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◆(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に"繭"のようです ~その四~

前の話/インデックスページ/次の話

3 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:00:42.89 ID:z+8JkyyZO
まとめて下さっているサイト様(五十音順)
・くるくる川 ゚ -゚)
ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/
・ブーン文丸新聞
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/


【登場人物紹介】
(,,゚Д゚)…木鼓 靖虎(ギコ ヤストラ)
・助っ人教師として矢峠村にやってきた大学二年生。矢峠村の隣にある矢継村の出身。通称ギコ。

椎名 ゆい(シイナ ユイ)
・ギコの恋人。現在は親戚の法事の手伝いの為に地方へ帰省している。

川 ゚ -゚)…素直 空(スナオ クウ)
・大学二年生。助っ人教師として矢峠村にやってきた。ギコの元恋人。通称クー。

(´・ω・`)…下眉 和也(シタマユ カズヤ)
・矢峠学校の教師。ギコは確信している、こいつは絶対に教員免許を持っていないと。通称ショボン。

( ・∀・)…茂羅 弘(モラ ヒロシ)
・矢峠学校の教師。眼鏡が似合うクールな男。通称モララー。
  _
( ゚∀゚)…長岡 ジョルジュ(ナガオカ)
・おっぱいおっぱいな高校一年生。曾祖父をドイツ人に持つ。しかしドイツ語は喋れない。



4 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:01:23.58 ID:z+8JkyyZO
('A`)…欝田 独男(ウツタ ドクオ)
・ビバ☆不健康な高校三年生。ひょろ長で物静か。本気を出すと学生メンバー随一の駿足を叩き出す。ただし5秒しか持たない。

从'ー'从…渡辺 綾香(ワタナベ アヤカ)
・のほほんとした高校二年生。たぶん頭の中にはタンポポの綿毛が詰まっている。ちょっと広めのオデコが素敵。

(゚、゚トソン…都村 園子(トムラ ソノコ)
・旧家出身の本物のお嬢様。高校三年生。知的な口調を裏切らない秀才娘。虫が弱点。通称トソン。

lw´‐ _‐ノv…素直 春(スナオ ハル)
・中学二年生。大胆不適な少女。鈴木と仲良し。タイ米に並々ならぬ敵意を抱いている。通称シュー。

/ ゚、。 /…鈴木 大尾(スズキ ダイオ)
・無表情ながらも可愛らしい少女……じゃなくて少年。スポーツに励んで男らしくなろうとするが、脅威的な運動音痴という壁の前に挫折。中学二年生。



5 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:03:09.62 ID:z+8JkyyZO
('A`)「あっ、そうか。ここで使うのか……」

(,,゚Д゚)「そう、ここに与えられたμを代入してやって……単位のKg・m/s^2を忘れるなよ」

(゚、゚トソン「素直先生。これでどうでしょうか」

川 ゚ -゚)「よし、正解だ。英作文を作るコツは出来るだけ文法を簡単にすることだ。下手にマニアックな単語を使っても得点は変わらんぞ」

lw´‐ _‐ノv「…………」

(;・∀・)「シューちゃん。答案を埋めようと頑張っているのは分かるんだけど、『米』って……数字を入れる欄に米って……」



6 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:04:39.36 ID:z+8JkyyZO
  _
( ゚∀゚)「そうか、分かったぞ! 答えは①だな!」

(´・ω・`#)「ちっげーよバカ! だからbe動詞使えって言ってるんだよ! なんでTomを使うの? なんで名詞使うの?」
  _
( ゚∀゚)「isか!」

(´゚ω゚`#)「トムとマイクになんでisなんだよ! 複数にイズとかねーよカス!」
  _
( ;∀;)「なんだよ! ちゃんと教えろよ! 全然わかんねーよ!」


(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に"繭"のようです ~その四~





7 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:07:15.13 ID:z+8JkyyZO
二つ一組に分けられた机に教師と生徒が一人ずつ。
個別授業スタイルを採用しての夏期講習第一日は昼休みのチャイムをもって無事終了した。

从'ー'从「お疲れ様~。おべんと食べよっ」

今日は授業がなかった渡辺が教室の端に作った『自主勉コーナー』から大きな伸びをする友人達に声をかけた。
夏期講座は生徒の集中力と生活リズムを考慮して午前中に始まり、午前中に終わるよう組み立てられている。
受験生である欝田と都村は午後からの自習があるので、教員は彼等に付き合う必要があるが、それは自体はたいした負担にはならないだろう。



