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◆/ ゚、。 /『The Rainmaker and“Lemegeton”』のようです…… 第四夜 「あなたが思うよりその矛盾は易しい」

前の話/インデックスページ/次の話

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:40:26.00 ID:i+tgF8Dp0


/ ゚、。 /『小さき鍵』とレインメイカーのようです……



――He loves me,
  
  He don't,
  
  He'll have me,
  
  He won't,
  
  He would if he could,
  
  But he can't So he don't.




                        (『He loves me, he don't,』より)





2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:43:16.77 ID:i+tgF8Dp0
――第四夜――
「あなたが思うよりその矛盾は易しい」

/ ゚、。 /「………」

鈴木=フラメス=イオリエは知っている。
過去、日本に旅行に行った際に学んだ。勝負とは『一撃必殺先手必勝』なのだと。
剣術で言えば「示現流」という流派に代表される考え方だ。初撃を重んじ、防御されようものならそれごと突き破る。

――ただ、それは理想論でしかない。
彼の扱うのは錬金術。…『高速で』なおかつ『必殺の』一撃など持たない魔術系統だ。
いや、あるのかもしれないが、少なくともイオは知らない。

だから。

/ ゚、。 /「(返し技、かな)」

傘を持っていない、空いている右手。
学生服。懐に入れてカタリストを取り出す。指に挟んでいるのは三種類の試験管。
どれも魔術的な効果を持った代物である。

……よく死に掛ける、のは断じて冗談ではないのだ。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:46:20.10 ID:i+tgF8Dp0
ルーンの魔術師、――フサが取った行動は単純明快だった。
ポケットより文字の刻まれた石を取り出す。三つのそれが同じ種類なのは、魔術師だからこそ為せる選別か。
ルーン占いと同じ要領で選んだそれを正面に放る。
最初と同様の文字だ。

ミ,,-Д-彡『……ケイナズ』

ルーン魔術とは、日本の『言霊』のようなものである。
『板』と呼ばれる媒体に文字を刻み、染色する。そして術者の声、たとえば詠唱によって『ルーンの力』を起動するのだ。
ある意味では護符魔術と言えるかもしれない。

投擲された三つの石は、イオを囲むように配置された。
…同時。術者の呼びかけに応じ、爆発的に呪力を撒き散らす――!

/ ゚、。 /「ッ!」

逃げ道を塞ぐように置かれた板。
回避を諦め、防御に専念する。妥当な判断と言えた。

三種の試験管のうちの一つを落とす。
ガラスの割れる音と共に、燃え盛る火炎が炎ごと凍結した。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:49:16.81 ID:i+tgF8Dp0
自身が起こした魔術現象に巻き込まれぬよう右へ飛んだイオ。
転がるように着地し、態勢を立て直す。

…しかし、追撃が来る。
今度はコインだった。金貨に刻まれた文字はアルファベットの「I」に酷似していた。

ミ,,-Д-彡『停めろ、イーサ』

『氷』や『停止』を表す秘文字が指で弾かれる。
一瞬で氷の矢と変化したそれが、膝をついたままの錬金術師を狙う。

/ 、 /「…氷は溶かせばいいんだろう」

呟き、上体を左へ捻りながら次の触媒を使う。
コルクの栓を抜き液体を前方へ、――氷の塊に向かい撒き散らした。
その溶液が当たった瞬間。北欧の神が命を懸け作り出した秘文字はいとも簡単に解け去ったのだ。

――曰く、『万物融解液』。
『アルカヘスト』とも呼称され、賢者の石の原料ともされるそれ。
本来は物質に宿る精を開放する為のものだ。
…それを応用すれば、呪物に宿った呪力を崩壊せしめることも、また可。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:52:13.47 ID:i+tgF8Dp0
――だが。

ミ,#゚Д゚彡「ゴラァァァアア!!」

そんなもの程度想定済み、と言わんばかりに男は攻撃を開始する。
イオに向かい真っ直ぐと突進してくる様は獣そのもの。威嚇の声が響き、腕が唸った。
その右腕はただ単純な力技で――だからこそ恐ろしい方法で、錬金術師の意識を奪いにくる。

/ 、 /「…くつくつくつ」

笑いを噛み殺しながら、跳ねるように後ろへ下がりながら、最後の試験管の栓を外した。
橙赤色の液体。フサに向かい投擲される。

ミ;゚Д゚彡「これは――ッ!!」

前方に向かっていたベクトルを無理矢理に変換。
方向は上空。その場でバク転をするように飛び退く――!

