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◆ξ゚⊿゚)ξ殺人鬼は微笑むようです 五 其の二 

前の話/インデックスページ/次の話

42 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:04:28.59 ID:izrXzXjq0
 
 
五 其の二





45 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:06:37.16 ID:izrXzXjq0
路麻のおっさんは胴体を横に真っ二つに、伊藤さんは袈裟斬りに殺されていた。

(;^ω^)(何だ?何が目的なんだ?)

こいつは、果たして本当に鬼違いなのか?

(*゚∀゚)「考えても無駄だ、ブーン」

それより、と姉さんは立ち上がる。

(*゚∀゚)「今回の仕事はオレ一人でやる」

(;^ω^)「はあ!?」

何を言っているんだこの人は。
姉さんがどれだけ強いかは知っている。
だがあの二人組ですら敵わなかった相手に一人で挑むなんてのは自殺行為だ。

(*゚∀゚)「半人前が一丁前な事言うじゃねーか?」

うりうりと頭をぐりぐりされる。
だがこれは笑い事じゃない。

ミ,,゚Д゚彡「ブーン」

と、布佐の兄さんが低い声で僕を呼んだ。



46 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:08:45.63 ID:izrXzXjq0
ミ,,゚Д゚彡「分からないのか。こいつは俺も、お前も、足手まといだと言ってるんだ」

(;^ω^)「…………」

……確かに、そうかもしれない。
度々思うことはあった。姉さんが戦い辛そうにしていたのを何度か見た事もある。
その理由はきっと僕だ。いや、正確に言えば姉さんはペアでの戦闘が苦手なのだ。
何故かと問われれば答えは一つ。
誰もが姉さんのレベルに合わないということだ。
僕や布佐の兄さんでも、姉さんの動きを完全に把握することができない。
姉さんには癖もないから余計に合わせ辛い。
と言うか不可能に近いので、僕はほとんど勘で彼女に何時も合わせて動いている。

今回の相手はたった一人の鬼違いだ。
だがそれは今まで相手にしてきたような雑魚共とは一線を画している。
実績は凡そ云百人を殺してきている。まるで戦時中の死神のレベルだ。
実力は機関内でも最高のコンビネーションを見せる路麻のおっさんと伊藤さんを倒す程。

これだけを聞くと、やはり姉さん単騎での殺し合いは無謀に思えるかもしれない。
だが僕は、布佐の兄さんの言葉に納得してしまったのだ。
理由は先にも言ったが、姉さんはペアでの戦闘が不得意なのだ。

まだ僕も姉さんが一人で戦っている姿を見たことは無い。
しかし、邪魔が無くなったのなら、彼女はきっと実力を思う存分発揮できるだろう。

(*゚∀゚)「いいな、ブーン」

(;´ω`)「……分かったお」



47 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:10:54.15 ID:izrXzXjq0
悔しいが、ここは頷く。
姉さんが負けるだなんて思いはしない。だが無事で帰ってくる保証は無い。
不安は当然付きまとった。だが仕事の話となると僕は姉さんの意見に従わざるを得ない。
義姉弟であり、師弟でもあるのだから、彼女の意見は僕にとっては絶対なのだ。

(*゚∀゚)「零時になったら私は動く。布佐とブーンはここで待機。いいな?」

ミ,,゚Д゚彡「了解」

(;´ω`)「了解」

決まったところで、丁度布佐の兄さんの携帯にメールが届いた。

ミ,,゚Д゚彡「今、奴の居場所が特定出来たぞ」

ずいっと携帯を僕たちに見せた。
送り主はケリーとなっている。情報屋だろう。
彼等はそうそう目立てない人間だからよく偽名や渾名を使う。
しかしケリーというセンスは頂けない。

(*゚∀゚)「美歩町……大当たりだな。こりゃ街か……野郎、獲物探してやがるな」

姉さんが舌打ちをする。
犯人は恐らく、次の目的を達成するための被害者を探しているのだろう。
しかし、堂々としすぎじゃないか。



48 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:13:02.81 ID:izrXzXjq0
(*゚∀゚)「木を隠すなら何とやらじゃねえか?まあその中には当然機関の息がかかった連中もいるだろうけど」

