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◆/ ゚、。 /『The Rainmaker and“Lemegeton”』のようです…… 第一夜「錬金術師は神に祈らない」

前の話/インデックスページ/次の話

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:10:15.92 ID:ZfovguZj0
――第一夜――
「錬金術師は神に祈らない」


後世に『鈴木=フラメス=イオリエ』の半生を伝えようと思う場合、一体どこから語り始めればよいのだろう?
御伽噺の主人公は往々にして人生の途中に転換点を向かえ、そこから話が展開していく。
――しかし、イオに限ってはこれがないのだ。

いや厳密に言えばないわけではない。
例えばあの雨が降った日のことだ。確実に彼は変わった。
…しかしながら、あの時あの場所から話を始めると、どうにも折り合いが悪い気がする。
分かりづらいのだ。壊滅的なまでに。

ここは……そうだな、彼が今より少し若かった頃から始めよう。
そして段々と思い出していくことにしよう。彼のエピソードを。
とりあえず今日は高校を卒業し、大学に通いながらも、様々な活動を始めた頃。彼が最も活発だった頃の話。

/ ^、。 /

――ちょうどその時、彼は歩いていた。いつも通りの柔和で曖昧な笑みを浮かべて。
依頼者の元に。
まずは、FOX隊員としての初任務の話だ。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:13:14.52 ID:ZfovguZj0
――この国に住んでいる者なら例外なく、『特務機関FOX』というものを知っている。
少し乱暴な警察だと説明できるその組織。日本で言えば警備局になるだろうか。
超能力も魔法もサイボーグも化物も何でもありの特務機関。

そこにイオは所属していた。

/ ^、。 /「すいません。社長に会いたいんですけど」

「鈴木様ですね。お待ちしておりました。右側の社員用エレベーターをお使いください」

/ ^、。 /「ありがとうございます」

近年成長してきた多角的企業の、清潔感溢れるロビーでの会話だ。
厚化粧気味の女性に丁寧に頭を下げる彼。このお話の主人公、イオである。
控えめな私服に携えた傘。人の良さそうで、どこにでもいそうな青年。当時は眼鏡をかけていなかった。

/ ゚、。 /「…えっと、何階だったかな…」

大き目のエレベーターに入り込み、悩む。
やがて11階だと思い出した彼はそのボタンを押した。
初任務ではあるが緊張はない。しいて言えば、低血圧気味で調子が悪いだけである。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:16:14.82 ID:ZfovguZj0
ゆっくりと鉄の扉が開く。
どうやら、この11階。社長室のみのようだ。
靴越しでも伝わる高級感を楽しみながらイオは進む。
立ち止まったのは大きな木の扉の前。二度ノックして返事を待つ。

「おーう。入ってこーい」

/ ^、。 /「失礼します」

気さくそうな声に導かれ、部屋に入る。窓からの光が心地良い。
目の前の机には、親しみやすい印象を与える角刈りの、着物を着た男。社長だろう。
隣にはスーツの男が控えている。秘書だろうか。

<_プー゚)フ「初任務だって?大変だなー」

/ ゚、。 /「自分のような若輩者が護衛では不安でしょうか?」

<_フ^ー^)フ「いやいや。面白そうだ」

この会社の社長、エクストは下馬評通り器の大きな人物らしい。
命がかかっているというのに「面白そうだ」。普通の人間にはまずできない発言。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:19:14.89 ID:ZfovguZj0
( ゚д゚ ) 「…社長。少しは自分の身を――」

<_フ^ー^)フ「分かってる分かってる」

釘を刺そうとした秘書兼ボディーガードのミルナ。それを遮る。
…どうやら、このようなやり取りはいつものことらしい。

<_プー゚)フ「とりあえず名刺交換でもする?」

/ ^、。 /「喜んでお受けします」

会釈を交えながら、主要な個人情報が記された紙を交換。
エクストの後はミルナだ。事前に資料は貰っているのだが、礼儀として。
一通りの通過儀礼のようなものが済んだところで。

/ ゚、。 /「…そろそろ仕事の話にでも」

<_プー゚)フ「ああ、そうだったそうだった」

手を打つ古典的な動作。
「忘れていたのか」と突っ込みそうになるが、ここは堪えた。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:22:16.93 ID:ZfovguZj0
/ ゚、。 /「…脅迫状、と聞きましたが」