…ジュワ、という嫌な音がした。
先ほどまで彼がいた地点にあった鉄のガラクタ。それが溶けていく音だった。
人体に直撃していればどうなったかなど想像もしたくない。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:55:17.62 ID:i+tgF8Dp0
ただの高校生に殺されかけた傭兵は眉間に軽く皺を寄せた。
その色と鉄を溶かす強い酸性。
加えて錬金術とくれば、心当たりがある。

ミ;-Д-彡「『王水』とは……殺す気か」

/ ゚、。 /「たかだか超酸でしょ。火傷ぐらいにしかなりません」

濃塩酸と濃硝酸とを3:1で混合し、できるのが『王水』である。
中世イスラム世界の錬金術師が発見した銀以外のいかなる金属をも溶かしうる劇物。
魔術云々以前に人体に極めて有毒なのだが、イオとしては「アルカリ性じゃないだけマシ」のようだ。

/ ゚、。 /「…それより、あと四分ないですよ」

ミ,,-Д-彡「ぬかせ」

言いながら二度、三度と激突する二人。
傭兵であるフサの動きは軽快かつ豪快。対し、レインメイカーであるイオの動きは無駄が多い。

――これが差だ。
高校生であるイオと、紛れもないプロであるフサの差。
その場凌ぎのトリックでは決して覆ることのない絶対的な差。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 21:58:18.18 ID:i+tgF8Dp0
そもそも本物のプロに奇抜な武器も能力も必要ないのだ。
長い月日をかけ研磨してきた技術こそが至上の武器であり、切り札でもある。

…鋭い右のフック。受け止めるのはやめ、上体を揺らして軌道から逃げる。
そのように防御を基本に戦いながら歯噛みする。

/ 、 /「(これだから凡人は……ッ)」

そして、ただの高校生でありながら技術に勝てる者。
――すなわち『天才』。もしくは『化物』。
…しかし残念ながらイオはこれに属しない。そんなことは本人が一番よく分かっている。

分かっている。
そんなこと、ずっと昔から……

/ 、 /「………」

怒っても勝利は掴めない。祈っても『奇跡』は起こらない。
当たり前だ。

…じゃあ、どうする?
諦めるのか?


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:01:15.25 ID:i+tgF8Dp0
/ 、 /「っざけんなっての……」

――そんなはず、ないではないか。
こんなところで諦められない。なにより、こんな馬鹿な理由で死にたくはない。

奇跡なんて不確定要素は頭の中から排除しろ。それは別の誰かのものだ。
現実を見据えろ。状況を把握しろ。論理を再構築しろ。できることなんてそれしかない。
今何が残っている?あとどれほど身体は動く?相手と自分の損傷の具合は?

勝率は?
あるのなら、どんなプランで?

/ ゚、。 /「………」

…スッと、イオの頭が冴え出した。
雨が降り出し気温が下がっているが、それよりも冷たく。
鉛色の重苦しい空。大好きな雨空だ。

――さっさと終わらせて、遊びに行こう。

…人間というやつは、意外と単純な理由で戦えるものだ。
そして単純な理由で戦う人間が一番強い。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:04:17.45 ID:i+tgF8Dp0
ミ,,゚Д゚彡「(…なんだ?)」

何度交錯しようとも傷つくのはイオのみだ。武器のある・なしは関係ない。
…だがどうしてかな。フサは思う。

/ 、 /「くつくつくつ……」

ミ,,-Д-彡「(…どうして、諦めようとはしない。何故、攻撃が当たり始めて……?)」

真夜中の空をそのまま貼り付けたような大きな群青色の傘。それを使い、繰り出される右拳を受け流して打つ。
なおも止まらぬ攻撃、――左のハイキックを避け小手を打ち、さらに突く。
前者が「左貫」で後者が「物見」。どちらとも杖道の技である。少なからず変形させているが。

しかし、その攻防の合間合間に織り交ぜられる魔法。爆ぜる炎が、貫く氷が、伸びる蔦が、錬金術師に迫る。
イオはその一つ一つを分析し、整理し、対処していく。
もとよりよく「死に掛ける」人間だ。勘と咄嗟の対応だけは優れている。

/ ゚、。 /「(ルーンも錬金術も速度はほぼ同じ……。体術では明らかに分がない。なら――)」

高速で回転する頭脳。
弾き出したものは、一つの作戦。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:07:19.30 ID:i+tgF8Dp0
ミ;゚Д゚彡「(面白い高校生だぜい……ッ!!)」

明らかに冴え始めている相手の動き。
これはなんだ?CQCか?古武術か?それとも、単なる喧嘩慣れか?
いや、どれも違うのだろう。

ミ,,-Д-彡「(ああ、多分これは……)」

…これは『猿真似』だ。誰かをうわべだけ真似てみた、単純な動作。その合わせ技だ。
証拠に致命傷となるべき打撃もイマイチ攻撃力に欠けている。
「見稽古」と言えば聞こえはいいかもしれない。だが、本質を理解せず練習を重ねてもほとんど意味はないだろう。

