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◆(,,゚Д゚)消去士のようです Chapter 4   Bad Job

前の話/インデックスページ/次の話

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:21:06.25 ID:fT7d6Eau0
まとめていただいたサイトさん

くるくる
ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-338.html
ブーン文丸新聞
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/erasure/erasure.htm


がんばるぞー


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:27:05.83 ID:fT7d6Eau0
生きることについて不足はないかと問われれば、はいと答えて頷くしかないのだろうけれど―――――
過不足はないかと聞かれれば、僕は低いうなり声を上げて首をひねるだろう。

生きるためには食べなくてはならない。
食べるためには仕事をしなくてはならない。
そんなふうな意味の台詞を平気な顔をして吐く人間を、僕は決して信用しない。

(;・∀・)「くそっ」

汗ばんだ手でハンドルを握り直し、クラッチを踏んでギヤを上げる。
目の前に続く広い道路の上を、僕を乗せたアメリカ製の自動車は駆け抜けていく。

やる気のない障害物のような車両たちが、僕の行く手をノロノロと走っている。
その間を冷や汗をかきながらすり抜けつつ、バックミラーで後方を確認した。

後方約30メートルといったところに、武装した人員を満載した軍用車が見えた。

( ・∀・)「いい加減にしろよ………」

前と後ろ、両方に向かって毒づいた。
いい加減にしろよ。

( ・∀・)「カーチェイスなんて僕の柄じゃないぞ」

フロントガラスの上方に広がる空は、昼間だというのに陰気な光を僕らに注いでいた。
ゆっくりと流れゆくドス黒い塊が、雲なのか光化学スモッグなのか、それとも別の何かなのかすら分からない。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:31:38.76 ID:fT7d6Eau0
(;・∀・)「うわっ!」

またしても、車の後部で甲高い金属音が鳴った。
振り向くまでもない。
奴らの攻撃が再開されただけの話だ。

飛来する銃弾の嵐。
タイヤを狙われないよう、車体を左右に振りつつ運転することしか、今の僕に出来る事はなかった。

(#・∀・)「あのさぁーっ!撃つのは構わないけどさー!」

(#・∀・)「この車、僕のじゃないんだよねーっ!おーい、聞こえてるー!?」

聞こえるはずがない。
それに、僕の声が聞こえていようといまいと、彼らは殺意を飛ばし続けるだろう。
それでも僕は叫ばずにはいられなかった。

なにしろ、休みなく訪れる兆弾が何度も僕の体を掠めていくのだ。
その度に僕は身を縮め、ベルトに挟んであるシグ・ザウエルに右手を伸ばした。
同僚の女の子から借りたものだ。無くすわけにはいかない。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:36:28.77 ID:fT7d6Eau0
(;・∀・)「貧乏くじ」

実に貧乏くじだ。
ふざけてる。

( ・∀・)「一人で愚痴っていても仕方ないよな……」

( ・∀・)「……スムーズに、スマートに」

呟いた時、道路上にせり出した四角い標識が目に入った。
まるで他人事のようにすました表情をした鉄板には、かすれた白いペンキでこう書かれていた。



『VIP CITY PORT この先2km』


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:40:04.30 ID:fT7d6Eau0




Chapter 4   Bad Job





9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:44:05.24 ID:fT7d6Eau0
僕はある小さな請負事務所で働いている。
従業員は代表取締役を入れても3人、うち一人が経理だ。

経理はなかなか頭の良い女の子で、趣味も悪くない。
若いし、容姿だって良い。
それに、この街でまともな考え方をする数少ない人間のうちの一人でもある。
僕の朝が彼女の挨拶から始まることを、僕は実に光栄だと思っている。

だから今朝、僕が事務所の扉を開けて手を上げた時、冴えないおじさんの無愛想面が目に飛び込んできて、
臓物が5メートルほど沈下したような気分になったのは仕方のないことだった。

(,,゚Д゚)「ん」

酒と煙草で潰れた声で、彼は僕を興味なさそうに迎えた。
彼にとっての朝の挨拶とは、これだけの発声で済むらしい。
僕はこれでも一応大人だと自負しているので、片手を上げて応えた。

( ・∀・)「やあ」

(,,゚Д゚)「最近、見なかったな」

( ・∀・)「立て込んでてね。もうひと段落ついたよ」

(,,゚Д゚)「うん、忙しいことはいいことだ」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:49:18.47 ID:fT7d6Eau0
それだけ言って、代表取締役はソファーに寝転び、煙草を吸った。
よくよく見てみると、テーブルの上にはウィスキーの瓶が置いてあった。
グラスと氷とマドラーまである。
彼は文庫本を片手に、時々思い出したように酒を口に含んでいた。

(,,゚Д゚)「あー………」

なんという事だ。信じられない。
こんな現実があっていいのか?

それでも僕は感情を顔に出さず、窓の外に目を向けたまま彼に話しかけた。

( ・∀・)「今日はやけに早いじゃないか」

(,,゚Д゚)「いや、昨日は家に帰るのが面倒だったんだ」

( ・∀・)「なに?」

(,,゚Д゚)「外で飲み過ぎてさ。どこに車を置いてきたのかも覚えてないんだよ」

どこかで俺の車を見なかったか、とロクデナシ。
朝からふざけた事を言う人間だ。昨日からずっとこの事務所で飲んだくれていたらしい。
部屋の中が酒臭くて仕方がない。

見たとしても教えない、と僕は答えた。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 19:55:08.89 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「なぜこの事務所にウィスキーがある?」

(,,゚Д゚)「そこの書類棚の上にストックがあるんだよ」

こともなげに言う。
どこまでも下種な男。

( ・∀・)「トソンちゃんは?」

(,,゚Д゚)「ん?」

( ・∀・)「トソンちゃんだよ」

(,,゚Д゚)「さあて、道草にドレッシングでもかけて食ってるんじゃないか」

( ・∀・)「…」

(,,゚Д゚)「そうそう、依頼があるぞ」

依頼がある。つまり仕事があるということだ。
だったらなぜ君は酒を飲み続けているんだ。

(,,゚Д゚)「おまえ、前の一件は片付いたようだな」

( ・∀・)「まあ」

(,,゚Д゚)「新しい依頼はさ、ほら、狐の会社からなんだよ。俺はあいつが苦手でね、お前が行ってくれ」

そして彼はまたソファーにゴロンと横になり、本の続きを読み始めた。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:01:37.37 ID:fT7d6Eau0
僕が言葉を失っているうちに、事務所への階段を上がってくる靴音が聞こえてきた。
キレのいい、さっぱりとした革靴の音だ。