( -д-) 「ああ。そうだ」

<_プー゚)フ「こんなものが来るぐらいだから、俺も一流になってきたってことかな?」

引き出しから一枚の紙を取り出し無造作に放る。
特に捻りもない脅し文句がそこには書かれていた。雑誌を切り抜いたものか、ご丁寧に全ての漢字にルビがふってある。
それに一度だけ目を落とすエクスト。同じく紙を見たイオもクスリと笑った。

<_フ^ー^)フ「…『パーティーやめろ』って言われてやめるほど、素直じゃないんだよなぁ、俺」

ニカッ、と笑い一言。
「俺、そういう顔してるだろ?」
表情を見る限りは、土方の兄ちゃんのような爽やかで泥臭い笑顔。
しかし、彼もこのような会社の社長だ。いわゆる『社会の闇』も聞き及んでいるのだろう。

…そういう人間が往々にして『おかしな笑顔』をすることを、イオはよく知っている。
「実感している」と言い換えた方が正しいか。

( ゚д゚ )「…それで、護衛を頼みたいというわけだ」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:25:16.01 ID:ZfovguZj0
/ -、- /「自分のような未熟者でよければ、喜んで」

妙に堅苦しい言葉遣いと共に、仰々しく礼をする。
大事な場面でこのようになるのは彼の癖だ。悪い癖ではなく、どちらかと言えば良い癖なのだが。

<_プー゚)フ「…ま、よろしく頼むよ新人さん」

差し出された手が示す意味。それを理解するのにしばし動きが止まる。
今は素手なので極力他人の腕には触れたくない。

…何故かと言えば自分の安全の為だ。
握手からそのまま引き寄せられれば銃やナイフ等は容易に当たる。現代のヤクザがよく使う手口。
それよか、相手が『電気』を操る能力者だった場合。『氷』の場合。抵抗すらできずにイオは死ぬだろう。

…想像すればキリがない。
イオは普通の人間だ。錬金術師といえど、この程度の警戒は普通だろう。
しかし。

/ ^、。 /「…はい」

手をしっかりと握り返す。
――彼は、割と『良い人間』だったのだ。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:28:21.53 ID:ZfovguZj0
……………


(・∀ ・) 「どうだったかな。初任務は」

/ ゚、。 /「そこそこ、ってとこです」

直属の上司の問いに軽く答え、控えめにソファーに腰を下ろす。
七研――国立第七特殊科学研究所の愛称である――の所長室での会話。眼前にいるのはここの所長だ。
ただでさえ人の良さそうな印象を受ける顔をより一層笑顔にし、イオは言う。

/ ^、。 /「簡単そうな任務で良かったです」

(-∀ -) 「…油断は禁物だよ。もし失敗でもすれば首が飛ぶ。主に私の首が」

/ ^、。 /「了解してます」

よく手入れされた繊細な指が自らの首を撫でる。
コミカルな動きから察するに、プレッシャーをかけているというよりも、冗談を言うニュアンスが強いようだ。
それだけ信頼されているということだろうか。

この高校を卒業して間もない、どこにでもいそうな青年が。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:31:15.46 ID:ZfovguZj0
(・∀ ・) 「期待してるよ、特待生君」

/ ^、。 /「ハハハ…」

――そうなのだ。
イオはただのFOX隊員では決してない。
普通のプロセスでは軍事学校を卒業しなければならないのだが、彼は例外であった。

彼は『特待生』なのだ。
特務機関の特待生制度により特別な試験をパスした人間。それが『鈴木=フラメス=イオリエ』である。
しかも、今年唯一の。現在は第11独立機械化混成部隊の一員になっている。

そんな期待のホープのイオ。
苦笑いしながらも立ち上がる。
右手を左胸の前で握った。深く、重々しく、荘厳に。

/ -、- /「…此度の任務に全力を尽くすことを誓います。身体中に流れる血と、この名に懸けて」

丁寧な礼をする。
古びた言葉遣いで誓いの言葉を。
いくら時が流れようとも、こういうところだけは変わらないのだった。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:34:22.78 ID:ZfovguZj0
……………