9 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:09:23.02 ID:z+8JkyyZO
兎にも角にも今は腹が減った。
頭であろうと身体であろうと動かせば胃袋が鳴くことに変わりはない。

( ・∀・)「いやあ、二人が来てくれて本当に助かるよ。クー君もギコ君もバイトは塾講師なんだってね?」

外に繰り出した生徒達が木陰で弁当箱を開く様子を見ながら、茂羅が俺とクーにのんびりと話し掛ける。
くたびれた扇風機が回る教室で教師陣もそれぞれ風呂敷を拡げていた。

(,,゚Д゚)「小さな個人塾ですけど……」

川 ゚ -゚)「私は家庭教師です。それにしても、都村は随分と英語を鍛えられているようですね。かなりやり易かったです」

( ・∀・)「ははは。下眉先生の鬼のような英語授業についていけるのは、あの子ぐらいさ。ねぇ先生?」

(´・ω・`)「人参が黒炭になってやがる……」



10 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:12:03.50 ID:z+8JkyyZO
黒い塊を箸で摘んでいるショボン。
アルミ製のドカ弁には様々な料理が敷き詰められているが、何故か全体的に焦げていた。
陰欝な顔で炭人参を投げつけてくる残念眉毛を無視し、俺は美瀬里さんが作り置きしてくれたオニギリを口にほうばる。

美味い。
美瀬里さんが残してくれた遺産(?)もこれで最後だ。
今晩からは自炊をしなくては……。

川 ゚ -゚)「なんだ。ギコは料理の才能があったのか。美味しそうな握り飯だ」

(,,゚Д゚)「や、これは符逆さんの奥さんが作り置きしてくれた奴だよ。俺が米を握ると必ず隕石みたいな形になる」



11 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:16:20.33 ID:z+8JkyyZO
( ・∀・)「美瀬里さんだったかな。あの人は良妻賢母の器だよ。符逆さんには勿体ないぐらいの女性だね」

(´・ω・`)「ジャガイモが生だ……しゃりしゃりしやがる」

と、ここで少し気になっていたことを俺は思い出した。
俺の故郷である矢継村に住んでいた人々の顛末だ。
符逆さんに聞こうと思いつつも、何だかんだの忙しさで聞くことをすっかり失念していた。

(,,゚Д゚)「話が変わるんですけど、先生方は矢継村をご存知っすか?」

( ・∀・)「ああ。確か今はダムになっちゃったんだっけ。それがどうかしたのかい?」



12 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:19:23.79 ID:z+8JkyyZO
(,,゚Д゚)「俺はそこの生まれなんすよ。ダムで村が無くなるときに、この矢峠村に越してきた人はいるのかなと思って」

(´・ω・`)「米が硬い……炊いてないのか……?」

( ・∀・)「ん~どうだろ。実は僕もこの村に来てまだ五年ほどしか経っていないんだ。役所……村長に聞けば分かるかもね」

村長か。
ガキの頃、符逆さんの家に遊びに来た時に何度か会った覚えがある。

確か内藤とか言ったかな。
物静かで少し怖いイメージがあったが、今はどうだろう。
もう結構な年齢だと思うが。



14 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:20:50.53 ID:z+8JkyyZO
  _
( ゚∀゚)「先生、野球しようぜ!」

口に米粒を付けた長岡が窓から顔を覗かせた。
手にはグローブ。
その後ろに、明らかに強制参加させられた感が漂う欝田と金属バットをぶんぶん振り回す鈴木の姿がある。

( ・∀・)「ふふん。まったく、長岡くんは懲りないね。僕と君との実力差は圧倒的だよ?」
  _
( ゚∀゚)「へっ。こっちには二週間かけて完成させた新型魔球があるんだ。これで連敗に終止符を打つぜ」



15 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:24:16.44 ID:z+8JkyyZO
( ・∀・)「いいだろう。腹ごなしの運動だ。ただし、君が負けたら明日の授業に使うプリントを一枚増やさせてもらうよ」
  _
( ゚∀゚)「俺が勝ったら先生のルアー貰うからな」