(゚、゚トソン「おはようございます」

扉を開けて事務所に入ってきたのは、果たして経理の女の子だった。
彼女は僕を見、そしてソファーに転がっているロクデナシを見、僅かに眉をよせた。

(゚、゚トソン「あら、珍しいこともあるんですね。ギコさんがこんな時間に事務所に来てるだなんて」

(,,゚Д゚)「ん、まあね」

(゚、゚トソン「今日は空から糞便が降るでしょう」

(,,゚Д゚)「きみ………」

ざまあみろ。
心の中で毒を吐き、僕はようやく顔に笑みを浮かべた。

( ・∀・)「おはよう、トソンちゃん」

(゚、゚トソン「おはようございます」

( ・∀・)「良い天気だね」

(゚、゚トソン「そうですか?いつも通りの薄汚れた空でしたよ」

( ・∀・)「そういやそうだ。でも、今日はいい天気なんだよ」

(゚、゚トソン「新しい依頼がありますね。FOX.カンパニーから」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:05:51.87 ID:fT7d6Eau0
経理の女の子はデスクについて、一束の書類を手に取った。
僕も何気なく歩み寄って、彼女の後ろから内容を覗き込む。

うむ、今日も彼女は良い匂いだ。
香水は付けないと言っていたはずだが、この香りはどこから来るのだろう。

( ・∀・)「どんな内容だい?」

(゚、゚トソン「奪還依頼。装備が必要です」

( ・∀・)「ふうん………?」

経理の女の子はポケットから鍵を取り出し、引き出しのカギ穴に差し込んだ。
引き出しを開けると、彼女は奥へ手を突っ込み、そこから一丁の拳銃を取り出した。

(゚、゚トソン「ふむ」

弾倉を引き抜き、弾薬が詰め込まれているのを確認。
彼女はそれを再びグリップに挿入した。

スライドを引いて銃口をデスクの向こうに向けると、間髪入れずに引き金を引く。
僕の視界の奥、ロクデナシの手に握られたウィスキーの瓶が、短い発砲音と共に砕けた。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:19:20.21 ID:fT7d6Eau0
(,,゚Д゚)「 」


ウィスキーまみれになって、空の右手を呆然と眺める取締役。
滴が垂れるポタポタという音が、気恥かしそうに響いた。

経理の女の子は弾倉を抜き取り、9ミリパラべラム弾をひとつ詰め直し、言った。

(゚、゚トソン「シグ・ザウエルP226。スイス製、装弾数は15プラス1発です。威力も悪くありませんよ」

( ・∀・)「………」

(゚、゚トソン「あの酔っぱらいでは仕事になりません。モララーさん」

( ・∀・)「はい」

(,,゚Д゚)「もったいない……もったいない………」

彼女は僕に銃と予備の弾薬を渡し、それからテーブルや床、ソファーに零れたウィスキーを舐めまわす取締役を一瞥した。
そしていつもの、表情のない声で、言った。


(゚、゚トソン「気をつけて行ってきてください。何かあったら、すぐに連絡を」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:25:06.69 ID:fT7d6Eau0


君がいけよ――――――



そんなことを口が裂けても言えるはずもなく、僕はすぐさま先方に連絡をつけ、事務所を後にした。
経理の女の子に逆らう事はできない。
粉々にされたくなければ、黙って仕事をこなすしかないのだ。

依頼主はFOX.カンパニーの創設者であり現社長のフォックス氏からだった。
全国に多くの支社を持つ、巨大民間企業であるFOX.カンパニー。
それは表の顔で、裏ではとても口には出せない非合法な活動を行っている会社だ。

本社はこの街から遠く離れた、もっと安全で綺麗な場所に建てられている。
フォックスはこの街が嫌いだと言っていた。
酷く臭うのだそうだ。

人生の成功者は何を思って生きるのだろう。
想像もつかない。僕とは違う種類の生き物なのだから、当然だ。

そんな事を考えながら中古の軽自動車を駆ること数十分。
僕の体はヴィップシティーの西部寄りにあるダウンタウンに潜り込んでいく。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:28:58.60 ID:fT7d6Eau0
指定された場所には、唸り声を上げている黒塗りのセダンが停まっていた。
僕の姿を確認したのだろう。二人の男がドアを開けて這い出てきた。

<_プー゚)フ「やあ」

( ・∀・)「どうも。ラウンジ事務所のモララー・ワインストックです」

どうやら、依頼主側の人員は二人だけのようだった。
僕を入れて計三人。ふうむ。

<_プー゚)フ「エクスト・プラズマンだ。いや、まことにお久しぶり」

( ・∀・)「ははあ………4月抗争の時の」

<_プー゚)フ「覚えてるかい?」

彼は実に愛想の良い中年の男だった。

僕がラウンジ事務所に身を置いたばかりの当時、ある依頼で彼と行動を共にしたことがあった。
やたらとピカピカな革靴を履いた男。
それだけが印象に残っている。

とはいっても、それほど関わったわけではない。
せいぜい顔を合わせた程度で、双方が双方を記憶していたことは、奇跡に近い。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:31:54.92 ID:fT7d6Eau0
フォックスの会社とは何度か付き合いがあったので、まあ、こういう事があっても不思議はないのかもしれない。
あまり深入りせず、スムーズに仕事をこなしていれば問題はないのだ。

スムーズに、スマートに。
それが僕のモットーである。

<_プー゚)フ「こいつが俺の部下、フィレンクト」

(‘_L’)「よろしくお願いします」

( ・∀・)「やあやあ、よろしく」

<_プー゚)フ「彼はまだウチに来て日が浅くてね。まあ、足だけは引っ張らないよう教えてるよ」

フィレンクトと呼ばれた男は、背がひょろりと高く、寡黙そうな顔つきをしていた。
年齢は20代後半だろうか。他にこれといった特徴はない。
特徴などなくても、手があれば銃は撃てる。それで充分だ。