奴には絶対の自信がある、そう姉さんは言う。

(*゚∀゚)「こうも堂々としてやがるんだ。顔だって割れてやがるのにも関わらずな。
     むしろ奴らが鬼違いに手を出したら終わりだな。大事な人員が減るだけじゃない、下手したら一般人を巻き込んだりしてな」

まあ、そりゃそうか。
この街には僕と姉さんを除いて超感覚の持ち主は一人もいない。
いくら警官や機関の人が頑張ったところで、最強コンビを倒した鬼違いの前じゃ無力だろう。

(*゚∀゚)「まあお前らは俺が返ってくるまでに寿司でも買って待ってろってこった」

じゃ、オレは武器の点検してくるから。
そうと言って姉さんはリビングの扉を開ける。

(*゚∀゚)「ところでブーン」

( ^ω^)「なんだお?」

(*゚∀゚)「寒くないのか?」

そう言われて僕は自分をよく見た。
腰にタオルを巻いただけで、あとは素肌を晒している。
季節は冬で、暖房がきいた室内ではそう寒いとは感じなかったが、ふと体が思い出したように震えた。

(;^ω^)「早く言ってくれお!うーさむいさむい!」

(*゚∀゚)「肩まで浸かれよー」



49 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:15:11.38 ID:izrXzXjq0
かぽん、なんて音が似合いそうな広い風呂の中で、僕は考える。
何でか知らないけど風呂に入ってるときって一番頭が働くよね。

( ^ω^)「……ふぅ」

先に断るが決して賢者になった訳ではない。

今回の仕事は恐らく、姉さんにとっても一番大きな山だろう。
過去、超感覚者が鬼違い相手に不覚を取ったなんて話はよくあったが……。

さながら、死神とでも呼ぼうか。
相手の実力は計り知れない。
現時点で判明されているのはプロが二人掛かりでも倒せないレベルということくらいか。
後は謎の目的か?
まあ目的なんて知ったところで対処しようは無いのだけども。
ただ上の奴らに報告するための情報の一部にすぎない。

しかし、鬼違いもある種、カテゴリーが存在するようだ。
部類分けをするなら物理的、心理的と言ったところだろうか?

死体から何かを持ち出す、或いは何かを残していく者。
死体から何かを見出す、或いは感じる者。

細かく言えば死体に限っているわけではなく、奴等は殺す前後にも目的が関係してくるそうだ。
が、大きく分ければこの二つになる。



52 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:17:22.61 ID:izrXzXjq0
だが今回の事件。
鬼違いと思わしき奴は、何も無いのだ。
何も残さない、何も取らない。
これだけを見れば、奴が物理的欲求者では無いということが分かる。
では心理的欲求者なのか?
一体、何を求める?

( ∩ω∩)「ふぅ~……」

お湯で顔をごしごしと洗う。
考えても無駄、か。

( ^ω^)「どうなのかお……」

どうせ殺すんだから、知る必要も、理解する必要もないのかもしれない。

兎に角、姉さんだ。
姉さんさえ生きて帰ってくれればそれでいい。
例え相手が尋常離れした強さを持っていようが、超感覚者で、しかも機関最強を誇る姉さんに勝てるものか。


そうだ。
鬼違いに姉さんは負けるはずがないんだ。



54 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:19:31.76 ID:izrXzXjq0
零時になる。
僕と布佐の兄さんは姉さんを送り出すと、家で待機する。

炬燵に蜜柑。もう冬だ。
これが日本の冬のあるべき姿だと言う。
僕はこれが好きだ。なんとも普通だが、しかし大事なものだと教えてくれるような。

ミ,,゚Д゚彡「なあブーン」

( ^ω^)「お?」

二つ目の蜜柑の皮をむいていると、向かいに座る布佐の兄さんが唐突に僕を呼んだ。

ミ,,-Д-彡「今更だが……すまんかった」

そう言って、布佐の兄さんは僕に頭を下げた。
僕は一体、何を言っているのか分からなくて困惑する。

(;^ω^)「兄さん、止めてくれお!大体何がだお?」

例え座りながらでも、僕の命の恩人であり、姉さんの恋人であり、
何より僕の大好きな布佐の兄さんが、頭を下げるなんてことして欲しくなかった。

ミ,,゚Д゚彡「……ずっとな、思ってたんだ」

兄さんは言う。
僕が、兄さんを恨んでいるんじゃないかと、そう言った。



55 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:21:39.79 ID:izrXzXjq0
ミ,, Д 彡「元凶は俺なんだ。俺が何をしてでも、どんな手を使ってでも抗って、意見すれば……
      そうすれば、お前はもしかしたら、今、普通の中学生になっていたかもしれないのに!」

