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◆(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」~助け屋ギコ~のようです 九日目 暁

前の話/インデックスページ/次の話

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:28:24.65 ID:ZCUywItS0


――誰が悪かったとか、何がいけなかったとか …もうどうでもいいんだよ
都合良く敵がいてくれれば良かったのにさ それが駄目なら、俺も一緒に死なせてくれれば良かったのに

なんで何千年振りに目覚めたってのにお前の子孫と殺し合わなきゃなんねぇんだゴラァ
お前と違って超可愛いけどな、見た目的には

所詮そういう運命ってか? あの日々が単なる幻想だったって話かよ
…笑えないな 本当に、笑い話にもなりゃしねぇ


お前もアイツもどこ行ったんだよ なんで俺は独りなんだよ
なぁ二人共、笑ってくれよ
「何泣いてんだバーカ」ってさ……


(,, Д)「もしもし○○?今すぐ来て!」のようです


九日目 暁
『バイブレーション ――血塗れ三日月ルナティック―― 』



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:31:25.11 ID:ZCUywItS0
――どこかの世界だった。いつかの時間だった。
夜の闇も深まりきった公園だった。時の流れに取り残された男がいた。

(,,〃Д゚)「……フン。工夫が足りないぜゴラァ」

纏うオーラは黒より暗き闇色。手の甲に刻まれた紋章は純血であり至高の魔法使いである象徴。
顔の右半分を覆う傷痕のような術式痕はこの時代においては稀有そのもの。
名を、厳密には本名ではなく識別名のようなものだが、なんにせよ彼は『タロス=ギコール=O=ハイドレード=プネウマ』と呼ばれていた。

何年か、何百年か、何千年か。あるいは何万年か振りに顕現した神代の英雄。
かつて国を襲う悪魔を倒し、同時に数万の人々を虐殺した化物は今宵も同じように天使を降した。
少女が消えた地点を一瞥。そして静かに踵を返す。折れた腕を元に戻しながら。


――が。

(;〃Д゚) 「ッ!!」

瞬間的に襲い来る強烈なプレッシャー。
最高の魔法と言われる『帝王の勅命』でさえここまでのものは中々いないだろう。

この威圧感の主が誰か。
…選択肢は限られているはずなのに、ギコは素直に認めることができなかった。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:34:24.60 ID:ZCUywItS0
「…アハハ……」

響くは乾いた笑い声。共に鳴るのは形容することのできない、何かを裂き千切るような音。
ギコは知っていた。その音の正体。
世界が崩壊していく序曲だ。


――それは少女の姿かたちをしていた。
髪は優しげな栗色で道行く人が男女問わず振り返るような容姿を持っていた。下種な言い方が許されるなら、非常に「そそる」肉付きだった。
幼さの残る声は高音の「ソ」に近かった。瞳は吸い込まれそうなほど澄み渡っていた。
…普通の人間と違う部分を挙げるとすれば、その携えた二対の翼と常人ならば即死であろう凶悪なまでの魔力。

|゚ノ ∀)「…足りない、なぁ……。全然足りないよぉ…」

白虹色の雄大な翼。幻月環のような揺らめきがある。
何故かギコは月を想起した。真っ赤な鮮血に塗れた涙するほどに美しい三日月。

|゚ノ*^∀^)「…もっと遊ぼうよ……」

…少女はレモナと言う。
またその容姿と性格から『クロウ・クルワッハ』という異名を持っていた。
ケルト神話に登場する、神々を惨殺した高潔な血塗れ三日月。苛烈で鮮烈で強烈な死神から名付けられていた。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:37:24.84 ID:ZCUywItS0
(,,〃Д゚)「空間そのものを、ギミックなしで調伏させるとは……。まさしく化物だなゴラァ」

…伝承に数々あるように優れた聖人は要素そのものを従えてしまう。
有名どころは『出エジプト記』におけるモーセだろうか。イスラエル人か通る時のみ海は割れ、追いかけてきたファラオの軍勢は飲み込まれた。
また中国には山を動かそうとした男の話がある。『列子』の「愚公山を移す」という伝説は四字熟語となり残っている。
この話では天帝が力を貸したのだが、なんにせよ世界は時折その在り様を変えるのだ。