(‘_L’)「……そろそろ時間です」

<_プー゚)フ「そうだな。立ち話もこれくらいにして、仕事をしようか」

フィレンクトが揺るぎない動作で、彼らの乗ってきた自動車の後部ドアを開けた。
まるで五つ星ホテルの玄関でベンツのドアを開けるベル・ボーイのようだった。

(‘_L’)「どうぞ」



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:34:00.48 ID:BIPk8PNw0
消防士(ry
支援


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:36:14.95 ID:fT7d6Eau0
車の窓にスモークが張られているせいで、流れゆく外の景色が薄暗く見える。
もとからこの街は灰色だと言われたら、僕には返す言葉を見つけられないが。
それでもやはり、気が滅入るような街並みだ。

運転席にはフィレンクトが座り、瞬き一つせずにハンドルを握っている。
助手席にエクスト、後部座席には僕一人だ。

エクストは煙草に火をつけ、僕の方を振り向きもせずに言った。

<_プー゚)フ「依頼の内容を確認しようと思う」

<_プー゚)フ「我々があんたに依頼した内容は、奪還作業の補助。大筋は把握してるな?」

( ・∀・)「ええ」

<_プー゚)フ「事の発端は三日も前のことだ。FOX.カンパニーが秘密裏に開発した“ある発明”が、盗難に遭った」

<_プー゚)フ「これがなかなか面倒な代物でね。国内にあるうちはまだいいんだが」

<_プー゚)フ「よその国に流されると、実に危うい。会社存続の危機どころではない。国家の崩壊にも繋がりかねないものだ」

( ・∀・)「国内有数の巨大民間企業の発明が、国を滅ぼすと………いったい何を作ったんです?」

<_プー゚)フ「あんたに知る必要が?」

( ・∀・)「いや、無いですね。もちろん」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:39:53.07 ID:fT7d6Eau0
<_プー゚)フ「要するに―――――『盗まれたヤバい物を取り戻せ』」

<_プー゚)フ「映画や小説、テレビゲームなんかでよくある話だよ」


窃盗犯の調べはついている。
エクストはそう言った。

我が社のセキュリティーをかいくぐる程の実力を持っているとなれば、目星をつけるのはそう難しいことではない。
窃盗の手口と奴らの残した僅かな痕跡から、ある有名な地下組織に行き当たった。
元・外国人傭兵で結成された実力派非合法部隊。


( ・∀・)「“インビジブル・フォース”か」

<_プー゚)フ「ご名答。あの悪名高い殺人鬼集団だ」


金のためなら文字通り何だってするような組織であり、その実力はかのプレジデント・フォックスでさえ認めている。
フォックスは戦力と戦略を考慮に入れた結果、エクストとフィレンクト、そして助っ人としてラウンジ事務所の人間を一人借り、
“インビジブル・フォース”からのブツの奪還に乗り出したのだという。
もちろん社長自身は上等な社長室の椅子に腰かけたままだ。

その結果、僕は今、ここで車に揺られている。
まんまと貧乏くじを引いてしまった。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:41:26.54 ID:onDpEI0+0
>>21
俺も最初(ry

支援


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:43:29.48 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)(狐め………あのロクデナシの元消去士が出てくると期待していたな)

<_プー゚)フ「“インビジブル・フォース”は間違いなくこの街に潜んでいる。それが我々の見解だ」

( ・∀・)(でなきゃ、こんな安上がりな三人構成の即席部隊に、そんな凶悪な組織の相手を任せるものか)

<_プー゚)フ「奴らとの接触の機会は、この街の港で得られるだろう」

( ・∀・)(困るんだよな、ちゃんとエージェントの指名を前もってしてもらわないと)

<_プー゚)フ「麻薬だろうと銃だろうと核兵器だろうと、金になる物なら何だってじゃんじゃん運び入れ、運び出す“ブロークン・ポート”」

( ・∀・)(うちの事務所で一番戦闘能力が低いのは、何を隠そうこの僕だってのに)

<_プー゚)フ「盗まれたブツは間違いなく、この街の“壊れた港”から運び出される。検閲も糞もない、密売人御用達の港だからな」

<_プー゚)フ「馬鹿げた細工をして航空輸送する必要もない。ただ持ってきた物を船に乗せ、ハンカチを振って見送るだけ」

( ・∀・)(面倒な仕事だ。僕も酒を飲んで酔っ払っていればよかった)

<_プー゚)フ「奴らの待つ船が、もうすぐ港に着くはずだ。その汽笛につられて顔を出したくそったれ外国人共を、我々三人でとっちめる算段なのさ」

( ・∀・)(しかし、二人並んでトソンちゃんに撃ち抜かれるのもな………いやはや)


<_プー゚)フ「ふざけた話だ」

( ・∀・)「まったく」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:47:22.78 ID:fT7d6Eau0


(‘_L’)「伏せてください」

フィレンクトが、前触れもなく、ごく低い声で言った。
同時に僕の後頭部のすぐ後ろ、強靭に作られたはずのリアガラスに、蜘蛛の巣状のひびが入った。

(;・∀・)「ぬあっ!?」

(‘_L’)「申し訳ない。つけられていたようです」

素早く後ろを振り返り、異常の原因を探す。

(;・∀・)「……あれか!?」

僕たちを乗せた車の二十メートルほど後方を、一台の軍用車が走っていた。
そのジープのウィンドウから上半身を突き出し、機関銃を抱えてこちらを狙う男がいる。
黒い覆面を頭から被り、二つ開いた小さな穴の奥から、殺意を込めた目でこちらを睨んでいた。

まさか、と僕は思った。

(;・∀・)「“インビジブル・フォース”!?」

<_プー゚)フ「左の路地だ!フィレンクト!」

(‘_L’)「了解」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:52:20.94 ID:fT7d6Eau0
慌てて座席に座り直し、姿勢を低く取った。
襲撃者から目をそらす寸前、割れたガラスの向こう、男の手元が再び火を噴いた。

