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◆(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に”繭”のようです ~その弐~

前の話/インデックスページ/次の話

45 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:33:37.11 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)「…………」

朝。
携帯の目覚ましアラームが鳴る十分前に眼を覚ました俺は見知らぬ天井を見上げていた。

(,,゚Д゚)「あ、そっか。矢峠村に来てたんだ」


(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に”繭” ~その弐~


久しぶりの敷布団で寝たせいか身体が痛い。

時刻は七時。
木製の立派な引き戸を何枚か潜ると、台所に美瀬里さんが立っていた。
味噌汁が煮立つ良い香りがする。



46 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:35:22.62 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)「おはようございます」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、おはよー。もう少し寝ててもよかったのに。疲れは抜けた?」

(,,゚Д゚)「バッチリっすよ。それだけが取り柄なんで」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふふ、うちの旦那に見習わせたいわ。シャワー浴びるでしょ? タオルは用意してあるから自由に使ってね」

奇妙な方向に撥ねた俺の寝グセを指しながら、美瀬里さんはクスクスと笑う。
椎名とはまた違った魅力を持つ女性にあんな表情をされると、何処かこそばゆい感覚に襲われる。



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:36:32.87 ID:bDTyuz5yO
期待



48 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:37:03.21 ID:wSQ/QS9vO
相変わらず綺麗な浴場。
テレビコマーシャルで宣伝されている高級嗜好のシャンプー(符逆さんはこういうのを自主的には買わない。
間違いなく美瀬里さんの指示で購入したものだろう)を使って頭の中身と外側を洗い流す。

水蒸気で少し曇った鏡に映る自分。
うん、今日もイケメン……だったらいいのになあ。
俺もシャキンみたいに長くて切れのある眉毛が欲しい。

(*゚Д゚)「でも、太いほうが凛々しくて男前だよ」

(,,゚Д゚)「と、しぃは言ってくれたのでこのままで良いのだ」

……たぶん。



49 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:41:08.65 ID:wSQ/QS9vO
( ^Д^)「おお。味噌汁にジャガ芋が入っとる」

朝風呂後の朝食。
雅な赤い碗に入れられた吸い物を見て、符逆さんが感嘆の息を漏らした。
美瀬里さんの手作りであるお味噌汁には、大根の代わりにデンプンの王『ジャガイモ』が浮かんでいる。

(,,゚Д゚)「素晴らしい。流石っすよ。美瀬里さん」

( ^Д^)「嗚呼……ギコちゃんも分かってくれるか。やはり俺が見込んだ漢なだけはある」

(,,゚Д゚)「何が素晴らしいかって、ジャガ芋を扇形ではなく短冊状に切っていることっすよね」

( ^Д^)「ギコちゃん……君、うちの養子にならないか?」

ミセ*;゚ー゚)リ「大根を切らしてたから、代わりに入れただけなんだけど……」



50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:42:28.40 ID:voU4mRVu0
味噌汁でWWW



51 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:44:40.05 ID:wSQ/QS9vO
食事を終えた俺と符逆さんは、早速身支度を整えて学校へ向かった。
スーツ姿の青年とラフな私服を着た男が軽トラを走らせる様は誰が見ても奇妙に思えるだろう。

符逆さんの自宅から学校へは歩いてでも行ける距離にあるらしい。
俺自身一応の普通免許は持っているが、他人の車を転がして何かトラブルを起こすわけにもいかないし、
どちらかと言うと足を動かすタイプなので今後は自転車通勤になりそうだ。

今後はママチャリ戦士と呼んでくれ。



52 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:46:50.03 ID:wSQ/QS9vO
( ^Д^)「あ、俺達今日の昼過ぎに発つから。はいコレ鍵ね」

(;゚Д゚)「はっ!?」

( ^Д^)「あれ、やっぱ言ってなかったか」

(,,゚Д゚)「いや。別にいいんですけど、随分と予定を詰めてるんすね」

( ^Д^)「そりゃおめぇ、ヨーロッパをあちこち廻るんだぜ。モナリザやクレオパトラが欧州の地で俺が来るのを待ってんのよ。ぷぎゃーwww」

(,,゚Д゚)「クレオパトラはエジプトっすよ符逆さん」



53 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:51:19.64 ID:wSQ/QS9vO
ボケなのかマジメに言っているのか分からない符逆さんの台詞に突っ込みを入れる。
きっと、普段は美瀬里さんがツッコミ担当なのだろう。
適度な凸凹感があった方が案外男女の仲は続くのかもしれない。
俺がボケを入れたら椎奈は……いや、たぶん突っ込むどころか気付きもしないだろうなあ。