(;^ω^)「違うお!兄さん、僕は貴方に感謝しているんだお!」

一体、誰のおかげで僕は今、こうして生きていられるのか?
それはね、兄さん。貴方と姉さんがいたから。僕を救ってくれたからなんだ。
恨みなんてこれっぽっちも抱いてなんていないんだよ。

貴方達二人のお陰で僕は様々な事を経験できたんだ。
友を知り、家族を知り、勉強を学び、食の楽しみを知り、眠る事の素晴らしさを知った。
そればかりじゃない。数えたら限がない。

貴方達二人が僕の世界を作ってくれたんだ。
そりゃ、少なからず現状を嘆くこともある。
これから先、死ぬまで機関の言いなりになって、鬼違いという部類の人間を殺し続けることは苦痛だ。

だがそれを差し置いても喜びが上回っているんだ。

( ^ω^)「兄さん。ずっと言いそびれていた言葉があるんだお」

僕は兄さんの手を取る。
寒さ故か、はたまた自責の念のためか、彼の手は微かに震えていた。



57 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:23:48.36 ID:izrXzXjq0
( ^ω^)「ありがとう」

ずっと言いたかったんだ。
本当はもっと大きくなって、立派な人間になった時に、この言葉を言う予定だったのだけれども。
けれど今言わずして僕は何時布佐の兄さんに伝えられただろう?

ミ,,;Д;彡「……馬鹿野郎、大人を泣かすんじゃね゙え゙」

それから兄さんはズビズビ泣いた。
鼻を垂らして子供のようにわんわんと。
ずっと悩んでいたのだろう。僕も、兄さんの立場ならそうだったかもしれない。

( ^ω^)「おっおっ。兄さんは優しい人だお」

僕は外に出てきた。
温かい飲み物を買うためだ。
作戦行動中――待機だが――にこんなことしてちゃいけないんだけども。
けどまあ、布佐の兄さんを落ち着かせるためにも、何か温かい飲み物でも買って来てやろう。

ざっくざっくと雪の積もった道を行く。
今日は酷く雪が降っていた。
零時を過ぎた片田舎の街は、静かで、雪のコントラストが鮮やかに世界を染め上げている。



58 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:25:56.87 ID:izrXzXjq0
( ^ω^)(慣れない地の文ばかりで窮屈だおね……)

ともかく綺麗だったのだ。
街灯の光に真っ白な雪の粒が輝いて、僕の歩いてきた足跡の上にまた新たな雪の道を描いていく。

ざっくざっくと歩く。
酷く静かだ。冬は空気が乾燥しているから、音が伝わりやすいと言う。
真っ暗な世界に、僕の足音が響くのみ。
しんしんと雪は舞い、真っ黒な世界を白く染め上げていく――

ギン。

( ^ω^)

足を止める。

( ^ω^)(……近くだったのかお)

聴覚を集中し、音を集めた。
微かにだが金属のぶつかりあう音が聞こえる。

( ^ω^)「姉さん……」

音のする方角を見やった。
真っ黒だった。真夜中だから当然だろう。
けれども――

(;^ω^)「……見に、行くかお」

何故だかその道の先は無いように思えた。



60 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:28:20.32 ID:D3FPkHh90
知らずうちに足は速まっていた。
僕の吐く息が白くなり、体は火照る。
何を急いでいるのだろうか。
というか、飲み物買って帰る予定だったのだけれども。

