸本の攻撃が止んだ。
 俺には読めた。

 つまるところ、諸本は長岡の身を案じてつついたのだ。
 同時に意志の強さを確かめる含みを入れて。

  _
( ゚∀゚)「俺は知らなきゃならないんだ。しっかり。うん」


 呟く長岡をよそに、俺は諸本に尋ねる。


ξ゚⊿゚)ξ「諸本、作業場に出さないとして何日なら健康体でいられる?」
  _
( ゚∀゚)「え」



116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:07:18.44 ID:aUY+4nxsO
(´・ω・`)「性交渉はしないよね」

ξ゚⊿゚)ξ「ふざけろ」

(´・ω・`)「2週間以内なら蓄積もほとんどないでしょ」

ξ゚⊿゚)ξ「だそうだ」
  _
( ゚∀゚)「い、いいのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「タダ飯食らいは許さないがな」


 長岡の雄叫びが病室に響く。
 きちんと男らしいそれに、出零が少しだけ羨ましそうな顔を覗かせた。

 その日から長岡のインタビューと撮影が始まった。



117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:15:07.20 ID:aUY+4nxsO
 とはいえ、

  _
( ゚∀゚)「あの、メタトロンについて」

(#゚ー゚)「ねみぃんだよ邪魔すんな」


 アポ無しのぶっつけで職員達が捕まるわけもなく、

  _
( ゚∀゚)「あのっ、お話を」

(*゚∀゚)「ちょ、どいてどいて。そこにいられると困る」


 行き着いたのが、


ミセ*゚ー゚)リ「助かるよー、下ごしらえは人手がないと大変でさ」
  _
(  ∀ )「はい、どんとこいです」

ξ゚⊿゚)ξ「なぁにやってんだお前」



119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:22:57.21 ID:aUY+4nxsO
 芹澤はよく喋った。
 半ば口を滑らす勢いといって差し支えない。

 食材でもとりわけ育てやすい野菜は、種を本社に要求して畑で作っていること。
 それにはメタトロン汚染の無い土壌で清浄な水を用いていること。

 勤務交代制度は大体三日タームであること。
 三日に一度休みらしい休みが与えられること。

 芹澤自身は元々作業員だったが、趣味が高じてコックをしていること。
 無休だがそれなりに楽しいこと。

 どうでもいい話題ばかりかと思えば、センシティブな性の話も繰り出した。



120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:25:15.98 ID:aGzOMzQ90
センシティブ…sensitive
微妙なこと。敏感な。


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:30:15.10 ID:aUY+4nxsO
 とにかく月経で困った、ブラで違和感があった、
 服が合わなくなった、靴がでかくなった。

 女性化してから同性愛者(無論、元男同士)の数がやや増えた。
 始めの一年間で性転換のノイローゼで自殺者が複数いた。

 等、だった。

  _
( ゚∀゚)「……あの」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」
  _
( ゚∀゚)「その、いや」
  _
( ゚∀゚)「なんでもないです」

ξ゚⊿゚)ξ「うじうじしやがって女々しいヤツめ」

ミセ*゚ー゚)リ「所長、仕事してくださいよ」

ξ゚⊿゚)ξ「長岡の監視だ」



122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:39:17.09 ID:aUY+4nxsO
 夕食時、長岡は食堂の前に立たされた。

  _
(;゚∀゚)「マジ、ちょ、なんすか」

从 ゚∀从「はいはい注目」


 ざわめきにたじろぐ長岡の運命は明白だった。
 気付いていないのは生贄、本人だけだ。


从 ゚∀从「新入社員の長岡君でーす」


 ぴたり、職員全員の動きが止まり、口元にいやらしい笑みが浮かんだ。
 嘘のように静まりかえる堂内。

 カフェテリアと呼んでいい内装で、やることは小学生のイジメだ。

  _
(;゚∀゚)「新入社、え?」

从 ゚∀从「つーわけで長岡、やれよ」
  _
(;゚∀゚)「何を」

从 ゚∀从「一発芸」



124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:44:00.15 ID:aUY+4nxsO

 その晩、長岡は伝説になった。



126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:49:46.44 ID:aUY+4nxsO
(゚、゚トソン「レジェンド、今日はどこ行くんだ」
  _
( ゚∀゚)「街。ちょっと写真撮ってくるよ。つか、レジェンドって止めろよ」

(゚、゚トソン「お前アレは誇っていいぞ」
  _
( ゚∀゚)「頼むから忘れてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「おい、行くのか行かないのか」
  _
(;゚∀゚)「行く行く」


 三日もすれば、長岡は職員に溶け込んだ。
 高岡のイジメ兼紹介の功績だ。

 さて、向かった先は美術館だ。


川 ゚ -゚)『出たな暴漢』


 ガイド・ホログラムが警官の服を着て待ち構えていた。
 もはや長岡に害意が無いことは伝えたはずだが。

 ところで彼女の着ているのが女警官のミニスカートではない。
 そこだけ、残念だ。



127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:54:24.83 ID:HrTBd5bO0
何やったんだよレジェンド


129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 22:56:09.34 ID:aUY+4nxsO
  _
( ゚∀゚)「俺、このホログラム苦手なんだよな……」