某日。ある高級ホテルでパーティーは行われた。
エクストの会社の新たなビル。その落成記念らしい。

政界の関係者や有名企業の重役等も来ているところを見ると彼の会社は中々評判のようだ。
多角的な企業なのでパイプの多いのだろう、と適当に結論付ける。
異常なまでに黒服の人間が配置されている。見る限り、半分はFOX隊員だ。
…で、イオはと言えば。

/ ^、。 /「…あぁ、このマリネ凄く美味しい。絶対後で作り方聞きに行こうっと」

立食中だった。護衛なのに。
のんびりとサーモンに舌鼓を打っている。
どうやら彼の中では、上司の首<依頼者の命<目の前の料理、らしい。

(、-#トソン プルプル……

――そんな穏やかそうな青年の後方。
別件で来ている別働隊の隊員が、「恥さらしめ」と言わんばかりに睨んできているが彼は気づかない。
…というか、ガン無視している。いい根性してる。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:37:16.49 ID:ZfovguZj0
その時だった。
未成年にも関わらず赤ワインを堪能していた彼に、話しかける男が。

「…あれ、イオさんじゃないですか」

/ ゚、。 /「?」

(´・ω・`)「どうも。お久しぶりです」

それは高貴な面立ちの青年だった。
いかにも高そうな服装と、輝く銀髪。どことなく優雅な立ち振る舞い。
…イオの記憶の中に該当する人間は一人しかいない。

/ ゚、。 /「…あ、佐藤君」

(´・ω・`)「ショボンです。訳の分からない間違いやめてください」

『ショボンヌ=S=ハイドレード』というイオの友人だ。
VIP国の近隣の王国の王子である。今日の警備が物々しいのは彼のせいか、と心のうちで納得。

…実は事前に貰った資料にはちゃんと明記してあったのだが……
イオは時間の無駄だと思い読み飛ばしていたのだ。プロ意識のカケラもない。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:40:15.81 ID:ZfovguZj0
(´・ω・`)「イオさんもお仕事ですか?」

/ ^、。 /「まーね。傘持ち込めなくて大変だよ」

四六時中持ち歩いている大きな傘も、流石にこの状況では携帯できない。
装備も最低限――FOXから支給されたのは銃一丁と防弾チョッキのみ――である。正直言って心許ない。
…もし目の前の青年を死なせることになれば間違いなく国際問題であるのに。

/ ゚、。 /「(…あれ?じゃあなんで僕が?)」

FOX内でもここ最近は、よく分からない案件続きで人員不足と聞いていたが……
いくらなんでも新入りのイオを護衛に抜擢するのは好ましいとは思えない。重要度の低いエクストと言えども。
何かありそうだな。
…そんな考えが頭を過ぎる。

<_フ^ー^)フ「よう!お二人さん!」

真面目に黙考を始めた彼と、隣の王子。
カラオケの待ち合わせのような軽い調子で話しかけてきたのは主催者その人だった。
「堅苦しいのは苦手です」と顔に書いてあるような人間だ。大方、接待を上手いこと抜け出してきたのだろう。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:43:16.70 ID:ZfovguZj0
<_プー゚)フ「精一杯のもてなしのつもりだけど、王子様にはこれぐらいじゃもの足りないかな?」

(´-ω-`)「…いえ。歓迎というのはお金ではなく込めた気持ちが大事だと」

さもすれば、挑発にでも取られかねないエクストの言葉。
全く嫌味が感じられないのは彼の人柄の所為だろうか。人に好かれる才能、などというものがあるとすれば、きっとこういうものだ。
対し、真面目な顔で聞いてる方が恥ずかしくなる台詞を言うのは王子の仕事なのだろうか。
…そんなことを思いイオは少し含み笑いを。

/ ^、。 /「(どちらも僕にはないものだ)」

単純な笑いと、愛想と自嘲を混ぜこぜにした笑みだった。
『自分は特別な人間では決してない』と、とうの昔に気づいた彼。尊敬できるものは素直に尊敬するようにしている。
そのようなことができるのが、喜ばしいのか哀しいのか、本人でもよく分からないのだが。

/ ゚、。 /「…あ、」

――唐突に、声が漏れる。
「どうした?」とのエクストの問い。

/ ゚、。 /「いや、大したことじゃないんですけど」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:46:16.19 ID:ZfovguZj0
前置きをする。
そして軽く右上に視線を送り、

/ ゚、。 /「…もう来ますよ?」

<_プー゚)フ「ん?一体何が――」

謎ワードに対し、エクストが質問しようとした時だった。
思い切り近づいてきた頭を押さえつけるイオ。ほぼ同時に右手でショボンを突き飛ばす。
次の瞬間。


ガシャァアァアン!!