(,,゚Д゚)「!」

と、何やら左手側に大きな建物が見えてきた。
木造二階建て。長方型の建築物だ。
明らかに年代物の匂いがする。



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:53:21.78 ID:emTNFxjNO
味噌汁すげーわかる
チャリンコ戦支援



55 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:55:36.67 ID:wSQ/QS9vO
左折して進入した場所はだだっ広いグラウンド。
間違いない。矢峠村唯一の学び屋『矢峠小等学校』に到着したのだ。

( ^Д^)「名前こそ小学校だが、小学生いないんだよね」

(,,゚Д゚)「いかにも”昭和!”って感じな雰囲気っすねぇ」

( ^Д^)「希少なアンティークさ。着いたぞ。下りてくれ」

開けっ放しにされた玄関口には生徒用の下駄箱が沢山並んでいる。
昔は五百人ぐらいいたらしいんだけどな、と寂しそうな顔をしながら符逆さんは俺を引き連れて朝日が差し込む廊下を進んで行く。



56 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 22:57:44.02 ID:wSQ/QS9vO
  _
( ゚∀゚)「あ、先生。この前もらったプリントなんだけど、この問2ってさあ……ん、誰?」

从'ー'从「?」

『B組』と書かれた木製の引き戸をガラガラと開けて教室に入ると、中には何人かの生徒が既に待ち構えていた。
眉毛の凛々しい青年と、どこかふわふわした感じがする女の子だ。
見慣れた担任の後ろからついてきたスーツ姿の俺を不思議そうに見ている。

( ^Д^)「ほいほい。とりあえず席に座ってくれな。聞きたいことはあるだろうが、先ずは俺の話を聞いてくれ」

m9(^Д^)9m「紹介しよう。この夏いっぱい、お前らの面倒を見てくれる木鼓 靖虎先生だ」



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:59:47.93 ID:voU4mRVu0
こっちみんな



58 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:00:42.73 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)「どうも」

  _
( ゚∀゚)「おお! 新しい先生か!」

从'ー'从「カッコイイねぇ」

符逆さんの紹介に思い々いの感想を口にする少年と少女。

( ^Д^)「ギコ先生は数学・物理・化学が担当だ。仲良くしてやってくれ」

(,,゚Д゚)「勉強だけじゃなくて、他にも相談があったら何でも言って欲しい。歳も近いから話も合うと思う」

  _
( ゚∀゚)ノ「先生、彼女とかいるんすか!?」

(,,゚Д゚)「ははっ。秘密だ」

从'ー'从「歳はいくつぐらいなんですか?」

(,,゚Д゚)「二十歳だ」

  _
( ゚∀゚)「あ、じゃあもしかして大学生!?」

( ^Д^)「そうだぞー。国立の凄い大学の現役生だ。お前ら爪の垢でも煎じて飲ませてもらえ」



59 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:05:28.60 ID:wSQ/QS9vO
从'ー'从「すごーい。どこから来たんですか?」

(,,゚Д゚)「愛知だ」

从'ー'从「…………」
  _
( ゚∀゚)「…………」

(,,゚Д゚)「…………」

ん?

|'A`)「ギコ ヤストラ(20)ヒ}#&A大学の工学部 機6/+工学科所属 矢継村出身 符逆先生の従兄弟……」
  _
( ゚∀゚)「えー! 先生そんなところからわざわざここに来たんすか!」

从'ー'从「名古屋って言えばあれだね~。赤福餅があるよね~」

|'A`)「渡辺さん。それは三重県の名産品だから。確かに名古屋でも売ってるけど……」



62 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:09:36.70 ID:wSQ/QS9vO
  _
( ゚∀゚)「って言うかドクオ! そんな入口でボソボソ喋ってねーで入って来いよ!」

|'A`)「ボクは上級生だから一応敬語使おうね長岡くん。もう諦めてるけど……」

古めかしい教室の後ろ側の扉から、ひょっこりと新たな少年が現れた。
随分と細長い身体だ。
独り言のようにボソボソと喋る姿と無造作に伸びた前髪とが合間って、『ザ☆不健康』なんてあだ名を付けられていそうな印象を受ける。