野球勝負か。
俺は中・高時代は柔道に勤しんでいた身なので、野球やらサッカーやらに関しては嗜み程度の心得しか持ち合わせていない。
のんびり教室から観戦しよう思っていたが、外で見ようとクーが言うので炎天の下へと俺達は繰り出した。

ちなみにショボンはまだ炭尽くし弁当と睨めっこを続けている。
まさかあれを全て食うつもりなのだろうか。

从'ー'从「せんせ~。こっちこっち」

(,,゚Д゚)「おう。ここは見物には特等席だな。木陰になると途端に涼しくなった」

(゚、゚トソン「素直先生、ギコ先生。お茶をどうぞ」



16 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:26:12.55 ID:z+8JkyyZO
川 ゚ -゚)「ありがとう都村」

(゚、゚トソン「トソンと呼んで下さい。私も先生のことを愛称で呼びたいので」

川 ゚ー゚)、「ん……ありがとうトソン」

グラウンドの隅には野球の本塁ベースが設置されている。
外野手の鈴木と捕手の欝田が配置に付き、バットを構えた茂羅と不適な笑み浮かべる長岡がマウンドに立つ。
それを見慣れた風に茶を啜りながら見つめる女子生徒。
どうやら、この二人はピッチャー対バッターという形でいつも勝負をしているようだ。



18 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:28:52.77 ID:z+8JkyyZO
( ・∀・)「49戦49勝だったかな。ルールはいつも通りで良いね?」
  _
( ゚∀゚)「おう。フライかスリーストライクで俺の勝ち。ファールはストライク扱い。ヒット一本でも出れば先生の勝ちだ」

( ・∀・)「ふふん。プリントの内容は何にしようかなあ」
  _
( ゚∀゚)「その心配は勝ってからにして欲しいね。行くぞ!」

ズバリと投げた長岡の球はかなり速い。
あいつの性格らしい、ど真ん中直球勝負のストレートだ。

('A`)「ストラーイク」

( ・∀・)「速いねぇ。暫く勝負しない内にまた腕を上げたかい?」
  _
(# ∀゚)「そうやってツーストまで自分を追い込む癖、よくないぜ先生。今日の俺はひと味違うスーパージョルジュ様だからな」



19 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:31:42.23 ID:z+8JkyyZO
二投目。
内角ギリギリのストレートが再び茂羅の身体を霞める。
意外なことに、余裕釈々の表情を見せていた茂羅の目が途端に鋭くなった。

そして……。

「('A`)「これは……ファールかな」

( ・∀・)「む」
  _
(;゚∀゚)「あ、危ねぇ。あとちょっとズレてたらホームランだぞ……」

( ・∀・)「危ないのはこっちさ。本当に強くなったね。秘蔵ルアー強奪の危機だよ。だが、男の真価は追い詰められてこそ発揮するものだ」

ふうん。クールな男だと思っていたが、意外と熱い部分もあるのか。

   _
(  ゚∀)チラッ「ルアーにお別れのキスしといたほうがいいぜ先生。言ったろ? 今日の俺はスーパーなんだ」

川 ゚ -゚)「?」
  _
(*゚∀゚)「なにせこっちには(おっぱいの)女神様がいるからなあ!」



21 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:35:53.63 ID:z+8JkyyZO
( ・∀・)「大人を舐めちゃダメだよ長岡くんっ!!」

高く高く掲げられた長岡の腕から土に汚れた白塊が走る。
今こそ、我が秘球を見せるとき。とばかりに放られた球は激しく揺れ動き、そして墜ちる。

俺はあの球に見覚えがあった。
以前、大学の野球部連中に見せてもらった軌道とそっくりだ。
  _
( ゚∀゚)「どうだァ!」

(;・∀・)「うっ……オ……!!」

この球は―――――――――





22 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:38:06.27 ID:z+8JkyyZO

   ※※   ※※   ※※

( ・∀・)「いやぁ。ナックルとはまた面白い球を覚えたね長岡くん」
  _
( ゚∀゚)「面白くても打たれちゃ意味ないだろ」

額に汗を浮かべた茂羅が教室の扇風機を占領する長岡にタオルを放る。

結局、記念すべき師弟対決第50戦目は茂羅の長打という形で幕を閉じた。
長岡は通算50敗の苦汁を飲まされたわけだ。
底なしの体力を持つ高校生相手に負け知らず貫く茂羅も茂羅だが、ここまで惨敗しても勝負を挑み続ける長岡も大概な熱血野郎だろう。