数珠繋ぎに聞こえる銃声。弾丸が車体を削る音。ガラスの砕ける音。
それらをかき消すように、エンジンの唸る低い音が腹に響いた。

慣性の法則を存分に証明しながら、車は路地を曲がる。
銃撃はひとまず止んだものの、代わりに僕は即頭部をしたたかにウィンドウに打ちつけた。

(;-∀・)「ど、どうなってる!?」

衝撃に眩む頭を押さえながら叫ぶ。
フィレンクトが返した。

(‘_L’)「敵襲です。相手はおそらく“インビジブル・フォース”」

(;・∀・)「そんなことは分かってるんだ!」

(;・∀・)「なぜ僕たちの行動が奴らに知られているんだよ!?」

<_プー゚)フ「そう興奮しない。モララーさん」

<_プー゚)フ「起こってしまったことは仕方がない。問題は、これからどうするか」

ふむ、確かにそうだ。
いくら声を張り上げたって、奴らは許しちゃくれないものな。
スムーズに、スマートに。
クール・ダウンだ、ワインストック。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:53:07.85 ID:4V8U9zmq0
戻ってきてくれたか支援


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:55:35.12 ID:fT7d6Eau0
<_プー゚)フ「とにかく、港から離れるわけにはいかないぞ」

(‘_L’)「わかっています」

言葉の終わりに被せるように、重機関銃の派手な発砲音が耳を刺した。
車の右前方の地面が抉れ、小さな粉塵がいくつも上がった。

(;・∀・)「また銃撃だ!」

頭上に響く金属に穴の開く音。
見れば僕の太腿のすぐ脇、シートの上に、弾痕の列が出来上がっていた。

(‘_L’)「上からです。姿勢を低く」

道路脇に建ち並ぶ胡散臭いビル群。
そのどれか、上階からの狙撃だ。

( ・∀・)(定位置からの狙撃………この周囲に包囲網が張られている?)

( ・∀・)(おかしな話だな)

フィレンクトはギヤを落とし、アクセルをさらに踏み込んだ。
タコメーターのエンジンの回転数を示す針が急上昇し、速度計は瞬く間に振り切れていく。
油断ない手つきでハンドルを操りながら、隣に訊いた。

(‘_L’)「大通りに出ますか?」

<;プー゚)フ「いや、騒ぎを大きくしないほうがいい」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 20:58:13.03 ID:fT7d6Eau0
額に脂汗を浮かべ、エクストが言った。

<;プー゚)フ「大通りは人気が多すぎる。余計な犠牲者は出したくない」

<;プー゚)フ「シベリア・ストリートに出よう」

(‘_L’)「了解」

路地は狭く、車が二台すれ違うことさえできないほどの道幅だった。
そこをフィレンクトは、躊躇いなくアクセルを踏みしめ車を走らせた。

(‘_L’)「むっ」

遥か前方の十字路に、異状が現れた。
“インビジブル・フォース”の武装集団だ。

( ・∀・)「ちょっと待て」

こちらに向けられている、円柱型の弾頭。
膝を地面について、携帯型ロケットランチャーを肩に担ぐ男がいた。
俗に言うRPGってやつ。

ちょっと待て。

<;プー゚)フ「フィレンクトッ!!」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:01:11.93 ID:fT7d6Eau0
突発するブレーキ音。
体が前に吹き飛ぼうと躍起になるのを、シートにしがみついて防いだ。
この車のブレーキが、アンチロック・ブレーキ・システムを備えていることを祈った。

(;・∀・)「う……撃ってきたぞッ!!」

揺れる視界の先で、ロケット弾がこちらに向けて放たれたのが確認できた。
円錐形の弾頭が、驚異的な加速力で接近してくる。

<;プー゚)フ「右だ!!」

(;‘_L’)「くそっ!」

ロケット弾と接触する寸前で、車はようやく方向転換を始めた。
まさに神の加護としか言いようのない位置に道が伸びており、僕たちを乗せた車はボディの側面を鉄筋コンクリートに削られながら、その神の道を右折した。
僕の目と鼻の先、ウィンドウを隔てた数インチ先の空間を、ロケット弾が通過していくのがはっきりと見えた。

( ・∀・)「やったぞ!かわした!やった、信じられない!ざまあみろ!」

まさに奇跡としか言いようがない。
エクストは目を閉じて胸に深い息を吐きかけ、フィレンクトはわずかに口の端を上げた。
さすがの彼も焦ったのだろう。頭を上に向け、首を鳴らしていた。

<_プー゚)フ「よくやった」

(‘_L’)「どうも」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:03:54.40 ID:fT7d6Eau0
三人の奪還者を乗せた車は、“ブロークン・ポート”に繋がるシベリア・ストリートを東へ走った。
僕はしばらくビクビクしながら車の後ろを振り返っていたが、追手は現れなかった。
それでも先ほどから頭の隅に引っ掛かっている違和感は取れず、妙な思考がシナプスを廻っていた。

ところで、この街は左下の部分が抉れた卵のような形をしている。
ヴィップ・シティーという名前の卵に開いた穴は、やがて港になり、いろいろな物が無制限に出入りするようになった。
面積は約2000k㎡。衛星から見たら、卵というよりは胡麻ほどの大きさだ。

街の中央、南北に敷かれたセントラル・アベニュー。
その太くて長い生命線を断ち切るように、多くの道が東西に走っている。
その一つが、今僕らのいるシベリア・ストリートだ。

港に届けられた物資を効率良く国内に運び出すため、他の道より整備が整っていて、広さも充分にある道路である。
もっとも、港に運び込まれている物はそれほど立派なものではないのだが。
例えば銃器にシャブ、奴隷に爆薬。そしてわけのわからない発明品。

その奔放さが、今回の僕にとって悩みの種なのだ。

<_プー゚)フ「ブリーフィングだ」

エクストが言った。
その声は、会った時よりもずっと固くなっていた。

<_プー゚)フ「なぜ“インビジブル・フォース”が我々の行動を予測していたのか。その原因はひとまず置いておこう」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:07:28.85 ID:fT7d6Eau0
窓の外では、大型のトラックや軽自動車、ワゴンなどが群れをなして道路を覆っている。
僕らは少々沈黙した。