(;^ω^)「こっちかお」

大通りを抜け、入り組んだ路地に入る。
音のする場所はもう少し先だ。

何故だか僕の胸は苦しかった。
走っているから?違う。あまり慣れない雪が降っているから?違う。

何度か経験したことのある苦しさだ。
緊張感、緊迫感。そして一番大きな不安感。
一体、何を心配しているのだろう?
あの姉さんが負ける姿を想像できるのか?いいやできない。
なら急ぐ必要はないし、そもそも現場に向かう必要もない。
早いところ温かい飲み物でも買って家に戻れ。
さもないと、布佐の兄さんは泣き疲れてるだろうし、仕事が終わった後姉さんに怒られるぞ。

一際大きな音がした。
間違いなく、どちらかが獲物を手放した。



62 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:30:28.84 ID:D3FPkHh90
(;^ω^)「!!」

駆けだす。嫌な予感がするのだ。
どうしても頭の中に浮かんだ映像が離れやしない。

(;^ω^)「畜生、畜生……!」

頼むから……お願いだから勘違いのままでいさせてくれ。
とんだ杞憂だったと笑わせてくれ。
姉さん、お願いだからどうか。

(;^ω^)「姉 さ ん !!」

細い裏路地に出る。
その瞬間、僕の顔に血がかかった。



64 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:32:38.85 ID:D3FPkHh90
( ^ω^)「――は?」

男が立っている。そこには姉さんも立っている。

(*; ∀ )「いででで……」

まるで抱き合っているようだった。
でも違う。
姉さんは男に寄り掛かっている。
背中から鋭い日本刀が突き出ていた。


( ´∀`)「中々に、強かったモナ」

男は突き立てていたのだ。その右手に持つ日本刀を姉さんの腹に。
姉さんの右腕は、自らの後ろ腰に手を伸ばしたあたりで止まっていた。
ふと僕が一歩踏み込むと、硬い物を踏みつける。
包丁――牛刀――だった。
きっと、姉さんは隠し持っていた包丁を取ろうとした隙を突かれて突き刺されたのだろう。

( ^ω^)「おま、おい」

だから僕は駆けた。
あの時と同じだ。機関に初めて赴いた時と。
奴は姉さんを傷つけた。だから僕はこいつを殺す。



66 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:34:47.46 ID:D3FPkHh90
( ゚ω゚)「何してんだおおおおおお!!」

( ´∀`)「!」

僕の右足は奴が咄嗟に引き抜いた脇差の峰に受けられる。

( ´∀`)「真打モナ?」

男は笑った。邪悪な笑みだ。
これほど歪んだ奴を僕は知らない。
世に蔓延る悪者達や鬼違い達だって、こいつを前にしたら逃げだすだろう。
僕も内心、この男の放つ殺気に吐き気がした。
今まで味わったことの無いほど強烈で醜悪で下劣だった。
だが僕は引かない。

( ゚ω゚)「っっおお!!」

左足を軸に奴の顔に目がけてバックブローを叩きこもうとする。

( ´∀`)「つまらんモナ」

奴は僕の拳を体制を低くしてかわすと、姉さんに突き刺さっていた日本刀を引き抜き、僕を下から斜めに大きく斬った。

( ゚ω゚)「――――」



67 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:36:56.08 ID:D3FPkHh90
想像を絶する痛みに呻き、方膝をつく。
しかし傷はそこまで深くはない。幸いにも内臓に達することも無かったようだ。
が、あまりにも鋭い痛みだ。これが斬られるということなのか。
傷口は火が噴きでるように熱を持ち、脈動するごとに痛みが全身へと駆け巡っていく。
こんな痛みを、僕は今まで殺してきた奴らに与えていたのか?