(,,゚Д゚)「なかなか面白い勝負だったよ」

从'ー'从「残念だったねぇ。でも、モララー先生が二球目に手を出すのって初めてじゃない?」



24 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:40:03.54 ID:z+8JkyyZO
('A`)「球筋が良くなってるのは確か。速くなった分、僕も捕球が大変……」

(゚、゚トソン「まったく、男子はどうしてこうも勝負事が好きなのでしょうか。不毛ですよ」

/ ゚、。 /「あんまり出番がなかった……」

グランドで大の字に倒れて拗ねる高校生を引きずるのは随分と骨が折れた。
切りの良い数字で、しかも密かに鍛練した渾身の一球を打破されたとなれば、流石の長岡も元気は無くなるだろう。

  _
( ゚∀゚)「そういえばさ…」



25 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:41:30.54 ID:z+8JkyyZO
敗北の念から逃れたいのか、明日の授業で追加されるプリントから逃れたいのか、
扇風機の前で仰向けになる長岡がクーを見ながら話題を変える。
  _
( ゚∀゚)「クー先生ってさ、苗字がシューと同じだよな。ひょっとして親戚?」

(,,゚Д゚)「あ、俺もそれ気になってた。素直なんて苗字は珍しいし、クーの地元って鶴岡市だよな」

川 ゚ -゚)「……たぶん違うと思うぞ。ただ、昔は素直の名を持つ武家がこの辺りにはいたらしいから、
     ひょっとしたら先祖の一人や二人は共通しているかもな。私と彼女は互いに初見だよ」



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 22:42:21.49 ID:oJVAWQQE0
これってもう複線でてるのかなあ



27 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:43:14.66 ID:z+8JkyyZO
やっぱりそうか。
シュー自身クーのことを見てもさしたる反応はしなかったから、直接、縁がある仲ではなさそうだ。

あれ? じゃあ、クーはどういった経緯でこの村に助っ人教師として来たのだろう。
俺が彼女と出会ったのは俺と家族が鶴岡市に引っ越した後だ。
クー自身、矢峠村と関わりがあるとは思えないが……。

( ・∀・)「村長の推薦だよ。符逆先生の話を聞いて、生徒のために気を効かせてくれたのさ」

(゚、゚トソン「内藤さんですか」

从'ー'从「優しい顔してるけど、ちょっと怖い感じするよね。村長さんって」

/ ゚、。 /「でも、話し方が面白いよ」

川 ゚ -゚)「母が内藤さんと旧知の仲らしくてな。昔、世話になったらしいから私の一存で無下に断ることもできないだろう」



28 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:45:14.07 ID:z+8JkyyZO
やはり事情は人それぞれか。
「どうせ暇だったしな」と呟くクーを見ながら、ぼんやりと窓の外に浮かぶ雲を俺は見上げる。

大きな入道雲だ。
何万トンという水が空中に浮かんでいるなんて、普通だったら理解は出来ても実感は無理なんじゃないだろうか。

从'ー'从「ギッコせんせっ?」

(;゚Д゚)「おわっ。な、なんだ渡辺」

よほど呆けた顔を俺はしていたのだろう。
首を傾げて覗き込む渡辺の黒い瞳に俺は慌てる。

从'ー'从「今日の先生は随分考え事をしているね。空を見て何を考えてたの?」

(,,゚Д゚)「いや……そういう風に見えるか?」

从'ー'从「うん。だって私、今日、先生のことずっと見てたもん」

(;*゚Д゚)「ずっとって」

川 ゚ -゚)「…………」



30 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:50:28.30 ID:z+8JkyyZO
やっぱり可愛い。
薄々感づいていたが、この学校の女の子達は総じてレベルが高い。

やんわりと丸っこいイメージが付く渡辺は完全完璧な癒し系。
キリリと結われた髪と少し鋭い目つきの都村は麗若き未来の姐御肌。
幼女体質……失敬、クールな外見とそのギャップが激しい性格を持つシューは地球外来の不思議ちゃん。