過去を振り返ることは大切だ。
未来を見据えることも同様に。
問題は、人間の目は一方向しか見ることができない点にある。

( ・∀・)「つまり………」

( ・∀・)「これからの襲撃をどう退けて、無事港にたどり着くか」

エクストは頷いて、続けた。

<_プー゚)フ「二手に別れようと思う」

( ・∀・)「………囮を使うと?」

<_プー゚)フ「ああ、それが最善な策だ。さもなくば全滅もありうるぞ」

二人と一人に別れ、一人が“インビジブル・フォース”の餌となる。
エクストが言いたいのはそういう事だ。

もちろん、囮となった者は五体満足で任務を終えることはできないだろう。
“インビジブル・フォース”を相手に一人で立ち向かい、無事に帰ってこれるような人間は、世界に数人もいないのだ。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:12:13.73 ID:fT7d6Eau0
それでもこの世界では、任務を失敗するより命を削られたほうがまだマシなのだと。
本気でそう考えている者もいる。

<_プー゚)フ「間もなく奴らは我々に追いつくはずだ。グズグズしてはいられない」

( ・∀・)「誰が囮を?」

(‘_L’)「私が」

その声を聞いて、僕はひとまず胸を撫で下ろした。
囮役をやって痛い目を見て、その上依頼も果たせないだなんて、やっていられるわけがない。
エクストも良い部下を持ったものだ。

しかしエクストは正面を向いたまま、車の波を見つめて言った。

<_プー゚)フ「いや、俺がやる」

フィレンクトの顔が横を向く。
ちゃんと前を向いて運転してほしかったが、その表情を見て文句を垂れることなどできなかった。
彼の声は真剣だった。

(‘_L’)「なぜあなたが?」

<_プー゚)フ「フィレンクトには港で動いてもらわなければならないし」

<_プー゚)フ「ラウンジ事務所のエージェントにデコイ役などやらせたら、社長に何と言われるか」


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:15:28.30 ID:fT7d6Eau0
<_プー゚)フ「だから俺がやる。俺だって腕に自信がないわけじゃない。陽動くらいこなしてみせるさ」

(‘_L’)「しかし…」

少々の押し問答の結果、囮役はエクストが務めることで片が付いた。

( ・∀・)(僕じゃなければどうでもいいよ)

彼らが静かな声で言い合っている間、僕は車両が蠢くシベリア・ストリートの景色を何となしに眺めていた。
ひしめき合う鉄の箱たちが、街の血管内を詰まらせ、流れをせき止めている。
要するに、渋滞だ。

<_プー゚)フ「港は街の南東。奴らはこの通りから南に外れた市街地に巣を張っているだろう」

<_プー゚)フ「俺が先に道から外れて、西側から奴らを突く。合図の銃声が聞こえるように、窓は開けておけ」

<_プー゚)フ「敵陣が少しでも手薄になったら、迷わず突っ切るんだ」

( ・∀・)「でも、この渋滞だよ?」

<_プー゚)フ「歩道を走れ。とにかく時間がないんだ。こうしている間にも、奴らの待つ船が“ブロークン・ポート”に近付いている」

<_プー゚)フ「多少の騒ぎが起きても構わない。俺の犠牲を無駄にするな」

(‘_L’)「………了解しました」


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:20:19.54 ID:fT7d6Eau0
エクストの顔は脂汗で光っていた。
表情は変わらないが、声と体が小刻みに震えている。

そりゃそうだ。
これから彼は、ほぼ間違いなく死ぬのだから。

<_プー゚)フ「……じゃあな。うまくやれよ」

エクストはそう言い残して超低速運転の車から降り、後方へと消えていった。
僕は彼の後姿に手を合わせようとして、やめた。
あの無表情だったフィレンクトが、眉間に皺をよせてバックミラーを睨んでいたからだ。

( ・∀・)「助手席に移っても?」

(‘_L’)「どうぞ」

( ・∀・)「じゃあ失礼しますよ………よっこいせっと」

フロントガラスの向こうに見えるのは、相変わらずの渋滞だ。
常軌を逸した数の、様々な形と色を持った自動車がひしめいている。
その運転手たちが何処へ向かおうとしているのか、僕には見当もつかなかった。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:25:16.55 ID:fT7d6Eau0
しばらく黙っていると、フィレンクトが言った。

(‘_L’)「治安は最悪ですが、以外と栄えている街ですね」

( ・∀・)「どうかな。車が多いから栄えているってわけじゃないと思うよ」

( ・∀・)「それより、このスピードで間に合うのか?君のドライビング・テクニックで、このノロマ共の間をすり抜けていけないか」

(‘_L’)「無理ですね。片輪走行なら少しはできますが、距離が長すぎます」

( ・∀・)「冗談で言ったんだよ」

エクストは徒歩で敵陣へ向かった。
陽動作戦が始まるまでに、まだ少し時間がある。
かといって、この渋滞を眺めながら合図を待つというのも気が滅入る話だ。
いっそのこと、隕石か何かが僕らの目の前に落ちて、この目障りな自動車軍団を一掃してくれればいいのに。



(‘_L’)「――――マズい」


( ・∀・)「えっ?」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:30:39.94 ID:fT7d6Eau0
火の海に呑まれる街で異星人と格闘するという妄想を繰り広げていた僕は、一瞬、何がマズいのか分からなかった。
フィレンクトの焦り様に戸惑いながら、周囲を見回す。

運転席のウィンドウの向こうから、ロケット弾が飛来してきていた。
この光景、さっきも見たぞ。
デジャブか?


(;・∀・)「くそったれ!」


一発目の後を追いかけるように、二発目が発射された。
さらに三発目を確認した時、僕の襟首が運転席側に引っ張られた。
首が折れるかと思うほどに強い力だった。

(;‘_L’)「早く降りて!」

フィレンクトはすでに車から脱出し、渾身の力で僕を引きずり出している最中だった。

(;・∀・)「ちょっ………痛い、痛いって!」

いろんな所にいろんな物を引っ掛けながらも、どうにか地面に足を着く。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:34:51.98 ID:fT7d6Eau0
(;‘_L’)「伏せてください!!」

言葉と同時に、フィレンクトは僕を地面にねじ伏せ、自身も道路上に倒れ込んだ。
三発の飛行爆弾は僕たちの頭を掠め、さっきまで乗っていた黒塗りに立て続けに着弾した。

信じがたいエネルギーを持った爆発が、周囲に炸裂した。



(  ∀ )「――――――………ッ!!」


衝撃波が着弾地点を中心に拡散。
細切れになって爆散する金属片が、あらゆるものに突き刺さり、破壊していく。
爆風に巻き込まれた数台の自動車が、人を乗せたまま宙を舞った。