鈴木=フラメス=イオリエは記憶力の良い人間だ。
基本的にメモや手帳の類は使わないし、それらを使う人間は「記憶力が悪い」と思い込んでいる。

だから魔術も体術もほぼ独学なのだ。文献資料を元に理解を深めていっているだけ。
…かつては師と呼べるものもいた。
その人は、不幸なことにもういない。

ミ,,゚Д゚彡「しかし……」

それがどうした?と、フサは感じた。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:10:16.65 ID:i+tgF8Dp0
――どうでもいいだろう、そんなことは。
何の流派かとか、誰が師とか、どんな思想だとかどこ出身だとかいつ学んだとかどうして強さを得たとか全て。

…そんなことは関係ない。
関係ないのだ。

ミ,,-Д-彡「(…おいおい。悩んでた俺が馬鹿みたいだぜい)」

フサは知らない。イオがどのような人生を歩んできたのかを。
イオは知らない。フサがどのような人生を歩んできたのかを。

しかし、少なくとも彼は悩んでいたのだ。
『ルーン魔術』という異端の法則を使っていることを。この生き方を。
だがそれは今払拭された。

そうだ。関係ない。
――大事なのは、その『力』をどのように使いたいかだけなのだ。
そんな当たり前のことを、フサは、今やっと気づいた。

ミ,,-Д-彡「(ありがとよ、高校生)」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:13:17.00 ID:i+tgF8Dp0
――傭兵が心の中で礼を述べたことなど知らず、イオは動く。
繰り返される激しい攻防の中、確かに動いた。
…傘を持っていない方の手首を軽く振るった。すると、

ミ;゚Д゚彡「――ッ、仕込み拳銃!?」

飛び出してきたのは世界最小の暗殺用拳銃。距離は数メートル。苦手だろうが、気合で当たる間合いだ。
…もはや「ただの高校生」という称号は全く似合わない。
ダンッ!!と、銃声が降り始めた雨の中に響く。

ミ#゚Д゚彡「舐めんなッ!」

弾丸を見るのではなく、銃口を見る。直線的な軌道しか描けないのなら回避はコツを掴みさえすれば簡単だ。
上体を右に振る。頬に一筋の赤い線ができたが、それでもほぼ無傷だ。
――だが。

/# 、 /「ッ!」

まだ、攻撃は終わらない。
銃を放り捨て、傘を縦回転させながら投げる。ただでさえ崩れかけていた姿勢。視界が一瞬遮られた。
たった、一瞬だった。しかし、されど一瞬だった。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:16:15.58 ID:i+tgF8Dp0
ミ;゚Д゚彡「――ッ!?」

地面が押し出したのか、と見紛うような爆発的な加速だった。
イオは身を低く屈め走り出す。ボクサーのような、地を這う低空ミサイルのごとき姿勢。
そして視界が開けた時には既に、フサの目の前まで詰めていた。霊感が強い者なら瞬間的に呪力の種類が変化したのが見えただろう。

/#゚、。 /「ッッ!!」

地を強く踏みつける。踏み締める、と言った方がいいだろうか。「震脚」と呼ばれる中国武術独特の動作。
それにより前に向かっていたベクトルと地面からの反発力。散りそうになる力を練りながら増幅・変換していく。
脚から腰へ。腰から背中、肩を通り、肘で勢いを殺さぬように注意をし手首まで伝播。
「発勁」により練り上げられたエネルギー。それを乗せ、五本の指を折り曲げた掌底をフサの水月に突き刺した――!

ミ,, Д彡「かっ、は……!」

それでも耐えうるのは流石と言うべきか。
二、三歩下がったのみで意識も飛んではいない。

――だが、まだ攻撃は終わらなかった。

…倒れないのを見越していたかのように高速で脚払いをかけたイオ。
そのまま、泥だらけの地面に押し倒したのだ。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:19:19.90 ID:i+tgF8Dp0
…いつの間にか握られていた銀のナイフが、倒れたフサの首に突きつけられた。
押さえ込んだ状態で言う。