('A`)「『ビバ☆不健康』と呼ばれています」

ああ……そう。



63 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:13:17.07 ID:wSQ/QS9vO
( ^Д^)「よし。渡辺、長岡、欝田はそろったな。あとは――――――」

  _
( ゚∀゚)「高校組は都村が来てないぜ」

从'ー'从「中学組はヒッキー君とシューちゃんとデレちゃんが来てないねぇ。って言うか全員?」

('A`)「中等部は鶏小屋と荒巻の世話当番の日なので遅れてきますよ……」

( ^Д^)「あー。そういや満月が近いな。ってことは荒巻の相手に暫くかかるだろうし、都村が来たら自己紹介始めるか」

(,,゚Д゚)「(……アラマキってなんだ?)」

(゚、゚トソン「お早うございます。皆さんお揃いのようで」



64 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:16:17.14 ID:wSQ/QS9vO
凛とした声に教室にいた全員が後ろを振り返った。
そこには、きっちりと整えられたセーラー服に身を包み、傷一つない革製の通学鞄を片手にぶら下げている少女がいた。

生れつき色素が薄いのだろう。髪の毛は淡い茶色で、腰上辺りまであるストレートヘアをヘアゴムと髪串を使って綺麗に髪を結っている。
日頃の手入れを心掛けなければ保持できないであろう艶髪を風に揺らし、
普段見慣れている筈の学友達に対してもピンと背筋を伸ばして挨拶をするその姿から、彼女の人となりが容易に想像できる。

( ^Д^)「おはよう都村。相変わらずのポーカーフェイスだな」

(゚、゚トソン「せめて『落ち着つきのある表情』と評価して欲しいものです」
  _
( ゚∀゚)「トソン! それよりよ、新しい先生が来たんだぜ。もうちっと驚けよな!」



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:17:46.54 ID:hTr7DWdtP
赤福氷おいしいです



66 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:18:42.21 ID:wSQ/QS9vO
(゚、゚トソン「ギコ ヤストラ先生ですね。存じております。一週間前に下眉先生が教えてくださいました。夏季講習を受け持つ新しい先生が二人いらっしゃると」

二人?
ということは、俺以外にも助っ人が呼ばれているのか。
符逆さんはそんなこと一言も言ってなかったけど……。

( ^Д^)「もうひとりの先生は今日の夕方に来る。じゃあ、全員揃ったようだし自己紹介をしてもらうか」

  _
( ゚∀゚)ノシ「はいはーい! 俺からいきまーす!!」

長岡 ジョルジュ。高校一年生。男。
好きな物は『女性の胸(ただし、Dカップ以上に限る)』だそうだ。
元気一杯な全力少年で、いわゆるクラス内の盛り上げ隊長を買って出ている。
曾祖父がドイツ人らしく、眼こそは黒いもののモヒカン風の短髪は金色に輝いている。
人見知りのクチは皆無で、初見の俺に対して一番質問攻めにしてきたのは彼だった。



67 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:21:39.01 ID:wSQ/QS9vO
『この村』と表すのは変かもしれないが、閉鎖的な環境に住んでいる割には人間好きなキライを見せてくれている。
勿論、こちらとしては長岡のような絡み易い存在はとても有り難い。
趣味は釣りらしい。

从'ー'从「数学とトマトが苦手です。あとキノコも」

第一印象を裏切らない渡辺 綾香(ワタナベ アヤカ)は今年で高校二年生になる天然少女だ。
栗色のセミロングボブと少し広いオデコがチャームポイントの彼女も、長岡と同じく好印象な気質を宿している。
符逆さんの情報によれば、時折、本当に火星辺りと交信しているのではないかと勘ぐるほどの爆弾発言をするらしい。
変態貴公子シャキンという友人を持つ身としては、渡辺の口撃も上手く捌かななくてはならないだろう。
趣味は”あやとり”とのこと。



68 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:22:54.03 ID:wSQ/QS9vO
(゚、゚トソン「都村 園子(トムラ ソノコ)です。皆、トソンと呼んでくれています。以後よろしく」

先程やって来たこの生徒は高校三年生の知的少女だ。
驚くべきことに彼女は旧家の跡取りだそうで、かつてはこの辺り一体を支配していた豪族を末裔にしているのだとか。
つまり、そこらの成金娘とは別格の本物のお嬢様というわけだ。