そうした被害は、もちろん僕とフィレンクトにも及んだ。
地面が固いコンクリートだったため爆発力は上方へ集中したものの、腹の下に入りこんだ爆風は僕らをハンマー投げのハンマーのように、
放物線を描いて対向車線まで吹き飛ばした。

唯一運が良かったのは、走行中の対向車の運転手が驚愕の表情を浮かべ、僕たちを撥ね飛ばす寸前に急ブレーキを掛けてくれた事だけだった。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:35:19.65 ID:1GISaDKy0
これ好きだったぜ支援


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:39:57.58 ID:fT7d6Eau0
貧乏くじだ。
まったくもって。
これほどの貧乏くじを引いたのはいつ以来だろう。



(  ∀ )「―――」



最も腹が立つことは、僕がこんな目に遭っている今も。

あのロクデナシはソファーに座って、経理の女の子と下らない話をしながら酒を飲んでいるだろう事だ。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:43:06.28 ID:fT7d6Eau0


『………臨時ニュースをお伝えします…………先ほど、午前11時頃………』

事務所のソファーに転がって、ウィスキーをちびちびと舐めながら煙草をふかす。
誰も目を向けない古いブラウン管テレビからは、ニュースキャスターの訓練された、しかし興味の持てない声が流れ出ている。
目の前のデスクには経理の女の子が座り、パソコンの前でキーボードを叩いている。
それをぼんやりと眺めながら、またウィスキーを傾ける。

(,,゚Д゚)「世界平和か………今なら実現できそうだ」

これほどにくつろげる時間が持てる幸せを、俺は歯が折れるほどに噛み締めていた。

これも全て、あのスケコマシ野郎のおかげだ。
帰ってきたら酒の一杯も奢ってやろうか。

いや、やめた。
男に酒を奢る男がこの世界に存在していいものか。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:46:39.18 ID:fT7d6Eau0
(,,゚Д゚)「でもね、ワインストックには感謝してるよ。本当に」

(゚、゚トソン「そうですか」

(,,゚Д゚)「あいつは俺が唯一信頼している男さ。それはあいつだって同じだろう」

(゚、゚トソン「今日は燃えるゴミの日でしたね。25歳のおじさんが入るような袋ありましたか?」

(,,゚Д゚)「ちょ、ちょっと待ってよ。なんでそうなるんだ」

(,,゚Д゚)「俺だって、なるべく君の気に障らないよう言葉を選んで発言してるんだよ」

必死の弁解も空しく、経理の女の子はまさにゴミを見る目で俺を睨んだ。
まあいいか。俺がゴミであることは否定できないものな。

(゚、゚トソン「何が世界平和ですか。ニュースを見てください」

(゚、゚トソン「連日報道される殺人、誘拐、強盗、暴行、凶悪事件の数々………」

(,,゚Д゚)「いいじゃないか、そのおかげで俺たちは飯が食えるんだ」

(゚、゚トソン「それは事実ですが、あなたが言うと殺意が溢れ出るのを止められません」

(,,゚Д゚)「泣いてもいい?」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:51:01.87 ID:fT7d6Eau0
また一つ、小さく削られた爆発音が、この事務所に届いた。
揺れは感知できないが、音は聞こえる。
どこか離れた場所で、大規模な爆破活動が行われているようだった。

(,,゚Д゚)「この街に鉱山なんてあった?」

(゚、゚トソン「あるわけないじゃないですか。ギコさん、大丈夫ですか?」

(,,゚Д゚)「そういう返し、結構傷つくからやめて」

(゚、゚トソン「それにしても今日は多いですね」

(゚、゚トソン「ひょっとしたらモララーさんかも」

(,,゚Д゚)「あいつはこんな騒ぎ起こさないさ」

(,,゚Д゚)「知ってる?ワインストックのモットー」

(゚、゚トソン「“スムーズに、スマートに”でしたか。正直笑えますけど」

(,,゚Д゚)(ひでえ)

(,,゚Д゚)「………つまりさ、あいつの信条に反するわけだ。
     ロケットランチャーで狙い撃ちされるとか、一般人を巻き込んでの銃撃戦だとか………」

(,,゚Д゚)「きっとニュースのネタにされるなんて、耐え切れないだろうよ」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:53:43.15 ID:fT7d6Eau0
ちらりとテレビに目を向けると、ちょうど臨時ニュースが終わるところだった。
殆ど聞き流していた内容の中で、僅かに覚えている言葉は『武装集団』と『シベリア・ストリート』だけだ。
ニュースキャスターは特にこれといった感想も述べず、次のニュースの報道に移ろうとしていた。

『情報が入り次第お伝えいたします………』

そう言って彼は、児童売買の増加に対する政府の対策案についての記事を読み始めた。
どんな残酷なニュースだろうと、彼らの手にかかれば途端に色を失ってしまう。
俺は煙草を口に咥え、引き続きソファーに横になる作業に戻った。

(,,゚Д゚)「児童売買か。うん、実に大変な問題だ」

置き忘れた車の行方について考えながら呟いた。
どこに置いたんだっけな。

酒を飲みに行って、飲んで、酔っぱらって、賭けに勝って、店を出て、違う店に入って。
たまには歩いて帰ろうと思って、途中で面倒になって、事務所に転がりこんで………


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:56:52.17 ID:fT7d6Eau0
頭痛がして、俺は考えるのをやめた。
いずれ思い出すさ。



(゚、゚トソン「世界平和ですか」

(,,゚Д゚)「うん?」

(゚、゚トソン「そんなもの、人類滅亡以外にあり得ませんよ」

(,,゚Д゚)「その通り」


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 21:58:51.01 ID:fT7d6Eau0


パニックに陥るヴィップ・シティー、シベリア・ストリート。
骨組みだけの車体から上がる炎は、未だに勢いを保ったままだ。
人の悲鳴はあらかた収まったものの、今度は消防車と警察車両が絶え間なくサイレンを鳴らし続けている。