/ 、 /「…別に狼男でも銀は弱点じゃない。それは近年の映画で広まった設定だから。なるとすれば、洗礼を受けた対魔装備ぐらいです」

ミ,,-Д-彡「…ああ……」

会った時と同じような生返事。
肯定、だった。そしてイオは続ける。

/ 、 /「…でも『ルーン魔術』は声で起動する魔術です。そう思って喉を潰しにきました。…けど、……それでも、五分五分でしたか」

ミ,,-Д-彡「…気にするな。俺の見たところ、7:3で、お前の勝ちだぜい」

優勢に見える錬金術師の腹部。
わき腹の前に拳があった。コインが軽く挟んである。刻んである文字は『イーサ』。
…フサが声をかけさえすれば、一瞬で氷の槍が内臓を突き破るだろう。

――完全な『勝ち』とは決して言えない状況だった。
言い訳をするとしたら、この瞬間を以て五分が経過したことぐらいだろう。
…それもイオが数えていただけなので実際は分からないのだが。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:22:14.77 ID:i+tgF8Dp0
ミ,,-Д-彡「ああ……」

――その時フサが感じたのは、ほんの少しの恐怖。そして溢れ出るほどの好奇心。
思ったのだ。「ああ、コイツの本気を見てみたい」と。「面白そうだ」と。
もはや金はどうでもよかった。

ミ,,゚Д゚彡「…悪いな」

/ ゚、。 /「?」

ゴッ、という音と共に、完全に油断していたイオの身体が飛ぶ。
蹴り飛ばされ、ノーバウンドで2メートル以上。ぬかるんだ地面に落ち泥があちらこちらへ跳ねた。

ミ,,゚Д゚彡「…約束は、守れない。俺はお前の本気が見たくなったんだぜい」

/;-、。 /「無茶苦茶言いますね……。約束を守らない男は女の子に嫌われますよ?」

ミ,,-Д-彡「それはよぉく知ってるぜい。なんとでも言え。ただ――」

――だから。だからこそあえて。
バックステップで更に距離を取り、毛皮を纏う。銀とも茶ともつかない狼の毛皮。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:25:15.47 ID:i+tgF8Dp0
ミ,,-Д゚彡「…俺を駆り立てたのは、お前だぜい?」

謳うはスペル。使うは三種の秘文字。
意味を重ねることで呪力が増すルーン魔術の真骨頂。

ミ,,Д彡『…猛き軍神の加護以て、獣のごときその力…… 神力のルーンよ、意味を成し…… 今ここに顕現せよ!!』

…ただのジャケットでしかなかった体毛がフサ自身と同化する。爪は鋭く尖り、歯は獰猛な肉食動物のそれと変わる。
荒々しく、猛々しく、それでいて野生の美しさを孕んだその存在。
何百年もの昔より勇敢な戦士として、人を襲う化物として、あるいは魔術師から農民を助ける守人として描かれてきた。

ミ,,Д彡「まだ切り札はあるんだろう?錬金術師。全部出して見せてくれ……」

北欧神話の軍神オーディンの加護を受け、真なるルーンの秘術を持つ獣のごとき戦士。
吸血鬼の源泉ともされ元来はヴァイキングが使っていた力だ。

英語ならばバーサーカー。日本語ならば狼男や獣人、狂戦士といったところか。
…つまり「毛皮を着たもの」の意味を込め人々はこう呼んだ。

ミ,,Д彡「…本当に、俺の姿を見ると忘れられなくなるぜい?」

――『ウールヴヘジン』と。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:28:11.85 ID:i+tgF8Dp0
……………


('A`)「いや、いつになったら先輩出てくるんだよ。終わるの?」

場面は再び現代へ戻った。
電車に乗り込んだ二人の青年。空いた車内で向かい合うように座る。
帝都まではあと数時間かかるが、それまでにちゃんと終わるのかどうか心配なのだ。

/ ^、。 /「いえいえ。これから先は、予想通りの展開の連続ですから」

('A`)「大丈夫なんだろうな」

/ ゚、。 /「それはもう。すぐ終わります」

すぐ終わる、と言われるとどこか省略されたような気になる。
ゆっくりでいい、と返し男は耳を傾ける。

/ ゚、。 /「ところで分からない用語とかありますか?」

僕はどうにも感覚がずれているので。
笑いながらイオは言う。人の良さそうな柔和な笑み。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:31:20.43 ID:i+tgF8Dp0
('A`)「その兄ちゃんは『狼男』ってことでいいんだよな?」

/ ゚、。 /「はい。厳密に言えば、種族としての『人狼』ではなく後天的狼人間である『狼憑き』らしいですけど」

(;'A`)「え?だから、狼男なんだよな?」

/ ゚、。 /「はい。ですから狼憑きかと。より詳しく言えば『狼憑き』の状態から『ウールヴヘジン』に昇華したのかなぁ、みたいな」

('A`)「…もう全然分かんね」

鈴木=フラメス=イオリエは当然のように語る。ドク=O=キャンサーは当然のように分からない。
常識も価値観も人によって異なるものなのだ。

きっと目の前に座る白衣の男は日常的に『よく分からないもの』に触れ合ってきたんだろうな、と適当に想像する。
イオからしてみれば、今この瞬間も『何故かついて来ているよく分からない男』と一緒にいることになるのだが、そこは割愛しよう。