――だがギコが施した術は、物体を消滅させた反動で出現するワームホールに相手を落とし込むというもの。
理論上は半永久的に落ち続けることになる。もしくはどこか別時空に飛ばされるかだ。
…それを力技で破ったのだから、凄さは偉人の比ではない。

(,,〃Д゚)「…ゴラァ!!」

バックステップで距離を取りつつ化物少女に右手を翳す。
『王の手』から放たれた何かが衣服と透き通った肌を瞬間的に発火させる。

|゚ノ*^∀^)「服が焼けちゃうじゃん。…でも、それぐらいなら僕だってできるよ♪」

(,,〃Д゚)「…フン」

同じように手の平を向けるレモナ。
余裕を持ちギコは避けたが、矢の雨によりズタズタになっていた木々が燃え上がることになった。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:40:24.68 ID:ZCUywItS0
|゚ノ ^∀^)「もっと激しくしてもいいんだよ?」

(,,〃Д-)「…こっちも、解析が終わったとこだゴラァ」

売り言葉に買い言葉。
先と全く同じように手を前に出す。…が、今回は見世物程度の技ではない。
――珍しく、本当に珍しくレモナが回避行動を取った。その危険性を天性の才能で感じ取ったのだ。


(,,〃Д-)「…貴様に王の判決を言い渡す。…死、だ……!!」


…しかし僅かに遅かった。
右手より必殺と成り得る神の一撃が放たれる――!


グシャ……!!


――何かが、潰れたような音がした。
ダンボールに詰められたトマトを勢い良く踏み潰したような、あるいは人が電車に轢かれたような、そんな音だった。
水溜りを車が通ったような効果音も付属していた。少しだけ軽くなった体重を不審に思い、レモナは身体を見た。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:43:26.37 ID:ZCUywItS0


|゚ノ;^∀^)「…え」

――右腕が、なかった。二の腕付近で途切れていた。
あちらこちらにこびり付いた柔らかそうなものは肉片らしい。大量の血飛沫が舞い、地面を鮮血で染め上げていた。
認識により感覚が追いつく。突如として襲う激痛。短く可愛らしい悲鳴が紅い公園に響いた。

(,,〃Д゚)「痛いか?しかし、直撃を避けたのは流石だなゴラァ」

|゚ノ; ∀)「…ん、あぁ……」

(,,〃Д-)「…色っぽい声も出せるんだな。それぐらいしおらしい方が男にはモテる」

再び右手を翳す。動きを察知し三対の翼を盾のようにしつつ退避する。
――だが、その防御は無意味だった。高純度の魔力で構成された天使の翼は誤差なしで消し飛ばされた。
少女は僅かに残った二翼を羽ばたかせ、その場から退く。

(,,〃Д゚)「…お前はどうだか知らないが、こっちはよぉやくカンを取り戻してきたところだぞ?」

ズドン、という何かが爆ぜる音。
爆発的な加速を得たギコは逃げるレモナを追う。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:46:26.34 ID:ZCUywItS0
……………


o川;゚ー゚)o「っと!!」

( -∀・)「氷柱の精度は十分。能力強度は7ぐらい?…おまけに美人でスタイルもいい。完璧だね、青女さん」

――毎秒ごとに造り出される氷の剣。手を振るだけで、対象を刺し殺すように飛ぶを澄んだ凶器をアッサリと無効化していく。
彼女一人を相手にしているわけではない。現在『正体不明』は四人を同時にあしらっている。
しかも明らかに余裕を持って。鎌鼬は飯綱使いと再び激突することになり今いないが、いたとしても対抗できたかどうか怪しい。