「別に何がどうだとか。特別なことなんて何もないですけどね」と澄ました顔で呟く辺り、彼女の落ち着いた性格と教養の高さが伺える。
趣味はカメラらしい。



70 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:26:29.46 ID:wSQ/QS9vO
('A`)「欝田 独男(ウツタ ドクオ)……よろしく……」

ドクオと呼ばれている彼も都村と同じく受験を控えた身の青年だ。
とにかく消極的。あまり自分から発言をしようとしない。

ただ、雑学やらの知識がかなり豊富なようで、時折ボソリと皆が興味を惹くような話題を提供してくれることも間々あり、
もっぱら渡辺や長岡の弄られ役を担当しているようだ。
趣味は寝ること……それは趣味じゃないだろう。



71 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:29:32.53 ID:wSQ/QS9vO
( ^Д^)「と、まあこんな感じか。中学組は午後までは来れないだろうし、下眉先生と茂羅先生は夕方に合流する予定だし……
      うん、とりあえずの顔合わせはこれで終わりだな。じゃあ、解散!」

  _
( ゚∀゚)「えー! 朝早くから呼び出しておいてそりゃないだろー!」

从'ー'从「まだ学校に来て一時間もたってないよ」

(゚、゚トソン「新しい先生がいらっしゃるということで、私は新品の夏服を卸してきました。これではこのセーラーが浮かばれません」

なるほど。
やはり、ここの生徒達にとって新規の先生が登場することは滅多にない重要イベントとして数えられているらしい。
学ランとセーラー服がヤンヤヤンヤと異議を申し立てる中で、符逆さんは面倒臭そうに頭をかく。



72 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:32:27.38 ID:wSQ/QS9vO
(;^Д^)「え~。だからって、お前ら授業をやろうとすると嫌がるじゃねーか。って言うか俺まだ荷造り済んでないんだよ」
  _
( ゚∀゚)「ハネムーンのか!」

( ^Д^)「おう」

(゚、゚トソン「出発はたしか今日でしたね。にも関わらず荷造りが終わっていないとは……計画性が皆無です」

从'ー'从「ミセリさんは綺麗だよねえ。中年親父には勿体ないよう……あ、財産目当て?」

( ^Д^)「アホ。ハートだよハート。俺のバラの香りがするトークでイチコロってなww」
  _
( ゚∀゚)「バラって言うよりカメムシだろ!」

从'ー'从「先生が『愛してる』とか言ったら何か異次元の怪物とかが召喚されそうだねぇ」

(゚、゚トソン「そういえば、バラの香りは屁と同じ成分で作られているそうですよ」

(;^Д^)「一応、俺はお前らの恩師なんだからさ。もうちょい歯に衣着せた物言いをしてくれよな……」



73 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:33:22.50 ID:wSQ/QS9vO
結局、符逆さんはハネムーンの仕度をする為にひと足速く帰るこに。
なので、家に帰っても(宿題以外は)得にすることがない生徒達の提案により、新人の俺は彼等に学校案内をしてもらうこととなった。

俺自身も得に詰まる用事はなかったので、スキンシップをはかる意味合いも兼ねて彼等と付き合うことにした。
少なくとも数週間は顔を合わせる間柄になるのだ。生徒からの信頼を得るのも教師の仕事だろう。
  _
( ゚∀゚)「教室が沢山余ってるから基本的にどこをどう使ってもいいんだぜ」

(,,゚Д゚)「普段の授業はB組で、昼食は気分に任せてアチコチ回ってるわけか」

从'ー'从「春や秋は外で食べることが多いよねえ」



75 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:37:04.14 ID:wSQ/QS9vO
(゚、゚トソン「皆でオカズを持ち寄って品評会をするのが慣わしになってます」

('A`)「なんだかんだで、いつも都村さんが一位ですけどね……」

住めば都とはよく言ったものだ。
例え人数が少なくとも彼等は彼等なりに日々を楽しむ工夫をして過ごしているのだろう。

長岡を始めとする少年少女達の間に、並の人間では築けないような信頼関係が成り立っていることは明白だ。
しかし、逆にここまで友情が堅くなると男女間の色事は硬化停滞の一途を辿るのだろうなあ……
などと下世話な勘繰りをしているうちは、まだまだ俺も幼稚な部類なのだろうか。



76 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:41:42.13 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)”「…………」