/ ^、。 /「続き、話しますね」

ニコリと笑って視線を投げた。
ドクオが軽く頷いたのを見ると、満足げに頷き返し、外を見る。
あの時と同じような雨雲が空全体にかかっていた。
…ただ、一つだけ決定的に違うのは――


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:34:17.53 ID:i+tgF8Dp0
……………


よく間違われるのだが、イオは何の専門家でもない。
旅が趣味だが旅人ではない。人助けはするが善人ではない。
錬金術は使うが……自分で『錬金術師』と声高に名乗るレベルには、全く達していないと思っている。

…彼の職業は高校生で、自称『レインメイカー』だ。
つまり――

/; 、 /「がっ……ッ!!」

ミ,,Д彡「おいおい。出し惜しみはいけないぜい?」

――強い、と言っても『普通の人間よりは遥かに強い』程度でしかない。
神話の戦士に勝てる道理など、どこにもない。

常識的に考えても、人間が素手で狼に勝てるわけがない。
魔術という異端の法則で強化されているのならなおさらだ。この獣人の動きについていけるはずもない。

今ここに、勝負が決しようとしていた。
出来損ないの錬金術師の完全なる敗北という結果で。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:37:13.53 ID:i+tgF8Dp0
一発一発が致命傷。
その鋭利な爪が、突き出た牙が、強化された全身が。
纏われた魔力は神々しささえある。その姿はまさしく神話の戦士に他ならなかった。

ワンサイド・ゲーム。
…もはや単なる虐殺でしかない。
――だが、フサはそれを認めなかった。

ミ,,Д彡「何を躊躇っているんだぜい。切り札がまだあるってことぐらい、眼を見れば分かるぜい?」

/;-、。 /「っ……はぁ……」

肩が熱い。右の上腕から血が出ている。足にも数箇所の裂傷が。
それでも一つも致命傷がないのはその反応速度故か。それとも培われた殺気による見切りだろうか。
…どちらでもいい。

ただ。

/;-、。 /「(このままじゃ、死ぬな…)」

――鈴木=フラメス=イオリエは血友病患者なのだ。
「このままじゃ殺される」のではなく、「このままじゃ出血多量で死ぬ」のである。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:40:16.96 ID:i+tgF8Dp0
魔術というのは、カードの切り合い・騙し合いだ。
ほとんどのものが特定のプロセスを経由しなければ発動しないのだから、極端に言えば応用が利かない。
そして一部の例外を除き――それこそルーン魔術である北欧神話の刀剣などだ――呪物は消耗品だ。

…錬金術はそれが顕著な魔術体型である。
他の、例えば召喚術なら、自分の血を対価に魔法円を描いてしまえばいい。だが、イオの場合は無理だ。
呪術も僅かなら使えるが……それは自身の致命的な弱点を補う緊急避難なのだ。

銃で言えば銃弾がない。
そういう状態だ。

/; 、 /「ふぅ……」

…心臓の鼓動は早鐘ごとく。頭が嫌な意味で冴えていく。
ドロドロと、熱いものが身体から抜け出ていく気分だった。それは射精後の虚脱感に近い。
「そういえばベルセルクも戦った後は虚脱状態になるんだっけ」……ギリギリで生き長らえながらも、そんなことを考える。

――こんな時、あの人達ならどうしただろう……

…きっと、奇跡でも何でも起こしたに違いない。
それはイオには出来ず、彼女等にしか出来ないことだった。
才能はかのように残酷か。悪態をついてみようとも、何も事態は好転しない。分かっている。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:43:20.65 ID:i+tgF8Dp0
――何も好転しない、はずだった。
雨の中。線路の上。一筋の鮮烈な光が放たれた。
ツインテールの制服姿の少女。その右手より発射されたのだ。

「出来の悪い後輩を助けるのは、先輩の役目だよねぇ」

ミ,,Д彡「!!」

それは矢だった。
炎だろうか、雷だろうか、それともプラズマだろうか。
…おかしなこともあるものだ。暗い雨の中が、少女が降り立った瞬間僅かに明るくなった。

右の手から火花を散らし、彼女は言った。
ゆるゆると結んだ茶色いおさげを軽く撫でて。

ζ(、-*ζ「…やっぱり、君は良い人だねぇ」

/;-、。 /「先輩……」

――天体研究部部長、佐伯デレだった。
または、鈴木=フラメス=イオリエの先輩か。
いや……


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:46:18.10 ID:i+tgF8Dp0
ポツリ、と狼が言う。
佐伯デレ。通称、――特に夜においての字をこう呼んだ。