――上空より、ガラスが降り注いだ。
続いて連続した発砲音。黒い三つの点は彼等がいた場所より2メートル以上離れている。

/ ゚、。 /「ノーコンめ」

呟きながら手近なテーブルをひっくり返し、盾代わりに。
上に乗っていた食材は既に食べた後だ。惜しくはない。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:49:16.23 ID:ZfovguZj0
(#゚д゚ )「まったく……ッ!」

スーツ姿の秘書――ミルナが、滑り込むようにその場へ。
頭上で右手を大きく回転させている。手の先には布の両端に紐を付けたようなものが。
片方の紐を手首に縛られ、もう片方は同じ手に握られていた。

(#゚д゚ )「だぁ、っらァ!!」

ちょうど割れたガラスと身体が一直線になったところで紐を離す。
何かが――具体的に言えば10センチ程度の小さな石ころが――発射された。
吸い込まれるように外へ飛び出していく。…耳の良いものならば、石が当たりスコープが砕けた音を聞いただろう。

/ ^、。 /「(『印字撃ち』ね…。本当に忍者みたいな人だなー)」

賞賛するように口笛を鳴らす。
日本の戦国時代や安保闘争(もっともその時は火炎瓶などだったが)などでも使われた、ローコストな飛び道具。
…しかし、この現代でそれを使うのは物好き通り過ぎて酔狂でしかない。

/ ゚、。 /「…さて、と」

一通り安全が確保できたのを確認。
カーペットを蹴り飛ばし、恐ろしいまでの加速を見せ付けながら出口に向かう。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:52:09.41 ID:FC/6o+j/O
ふむふむ、支援


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:52:16.22 ID:ZfovguZj0
/ ゚、。 /「自分が追いまーす」

(゚、゚;トソン「え……あ、ちょっと!!」

通り過ぎざまに呟く。かなり軽いノリだ。
部署は違えど、一応相手は先輩。あまり推奨できた行為ではない。

/ ゚、。 /「(…出口はごった返してるな。じゃ――)」

会場の隅に隠しておいた、大きな群青色の傘を拾う。
そのままそれで近くの窓を叩き割る。再び会場に悲鳴が響く。
悪いな、とは思うのだが、このイオ典型的な「目的の為に手段を選ばない人間」なのだ。そんな罪悪感二秒で忘却。

/ ゚、。 /「(…あ。護衛対象置いてきちゃった)」

少し離れたビルの屋外階段を駆け上がりながら、今更ながら。
始末書ものだが、狙撃犯を捕まえれば帳消しになるだろうと勝手に決め付け……いや、希望的観測を。

/ ゚、。 /

軽快に上るイオに迷いはない。
資料は読まないものの、あらかじめ狙撃場所の目星はつけていたのだった。


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:55:18.26 ID:ZfovguZj0
――屋上。
月下、もぞもぞと動く人影に小銃を向ける。
相手とは結構な距離がある。射撃は得意ではないので出来れば使いたくはない。

(;'A`)「――ッ」

立ち上がりながら同じく銃を向けてきたのは、小柄な貧相な顔をした男だった。
…イオより少し下ぐらいだろうか。それとも同じぐらいだろうか。
親近感が沸いてしまい銃をしまう。

/ ^、。 /「…こんばんは」

(;'A`)「くっ、くるんじゃねぇ!!」

震える手で標準を合わせる。
そこまで震えられると暴発しそうで逆に恐い。

/ ^、。 /「………」

その程度の脅威など脅威にさえならないと言外に示すよう、のんびりと右手に持った試験管を弄び始める。
やがて、ペン回しのようにクルクルと回し出した。
フェイクドソニックという技だ。その曲芸をペン回しとするのならば。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:58:17.93 ID:ZfovguZj0
(;'A`)「なんだよコイツ……」

