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◆/ ゚、。 /『The Rainmaker and“Lemegeton”』のようです…… 第三夜 「死に至る病」

前の話/インデックスページ/次の話

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:22:10.49 ID:W2H5N/SV0


/ ゚、。 /『小さき鍵』とレインメイカーのようです……



――Can you make me a cambric shirt,
  
  Parsley, sage, rosemary, and thyme,
  
  Without any seam or needlework?
  
  And you shall be a true lover of mine.




                        (『Can you make me a cambric shirt?』より)




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:25:06.00 ID:W2H5N/SV0
――第三夜――
「死に至る病」

ζ(゚ー゚*ζ「君……誰かを殺したいの?」

ある六月の昼下がり。教師陣の都合により、午前中授業となったその日。
部活棟二階の一室で佐伯デレは尋ねた。
ゆるゆると結んだ茶色いツインテールが肩にかかり、蛍光灯の光を受け輝いている。

/ 、 /「………っ!」

ζ(^ー^*ζ「顔に書いてあるよ」

上の下程度の美少女の前。座っているのは、これまた上の下ぐらいの青年だった。
机を隔てて向い合う二人の学生。彼女の後輩であるイオは突然の言葉を受けて身体を強張らせた。
天体研究部に所属する二人の部員。それが彼等だった。

/ ^、。 /「…なんでそう思うんですか?」

黒髪を掻き揚げながら、やっとのことで表情を固定し、問い返す。
対しデレは「そう言うってことは暗に肯定してるってことだよ」と目を閉じつつ返事をした。
長い睫が目立つ。まばたきすると音が鳴りそうだ。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:28:06.71 ID:W2H5N/SV0
ζ(゚、゚*ζ「…ま、どうでもいいけどね」

そう言い、窓の外の景色に視線を投げた。
不安定な色合いの曇天。ほんの数分のうちに雨が降ってきそうである。

ζ(゚ー゚*ζ「イオ、傘持ってきてるでしょ?入れて帰ってね」

/ ゚、。 /「…はい」

横暴とも言える命令だが、いつものことなので気にしなかった。
この部室の主、――つまり、天体研究部の部長である彼女なので、たった一人の部員のイオは従うしかないのだ。

/ ゚、。 /「そう言えば…」

入部の時もこんな感じだった、と回想する。
あの時もイオは訳の分からない問いを投げかけられ、戸惑っているうちに入部してしまったのだ。
別にやりたいこともなかったので良かったのだが。

なんとなく納得がいかないので、たまには仕返しをしてみることにした。
なるべく真剣な顔を作った若き錬金術師は、ずずいと顔を近づけ、普段は全く言わない冗談を言ってみた。

/ ゚、。 /「…先輩。好きです。付き合って下さい」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:31:07.45 ID:W2H5N/SV0
デレはその言葉を聞き、

ζ(゚ー゚*ζ「んー、いいよー」

――軽く承諾してしまった。目線すら動かすことなく。
驚いたのはイオの方だ。もっと焦ってくれるのを期待していたのに、待っていましたと言わんばかりに返事をされたのだから。
今更撤回することもできず、どうしようかと悩んでいると。

ζ(、-*ζ「…ま、冗談なんでしょ?」

どうやらお見通しだったようだ。
バツの悪そうな顔をし、素直に謝っておく。

ζ(-、-*ζ「…いいよ。君はもっと冗談を言った方がいいって思ってたところだから」

/ ゚、。 /「冗談、ですか」

ζ(゚ー゚*ζ「そう。冗談が言えるってことは嘘が上手いってこと」

嘘が上手いってことは素敵ってこと。
訳の分からない持論を展開しつつ、帰り支度を始め出した。
一緒に帰らなければいけないのでイオもそれに続いた。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:34:08.04 ID:W2H5N/SV0
――イオは雨が好きだった。
昔からなのだが、何故なのかは分からない。
たんに自分が雨男だから好きになるよう努力した結果かもしれない、と彼は結論づけている。