(;#゚;;-゚)「何か、心当たりは……」

爪;-ー-)「…あるにはある。んだけど、あの人じゃおかしいんだよ!!」

揺らめく景色。ブレる像。
銀狐の攻撃を全て無効化し、鉄の剣を折ることのできる術式回路。
それに加えて何の仕込みもないことを考慮すると限られてくるのだが……

( -∀・)「ねぇ、飽きちゃった。早く当ててよ」

o川#゚ー゚)o「コイツ……ッ!!」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:48:00.42 ID:X9MrJQ5j0
作者www

仮面ライダー大好きだなwwww
俺もだぜwwwww


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:49:26.95 ID:ZCUywItS0
( -∀・)「イライラは美容の敵だよ?」

o川#゚д゚)o「アンタが苛々させてるんでしょ!!」

何度目かも分からない氷柱が飛んだ。――が、やはり触れることさえなく消滅した。
両サイドから攻撃を加えるビッコと西川を蹴りと投げ技で鎮圧する。流石と言うべきか。肉弾戦もそこそこいけるらしい。
雨のような猛攻の中であろうとも、『正体不明』は変わらない。

(;メ -・ )「おそらく使っているのは『熱』……。…剣を溶かす際は触れていたことから大した熱量ではないらしい……」

(#゚;;-゚)「…もしかして……」

――『熱』を操るもの。
その中で特に身体での温度が激しいもの。けれども風や雪程度ならば無効化できるもの。
…全ての条件を満たす、自身の『記号』を置き換える魔術は……

(;#゚;;-゚)「分かりました!分かったのです!!」

一度キューから距離を取った『正体不明』の何か。さも面白そうに微笑む。言ってみろ、と示していた。
ご希望に答えてでぃは言ってやるのだ。

(;#゚;;-゚)「――第二問の答えは、『魃』なのです!!」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:52:26.31 ID:ZCUywItS0
――中国神話には『魃』というものが登場する。
『山海経』の「大荒北経」に記述があり、体内に大量の熱を蓄え天候を操ったとされている。
しかし……

o川;゚ー゚)o「…って『魃』は女神じゃなかったっけ」

(#゚;;-゚)「はい。ですが当主様ならできるのです」

自身の『記号』を置き換えることで発動を可能とする術式。資本は肉体故に発動は比較的容易い。だがその類には数々の制約があるのだ。
それは魔術の深淵。人が人を超え、何か別のものと同化するということなのだから。
そのことを踏まえでぃは答えを言い放つ。


(#゚;;-゚)「――何故なら当主様は『クラインフェルター症候群』だからです!!」


…男と女の違いは、簡単に言えば遺伝子だ。
『クラインフェルター症候群』は男性の性染色体にX染色体が一つ異常多いことで起こる症状である。
超能力による遺伝子変容の副作用として彼はこれを発病していた。(ちなみに高校二年生時において侵されていた数にして二十弱の不治の病の一つ)

『正体不明』の性染色体は「XXXY」なので比較的稀有で女性に近いと言える。
これを魔術に当てはめれば、些細な制限の無効化が可能になることは道理である。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:55:25.51 ID:ZCUywItS0
( -∀・)y‐「…せーかい。ウィークポイントを利用する素晴らしい術式じゃない?」

シガリロを虚空から取り出し拍手を送る元主人。
彼の前では男と女、人とそれ以外のつまらない分類など意味を成さないようだ。
まるでそれは彼の在り方そのものを示しているような気さえする。

( -∀・)y‐「正解したわけだから、ご褒美あげないとだね」

o川;゚ー゚)o「ご褒美……?」

ああ、と返事をし白髪の青年は目を細める。長い睫が強調された。
…無駄な部分を一切排除した、それでありながら全てを惹きつけてやまない美貌は、確かにとても『人』の持ちえるものではないのだろう。
人は縛られてこそ人であり、――そうでなければそれは人ではないのだから。


そんな存在は悠久の時を連想させるようなひどく奥床しい調子で目蓋を開ける。
敵味方否応なく魅了するように、一言、呟いた。

( -∀・)「――冷蔵庫に放り込んできたババロアの具合が気になるからちょっと本気出すよ?」

憂いるような声調子。
…それはどこまでもふざけた、けれどもどこまでも彼らしい死刑宣告であった。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 20:58:25.30 ID:ZCUywItS0


――しかし、瞬間。まさしく刹那。
トラツグミの鳴くような寂しげかつ気味の悪い叫びと共に『正体不明』の視界が白く染まる――!!