眼前の、自分と同じぐらいの年齢の青年を前に、男は悩む。
さっさと撃って逃げればいいのだが、どうにもやりづらいのだ。
独特の雰囲気が、柔和な笑みが、その他諸々が。

――本当に、FOX隊員にあるまじき『良い人』のような気がして。

/ ^、。 /「…フフ。他の人が来ちゃいますよ」

回転の仕方が変わる。
スナップで試験管を弾き、人差し指の後ろを時計回りに一回転させる。
次は、指でつまむ様に持った状態から短いほうを指の間をくぐらせるように動かしていく。
前者がバックアラウンドで、後者がインフィニティというペン回しでは代表的な技だ。

/ ゚、。 /「…あ、」

試験管が静止する。
ビクッと震えた男に微笑み、こんな一言を。

/ ^、。 /「今日、ワタナベちゃんのラジオの日でした」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:01:21.10 ID:ZfovguZj0
――瞬間。
試験管が上空へ放り投げられた。

(;'A`)「(…陽動かッ!!)」

上に向きかけた視線を無理矢理に引き戻す。
対し、イオは好きなラジオ番組が聞きたい、などという馬鹿な理由が原動力とは思えないぐらいの勢いで身を屈め疾走する。
咄嗟に発砲するも、

/ ゚、。 /「…よいしょ」

手首を回すように、最小限の動きで投げられた新たな試験管が銃を凍りつかせる。
もはや役立たずとなった現代兵器を捨てる。

(;'A`)「ッッ!」

素人ではないということか。
袖口に仕込んでいた、手の平に収まる暗殺用拳銃を使おうとするも、

/ ^、。 /「切り札を複数用意しておく姿勢は素晴らしいと思います」

手を押さえつけられ件の切り札を弾き飛ばされる。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:04:16.81 ID:ZfovguZj0
手首を打たれた痛みに耐えながら、脚払いをかける男。
バックステップで難なくかわすイオ。

/ ゚、。 /「っと」

そのまま、体当たりを。
よろめきながらも振るわれた右手。それをさらにかわし、左手に携えていた傘で繰り付けて突いて打つ。
男が知るはずもなかったが「霞」という杖道の技である。
先輩よりは上手くないまでも、そこそこだったんじゃないかと自画自賛。心の中で。

(;'A`)「くぅ……」

なんとか逃げ道を探そうとする。
勝てない、と判断した為だ。賢明と言えるだろう。

/ ^、。 /「………」

イオは追撃するでもなく、その様子を眺めていた。
人の良さそうな顔立ちを笑顔にして。ニコニコと楽しそうに。


――まるで、もう勝負はついたと言わんばかりに。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:07:16.78 ID:ZfovguZj0
直後のことだった。
男のすぐ後ろから、カシャンという小さな音が響いた。

(;'A`)「やべぇ――」

口を覆うも時既に遅し。
音の発生源――つまり、最初に上空へ投げられた試験管。それから無色の煙が立ち上る。

その煙の成分が何なのか、とか。
計算して動いていたのか、とか。
色々聞きたいことはあったが結局一言しか訊ねることは叶わなかった。

――多くの者が同じように聞いてきた、「お前は一体なんなんだ?」という問い。

/ ^、。 /「僕ですか?そうですね……」

崩れ落ちる男。
それを見ながら、青年は仰々しく礼をし、馬鹿みたいに丁寧な言葉遣いで告げた。

/ -、- /「…しがない錬金術使いのレインメイカーです。『イオ』と呼んで頂いて結構です」

…その言葉が届いたのかどうか、定かではない。


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:10:15.81 ID:ZfovguZj0
……………


(゚、゚トソン「…犯人は」

しばらく後。
駆けつけた隊員の一人が聞く。
『特待生』の先輩でもある彼女に、本当に気まずそうに頭を下げる。

/ 、 /「逃げられてしまいました。…申し訳ありません」

(゚、゚トソン「………」

まるで値踏みでもするかのような視線だった。
たっぷり五秒ほど目を閉じ、黙考する。イオと同じく日本人風の整った顔立ち。
…そして。

(、-トソン「…仕方ないですね。次は頑張ってください」

それだけ告げると階下へ去っていった。
深々と頭を下げる新入りの、不自然な自然さに溜息をつきながら。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:13:16.38 ID:ZfovguZj0
/*^、。 /「…やっぱ、結婚するなら日本人だなぁ……」