ζ(゚、゚*ζ「…ねぇ、君は目の前で人が死に掛けていたら助ける?」

唐突に、すぐ隣を歩く先輩が訊いた。
妙な問いだった。イオには助ける以外の選択が浮かばなかったのだ。

/ ゚、。 /「そりゃ助けますよ」

ζ(-ー-*ζ「君は良い子だねぇ」

/ ゚、。 /「…先輩だって助けるでしょ?」

当然のように訊ね返す後輩に、変わり者と有名の先輩は少し悩む。
なんで悩むんですか、と突っ込むイオに対し、

ζ(、-*ζ「人間が生きていく上で、人殺しは必須の行為なんだよ」

物騒なことを言い、天を仰いだ。
鉛色の曇天はなんとも言えない圧迫感を与えてくる。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:37:11.29 ID:W2H5N/SV0
ζ(゚ー゚*ζ「君の目の前で死に掛けているその人は、すご~く悪い人で、…誰かが一生懸命頑張って罠にかけたのかもしれない」

そう思ったら助ける気なんておきないでしょ?
当たり前のように言っているが、論理のすり替えのような気がしないでもなかった。
大体凄く悪い人だからという理由で誰かを殺していいとは思えない、とイオははっきりと言った。
対し、先輩は一言。

ζ(、-*ζ「嘘が下手だねぇ、君は」

/ ゚、。 /「…どういう意味ですか」

ζ(゚ー゚*ζ「そういう意味だよ。適当なところで切り上げておかないと、結局最後は破滅するんだ」

要領を得ない助言だった。
ギャンブルは違法ですよ、と後輩は小声で言う。
そういうことじゃなくて、と先輩は大声で言う。

ζ(、-*ζ「…まぁ、そういうことだよ」

いつの間にか目的地のマンションの前についていた。
先輩を濡れさせないように配慮する。それを見、やっぱり君は良い子だよ、とおちょくるように言った。
イオは子供扱いされた気がして納得がいかなかったが、事実彼は一年年下なので仕方ない。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:40:05.92 ID:W2H5N/SV0
ζ(゚ー゚*ζ「今日も楽しかった」

/ ^、。 /「それは良かったです」

柔和な笑みで返した後輩に、眉に皺を寄せ皮肉を言った。
「僕はその表情は嫌いだ」と。
女の子のクセに一人称が僕の彼女には言われたくなかったが、差別的な発言になるので自重した。

ζ(゚ー゚*ζ「今日の冗談、嘘でも嬉しかったよ」

/ ゚、。 /「……え?」

ζ(-、-*ζ「…君はどうにも鈍感なところがあるみたいだね」

呆れたようにそう告げて、部屋に入っていった。
しばらく立ち尽くしていたイオだったが、どうしようもないので帰ることにした。

/ ゚、。 /「…冗談……。ああ、告白の件か」

一人称が僕でも女の子なので、告白は嬉しかったらしい。
今度はもっと上手く冗談を言おう。
…そう決意し、イオは雨の街を歩き出した。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:43:05.85 ID:W2H5N/SV0
……………


('A`)「学校、か……」

場面は現代に戻る。
イオの昔話――と言ってもほんの数年前の話なのだが――を隣で聞いていたドクオは、懐かしいものを見るような目で呟いた。
不思議そうな顔をする華の大学生に対し、学校は中学までしか行ってないんだ、と当然のように言った。

('∀`)「俺は捨て子だからな。大嫌いなあそこを抜け出す為にはさっさと働くしかなかった」

/ ゚、。 /「………」

あそこ、というのはおそらく孤児院のことだろう。
彼はそこが嫌いだったらしい。何故か、と聞けば簡潔に答えた。

('A`)「…見世物小屋みたいだったからだよ」

吹き込んでくる秋の風から身を守るように、両手をジャケットのポケットに突っ込んだ。
『ドクオ』という人間はどうにも高潔な人種に属するらしい。
自分がいわゆる「可哀想なものを見る目」で見られているのが、たまらなく、――苦痛だったのだろう。
不器用な人間に相違ないのだが、自分にないものであるプライドを持つ彼をイオは心の中で少しだけ尊敬した。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:46:05.72 ID:W2H5N/SV0
('A`)「あんたはいいな」