年下に手を出すつもりなど毛頭ないが、案外恵まれた環境なのかもしれない。

川 ゚ -゚)「(ギコ。高校生に手を出したら逮捕されるぞ)」

(;゚Д゚)「(ば、バカヤロー。人の思考を読むな!)」

だが何より、俺が上の空になっている理由は―――――――――――。

lw´‐ _‐ノv「みんな大変だ。ミルナが来たよ!」



32 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:53:25.08 ID:z+8JkyyZO
ガシャンと硝子が揺れる程に激しく窓を開けたシューが、息を切らして俺達のいる教室に顔を突っ込んだ。
ざわざわと落ち着かなくなる生徒達。
だが、その理由は普段は物静かなシューが叫んだからではなさそうだった。
  _
( ゚∀゚)「はぁ!? 今月でもう三回目だぞ」

(゚、゚トソン「困りましたね。恐らく裏庭の野菜が目当てなのでしょう」

( ・∀・)「みんな落ち着いて。僕と下繭先生が行ってくるから。教室から出ちゃ駄目だよ」

(,,゚Д゚)「なんだ? 熊でも出たのか?」
  _
( ゚∀゚)「熊だったらこんな村の真ん中に入って来る前に高岡さんか村長が撃ち殺してるよ!」



34 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 22:57:15.77 ID:z+8JkyyZO
(;・∀・)「あ、長岡クン! 窓から外に出るのはあれ程危ないと……外に出ちゃ駄目だって!」

下履きのままグランドに飛び出す長岡を追いかけようとして、しかし自分がスリッパを履いていることに気づいた茂羅が、
慌てて廊下に出て校舎の玄関口へと走って行く。
方や、教室内では金属バットを構えて鼻息荒くする鈴木を欝田と都村が必死に静止し、
その横で外にいたシューが窓をよじ登って教室への侵入を試みる。
気付けばショボンの姿もない。
空気が慌ただしかった。

(,,゚Д゚)「おい、落ち着けって。ちゃんと説明してくれ。誰が来て何をするっていうんだ」

/ ゚、。#/「ミルナだよ。またボク達が頑張って作った野菜を奪いに来たんだ!」

川 ゚ -゚)「ミルナ? 何かの動物か」

('A`)「人間ですよ。いつの間にかこの村の外れに住み着いた狂人です……」



36 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:00:07.21 ID:z+8JkyyZO
从'ー'从「あわわわ。あの人凄く脚が速いんだよ。村の畑とかからたまに野菜や果物を持って行っちゃうの」

(,,゚Д゚)「犯罪じゃねーかそりゃ……学校の裏庭だったな。ちょっと見て来る」

(゚、゚;トソン「先生、危ないですよ!」

(,,゚Д゚)「大丈夫だ。自衛の術ぐらいは心得てる」

クーに生徒達を任せた俺は教室を飛び出し、スリッパを放って下駄箱に片手を突っ込む。

(,,゚Д゚)「はぁ、はぁ……!」

全力疾走なんていつ以来だろう。
花壇を横切り、自転車置き場を通り過ぎる。
呼吸が荒い。

(;゚Д゚)「ったく……何を……ムキになってるんだ……俺は……うわっ!?」

( д )「っ!?」



37 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:05:56.37 ID:z+8JkyyZO
死角から飛び出た何かとぶつかった。
バランスを崩し、土に尻餅をつく。
慌てて前を見ると衝突した相手は茂羅でもショボンでもない、見知らぬ人間だった。

( ゚д゚メ)「…………」

(,,゚Д゚)「…………」

薄汚れた白シャツにファッションとは言えないダメージだらけのジーンズパンツ。
ボサボサになった髪とぎょろぎょろした黒眼を持つ男が、俺と同じように肩を激しく上下させている。
頬についた切ったような古傷が痛々しい。

(;゚Д゚)「あ……えっと……」

( ゚д゚メ)「…………」

男の手には萎びた茄子が二房。

(,,゚Д゚)「なあ、あんたまさかm」

(´゚ω゚`)「死ねいッ!!」

( ゚д゚メ)「ウ!?」



38 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:07:19.15 ID:z+8JkyyZO
(;・∀・)「物騒なこと言わんで下さい下眉先生! ミルナ、君も逃げるのは止めるんだ」
  _
( ゚∀゚)「ギコ先生、そいつを捕まえて!」