( -∀・)「ッ!」

人外連中との戦いにおいて、初めて明確に蒼穹の翼を使った防御行動を取るも、僅かに及ばずノーバウンドで数十メートルほど吹き飛ぶ。
耳を劈く雷鳴。その音速を超えた衝撃波の巻き添えを喰らい森の一部が焼け焦げ荒らされた。

(;#゚;;-゚)「――当主様!!」

思わず、でぃは叫んでしまっていた。敵であることも無視しただ彼の安否を案じて。
それほどの強烈な光の束。毎秒落ちる百強の稲妻、世界中の人々の命を年間千あまり奪い去っていく無差別な断罪。
…こんなことができるモノなど、「助け屋」の仲間には一匹しかいない。

( ・3・)「…神の裁き。本気だったんだよね」

サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち尾はヘビ。――雷獣『鵺』だった。
古くは『古事記』『万葉集』にも記述が見られる物の怪。宮廷の人々はただ祈祷することしかできなかったとされている。
姿は生物の余りで作られたからとも干支の獣達を統べているからとも伝わる。
…鵺の鳴く夜は、恐ろしいのだ。ほぼ光の速度で飛ぶ攻撃に対抗する術などありはしない。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:01:25.27 ID:ZCUywItS0
……だが。
もし、相手が『天』そのものだとすれば……?

「痛ったいなぁ……。あとムカついた」

(;・3・)「!!?」

――彼は人の姿をしていた。澄んだ白髪と片方だけの濁った黒い瞳。日本人風の幽雅で涼やかな顔立ちをしていた。
着崩した夏服の学生服。そして理解不能の力で以て周囲の森羅万象全て残らずを跪かせていた。
…それは『神鳴り』たる『雷』とて例外ではない。

(  ∀)「おおよそ9億ボルトぐらいね。…この程度で『神の裁き』を名乗るのは、どうなのかな?」

まるで何事もなかったかのように砂煙の中から姿を現す。
広げた三対の翼。蒼ずんだ水晶のような極めて純度の高い魔力の塊だ。しかし今注目すべきはそこではない。
『正体不明』は右手で白色の閃光を掴み取っていたのだ。空気という絶縁体を無理矢理に通過し得るその光速の災厄を。

そして。

( -∀・)『…僕に、従え』

――たった一言で、あっけなく電撃はひれ伏した。


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:04:26.42 ID:ZCUywItS0


理解が追いつかない。事実を正しく認識できない。
帯電している三対の翼。エネルギーを吸収したらしく、バチバチと不穏な音を鳴らしている。

(;・3・)「…あれ、これヤバイかも……」

( -∀・)「『電気』で僕に対抗したいのなら最低でも無限城の悪魔の化身ぐらい連れてくるべきだよ」

手首に無数の傷がつけられた右手。触れただけで相手の膝を折らせる悪魔の腕が煌く。
その危険性を正しく読み取った人外は誰を初めとするでもなく、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ始めた。そういう攻撃を放とうとしているのだ。

蒼い稲妻が球状となり圧縮される。
同時に前方の障害、――すなわち空気が撤去される。真空の道ができる。
狙っているのは攻撃を加えてきた鵺か。『正体不明』は何度目かも分からない文句を、決め台詞と言っても過言ではない言葉をポツリ、と。