ふと、花壇に植えられた花々が窓越しから目に止まった。
黄色い小さな花だ。
風と共に緑の茎をのんびりと揺らしている。

(゚、゚トソン「ああ、それは御伽草ですね」

(,,゚Д゚)「オトギリソウ? 」

(゚、゚トソン「ええ。いわゆる雑草の類いですが、なかなか綺麗な花を咲かせるでしょう。除去するのも勿体ないのでそのまま自生させています」

  _
( ゚∀゚)「綺麗でも食えないなら意味ないぜ」

('A`)「長岡君は胃袋で物事を判断し過ぎ……」

校舎内の案内は一通り完了し、次は外のグラウンドを案内してもらうこととなった。
校舎の大きさもさることながら、この学校の敷地は以外にも広く作られている。
昔は沢山の生徒が溢れかえっていたであろう巨大なグラウンドを横切った生徒達は、とある倉庫に俺を招き入れた。



77 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:44:43.66 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)「グラウンド整備の用具倉庫。ここに何かあるのか」

从'ー'从「クスクス。そうだよ~」

持って当然の疑問に渡辺が意味深な笑みを見せる。
頑丈なコンクリートで作られた倉庫の中に入ると、意外にも中は綺麗に整頓されていた。
赤色コーンやグランド線引き用の道具と石灰。砂で汚れた綱引き……何処の学び屋でも見慣れた光景だ。

(-、-*トソン「まったく。どうして最近の若者はこうもつまらない色恋沙汰に躍起になるのでしょうか」

('A`)「都村さんも若者でしょ……」

从'ー'从「せんせ~。こっちこっち~」

(,,゚Д゚)「?」



78 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:46:41.22 ID:wSQ/QS9vO
呆れた表情を見せる都村を残し、俺は渡辺の細い腕に引かれて倉庫の奧へと進んで行く。

(,,゚Д゚)「扉……この倉庫は二部屋あるのか」

从'ー'从「そうそう。こっちの部屋は『第二用具室』って言って、体育館で使う備品が置いてあるんだよ」

('A`)「でも体育館自体に倉庫が備え付けられているから、こっちの倉庫は使うことはまずないですけどね……」

(,,゚Д゚)「それがどうかしたのか?」

  _
( ゚∀゚)「鈍いぜ先生。この第二用具室は我が校の七不思議の一つなんだよ!」



79 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:47:59.63 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)「へぇ。どんなジンクスが付いてるんだ」

(゚、゚トソン「ジンクスというか、ただの恋呪いみたいな話があるだけです。
     この第二用具室で愛を誓いあった男女は永遠に結ばれる……
     どこにでもある有り触れた伝説ですね」

从'ー'从「もう。トソンちゃんはすぐそうやって冷めた言い方をする。
     もっとムードのある感じで言わなきゃ!」

ぷぅ、と渡辺が腰に手を当てて顔を膨らませる。



82 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:50:18.11 ID:wSQ/QS9vO
(-、-トソン「私は占いや呪い事は信じていません。確かに歴代の先輩方の中にはこの第二用具室で結ばれた人はいたでしょう。     ですが、それは異性同士が密閉された空間で二人きりになるという特殊な環境下による―――――」

  _
( ゚∀゚)「だぁー! トソンはすぐそうやって話をややこしい方向に持っていく!!」

事の真偽はともかく、どうやら生徒達が俺を外に連れ出した理由はこの部屋にあったようだ。
第二用具室には壁のように積み上げられた跳び箱があり、その死角には体育館マットがギッシリと並べられている。

なるほど、この配置はどう見ても”愛の巣”そのものだ。
小さな窓と換気扇がついているので空調面に問題ナシ、当然ながら蛍光灯もついてるので光源も確保されている。
オマケに倉庫自体も滅多に人は入らず、用があるとしてもグランド整備品がある第一用具室のみときた。
これだけの条件が揃った場所を密会に使わない手はないだろう。



83 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:51:24.02 ID:wSQ/QS9vO
(,,゚Д゚)「色恋沙汰もほどほどにな。学生の本分は勉強だぞ」
  _
( ゚∀゚)「まさか! 学生の本分はスポーツだぜ!」

(,,^Д^)「ハハッ。確かにそうだ。否定はできんww」

どうやら生徒達の俺に対する警戒度もだいぶ低くなってきたようだ。
倉庫から出た後、桜の木陰で涼みながら俺達は互いの趣味や性格などについて教えたり教えられたりして時を過ごした。