世間一般の認識で言う「可哀想な人間」は、通りの角で立ち止まり言った。
自嘲気味に笑った笑顔は貧相な顔立ちによく似合っていた。

('∀`)「同情、ってもんが顔に表れない。錬金術師、…いや、『魔法使い』ってのは皆そうなのか?」

/ ^、。 /「…さぁどうでしょうね。僕は、どちらかと言えば『科学者』の人間なので分かりません」

イオは曖昧に笑って答えた。
その程度の悲劇など世界中に有り触れている、と言っても良かったのだが、そう言わなかったのは一重に彼の人柄の所為だろう。
事実、彼が巡ってきた地域では、目の前の小柄な男より遥かに悲惨な環境で育った人間も多かった。

だからどうした、と言われればそれまでだ。
しかし、そういう人々の心のうちに秘めた強さというものを身に沁みて理解しているイオは、軽率に「可哀想」などと口にはできなかったのだ。

/ ^、。 /「ところでこれから帝都へ行きますけど。情報収集に」

('A`)「ついて行くさ。…どうせ帰る場所もない」

話題を変えたイオ。ついて来い、と言った覚えは全くなかったのだが、ドクオは乗りかかった船には乗っていくタイプらしい。
…いや、単純に白衣の死神に興味が沸いただけなのかも知れなかった。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:49:10.52 ID:W2H5N/SV0
この国の中心地である帝都VIPまでは数時間、といったところか。
来た道とは逆の方向へ角を曲がり駅へ急ぐ。心なしか前を歩くイオの足取りも軽い。
彼の目的を知らないドクオもそんな彼を見ていると、なんと言うか、知的好奇心が刺激されワクワクする。

('A`)「…で、そのそこそこ美人な先輩のお話の続きを聞かせてくれよ」

/ ゚、。 /「え、気になりましたか?」

小走りで隣に来た連れに対し、大きな黒い瞳を向けるレインメイカー。
独り言のようなつもりだったのだろう。まさか続きを聞かれるとは思っていなかったのだ。

('A`)「まぁ平たく言えば、その部長さんが『死神』だったってことだろ?」

先の展開などお見通し、と言わんばかりに指を指す。
その通りです、とイオは笑いながら素直に認めた。学生時代に注意されたその笑顔で。

/ ゚、。 /「…何度かヤらせて頂きましたし。部活動の一環で」

(;'A`)「お前……、そんな言葉も使うのな」

年相応の馬鹿な会話をしながらも、話は若き時分の錬金術師に戻る。
その時出会っていたなら何か変わっただろうか、とドクオは少しだけ気になったのだった。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:52:07.18 ID:W2H5N/SV0
……………


当時高校生の鈴木=フラメス=イオリエは、『良識ある善人』であったと言えるだろう。彼の先輩が言った通りに。
何を以てそれを判断するのかはかなり微妙なクエスチョンで、人間倫理の命題でもあるが、とりあえず彼は困っている人は助けた。

――助けて、みた。

放浪癖のある彼が知り得た知識として、善意は返ってくる――つまり、「情けは人の為ならず」な考えが根幹にあったのだ。
だから、イオは困っている人間(時としては人以外も)を見つけると助けてみる。
それが苦痛でないことは一種の才能なのだが、それが当たり前の人間にとっては何てことはないのだ。

/ ゚、。 /「……………」

*(;‘‘)*「あぁ…うぅ……」

秋の日の学校の帰り道。街頭に設置された「防災マップ」なるものを見て、小学生ぐらいの少女がうなっていた。
イオは経験則で分かる。
彼女は防災などに興味はない。ただの迷子だ、と。

彷徨い気味の両目。どうやらすごぶる焦っているらしい。
門限でもあるのだろうか、等と適当に推測したイオはとりあえず声をかけてみた。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:55:06.41 ID:W2H5N/SV0
/ ^、。 /「どうしたの?大丈夫?」