ξ゚⊿゚)ξ「事件当時の映像を見せてやってくれないか」

川 ゚ -゚)『……二階の閲覧室へ』


 しぶしぶといった様子でガイド・ホログラムはその部屋を指した。


ξ゚⊿゚)ξ「長岡」
  _
( ゚∀゚)「あ?」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に観たいんだな」
  _
( ゚∀゚)「もう、これは願望じゃねーよ。俺は観なきゃいけないんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「後悔、するなよ」



130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:01:20.81 ID:aUY+4nxsO
 現在の記憶媒体は高性能だ。

 色や光、音、また衝撃。
 さらにそれらを超えた嗅覚、触覚の記録までもが可能となっている。

 長岡がこれから観るのは、ある人間の記録だ。
 生体電極直結の記憶素子が読み込まれ、再現される。


ξ ⊿ )ξ「後悔、するなよ」


 長岡が閲覧室のドアを抜けて来たのは二時間後だった。



134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:11:04.97 ID:aUY+4nxsO
 青ざめた顔で機能停止したエスカレーターを下ると、長岡はソファに倒れるように座った。

 俺から、たっぷり2mは距離を置いて。

  _
(  ∀ )「訊かせてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「なんだ」
  _
(  ∀ )「どうしてあんなことになったんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「お前の求めていた答えだよ。あえて俺の口から伝える意味があるか?」
  _
(  ∀ )「メタトロンの、せいか」

ξ゚⊿゚)ξ「あるいは、人間のせいだな」



135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:11:09.43 ID:lvSHjt1PO
続き気になる支援


137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:20:27.11 ID:aUY+4nxsO
 都合の良い話だ。

 こんな話の流れでは俺みたいなヤツでさえ「人間」なのだから。

  _
(  ∀ )「ハハハ……ヒロシマ、ナガサキが繰り返されたのも無理ないか」


 2039年、日本に核弾頭が落ちている。
 三度目は、隣国からのものだった。

 三つの県が死んだ。
 二つ県が被爆した。

 今現在、発射した国は存在していない。
 周辺国に即時潰されたのだ。



139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:32:58.48 ID:aUY+4nxsO
  _
(  ∀ )「俺さ、子供の頃から人間って馬鹿だなって思ってたんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「へェ」
  _
(  ∀ )「見えてる危険にしか刃引きしないで、新しいものにはがっついて」
  _
(  ∀ )「紆余曲折を経ても結局いつも刹那的な利益にまっすぐ進むんだ」
  _
(  ∀ )「だから、先を考えずにつまずくんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「はッ」


 乾いた笑いが喉から漏れた。
 やたらと青ッちょろい言葉に歯が浮く。


ξ゚⊿゚)ξ「結果、発展に繋がってるじゃないか」
  _
( ゚∀゚)「!」



141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:40:27.12 ID:aUY+4nxsO
ξ゚⊿゚)ξ「失敗無くして、人は学ばない、と言ったらお前好みか?」
  _
(#゚∀゚)「どういう意味だ?」

ξ゚⊿゚)ξ「さまよえる若者を導く格言風だろ」
  _
(#゚∀゚)「本気かよ」

ξ゚⊿゚)ξ「事実だ」
  _
(#゚∀゚)「誤魔化しだ」

ξ゚⊿゚)ξ「理想論に砂糖をまぶしたような呟きよりマシってもんだろ」


 長岡が言葉に詰まる。

  _
(# ∀ )「それは、それは」



142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:45:41.73 ID:aUY+4nxsO
ξ゚⊿゚)ξ「分かった風に人間語るなよ青二才」


 何故、俺がこんなに煽っているのか分かるかい。
 よかったら誰か理由を教えてくれよ。

  _
(#゚∀゚)「それは、アンタ自身を正当化するための理屈だろ?」


 良いぞ、長岡。
 その、俺の人格を攻撃するための残忍な笑み。


ξ゚⊿゚)ξ「はッ。なんのことだ」
  _
(#゚∀゚)「さっきの映像、アンタが殺した人間のだったよな」


 ようやくそこを突いたか。
 それで良い。



143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 23:52:13.29 ID:aUY+4nxsO
  _
(#゚∀゚)「自分の過ちを正すから許してくださいってことだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「……」
  _
(#゚∀゚)「罪を認めりゃ済むんだよな? こりゃお手軽だ!」

川 ゚ -゚)『おい、やかましいぞ』


 一定以上のデシベルを感知して、ガイド・ホログラムが注意を促した。
 それで俺はここが寂れてはいても美術館であることを思い出す。

  _
(#゚∀゚)「チッ」

川 ゚ -゚)『ここは公共の場だ。騒ぐんじゃない』
  _
( ゚∀゚)「……」



145 :◆1NDYqJ7JknRX:2009/08/26(水) 23:58:49.73 ID:aUY+4nxsO
まだ続くので少しブレイク。

リハビリで書き始めたら止まりません。


147 :◆s7L3t1zRvU:2009/08/27(木) 00:04:10.57 ID:8jrBdPtEO
酉間違えてた。
現時点でなんかありましたらどうぞ。

なかったら一、ニ時間仮眠します。



148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 00:04:12.07 ID:aGkhW0sQO

あーもう続きが気になる


149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 00:07:22.01 ID:LwKnQbQmO
続きがみたいよぉお


150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 00:12:10.22 ID:SL2s6ZaN0
朝まで余裕で付き合えるぜ


156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 00:40:04.63 ID:gN1zWAvXO
読んだ
おもしろい


159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 00:45:15.58 ID:SL2s6ZaN0
違うよ自宅持ち帰りの仕事だよ
そんな目で見んなよ



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