ミ,,Д彡「殺し屋、『東邦の死神』……。ああ、あのデレか」

ζ(、-*ζ「…そのデレだよ」

/ -、。 /「どのデレですか」

ここ、シベリア州にはある有名な殺し屋がいた。
右手から火花を出す少女。種族としては『死神』――大きなカテゴリーとしては『超能力者』に入っている。
人の死を喰らい生きている、と噂された彼女。それがデレだった。

ζ(゚、゚*ζ「イオ。料金は後払いでいいよ、助けてあげる」

/ ゚、。 /「お金取るんですか」

ζ(゚ー゚*ζ「当たり前だよ」

言いつつ、スッと鉄橋から落ちた。もとい、降りた。
身体能力はフサと同じく人間のそれを超えているのだろう。難なく着地した。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:49:18.32 ID:i+tgF8Dp0
ミ,,Д彡「…潮時だぜい」

ζ(゚ー゚*ζ「尻尾巻いて逃げるの?」

背を向けた傭兵に対し、挑発的な問いを。
半身の構え。バチバチと鳴る右手を前に――まるで銃口を突きつけるかのように伸ばした。

ミ,,Д彡「知らないのか?…獣は、火が苦手なんだぜい」

規則的な足音を雨の中に混じらせ狼は駆けて行く。なんか僕損しただけだな、とイオは思ったが、助かったので気にしないことにした。
…そしてふらつく頭を押さえると、先輩が肩を貸してくれた。

/ ^、。 /「大丈夫ですよ先輩。泥とか血とかで濡れちゃいますから」

ζ(-、-*ζ「気にしないし、これなら一つの傘で十分。…あと、その表情は僕は嫌いだ」

投げ捨てられていた傘と銃を拾う。傘はデレが差し、銃はイオが懐にしまった。
お互いに驚きはない。双方が、双方とも普通の人間ではないと知っていたからだ。
他人から見ればみっともない光景なのかも知れないが、それでも後輩は幸せだった。

イオはあまり恋愛をしないが、――この先輩のことは割と好きだったのだ。
…おそらく、彼女も。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:52:14.55 ID:i+tgF8Dp0
/ ゚、。 /「…先輩」

病院に向かいながら、一つの傘の下、後輩が聞いた。
土砂降りの雨だ。それに掻き消えてしまいそうな素朴な疑問だった。

/ ゚、。 /「料金、いくらですか?」

ζ(-ー-*ζ「んー。そうだな……」

ゆっくりと、しかし確実に。二人で進みながら先輩は考える。
彼女は特に雨が好きではない。だが、これからの応答次第では好きになるだろう。
デレは『死神』とは思えないような笑顔で、――まさしく一人の少女の笑顔で言った。

ζ(゚ー゚*ζ「…ねぇ、今みたいな中途半端な関係じゃなく、ちゃんと付き合おう?」

/ ゚、。 /「……考えときます。というか拒否権ないですね」

口から垂れた血を拭い、イオは答える。
笑いながら二人は進んでいく。雨の中を、ゆっくりと。

――そこには先輩と後輩がいた。
血みどろの世界などとは無縁そうな、幸せそうな男女が……


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:55:13.45 ID:i+tgF8Dp0
……………


――それは数日後だっただろうか、数週間後だっただろうか。イオはよく覚えていない。
確かに覚えているのはその日は買い物の帰りで、同じく雨が降っていたことぐらいだ。
袋を提げながら、追いかけっこをした裏道へ入る。いつもと変わらない道だ。
しいて言えば――

<ヽ ∀>

/ ゚、。 /「………」

(  ー)

――今日は、死体がやたらと多い。
一人目の男は顔の上半分がなかった。真っ赤だが、歯並びの悪さが丸見えだ。
二人目の男は腕がなかった。脚もなかった。片方ずつなくてバランスがいいな、とイオは思った。

どうやら先ほどの男のものらしい腕を跨ぎ、角を曲がる。
下水溝に人が突っ込まれていた。首と肘がおかしな方向に向いているが、突っ込みは不要だろう。
プチプチと足元から音がする。脳の破片だろうか。流石にこれは気になった。週末は新しい靴を買いに行こう。
ただでさえ狭い路地に二つに分かれた人がいた。邪魔なので蹴り飛ばして進む。


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 22:58:14.54 ID:i+tgF8Dp0
…そんな風に十人ほどの死体を見た後。
今度は、知り合いを――いや、近いうちに彼女になるはずの先輩を見つけた。