先輩の素朴ながらも美しい見た目。見惚れていたのは内緒である。
かつての美少女振りを――今が美人でないというわけではないのだが、若干ヒステリー気味なのだ――思い浮かべる。

…そんな馬鹿なことを思いながらエクストの元へ。
出席していた人々は避難してしまったらしく、がらんとしている。

<_プー゚)フ「ご苦労さん!」

/ ^、。 /「いえ。逃げられちゃいましたし」

それを聞くと若き社長は、ドンマイと笑い飛ばす。
本当に土方の兄ちゃんのような人である。社長というポジションとは程遠い笑み。
「でも、残念だな」と繋げる。

/ ゚、。 /「何がですか?」

思わず聞き返すイオに、一言。
当たり前のように。

<_フ^ー^)フ「せっかく指名した、ってのに」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:16:23.75 ID:ZfovguZj0
謎が解けた。
新人のイオが配置されていたのは、社長の希望だったらしい。
彼はそのままの笑顔で続けた。

<_プー゚)フ「噂で聞いたぜ?…東邦の蒼い死神が『Clavicula』を探してる、って」

世界を壊す言葉がある。
世界を癒す言葉がある。
そして、世界を変える言葉がある。

相応しい時、相応しい場所で、相応しい人物がその言葉を口にした時。
掛け値なしに世界はひっくりかえるのだ。

/ ゚、。 /「………」

…それはラテン語で『鎖骨』を意味する単語だった。
たった9文字の音素文字が作る言葉。ほとんど滅んだような、専門的な分野でしか使われることのない言語。
しかし、イオに影響を与えるには十分だった。

いつも湛えている柔和な笑みは消え失せた。
人の良さそうな雰囲気も同時に霧散した。
澄んだ瞳は一瞬、蒼白い燐光を放ったような気がしたが、――確認しようとした時には既に濁り切った後だった。


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:19:19.57 ID:ZfovguZj0
/ 、 /「…ええ、そうなんですよ」

表情が、ゆっくりと無から笑みへ変わる。
…だがそれは常時貼り付けた社交的な笑顔ではなかった。
邪悪で醜悪な、それでいて底知れぬ余裕と魅力を秘めた、『蒼い死神』の異称に相応しい笑み。

/ 、 /「探してるんです、『鍵』を。ずっと。ながーい間」

<_プー゚)フ「…神様にでも祈ってみたらどうだ?」

お世辞にも気が利いているとは言えないジョーク。
くつくつと笑いを必死で噛み殺し、イオは返す。
愉悦に歪んだ表情を隠そうともせず。外待雨のごときその笑みを。

/ 、 /「…いいこと教えてあげましょう。僕達錬金術師は神に祈らないんです」

何故だか分かります?と、死神は言った。
彼には珍しい普通の笑みで。錬金術師としての、『レインメイカー』としての真理を。

「だって僕達は――」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:22:19.99 ID:ZfovguZj0



――ハンプティ・ダンプティが 塀の上

  ハンプティ・ダンプティが おっこちた
  
  王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも

  ハンプティを元に 戻せなかった




/ ^、。 /「――自分しか、信じないんですもん」


――第一夜 終――

…What is “Humpty Dumpty”?




49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:25:24.19 ID:ZfovguZj0
ご支援ありがとうございました。


※作者による今更な注意。

薄々気づいているとは思いますが、一応。
この作品は、
・/ ^、。 / 旅人は『ざ・れいんめ~か~』のようです 及び、
・(´・ω・`) 曰く、「男は皆魔法使い」のようです 等々、一連の作品とリンクしています。

どれかを知っていれば楽しめるでしょうし、勿論知らなくても面白い作品を目指すつもりです。
というか、知らないほうが良いかもしれません。

…温度差がありますので。かなり。
投下のテンション的にも、作品のテンション的にも。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 22:06:40.45 ID:gymQolfH0
用事がってそういう事なのか?w


>>5
そういうことです


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/17(土) 23:29:33.01 ID:FC/6o+j/O
もしもしの時も思ったけど2+1は読んどいた方が良さそうだね
面白かったよ!乙です


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