(;・∀・)「くそっ………やりやがったな……あいつら……」

ガソリンの匂いが鼻を突く大通りから逃げるよう、僕は意識のないフィレンクトを引き摺って路地を進んだ。

( ・∀・)「何が囮だよ……エクストめ」

大きなポリバケツが二つ、狭い道の壁際に並べられていた。
僕はその影までフィレンクトを運び、壁に背を預けて座らせた。

( ・∀・)「おうい、生きてる?脈はあるんだから、生きてるんだろう。バレバレだぞ」

そうやって頬を叩き、腹を蹴ること数分。
フィレンクトは突然目を見開き、機械のような動きで僕の腕を掴んだ。

(‘_L’)「………」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:01:45.42 ID:fT7d6Eau0
彼は僕の目を睨み、信じられないほどの握力で僕の手首を握りつぶそうとしていた。
筋肉組織が断たれ、毛細血管が破裂し、神経が千切れていく。

そして僕の細い骨が砕かれる寸前、

(‘_L’)「――――問題ありません」

そう言って、僕の腕を放した。
痛む手首を擦る僕に、平然とした口調で訊ねた。

(‘_L’)「私はどれくらい意識を失っていましたか?」

( ・∀・)「10分てとこかな」

(‘_L’)「申し訳ない」

( ・∀・)「いいよ。生きてただけでも儲けもんだ」

フィレンクトは僕の差し出した手を取らず、少しよろけながらも自力で立ち上がった。
自分の体を点検し、怪我の箇所と程度を確認する。
拳銃の具合を調べながら、訊ねる。

(‘_L’)「状況は?」

( ・∀・)「最悪さ。警察が動きだして、“インビジブル・フォース”は身を潜めた。僕らに足は無し」


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:05:05.93 ID:fT7d6Eau0
(‘_L’)「警察?」

( ・∀・)「ああ、この街の警察は厄介だぞ。無能な上に愚鈍だ。近づかない方がいい」

(‘_L’)「警察など、どこでもそうでしょう」

( ・∀・)「この街は格別だ」

とにかく、僕らに残された道は少ない。
もしかしたら、道など無いのかもしれない。

依頼の失敗は事務所の信用に響く。
ここからは、死に物狂いで行くしかない。
スムーズに、スマートに、死に物狂い。

銃声。

僕の足元のコンクリートに穴が開いた。
フィレンクトが素早く反応し、狙撃主の位置を確認する。

(‘_L’)「後ろのビル、5階窓際に一人」

( ・∀・)「面倒だなぁ……走れる?」

彼は頷いて答えた。
手に拳銃を握り、同時に路地を走り出す。


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:10:16.99 ID:fT7d6Eau0


何を売っているのかも想像できないような、胡散臭い店の看板群が頭上を過ぎていく。
コンクリートの建物に埋め込まれた、錆びた鉄の扉、限界まで汚れきった窓。

道路脇に座りこんで煙草を吸っている数人の若者たちが、必死に走る僕らを口を開けて見送った。

(‘_L’)「正面に敵影!」

( ・∀・)「くそッ!」

すかさず雪崩れ込んでくる銃弾の嵐。
背後で若者たちの悲鳴とうめき声が上がった気がしたが、構っている暇はない。

( ・∀・)「こっちだ!」

フィレンクトに向かって叫んだ。
僕はこの迷路のような路地を、土地勘に任せてひた走った。


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:12:53.44 ID:fT7d6Eau0


「おにーさんたち、そんなに急いでどこ行くの~?」

「いい男じゃないの~。寄っていかな~い?」

シベリア・ストリートの北側に広がる風俗街。
夜になれば、三万光年離れた星からでも確認できるほどのネオンの輝きを放つ区域だ。
しかしこの街に常識なんてものは欠片もなく、厚い化粧で顔を覆った売春婦たちは昼間から服をはだけて客を呼び込んでいた。

( ・∀・)「死ぬぞ!隠れてろ!」

殺人集団から逃げながら、道を塞ぐように近づいてくる女に怒鳴りつけた。
しかし向こうも諦めない。ニヤつきながら煙草の煙を僕に吹きかける。
というより、彼女たちは単に面白がっているだけだ。

脳無しばかりだ、この街は。

( ・∀・)「………っ!?」

ある物が目にとまり、僕は走るスピードを緩めた。
薄汚れた建物の狭間に佇む、ある物。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:15:34.62 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「おいおい………マジかよ」

(‘_L’)「モララーさん!足を止めないで!」

( ・∀・)「いや……まさか……」

(‘_L’)「どうしたんですか!」

勘違いした女たちが僕に群がってくる。
今は仕事中だし、プライベートでもこんな所に用はない。

僕は震える指で路地を指さし、一人の女に聞いた。

( ・∀・)「あの車の……持ち主を知ってる?」

「ああ、あれ、知ってるよ」

( ・∀・)「無精髭を浮かべた、二十過ぎの男だった?」

「そう、よく知ってるね。昨日の夜、酷く酔っ払って、うちの店に来たんだ」

「あの男、相当飲んでたよ。店で寝られたら面倒だから、夜中に追い出してやった」


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:18:52.47 ID:fT7d6Eau0
(‘_L’)「モララーさん?」

( ・∀・)「……ちょっと待って」



「そしたら一人でふらふら歩いて、どこかに消えていったよ」

「『俺は消去士だったんだ』とか言って、おかしな男だったなぁ」


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:20:50.63 ID:fT7d6Eau0


差したままだったキーを回し、ギヤをローに入れる。
すぐにロクデナシの愛車は命を吹き返した。
脇のステレオ機器から、勝手にオールディーズの曲が流れだす。

無駄にやかましいアイドリング音とチャック・ベリーのタイトなギターを裂くように、フィレンクトが叫んだ。

(‘_L’)「お願いしますよ」

( ・∀・)「こっちこそ、いいのか?」

(‘_L’)「任せてください」

ウィンドウ越しに、フィレンクトは頷く。
彼の背後にいる数人の娼婦が、興味津津で車の中を覗き込んでくる。
僕は彼女たちを気にせず、銃を取り出してフィレンクトに言った。

( ・∀・)「頼むよ」

(‘_L’)「はい。少しでも長く奴らを食い止めます」

( ・∀・)「港の方は僕がなんとかするから」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:25:53.08 ID:fT7d6Eau0
フィレンクトも銃を取り出し、僕たちは互いの拳銃のグリップを打ち付けた。
ジョニー・B・グッドのソロが、場違いに飛び跳ねていた。