もはや定型と化した文。それを少女と目線を合わせるようにして言った。
本当に困っている小さな子供は、その言葉と彼の親しみやすい雰囲気だけで泣きついてきたりするのだが、彼女はそうではなかった。
――むしろ、驚きに目を見開いた。

*(;‘‘)*「お兄ちゃん……、私が視えるの!?」

――しまった。…心の奥底で舌打ちする錬金術師。
こういう場合、十中八九彼女は『ワケあり』な感じだ。経験則で知っている。

今ならこういうことはないのだが、当時のイオはまだ『普通の視界』と『その他の視界』が曖昧だった。
人間と思えば幽霊だったり、といったことが時折あったのだ。
今更見えないフリをするわけにもいかず、仕方なく頷く。あくまで笑顔は崩さずに。

*(;‘‘)*「…でも、駄目っ!私が視えているなら、今すぐ私から離れて!!」

/ ゚、。 /「(…しまった)」

押しのけるように叫ぶ少女。再び心の奥のほうで舌打ちする高校生。
…慣れているせいか次の行動は迅速だった。
辺りに注意を飛ばす。ポケットを探り、今日持ち合わせている呪物を反芻する。武器は傘か。鞄は背負っているので邪魔にはならない。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 20:58:07.49 ID:W2H5N/SV0
――三度目の確認を終えた、その時だった。
足元に平べったい石が投げ込まれた。
カタカナの「ト」のような文字が刻まれている。それを視認する前に――

/#゚、。 /「ッ!!」

さもすれば肋骨が折れるんじゃないかという勢いで少女をホールド、小脇に抱え、その場から飛び退いた。

直後。
石から瞬間的に呪力が巻き起こり、炎が爆ぜた。

学生服の端が焦げたが、結果的には無傷。幸いと言えるだろう。
事情を話そうと少女が開けかけた口にほとんど強引にハンカチを押し込む。
苦しんでいるが舌を噛み切られても困るので仕方ない、と開き直るイオ。軽く、ごめんね、と声をかけておく。

/ ゚、。 /「(…北欧の隻眼神が生み出した文字。一部では公用語にも使う。読みは『ケイナズ』、意味は『炎』と『元始』で、ルーン文字の……)」

アレ、何番目だったっけ?
…所詮は専門外ということか。ド忘れである。
鈴木=フラメス=イオリエの魔術の専攻は、あくまで『西ヨーロッパ派錬金術』と『呪術医療全般』だ。
科学や医療方面にも明るく、それらも勉強する彼にとって、北欧の二十四の魔法文字から成る魔術などは学問としても学ぶ暇がなかったのだ。
…それでも対処法ぐらいは常識として知っているのだが。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:01:06.01 ID:W2H5N/SV0
高校生活でおなじみになってしまった近道を跳ねるように疾走する。
大通りに逃げても良かったのだが、相手が良識のない悪党だった場合(または大義を重んじる軍人などもか)、責任を取ることは一介の高校生である彼には不可能だ。
医学の心得はあれど、一々怪我した人間を治療するなどということはできない。

/ ゚、。 /「…さて、どうしよう」

巻いてから事情を聞くか、事情を聞いてから行動を考えるか。
後者の場合、追っ手らしき何かと戦闘になることは必至である。正直進まない。帰って勉学に勤しみたい、というのが本音である。

*(;‘‘)*「――っ。お兄ちゃん、慣れてるね」

/ ^、。 /「僕も、よく死に掛けるから」

言うに事欠いて「慣れてるね」と言われてしまったただの高校生、――もとい『錬金術使いのレインメイカー』。
こんなことに慣れてしまうのはお世辞にも良いこととは言えないが、事実なので仕方ない。慣れています。