ミルナ? この汚れた男がミルナか。

(,,゚Д゚)「お、おい。あんた止まれ!」

( ゚Д゚メ)「…………」

「ギコくん。なぜここに?」と茂羅が叫んだ。
だが、その返事をするよりも前にミルナの猛烈なチャージが俺の身体を襲った。
ここはフェンスと校舎の壁に挟まれた細い空間だ。
前後を挟まれた形となったミルナは自分の進行方向にいた俺を排除しようとしたらしい。



40 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:10:33.95 ID:z+8JkyyZO
  _
(;゚∀゚)「先生、危ない!」

(;゚Д゚)「うっ、おおお!?」

(#゚д゚メ)「…………」

(;#゚Д゚)「このっ。舐めるなよ!」

Σ(;゚д゚メ)「!?」

タックルに近い形で腰に野郎の強靭な肩が入る。
が、俺はミルナの両腕の付け根をシャツごと掴むとそのまま後転の姿勢を取った。
背中に熱い地面を感じながら、巻き込まれる形で姿勢を崩すミルナの腹に靴底を当て、一気に放り投げる。

(#゚Д゚)「秘技・巴投げぇ!」

( д メ)「ゥう!?」
  _
(*゚∀゚)「す、すげぇ!」

(;・∀・)「一本……じゃなくて! ギコくん、逃げる方向に投げてどうすんの!?」

……あ。





42 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:13:56.63 ID:z+8JkyyZO
( Д ;)「ッ!」

(´゚ω゚`)「待てや変態がぁあああ!」

土埃を上げながら身体を転がしたミルナは、瞬時に体勢を整えると生傷をものともせずにそのまま疾走する。
それを、アルファベットのような形をした金属板を持つショボンが地面に転がる俺を蹴飛ばして追って行く。
サンダルを履いているのになぜあれ程のスピードが出せるのだろうか。
恐るべき速さで走る狂人と教師を長岡も遅ればせながら追走して行った。

(#゚Д゚)「ぐっ。おのれショボン。俺を足蹴にしやがって……」

(;・∀・)「とりあえずミルナの件は下眉先生に任せよう。長岡くんはともかく他の生徒達が心配だ。教室に戻るよ」



43 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:16:21.67 ID:z+8JkyyZO
二年ぶりの柔道技を鈍った身体に酷使させた為か四肢が痛い。

それにしてもあのミルナという男。身のこなしは相当なものだった。
掴んだ服が軟らかい生地で馬力が出なかったとはいえ、接地する直前にしっかり受け身をとっていたのだ。
あれを本能でやっていたとしたら、かなりの手練れだろう。
普通の人間では捕まえることは難しいかもしれない。

(,,゚Д゚)「ただいま」

(゚、゚トソン「お帰りなさい。その様子ですと、どうやらミルナは逃げおおせたようですね」

川 ゚ -゚)「話を聞いたが、そのミルナとやら。立派な窃盗をしているようじゃないか。なぜ警察は動かん」

('A`)「渋澤さんが動こうとしない。誰も被害届を出さないから……」

( ・∀・)「実際、彼が盗っていくものは金品ではなく生活必需品の食料やボロ服だけだ。傷んだものばかりを持っていくから、皆目をつむっているんだね」



44 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:21:08.41 ID:z+8JkyyZO
/ ゚、。 /「でも、納得いかないよ」

( ・∀・)「そうだね。確かに褒められた行為ではないけど、萎びた茄子一つで人ひとりの命を救えるのなら安いものだと思わないかい?」

むくれる鈴木の肩をポンと叩きながら茂羅は笑った。

罪を許す心。或いは無償の愛。
それを実践することは思春期真っ盛りの少年には無理な話だろう。
イエスの教えなんて卑屈精神の賜物だ。
俺は十字架を背負うぐらいならニーチェを信奉する

川 ゚ -゚)「ギコ。頭に砂が付いてるぞ」

(,,゚Д゚)「お、おう。スマンな」

不意にクーが俺に近付いて頭を優しく掃ってくれた。
黒髪を靡かせる小さな顔が急接近し、俺は内心で少しドキマギする。

クーの両目は俺の視線より少し下の位置にあった。
そうか……今はもう俺の方が背が高いのか……。



46 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:24:07.86 ID:z+8JkyyZO
lw´‐ _‐ノv「ねぇ」