ζ(、 ζ

空き地の塀にもたれ立っている。否、立たされている。
下腹部に細い鉄骨を打ち込まれ固定されていた。口からと傷口から血が溢れ出ている。
スカートに手首ぐらいの大きさの紐状のものがある。小腸か大腸だろう、と適当に流す。
近づいていき、傘を差し出す。そしてイオは声をかけた。

/ ゚、。 /「…先輩」

ζ(ー *ζ「…イオ?分かってたんだ……、分かってたんだよ、僕……」

少女の足元には手の平大の楕円形の物があった。卵巣だった。
可哀想に、もう子供はできそうにない。グッタリと投げ出された四肢を見ながら後輩は思う。

ζ(ー *ζ「……適当なとこで止めとかないと、いつか破滅するってことぐらい。その矛盾が、致命的になることぐらいね……」

なんとなくだが理解ができた。
この先輩はヘリカルやイオを守る為追っ手と戦ったらしい。
死神なのに、ガラにもなく。殺し屋なのに、おかしいものだ。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:01:15.84 ID:i+tgF8Dp0
ζ(ー *ζ「…君も僕と同じだよ。自分の中で蠢く矛盾にいつか殺される。破滅する。…気づいた時には全部、遅いんだ……」

口から血を垂らしながら、それでも必死で言葉を紡ぐ。
呼吸と共にヒューヒューとおかしな音がしている。どちらかの肺が破れているのだろう。

ζ(ー *ζ「…おか、しいかな……。もう死ぬのに、こんな……こ…――。いま…さら……よ…。で、も…僕……は、き………」

/ 、 /「先輩……」

もう一歩近づき、頬に触れる。柔らかい頬はこの間までと違い冷たかった。
どのくらい長い間放置されていたのだろう。冷たい雨の中に。
イオの手に擦り寄るように顔をもたげて、デレはなおも続けようとした。

――それを言葉が遮った。
その時出たのは嘘だったのか、真実だったのか。もう思い出せやしない。
…後輩は叫ぶように言った。雨の中、世の中の全ての悲劇と全ての不条理を認めないというように。

/ 、 /「先輩。僕は先輩が好きです。大好きなんです。だから、だから――」

上手く言葉が出てこない。たたらを踏み、奥歯を噛み締める。
つう、と熱いものが、頬を滴った。
…ずっと勉強してきたのに、それを止める術を彼は知らなかったのだ。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:04:13.02 ID:i+tgF8Dp0
ζ(、 *ζ「…イオ、…相変わらず、嘘が下手だ…ね……」

困ったように笑いながらデレは言う。
その眼は何か本当に愛しいものを見るようだった。
…瞳が潤んでいるのは、死の恐怖のせいでは決してないのだろう。もっと暖かで幸せな――

ζ(、 *ζ「こ…ど…、…まれ、か………ら……」

――ああ、この人に会えて良かった。この人が最後で良かった。
最後の瞬間。きっと彼女はそう思ったのだ。自分は幸せだと、最後の最後に思ったのだ。
どんなに救いようのない暗く辛い人生でも、たった一人の存在で光が溢れてしまったように……

ζ(ー *ζ「…ふ…うの……、おん…の……して…。…つうの、せ…ぱい…して…。……きみ、と…――――」

/ 、 /「………」

――言葉が途切れ、ガクリと首が垂れた。
その頬から手を離す。指先には赤い血が付いていた。

しばらく立ちすくみ、少し悩み、イオは黙ってその血を舐めた。
…甘い味がした。
甘く、哀しい味だった。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:07:16.56 ID:i+tgF8Dp0
…やがて。

/ 、 /「くつくつくつ……」

――先ほどまでの涙はもうどこにもなかった。
笑いを噛み殺しながら、それでいて、驚くほどの無表情で――まるで、人ではないかのような無表情で。

/ 、 /「今度?生まれ変わる?――何言ってんだ、死神」

物言わぬ彼女に、言葉を突きつける。

/ 、 /「…いつだってチャンスは一回きりなんだ。いつだって。それを手に出来なきゃ、負け」

残酷な真実。彼等が生きてきた世界の当然のルールを。

/ 、 /「先輩。アナタは逃げるべきだったんだ。こいつ等を敵に回したと判断した時点で。
     『普通の生活ごっこ』なんて捨てて。子供と後輩なんて無視して、さ。
     裏の人間にあるまじき、合理的じゃない、情に流された判断をした。だから負けた。…それだけさ」