(; ω )「お、おぉ……」

だが今倒れるわけにはいかない。
姉さんは倒れている。早く助けなければ……あの傷じゃ長くは持たない。

( ´∀`)「おお!タフだモナね!」

僕は壁に手を付きながらも、よろよろと立ち上がった。
右拳を握る。上手く力が入らず、今力を入れているのか抜いているのか分からなかった。

(; ω )「師匠がスパルタでお、ちょっとやそっとじゃ僕は死なないお」

スパルタにはスパルタだったが、斬られたことはないな。
痛みにも色々と種類があるんだ。今味わっている痛みは間違いなく生涯で最高を誇るだろうな。

( ´∀`)「でも、俺もう疲れてるんだモナ……さっさとこの女殺したいんだモナ」

どうする?と男は問う。
決まってるだろうが。

(# ω )「ぶっ殺す!!」



69 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:39:04.79 ID:D3FPkHh90
ザクッ。

(; ω゚)「――え?」

一歩。僕が踏み出した。
たったそれだけの動作だった。

( ´∀`)「あー……いい音」

まるで奴は、始めから僕がそこに足を運ぶことを分かっていたかのように。
自然に、流れるように、当然のように、日本刀を突き出した。
そしてそれは僕の足の甲を貫通した。

再び鋭い痛みと熱が襲う。
今度こそ僕はうずくまった。
奴は日本刀を引き抜く。血が噴きでる。

死ぬ。僕は、死んでしまう。
無理だ、こいつには勝てない。
どうなっているんだ、何が起きているんだ。
分からない。こいつは違う、姉さんとも、布佐の兄さんとも、今迄対峙してきたどんな奴らとも違う。
強すぎる。

( ´∀`)「知ってるモナ?人の頭ってボーリング球くらいの重さなんだモナ」

奴は僕を見下ろしそう言った。
首に刃が宛がわれる。
軽く触れただけで首の薄皮がピッと斬れた。



71 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:42:10.32 ID:D3FPkHh90
( ´∀`)「落ちたとき、結構派手な音がするんだモナー」

試す?
そう男は言う。

試すも何も、僕に決定権などありはしないだろうに。
だってそうだろう。僕にはもう何も無い。
武器も無ければ、体力も無い。
傷だらけで、力も残っていない。
抵抗のしようがないのだ。だからもう、全ての決定権は――僕の生死はこいつが握っている。

「たまらねえな……そいつはよ」

( ´∀`)「モナ……」

高い声。女性の声。
僕は顔を上げ、男は振り返った。

(*;゚∀゚)「そいつはよお……はあ……残念ながら殺させるわけにはいかねーのよ」

姉さんがふらつきながらも立ち上がる。
その両手には大小様々な包丁が指の合間に挟まっている。

( ´∀`)「なら、どうするモナ?」

静寂。そして張り詰めた緊張感。



74 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:44:48.13 ID:D3FPkHh90
(#゚∀゚)「――こうするんだよ!!」

引き金を引いたのは姉さんだった。
その両手に持つ数十本の包丁を、一斉に男に向けて投げつけた。

( ´∀゚)「モナ、モナモナモナモナ……」

そして男は大きく口を釣り上げて笑う。

(  ゚∀゚)「――アヒャヒャヒャアアアアア!!」

男が、包丁の群に――姉さんに目がけて駈け出した。
一本一本、向かってくる包丁を正確に日本刀で弾き落としていく。
僕でさえできるか分からない芸当を、男はやってのけていた。
その時点でもう、僕は奴には敵わないことが分かる。

最後の一本。
包丁――ペティナイフ――が、男の顔面に目がけて迫っていた。
姉さんとの距離も後数歩と言うところだ。

(  ゚∀゚)「ヒャアア!!」

それを弾く。
もう、奴に対する弾幕は無い。
姉さんは完全に無防備になった。
が。



75 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:46:57.77 ID:D3FPkHh90
(#゚∀゚)「甘いぜ!!」

最後に隠し持っていたと思われるペティナイフを、超近距離で男の顔面に向けて投げつけた。
男は振り上げていた日本刀を急いで振り下ろす。
不味い、まさかあれすら避けるというのか?

(  ゚∀゚)「アヒャアア!!」

――弾いた。
完全に、防ぎきったのだ、この男は。

そう思った瞬間だ。
何かが突き刺さる音が僕に耳に伝う。
これは刃物が肉に突き刺さった時の独特な音。

(; ω゚)「!?」

(  ゚∀゚)「……アヒャア」

男の左肩に、避けられたと思われるペティナイフが突き刺さっていた。
そんな、馬鹿な。奴は確かにあれを弾き飛ばしたはず……。

(; ω゚)(――そうか!)