(゚、゚トソン「そろそろ中等部の子達の仕事が終わる頃合ですね」

('A`)「教室に誰かいますよ……」



84 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:53:15.57 ID:wSQ/QS9vO
欝田が指刺した方向に人影が見えた。
あそこは俺と生徒達が自己紹介しあった教室だ。
窓から部屋に入り込もうとする長岡が都村に引きずり落される様を眺めつつ、俺達はもといた教室へと戻る。

lw´‐ _‐ノv「見知らぬ人間を発見。貴様、米とライスどっちが好きだ?」

(,,゚Д゚)「パンだ」

lw;´‐ _‐ノv「(コイツ……!! デキるな。久方ぶりの米敵《ホワイトライスエネミー》か……米神様に報告しなくては)」

(,,゚Д゚)「(米とライス……? 反射的にパンって言っちゃったけど聞き違いだよな?)」



85 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:55:53.09 ID:wSQ/QS9vO
从'ー'从「シューちゃんは相変わらず奇抜な質問をするねぇ」

('A`)「アレは奇抜って言うのかな……っていうか、どっちを選んでも同じ食物だし……」

(゚、゚トソン「ちなみに私は米と答えました。自国の主食を横文字で呼ぶのは如何なものでしょうか。渡辺さんは何と答えましたか?」

从'ー'从「よもぎ」

('A`;)「…………」

教室に入って早々、初対面の人間に米は好きかと問い掛けてきた中学2年生の女の子。
名を素直 春(スナオ ハル)と言うそうだ。
周りからはシューと呼ばれているようで、これは春夏秋冬の”シュン”から文字っているらしい。
後から知った話だが、どうやら本人は自分の名前があまり気に入ってないらしく、周りにあだ名で呼ぶよう言い含めているそうだ。



86 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/04(金) 23:57:58.07 ID:wSQ/QS9vO
それにしても『素直』とは……正直あまり良い思い出がない名前だ。
珍しい苗字だが、まさか彼女と接点があるわけでもあるまい。
俺の中で素直の名を持つ人間は唯一人だけでいい。
  _
( ゚∀゚)「あれ、鈴木はどこ行った?」

/ ゚、。 /「ここにいるよ」
  _
(;゚∀゚)「うぉ!? 相変わらず気配のない奴め……先生、紹介するぜ。鈴木 大尾(スズキ ダイオ)だ」

(,,゚Д゚)「ダイオ? 女の子なのに随分と力強い名前だな」

/ ゚、。 /「僕、男だよ」

(;゚Д゚)そ 「なにぃ!? その顔と声で男かよ……じゃなかった。スマン」

/ ゚、。 /「いいよ。よく間違えられるから」



87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:58:20.90 ID:KS29hPtC0
今自分もミステリ書いてるので期待しえーん!!



88 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:00:17.19 ID:XE8imCFEO
クスクスと笑う美少年はシューと同じ中学二年生。
上京すれば間違いなく芸能プロダクションから声がかけられるだろうその顔立ちは、もはや嫉妬の域を超えて好奇心すら覚えてしまう。
野郎に欲情するような趣味は持ち合わせていないが、プラトンが少年愛を推奨した理由が何ともなしに分かる気がした。
勿論、プラトンにそんな事を言ったら動機が無粋だと怒られそうだが……。

(,,゚Д゚)「ドクオ・渡辺・長岡・トソン・鈴木・シュー、か。よし、覚えたぞ」

从'ー'从「茂羅先生は今日は来ないのかな」
  _
( ゚∀゚)「歓迎会の買い出しで隣町まで行ってるぜ。あ、ギコ先生。明日の夕方に歓迎会があるから7時に学校に来てくれってさ」

(,,゚Д゚)「おお、それは有り難い。ん? 符逆さんはそんなこと俺に一言も言ってなかったぞ」

(゚、゚トソン「あの人からまともな情報を得ようだなんて期待はしないほうがいいです。歩くダメインフォメーションですから」

(;゚Д゚)「学び屋で何をやらかしてるんだ、あの人は……」



89 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:02:16.50 ID:XE8imCFEO
生徒達によればこの学校に常勤している先生は三人いるそうだ。
符逆、下繭そして茂羅。
符逆さんの穴を埋めるために召喚された俺ともう一人の学生の歓迎をすべく、残る二人の教師はそれぞれ準備に奔走してくれているらしい。
教員同士の顔合わせはその時に、ということだろう。
  _
( ゚∀゚)「腹減った」