ひとり、静かに本を読んでいたシューが顔を上げて俺に声をかけた。

lw´‐ _‐ノv「クー先生とギコ先生は付き合ってるのかい?」

(;゚Д゚)「……な、何を言い出すんだ」

ははは、こやつめ。
内心の動揺を抑え付け、俺は激しく手を振った。

(゚、゚トソン「ギコ先生。動揺し過ぎです。シューはからかっているだけですよ」

川 ゚ -゚)「うぶなんだよギコは。そういうところは昔と変わってないな」

ぐ……。こいつら……。
思春期真っ只中の中学生か俺は。
どうにも、当初に目指したクールなキャラ設定が崩壊していっているような気がする。



48 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:26:27.76 ID:z+8JkyyZO
  _
(#゚∀゚)σ「だーからっ。あの時俺に任せてくれれば万事上手くいっていたんだ!」

(´・ω・`)「うっさいボケ。お前、走り過ぎて干からびる寸前だったじゃねーか。大人しく踏み台になりゃ奴を捕まえれられたんだよ」

文句を言おうと口を尖らせた矢先、教室の扉を開けて長岡とショボンが戻ってきた。
何やら激しく口論している。
あの様子だとミルナは上手く逃げおおせてしまったのか。
  _
( ゚∀゚)「ちょっとした崖のところまでは追い詰めたんだよ。だけど、あの野郎。素手でよじ登って森に逃げちまってさ」

(゚、゚トソン「で、ショボン先生がジョルジュを踏み台にしたと」

(´・ω・`)「あと少して斬撃圏内だったってのに……長岡が潰れやがった。これだから童貞は」
  _
(#゚∀゚)「童貞は関係ないだろ!。って言うかその変な刀はどこから持ってきたんだよ!! なんだZって! だせぇよ!」



49 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:31:13.38 ID:z+8JkyyZO

話によればミルナは山中にある寝床を定期的に移動して動き回っているとのこと。
山狩りをするには人数が足りず、かといって特に誰かが怪我を負わされたというわけでもないので、
『見つけたら老いかける。見失ったら諦める』というサイクルで堂々巡りしているようだった。

誰が読んだか無名の狂人に付けられたミルナという名。
無精髭に載せられたあの強烈な眼力はしばらく忘れられそうにない。



50 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:33:28.68 ID:z+8JkyyZO
(,,-Д-)=3「ふぅ」

今さらながら緊張の糸が切れてドッと疲れが出てしまった。
こんな調子で果たして今夏を乗り切れるのだろうか。
今の俺の癒しはしぃだけだ。
早く彼女と電話したい……。


   ※※   ※※   ※※


Midnight Event...
⇒素直 空

夜風が涼しい屋上。
全ての業務を消化し、帰路へ着こうとする俺を呼び止めたのはクーだった。

身寄りがこの村にないクーの現在の寝床はかつて学校の職員が使っていた宿直室となっている。
台所と浴場が完備されており、寝泊まりするには事欠かない。
現在は誰も使用していないが、意外と綺麗でしっかりした造りなので女性のクーでも安心して住めるのだろう。



51 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:38:12.06 ID:z+8JkyyZO
クーの作った簡単な料理と僅かなアルコールを楽しみ。酔っ払ったと呟く彼女に連れられるまま屋上にやって来て、今に至るわけだ。

川 ゚ -゚)「ん。良い風だ。酔い醒ましに最適じゃないか」

(,,゚Д゚)「晩飯サンキューな。炊事は嫌いじゃないんだが、どうにも俺には料理の才がないらしくて」

川 ゚ -゚)「夜の校舎は流石に雰囲気があり過ぎる。女一人で食べる夕食ほど寂しいものはないだろう」

屋上のフェンスに寄り掛かり、クーはほんのりと桜色に染まった顔を俺に向ける。

(,,゚Д゚)「彼氏に電話でもしてやればいいじゃないか」

川 ゚ -゚)「恋人がいなければその選択肢は選択肢ですらないな」

(,,゚Д゚)「えっ。いないのか?」

川 ゚ -゚)「フリーもフリー、独り身さ。孤独な女にビール缶ってのもなかなか乙だろう」

(,,゚Д゚)「…………」



52 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:39:11.72 ID:z+8JkyyZO
自嘲気味に笑いながらクーは手にしたビール缶に唇を当てる。
酔いを醒ましに来たんじゃなかったのか。