彼の経験則に従うと、こういう状況の場合、三つのパターンに分けられる。
――まず一つ。この少女が狙われるような情報・身体能力・その他を持っている場合。
――次に二つ。この少女が狙われるような行動をしてきている場合。因果応報。
――最後に三つ。この少女がとんでもなく運が悪い場合。
…二つ目だけではないことを祈りたいイオである。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:04:07.70 ID:W2H5N/SV0
この状況で二つ目のパターンだと、デレの言った言葉がそのまま適応されてしまう。
少女を引き渡して終わりでいいのだが、なんとなく嫌だ。

ぐだぐだ悩んでいても仕方ない、と割り切った錬金術師。
親指大のプラスチックの容器――市販のシャボン玉原液のケースを取り出し、真後ろに二つほど放る。
液体がぶちまけられ、辺り数メートルの範囲が凍る。

/ ゚、。 /「…無意味かな。こんな足止め」

思いつつも角を曲がる。
あまりにも人に会わないので「人払い」でも使われているのかもしれない。

/ ^、。 /「…ねぇ、名前はなんて言うの?」

*(;‘‘)*「え?ヘリカル……」

いつの間にかハンカチを口から取り出していた少女、――ヘリカルは戸惑いつつも答える。
次に何を聞くべきかは明確だ。

…こういう場合、イオは決して「なんで追われているの?」とは訊ねない。
何故ならそれを聞いてしまうとロクなことにならないから。かなりの高確率で。
一つの街ぐらいならまだしも、一つの魔術結社を敵に回すのは普通に避けたい高校生。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:07:06.14 ID:W2H5N/SV0
/ ^、。 /「味方はいる?FOXは?」

*(;‘‘)*「あの……、隣の州に…。FOXでも…、いいかも……」

イオの通う高校はシベリア州で、現在地も同じくだ。
加えて国の特務機関である『FOX』でもいいのだから、ヘリカルが重罪人とかいうパターンはないだろう。
本日何度目かになる路地裏の角を曲がりながら思考する。

/ ゚、。 /「(FOXに放り込むか、境まで連れて行くか……。あれは電話したら来てくれる便利な組織じゃないからなぁ)」

まかり違っても、あれは『特務機関』であり『警察』ではない。そういう組織ではないのだ。
ベストな選択は「運び屋などにお願いする」だが、そんなに都合良く裏稼業の人間とは知り合いではない。…あまり。

故に選択する。
追っ手の迎撃か、少女を見捨てるか。

――そして、イオは割と良い人間だ。

/ ^、。 /「ちょっと隠れててね。危なくなったら勝手に逃げてね」

ヘリカルを後ろへ押しやりながら、優しい声音で呟いた。
…そんな音とは反比例し、レインメイカーの身体には殺意を帯びた呪力が満ち始めていたのだが。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:10:06.55 ID:W2H5N/SV0
……………


――河原であった。
鉄橋の下、ちょうど死角となる場所だった。

/ ゚、。 /「………」

結局、一人で逃げられる、と断言したヘリカルを本人の意向通り一人で逃がしてやったイオは、そこに佇んでいた。
勘違いされるが、彼は完全な善人ではない。「一人で逃げられる」と自分で言った以上一人で逃がしてやる。…それが彼の考え方であった。
要らぬ御節介など焼く必要はない。助けられる範囲で助けてやれば、それでいい。

/ 、 /「…冷たい、かな」

冷え性に苦しむように、自らの両肩を抱き、少し震えた。
…年端のいかない少女を見捨てた彼を責めるかのよう、空は、雨を降らせようとしていた。

――そうだ。
イオは思う。自分は見捨てたのだ、と。
魔法使いであるせいか、科学に順ずる者であるせいか、単に『鈴木=フラメス=イオリエ』という人間であるせいか。
…そのラインを、グレーゾーンを彼は分かっている。
白にもなれず黒にもなれず。中途半端さを嘲るように笑った。小さく。小さく。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:13:06.55 ID:W2H5N/SV0
「いーや、テメェは良い人間だと思うぜい?」