(  ∀)「…たかだか世界を構成する要素を一つ掌握したぐらいで、この僕に逆らうなよ三下……」


――30億ボルト強の真空放電。
…自然界ではまずありえないレベルの電気が、真の『神の裁き』に昇華された瞬間だった。




31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:07:26.62 ID:ZCUywItS0
……………


|゚ノ; ∀)「…んっ……、はぁ…はぁ……」

そこは廃墟が立ち並ぶ荒地だった。数年前のとある一連の事件により周囲数十キロが吹き飛ばされた荒野だ。
少しずつ修復が進んできているが何分放射能と呪力による汚染がひどく、今なお塀に囲まれている。人の住める環境にするには後数年かかるだろう。
…そんなこの世の地獄だが、レモナという少女は何故か懐かしさを覚えるのだ。

(,,〃Д-)「…年端のいかない少女を追い回して喘がせよがらせるなんて……。まるで俺が悪役みたいだぞゴラァ」

|゚ノ ∀)「おまけに……僕の故郷にまで来てるし、ね……」

(,,〃Д゚)「故郷?…この地獄みたいな場所がか?捨て子か何かかゴラァ」

二人がいるのは『地獄』を一望できる廃ビルの屋上だ。この世界でおいて彼女が最も安心する場所の一つと言っても過言ではない。
確かに犯罪者や借金取りから逃げる人間などはこの地域に来ることもあり、子供が捨てられることも確かにある。
だがレモナの親は健在である。まぁ、それは『親』という言葉の定義にもよるのだが。

|゚ノ ∀)「…心のふるさとかな?」

(,,〃Д゚)「何を馬鹿な」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:10:26.74 ID:ZCUywItS0
二対の白虹色の翼を持つ少女は静かに可憐に微笑んだ。
気を抜けば見惚れてしまうような、――というか魂を抜かれてしまいそうな悪魔の笑みだ。

|゚ノ ∀)「…大気が汚染されているここでは、一年中これが見られるんだよ」

目線の先には、朱く光を放つ大きな満月。地獄に浮かぶ紅い月。
…人はそれを「ローズムーン」と言ったり「ストロベリームーン」と言ったりしたそうだ。
地上に近い満月は太陽光が散乱・吸収されるので紅く見えるらしい。それを知ってか知らずかギコは詩的な事柄を思い出した。

(,,〃Д-)「ストロベリームーンを共に見た二人は身体中が燃えるような恋をする、か……」

|゚ノ ^∀^)「ロマンチストだね、お兄ちゃん♪」


――レモナのフルネームは『レモナ・アルテミス・エルシール』である。
故郷がここだと言うことを考慮すれば、彼女の異称の数々は中々に奇をてらったものなのかもしれない。

|゚ノ ^∀^)「…ん、じゃあ手も治ったことだし……」

透き通るような肌色の腕はいつの間にやら治癒していた。
古代ギリシャ神学において『第五元素』は神を構成する元素とされ、下界の四つの元素全てと『アーエーテル』の上位互換とされた完全な物質だ。
天界の物質を操ることができるのだ。自身の腕の治療など朝飯前というところだろう。


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:13:26.59 ID:ZCUywItS0
|゚ノ*^∀^)「…さっきちょこっと気持ち良かったから、スイッチ入っちゃった♪」

腕を吹き飛ばされた激痛も、超越者である彼女にとっては『生の実感を得る手段』でしかない。
元来、痛みとは死から自分を遠ざける手段。圧倒的な強者であり滅多に傷を負うことのないレモナは痛みを感じることが極端に少ない。
――故にこういう場合彼女はその艶やかな四肢を激しい高揚感と快楽、そして『愉しさ』に襲われることになる。

|゚ノ* ∀)「身体中がジクジク疼いて、耳元で『殺せ殺せ』と誰かが喚いてるんだよ……。分かる?この感じ」

(,,〃Д-)「………」

しばし沈黙するギコ。
思案しているのか、それとも同情しているのか。

(,,〃Д゚)「……どちらにせよ、トリックが分からない時点で対策の使用もないぞ――ゴラァ!!!」

再び手を翳す。それだけでレモナの周囲が燃え始めた。
巻き込まれぬよう朱い月に向かい空に飛び出した彼女は狂ったような嗤いを。それは事実上の勝利宣告か。

|゚ノ*^∀^)「アハハッ!アハハハハハッ!!…もう分かっちゃったよ、そんな手品」

墜落するように地上に降りながら天使は言う。
…あの『正体不明』とは全く違う意味で澄み切った精神で。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:16:26.41 ID:ZCUywItS0