从'ー'从「そうだね。プロティンだね~」

 無視した
 ↓
(,,゚Д゚)「もう昼過ぎか。じゃあ一度解散して、また夕方に合流しよう」

lw´‐ _‐ノv「ダイオード君。今日の昼ご飯は何にしようか」

/ ゚、。 /「卵掛けご飯」

lw´‐ _‐ノv「あらあら。随分とかわいらしい物をチョイスするのね」

/ ゚、。 /「……やめた。卵掛け丼にする」

lw´‐ _‐ノv「(分かり易い奴め)」



91 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:05:15.09 ID:wSQ/QS9vO
胃袋の虫の欲求に従い、少年少女はぞろぞろと我が家へと帰り始める。
符逆さんから予め渡されていた鍵で教室を施錠し、俺は自転車が置かれている校舎裏へと一人向かう。
途中、都村に教えてもらった花壇が目に付いた。
これほどの炎天下だというのに花々は凛々しく咲き誇っている。立派なものだ。

(,,゚Д゚)「ん? この花、染みがあるぞ」

黄色い小さな花の表面には赤黒い染みが点々としていた。
病気か何かだろうか。
確か名前はオトギリソウだったはず……他の花に感染する前に詰んでしまったほうが良いだ「「そいつに触れるな。糞野郎!!」」


――――え?





92 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:07:04.02 ID:XE8imCFEO
(,,゚Д゚)「誰だ!」

从'ー';从「誰だ!?」

(,,゚Д゚)「あ……なんだ、渡辺か……」

从'ー'从「ビックリした~。ギコ先生、急に大声出すんだもん」

(;゚Д゚)「あ、ああ。スマン。何か用か?」

从'ー'从「用って言うか……私、自転車通学だから自転車を取りに来たんだよ」

ころころと笑う渡辺は手を後ろに組んで不思議そうな目で俺を見る。

(,,゚Д゚)「そうか……。なあ渡辺」

从'ー'从「なぁに?」

(,,゚Д゚)「お前……さっき、俺に何か言ったか?」

从'ー'从「何かって?」

(,,-Д-)「いや、なんでもない」

从'ー'从「クスクス。ギコ先生は夏ボケさんだねぇ。じゃあ、私は先に行くね~」

(,,゚Д゚)「おう。また後でな」



93 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:08:43.58 ID:XE8imCFEO
鬼さんコチラ。
手の鳴る方へ。

夏の炎天に座す阿呆よ。
このお伽話の主役は貴様に非ず。
貴様は狂気の噛ませ犬に過ぎぬ。

゙σ(,,゚Д゚)「(幻聴……か。疲れてんのかな)」

鬼さんコチラ。
子の鳴く方へ。

ようこそ。
殺戮と狂乱の世界へ。
愛憎まぐわう煉獄の村へ。

从 ー 从「…………」

オトギリソウの散る頃に。
繭《まゆ》から出ずる鬼は誰そ彼よ。


オトギリソウの散る頃に”繭” ~その弐~ 完



95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:12:17.72 ID:wxQDFJWoP




96 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:13:12.01 ID:XE8imCFEO
以上で今夜は終わりにさせて頂きます。
今はまだ単調なストーリーですが、第二章から本格的に物語が動き出す予定です。

何か質問などあればどうぞ。



97 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:13:57.10 ID:XE8imCFEO
書き忘れていました。
支援して下さった方々と1に感謝です!!



98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:15:35.75 ID:81XVWGoy0
乙!!期待してます!!



99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:16:17.66 ID:zeJFHa50O
期待



100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:20:59.93 ID:LMauwQC8O
乙!
面白くなりそうだな



101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:21:07.48 ID:1EGvX3HgO
面白かった
続き期待しとく。乙



102 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/05(土) 00:27:01.54 ID:XE8imCFEO
ありがとうございました。
では、お休みなさい!



104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:30:38.64 ID:rAoZ+OYaO
乙でした



105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:53:19.11 ID:1iukZhtb0
乙期待期待



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■この記事へのコメント

  1. ■Re: 【正解率】(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に”繭”のようです【1%】 ~その弐~ [くるくる名無しさん]

    面白そうだ、展開も良い感じだし
    これは期待
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