姉さんが得意とする陰刀だ。飛刀の際、刃物を陰にもう一本の刃物を潜ませ同時に投げ、
恰も一本であるように思わせる技。
流石にあれは避けられなかったのだろう。男も少々驚いている。



77 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:49:06.38 ID:D3FPkHh90
だが、やはりこの男は甘くは無かった。
既に二人の距離は密着していた。

(  ゚∀゚)「――勿体無え」

脇差を抜き、それを目にも止まらぬ速さで姉さんに突き刺す。
果たして満身創痍の姉さんにそれを避けることができるだろうか?
さっきの攻撃が最後の意地だったのだろう、最早立つすら限界だったのだろう。
姉さんの腹にそれは深く突き刺さる。また新たなトンネルが作られたのだ。

(*; ∀ )「ぐぅっ」

ぐらっと姉さんが揺れる。

(  ゚∀゚)「いい女だったぜ」

そして止めの一撃が姉さんに叩き込まれた。
大きく袈裟に斬る。姉さんの左肩が、バックリと割けた。

( ゚ω゚)「ねえさああああああああああああああああああんん!!」



79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/06(火) 02:49:54.49 ID:DxhqEps/0
つー・・・



80 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:51:15.23 ID:D3FPkHh90
鮮血と、突き刺さっていた脇差が宙を舞う。
男はそれを得意げに取ると、日本刀共々鞘へと仕舞い込んだ。
終わったのだ。殺し合いは、今終わったのだ。
倒れ伏した姉さんに駆け寄る。

( ;ω;)「姉さん!!姉さん!!」

この、野郎。
許さない、絶対にだ。
殺してやる、殺してやるぞ、この鬼違いが!

だが体は言う事を聞かなかった。僕も既に限界だったのだろう。
そもそもまだ中学生だ。いくら戦闘に特化した感覚を持っていようとも、精神も肉体も子供なのだ。
姉さんを抱きかかえたまま僕は男を睨みつける。

(  ゚∀゚)「……へえ」

男は僕を見つめる。
まるで面白いおもちゃを見つけた子供のように興味津津に。
だがふと思い出したように表情を無にすると、男は背を向ける。



82 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:53:24.47 ID:D3FPkHh90
(  ゚∀゚)「俺は鬼違い♪お前らはそう呼ぶ♪
      殺しは喜び♪生まれながらに殺人鬼♪
      殺す事は生きる事♪生きる事は殺す事♪
      永遠に殺す♪気持ち好いから殺そう♪
      生まれながらに殺人鬼♪生まれながらに鬼違い♪」

唐突に奴は歌い出す。

(  ゚∀゚)「なあ、少年よ。お前もそれなりに殺してきただろうが、俺も大分殺してきたよ。
      俺が何時から殺してきたかって?生まれてすぐさ。それが俺に物心がついた瞬間さ」

何だ、何を言っているんだ。

(  ゚∀゚)「常識なんかに頼るなよ?今目の前にある物が真実なんだぜ。
      俺は殺すために生きているのさ。そのためだけに生まれてきたんだ」

静寂が世界を支配する。
これは、この男は何なんだ、いったい、なんなんだ。



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/06(火) 02:54:33.74 ID:2i1B2outP
何という熱い展開



86 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:55:32.79 ID:D3FPkHh90
だが僕は漸くこの男の目的を知ることとなる。


(  ゚∀゚)「……どっかにいねーのかな。俺より強い奴は」


そんな呟きが聞こえた。
そう、きっと、これが奴の目的。


(  ゚∀゚)「……次は無い」

その一言が僕を呑み込む。
次とは何時だ。
僕は何時、お前を殺せるんだ!