|゚ノ*^∀^)「君が使ってるのは、単なる『波形と振動』の魔法!!アハハッ、た~んじゅんっ!!」

ジュゥゥウウウ!!
…ギコが触れたもの、ついコンマ数秒前までレモナが乗っていたコンクリートが溶かされた。
自らの魔術の根幹を暴かれた英雄は焦るでもなく嗤う。それは奇しくも、彼女と同じ狂ったような表情だった。

(,,〃Д゚)「…その通りだゴラァ」

二匹の化物は平行するように移動しながら互いのチカラを激突させる。
もはや最初から最後、徹頭徹尾理解不能。建物の残骸を蹴り飛ばしながら恐ろしい速度で滅びた街並みを駆け抜けていく。


(,,〃Д゚)「音で言うなら三要素。…音圧、周波、振動だ。あらゆる物体に存在するその全てを操るのが俺の魔術」


羅刹剣『ルクス・デカログス』が再び構築される。形態は心を焼き尽くすような美しさを内包したロングソード『ソール』だ。
片手平刺突のような、いや第一の剣の見た目に合わせるならランジの方が相応しいか。高速の穿つ斬撃が放たれる。
…それを紙一重で避けるギコ。通り過ぎざまにレモナの右わき腹を手刀で斬った。

|゚ノ*^∀^)「腕が誤差なしで吹き飛んだのは、――『共振』だよね?」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:19:29.38 ID:ZCUywItS0
手刀、――正しくは音速を超えたことで発生する『ソニックブーム』で切り裂かれた身体を気にすることもなく少女は問う。
断熱膨張によるプラントル・グロワート・シンギュラリティが発生していることからも明確である。

(,,〃Д゚)「俺の国の魔術には音叉を利用し相手の波動を調べるものがある。…それの応用だゴラァ。三万弱のベクトル抽出は多少時間がかかったがな」

音を初めとする全ての『波動』。
呪力などの共振・共鳴の具合から『レモナ』という個体の構成物質を逆算。識別。確認。
…身体そのものが魔術的な音叉である彼なら容易いことだった。

(,,〃Д゚)「世界を構成している物質には『固有振動』というものが存在している。そして、外力・外場の振動数がこれに近づくと――」

|゚ノ*^∀^)「アハハッ!」

(,,〃Д゚)「――瞬間的に振動数が跳ね上がる!!」

グシャ、という音。足首から先が爆散した音だ。
『遠当て』などの波動による人体破壊系魔術の真骨頂。

対象の固有振動を把握することにより、全くの誤差なしで内部からの破壊を可能とする術式。物理学における『強制振動』を用いた奥義。
普通この現象で物体を破壊するのは不可能に近い。せいぜいガラスぐらいのものだ。
だが彼が使うのは魔法。――その程度の難題は乗り越えられる神代の英雄だ。
…酸素62.6%、炭素19.5%、水素9.3%、窒素5.2%。加えて骨のカルシウムや細胞核のリン等。『人間』を構成する原子など昔からほとんど変わらないのだから。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:22:30.90 ID:ZCUywItS0
(,,〃Д゚)「ゴラァ!!」

――手を翳す。ただそれだけであらゆるものが発火する。
直線上に存在する物質を分子レベルで振動させることで溶かす『超分子振動<マイクロ・ウェーブ>』。
マイクロ波と標的との相互関係による内部からの熱発生。誘電加熱であるそれは電子レンジとほぼ同じ理屈だ。