最低の所で『自分の可愛さ』を優先させた錬金術師に、声が降ってきた。
土佐弁のような独特の訛りだった。

/ 、 /「…僕には貴方のほうがよっぽど善人に見えますが。わざと逃がしたでしょ?」

「分かってたか」

笑うような声に対し、当たり前だ、イオは思う。
本気だったなら高校生風情が逃げられるはずがない。追いつき、何かしらのアクションを起こしたはずである。
…それがなかったということは。

/ ゚、。 /「雇われ、ですか?」

ミ,,^Д^彡「…そういうわけだぜい。いやぁ、ガキ追うのは好みじゃなかったから助かったぜい」

恰幅の良い、毛皮を携えているが、身軽な格好の男だった。
年は二十代か……ひょっとすると十代かもしれない。
ボサボサの頭が目立つが、目鼻ははっきりとしており、場合によっては美形に入る部類だとイオは感じた。
気取らない雰囲気が全てを包容している。
出会い方が違えば良い友人になれたかもしれない、とも思う。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:16:07.95 ID:W2H5N/SV0
イオの存在という、格好の『言い訳』を手に入れた男は言う。

ミ,,゚Д゚彡「…まっ、ここは何かしら『仕事をちゃんとした』って証拠が欲しいとこなんだぜい」

ポケットに手を突っ込み、石を数個取り出す。刻まれた模様は三種類か。
二十四の文字から形成された『ルーン魔術』だが、全てを使いこなすのは困難で、普通なら数個。
…それを少なくとも三種類。切り札は見せないものとすれば、軽い相手とは言えなかった。

/ ゚、。 /「やりますか。意味はないのに?」

ミ,,^Д^彡「『通りすがりの高校生に邪魔されました』…で、契約金が貰えるとでも?」

/ ゚、。 /「無理でしょうね。僕に負けるか、僕の腕でも持っていかないと」

言いながら、もう一度装備を反芻した。
どっからどう見ても取っ組み合いは強そうなので、避けたい限りである。
しかも。

/ ゚、。 /「(あの毛皮、ルーンの種類、北欧……。最悪、吸血鬼並みの存在か……)」

…嫌な予感だったが、大体こういう予感は当たるのだ。
ヨーロッパの一部地域で伝わる、毛皮に関連したルーンの術式で、吸血鬼伝説の元にもなったもの。それぐらいイオでも知っている。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:19:06.20 ID:W2H5N/SV0
ミ,,-Д-彡「…五分、だな」

目を瞑った男は石をしまいつつ呟いた。
曇天を仰ぎながら、何がですか、と訊ねてみる。
生返事をし、億劫そうにこう言った。

ミ,,-Д-彡「五分、耐えられたら退いてやる。金は前金だけで我慢するぜい」

/ ^、。 /「…ありがとうございます。約束は、約束ですよ?」

明らかに見下されていたが、特に怒る様子もなくレインメイカーは返した。念まで押して。
こんな勝負意味はない。そう、言外に主張するように。

ミ,,-Д゚彡「――さぁ、行くぜい高校生。俺の姿を見ると、忘れられなくなるぜい?」

/ 、 /「くつくつくつ。…僕は、決め台詞は最後に言う方なんです」

売り言葉に、買い言葉。ルーン魔術に、錬金術。傭兵に、高校生。
…暇を潰すような殺し合いが幕を開けた。

――イオはその刹那に考えた。
先輩の言った言葉の、本当の意味について。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:22:06.21 ID:W2H5N/SV0



――ぼくに絹のシャツを作ってくれるかい?
  
  パセリ セージ ローズマリー タイム
  
  縫い目もなく 針も使わずに。
  
  そしたら 君は、本当にぼくの恋人。




――第三夜 終――

…Marry in haste and repent in leisure.



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/31(土) 21:25:17.83 ID:W2H5N/SV0
ご支援ありがとうございました。
まとめは、くるくるくーるさんです。
ないとは思いますが、質問には答えます。


『悪党』が沢山出てくるこの作品。
色んなタイプがいます。
特に三種類。その中最悪なのが、此度の主人公です。



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