87 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:57:41.16 ID:D3FPkHh90
雪が降っていた。
その年は、とても寒くて、とても辛くて。

( ;ω;)「姉さん!姉さん……!」

息も絶え絶えな姉さんの名を呼ぶ。

(;*-∀゚)「泣くんじゃねえ……ブーン……そんなんでこれから先、どうする気だ」

姉さんはそう言う。

( ;ω;)「待ってくれお!死なないでくれお!お願いだから!」

僕は我儘を言う。

(;*-∀゚)「聞け、ブーン」

僕の名を呼ぶ。

( ;ω;)「姉さん!」

僕は名を呼ぶ。

(;*-∀゚)「聞くんだ!」

姉さんの大きな声が響いた。



89 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 02:59:49.76 ID:D3FPkHh90
(;*-∀゚)「オレはもう駄目だ。ここに置いていけ。お前は布佐の野郎に、この事を伝えるんだ。分かったか?」

そんな事を言う。

( ;ω;)「そんな事言わないでくれお!」

僕は我儘を言う。

(;*-∀゚)「これは命令だ」

そんな事を言う。

( ;ω;)「嫌だ嫌だ嫌だ!絶対に!絶対に姉さんを連れて帰るお!布佐の兄さんだって待ってるお!」

強く抱きしめる。

(;*-∀゚)「っ……あー……この馬鹿弟子が……わがまま……言いやがって……」

声が小さくなる。

( ;ω;)「姉さん……」

僕は名を呼ぶ。

(;*-∀゚)「……強くなれ、ブーン。お前は、オレの後釜なんだ。オレの弟子なんだ。オレみたいに死ぬんじゃねえぞ」

そんな事を言う。



92 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 03:01:58.37 ID:D3FPkHh90
(;* ∀ )「ああ……畜生……わりいなー……布佐……先、逝く、わ……」

そんな事を言う。

姉さん、さあ次の言葉を。会話をしよう。
こんなにも二人してボロボロだけども、生きていることを喜びあおう。


……ずっと続くと思っていた。
当たり前の毎日。姉さんの居る生活。
当たり前になるはずだった。
姉さんの作ってくれるご飯、優しい笑顔。

これからもずっと一緒に、ずっと二人で。
そう思っていたのだけれども。
案外あっけなくて、人ってこうも簡単に死ぬんだって。
そう思った。

ねえ、姉さん。
貴女にも、ずっと言いたかった言葉があるんだ。
「ありがとう」って、言った事無いだろう?
ずっと気恥かしくて言えなかったんだ。
ねえ、聞いてくれよ。声を、僕を、聞いてくれよ。

目を開けて、僕を見て。
僕は此処だ。今、確かに此処にいるんだよ。
生きているんだ。僕は意味を持ったよ。



95 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 03:04:06.97 ID:D3FPkHh90
ねえ、姉さん。
ずっと幸せだったのに。
貴女のお陰で世界に意味が生まれて、僕は自分の存在をようやく認められたのに。

まだ言えなかったこともあるのに。
やれなかったこともあるのに。
それでも死んでしまうのか。

また呼んでくれよ。ブーンって呼んでくれ。
僕の名前を呼んでくれ。その優しい声で僕の名前を。


ざくり、ざくりと雪を踏みしめる音が響く。
僕は手元に落ちていた包丁を無意識のうちに手に取った。

(  ω )「殺されたいのかお」

近づいてきた奴の喉元に包丁を突きつける。
今の僕は何をするか分かったもんじゃないぞ。
例え一般人だろうが、何だろうが、殺してしまうかもしれない。

川 ゚ -゚)「殺されるのも悪くは無いな」

女の子だった。僕と同い年くらいの、酷く痩せ細った。



97 :◆io1Iv96tBU:2009/10/06(火) 03:06:21.34 ID:D3FPkHh90
殺されるのも悪くない、だと?
こいつ、何て事を言いやがる。

女の子の目を見る。
酷く濁っていた。生気を感じられない、酷くあやふやな眼光。
まるで人形のようで、歪に思えた。

川 ゚ -゚)「だが、頼むよ」

酷く寂しそうな奴だなと、そう、ぼんやりと思った。
まるで、昔の僕のようだった。

生きていようが死んでいようが構わないといった感じだ。
姉さんの亡骸を抱きしめる。胸が痛んだ。

川 ゚ -゚)「この死体を、見せてくれ」

(  ω )「お前は……」

理解していたんだ。その時既に、彼女――空が鬼違いであることを。
だが僕は彼女を殺すことはしなかった。

ああ、そうだね、姉さん。
これも運命なんだろう。



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