繭のように三対の翼で防御するレモナ。
対し、直にプラズマを叩き込もうとするギコ。

|゚ノ*^∀^)「アハハハハッ!!『ラウファーダ』」

(,,〃Д゚)「……ッ!無駄だ」

叫びに呼応し、いつの間にか配置されていた無数の打根が嵐のように吹き荒れる。
だが既に魔力の三要素は解析済みである。
…ギコが波動を発生させる度に、共鳴反応を起こし最小の暗殺武器は真っ白く溶かされ消えて行く。

|゚ノ*^∀^)「アハハッ、さいっこうに愉しいよ!アハハハハッ!!!」

空気が悲鳴を上げ破裂する。衝撃波が廃墟郡を薙ぎ払っていく。
爆発的に展開される六枚の神秘的な光を湛えた白虹色の翼。紋章の刻まれた手から迸るのは神代の化物に相応しい膨大な波動。
…その二つの何度目かも分からない激突。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:25:26.95 ID:ZCUywItS0


――四元素を超越した天界の物質を生み出し、そして振るう者。
――他方。世界の根幹を掌握し、理解・利用することで全てを破壊し尽す者。

地獄に日が昇るのが先か、決着がつくのが先か。
それとも、次元の崩壊が起こるのが先なのだろうか。

『終わりの始まり』なのか。『始まりの終わり』なのか。
誰にも分からない。おそらく当人達にも分からないのだろう。


|゚ノ*^∀^)「アハハッ!もっと、僕を愉しませてよっ!!」

(,,〃Д゚)「下らないこと考えなくていいように、ちゃっちゃと殺してやるぜぇゴラァ!!」


…宵の後。なんにせよ、彼等の目眩く恍惚と混乱と狂騒はまだ終わりそうになかった。
見守る紅い月が嗤っている気がした。

いつかのように。
もう離れ過ぎてよく思い出せない、幸せだったあの日々のように。


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:28:29.82 ID:ZCUywItS0


九日目 暁 終



…分かっていた
そんなこと、ずっと昔から分かってた
どんなに今が楽しくても その幸せはいつかは消えてしまう

ちょうど…… 酔いが醒めたみたいに
後に残るのは表現することのできない哀しさと、虚しさ
そして、二度と取り返せないものを求めて 暗闇に吼えることになるんだ


……ねぇ 僕のこと好きだった?
僕は君達のこと好きだったよ

誰かと一緒にいたいと願うことは、この時間がずっと続いて欲しいと想うことは、
…そんなにいけないことだったのかなぁ……


―― できることならば、互いに幸せに終わる物語を ――



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:31:29.01 ID:ZCUywItS0
ご支援ありがとうございました。
高速で伏線回収を始めました。何を拾ったのか調べてみると面白いのかも。短編一作品使って伏線出したぜ。
…あと、自分は「波動力学」とかそこら辺付け焼刃の知識しかないので指摘お願いします。


【ざっつだん・魔術考証】
『四大元素説』は一度は耳にしたことがあると思います。それに『第五元素』を足して拡張したのがアリストテレス。
この「空気・土・水・火」という考え方は現在の「気体・個体・液体・状態変化」に対応し、エンペドクレスなどは何気に質量保存的な意見も残しているそうです。
『第五元素』こと『エーテル』は作中にあるよう「天界を構成する物質」とされていました。
また人間の魂はエーテルで出来ておりそれが離れた瞬間より肉体が崩壊し始める、という理屈だったとか。悪魔が魂求めるのも分かる気がします。

アルカの言っていた通り、振動は物体を通じて伝わる。
すると「完全な『虚無』は存在しない」という理論である四大元素説は相性最悪。
…まぁ覚醒過去ギはアルティメットクウガ的な化物なんで、相性とか以前にまともに戦うのがほぼ無理なんでしょうが。



では、すべらない話が見たいのでさよならです。
皆さん良い年末を。…次回は、次回こそはいづなの話をやります。



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:37:40.96 ID:P0gRATnUO



42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:38:22.00 ID:A1gJUaqIO
面白かった乙


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:39:23.50 ID:/Ieowfj1O


プギャーも気になる


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 21:50:09.12 ID:oT6umF7dO
きてたっ!
乙カレーです!
錬金術は金をつくることだったような


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