吐き捨てるように言って、踵を返す。
彼女が、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて死んだはずの彼女が、少し微笑んでいたことをイオは知らない。
…きっと知らないのだ。それがどういうことなのかも。


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:09:10.67 ID:Ckq+KogyO
惨いな
支援


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:10:11.20 ID:i+tgF8Dp0
……………


――雨音が煩い、と男は思った。
佐伯デレと書かれたプレートの部屋の中。所謂家捜しをしていた。

(・(エ)・)「…チッ。何もねぇか」

引き出しを元に戻し、舌打ちを。
部下の連絡ではトドメは刺した……らしいのだが、直後に通信が切れたことから相打ちであったことが伺えた。
…だからと言ってどうも思わないが。

(-(エ)-)「帰るかな、もう」

探し人の消息は掴めていない。
よほど上手く逃がしたのだろう。プロとしての技量の高さが分かる。
大目玉かもしれないが、カリは返した。無理矢理に自分を納得させる。
散乱する物達。靴で退かしながらフローリングの廊下を進む。


そして、扉を開けた。
当然ながら外は相変わらず雨だった。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:13:22.39 ID:i+tgF8Dp0
/ 、 /「………」

――目の前に人がいた。全身びしょ濡れの少年だった。
それなりに鼻梁の通った顔立ちだ。少し長めの黒髪も同じく雨の被害を受けていた。
…そして、大きく澄んだ黒い瞳は完全に濁っていた。

(;・(エ)・)「お前……ッ!!」

スッと手が伸びる。
よく手入れされた指先が、男のわき腹に触れた。

/ 、 /「…一つ、言い忘れてたよ先輩」

少年の瞳は男を見ていない。どこか、遠くを見ていた。
たった数日前の分岐点。ありえたかも知れない未来は、もはや取り戻すことはできない。
あの日々は昨日まで確かに続いていたはずなのに――遥かな昔のようだった。

一言。彼は呟いた。
その無表情の中に悲哀と後悔を滲ませて。


――僕、先輩みたいな馬鹿……割と嫌いじゃなかった、と……


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:16:32.62 ID:i+tgF8Dp0
……………


――その後のことは、語るまでもない。
イオはそれなりに充実した学校生活を送り、卒業した。


最後の日。
つまり、卒業の日にも彼は一人で部室へ訪れた。
――見た目には何も変わらず、しかし、確かに何かが足りないその部室へ。

いつもの席へ座る。
…いつも目の前に座っていた少女は、もちろんいない。
代わりに机の上には彼女の写真が置いてあった。正しく言えば、彼と彼女との写真だった。
簡素な木の写真立てに入った先輩をイオは黙って笑って見ていた。


――ふと、手を伸ばす。
手入れされた中指が上辺に触れ、それをゆさゆさと前後に揺らした。
まるで赤子をあやすかのように。
あるいは懐かしいアルバムを捲るかのように。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:19:34.77 ID:i+tgF8Dp0
/ ゚、。 /「…先輩」

光で時を切り取る機械が残したもの。
写真の中の二人は微笑んでいた。イオは今よりずっと自然に。

日差しが窓から差し込んでいる。静止画の中の彼女もどこか眩しげだ。
誰かの呼ぶ声を聞き、軽く返事をすると、彼は黙って写真立てを伏せた。
そして最後に。誰にも聞こえないような――しかし、確かに彼女には聞こえたであろう声で後輩は言った。

/ 、 /「…やっぱり、ちゃんと付き合っておけば良かったですね」

――当然ながら誰も答えることはない。
少しだけ笑い部屋を後にする。足取りに迷いはなかった。
残酷なことに、彼はここで立ち止まれば全ての過去が嘘になってしまうのだから。


…そして部屋にはいつかの二人だけが残った。
ただの先輩と後輩だった二人が。
まだ、愚かな矛盾の中の幸せな日々が続くと思い、そう願っていた二人が……





42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:22:11.27 ID:i+tgF8Dp0


――彼は私を愛してる。
  
  愛してない。
  
  彼は私の恋人になる。
  
  恋人にならない。
  
  彼はできれば そうしたい。
  
  …でも、そうできない。 だから そうしない。




――第四夜 終――

…Love will find a way, I believe it.



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:25:19.65 ID:i+tgF8Dp0
ご支援ありがとうございました。
まとめは、くるくるくーるさんです。


マザーグース。
意味深な感じですが、単なる恋占いです。
最後の一文。味気ない直訳などせず、カッコ良く訳して下さい。


次回はあのコンビと後々ミカエルになるキャラが出てきます。
多分。予定では。



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:27:21.39 ID:Ckq+KogyO

いつも楽しみにしてるよ


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/07(土) 23:42:05.79 ID:sffljIuEO




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