川 ゚ -)"「…………」ア、ナカミ ナクナッタ

(,,゚Д゚)「…………」

川 ゚ -゚)=3「…………」マタ カイダシカ…

(,,゚Д゚)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

いかん。この間は少し辛い。



54 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:40:12.52 ID:z+8JkyyZO
川 ゚ -゚)「なあギコ」

(,,゚Д゚)「んあ?」

川 ゚ -゚)「君は今、恋人はいるのか?」

(,,゚Д゚)「あー……まあ、どうだろうな」

……なんだ。

川 ゚ -゚)「ふぅん。いるのか」

(,,-Д-)「別にいるとは言ってない」

俺は何を言っているんだ。

川 ゚ -゚)「なんだよ。ちゃんと私の顔を見て言ってくれよ」

(;゚Д゚)「い、いいじゃねーか。顔が近いって」



56 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:41:50.67 ID:z+8JkyyZO
何故、俺はこれ程までに心拍数を上げているんだ。

川 ゚ -゚)「ギコの大学は総合大学だろう。文系の女の子と交流はないのか」

(,,゚Д゚)「そっちこそ理工単科大学じゃないか。その気になればハーレムでも作れそうだろ」

何故、俺は彼女の顔を直視できないんだ。

川 ゚ -゚)「草食系……とはよく言ったものだよ。最近の狼ってのは羊が目の前で寝ていても、食指が動かんらしい」

(,,-Д-)「その羊が皮を被った狂犬だって見抜いているんだろ」

川#゚ -゚)「失敬な。せめて狂暴な仔犬と呼べ」

(,,゚Д゚)「突っ込む部分がイマイチずれてるよな」

何故、俺はしぃの存在を彼女にはっきりと伝えないんだ。



57 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:44:51.46 ID:z+8JkyyZO
川 ゚ -゚)「ふん。どうせ私は天涯孤独の男女さ。きっと将来は仕事が恋人になるんだ」

(,,゚Д゚)「お互い様だ悪性酔っ払いめ。もう少し節操ってモンを覚えろよ。美女の泥酔だなんて、世の男が見たら泣くぞ」

川 ゚ -゚)「別に……誰でも彼でも目の前で酔うわけじゃないぞ」

(,,゚Д゚)「へ?」

ヾ川 ゚ -゚)ノ「なんでもなーいよ。さぁて、私は風呂に入って寝るもんね。素面な野郎は帰った帰った!」

心臓がビクリと動く。
自分が自分でないような感覚に襲われる俺の心情を知ってか知らずか、クーは笑いながら俺の背中を叩いて屋上から追いやった。

校舎の玄関口でクーと別れを告げ、雲掛かった月を見ながら夜道を歩く。



58 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:47:17.47 ID:z+8JkyyZO
(;-Д-)「(おかしい。今日の俺はおかしい……俺は……何がしたいんだ……)」

素直 空。
美人で、知的で、男受けの良い女性。

『恋人がいない』

その台詞が粘着質の物体となって俺の脳裏にへばり付く。

馬鹿なことを。
俺には椎名 ゆいという女性がいるじゃないか。
この胸のムカつきは断じて不振から来るものではない。
かつての想い人に出会った動揺なのだ。
もしくはあのミルナとかいう男のせいなのだ。

(,,゚Д゚)「まったく。クーの奴、俺をからかいやがって」

勝手な文句をひとりごちながら自転車のペダルを俺は回し続ける。
月は、相変わらず灰色の雲から顔を見せようとしなかった。


(,,゚Д゚)オトギリソウの散る頃に"繭"のようです ~その四~ 完





59 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/12(土) 23:51:00.02 ID:z+8JkyyZO
な、なんとか終わりました。
支援して下さった方々、本当にありがとうございます。

今回の一件で良く分かりましたが、私の脳みそは学園ラブコメには向いてないようです。
第二部は絶対にどろどろのぐちゃぐちゃな内容にしてやる……

質問がありましたらどうぞ。



63 :◆LLLzw1dMIQ:2009/09/13(日) 00:03:04.53 ID:UVaKyDTAO
では、今日はこの辺りで。
正解率の文句をタイトルに付けるの忘れてましたね……
また次回にお会いしましょう。



64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/13(日) 00:10:02.24 ID:CFnkcHLQP

ばんがってねー



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