( ・∀・)「やっぱりさ、君、普通の人間じゃないよね」

(‘_L’)「あなたこそ」

( ・∀・)「………それじゃ」

(‘_L’)「グッド・ラック」

車を発進させ、はしゃぐ娼婦たちの群れを抜ける。
バックミラーに一瞬映ったフィレンクトも、すぐに建物の陰に消えた。

音楽はMr.BIGのアディクテッド・トゥ・ザット・ラッシュに変わっていた。
こんな時に余計な疾走感などいらないというのに。
ゴキブリのように湧き出てくる通行人を撥ね飛ばさないように気をつけて、僕は車を東へ向けた。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:29:57.91 ID:fT7d6Eau0


――――そしてようやく冒頭に戻るわけだ。

誰に語り聞かせているのかも分からないが、とにかくここまで来るのに多大な労力を要したことだけ伝えておこう。

狂った武装集団とカーチェイスを繰り広げながら、僕は港への道を突き進んでいる。
フィレンクトがどうなったか、僕に知る由もない。
ただぼんやりと無事を祈るのみだ。


( ・∀・)「もうすぐ……もうすぐで港に着くはずなんだ……」

もう何度目になるか分からない銃撃の後、僕は満身創痍でアクセルを踏みしめた。
幸い、タイヤには一発も喰らっていない。

港まで2kmの看板を過ぎて数分。
ようやく待ち望んだ“ブロークン・ポート”の入口が見えた。


( ・∀・)「キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:34:50.84 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「ようやく仕事に終わりが見えてきたぞ!」

蛇行運転のまま港湾へ突入する。
形だけのゲートを突き抜け、広大なアスファルトの路面を滑走していく。
轢き殺されそうになった船乗りが、腕を振り上げて僕に何事か怒鳴ったが、聞こえるはずもなかった。
山積みにされたコンテナの間を進み、一艇の船を探す。

目的の船舶の特徴は前もって知らされていた。
黒で塗装された、一見プレジャーボートのような小型の船だ。
もうすでに出港している可能性もある。
それでもとにかく、今は探し続けるしかないのだ。

( ・∀・)「見つけた所で、僕一人に何ができるわけでもないけどなぁ」

雑多に放置されたコンテナに挟まれた、細い通路の途中で、僕はアクセルを緩めた。
車を止め、僕は車から降りた。

前後を“インビジブル・フォース”の武装集団に囲まれている。
どうすることもできなかった。
お手上げとはまさにこのことだ。


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:38:27.19 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「やっぱりな………おかしいと思ってたよ」

前と後ろ、両脇に聳えるコンテナの上からも、銃口が僕を狙っていた。
動いたら撃たれてしまいそうなので、ポケットに手をいれたまま立ち尽くす。

集団の中から歩み出てくる、一人の男。
ピカピカに磨かれた靴が、小気味のいい音を立てて近づいてくる。

<_プー゚)フ「ここまで来るとは、なかなかのお手前だ」

エクスト・プラズマン。
ずいぶん悪者ぶった口調を気取っているが、この街では何の強みも持たない。
下手な芝居のようだった。

<_プー゚)フ「ラウンジ事務所もはカードボードだけじゃないんだな」

( ・∀・)「いやいや、こんなものさ。下っ端なんて」

<_プー゚)フ「奴が出てきたら、どうなっていたことやら」

( ・∀・)「心配いらないよ。彼なら事務所のソファーの上で酒を浴びてる」


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:41:16.06 ID:fT7d6Eau0
反吐が出そうになるのを、なんとか堪える。
なんの茶番だ、これは。

<_プー゚)フ「気づいていたのかい?」

( ・∀・)「薄々ね」

<_プー゚)フ「難儀だな。痛い目に遭って、依頼も果たせず……」

( ・∀・)「誰のせいだ」



“インビジブル・フォース”とエクスト・プラズマンは繫がっていた―――


<_プー゚)フ「ブツはもうとうの昔に港を出た。戻って来やしない」

<_プー゚)フ「社長とフィレンクトには悪いと思ってるさ。砂粒ほどの気持だがね」

屑が話しかける。
後ろに控える兵隊たちは機関銃を僕に向けたまま、微動だにしない。
よく訓練されている殺人鬼たちだ。


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:44:15.31 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「ブツを奪う手助けをして“インビジブル・フォース”から金を貰い、僕らの口封じのために彼らをけしかけた」

<_プー゚)フ「そうだな、簡単にいえば」

確かに、フォックスの目を欺いて盗みを働くのは至難の業だ。
たとえそれが“インビジブル・フォース”だろうと。

( ・∀・)「内通者がいなければとても出来ない芸当だった。全部君の思い通りにいったわけだ」


市街で、最初の銃撃に襲われた時。
エクストとフィレンクトが冷静だったのは、訓練の賜物だと思っていた。
僕だって今まで何度も修羅場を潜ってきたが、あれだけ冷静沈着でいられる人たちにはあまりお目にかかれない。

二度目の狙撃で、エクストはボロを出した。
銃弾が車のルーフを貫通して、彼は思ったのだろう。
俺に当たるところだったぞ、と。


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:47:46.09 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「君は言ったね。『余計な犠牲者は出したくない』」

<_プー゚)フ「言ったかな?……まあ、言ったんだろう」

( ・∀・)「僕らは“必要な犠牲者”だったと」


<_プー゚)フ「……打ち合わせでは、港へ向かう途中でこの車を包囲し、お前とフィレンクトを引きずり出して殺害する予定だった」

<_プー゚)フ「だけど彼ら、思っていたより血の気が多くてなぁ」

<_プー゚)フ「俺が車に乗っているというのに、ロケット弾など撃ちやがって。
       俺がこいつらの包囲網を知っていたおかげで、あの時は逃れることができたんだぞ」

( ・∀・)「それはそれは」

<_プー゚)フ「だから計画を変更した。わざわざ渋滞に引っ掛かって車の動きを止めた。
       お前らを確実に殺すために」

<_プー゚)フ「少々手荒だったが、仕方がなかった。俺が二人を殺すわけにはいかない」

<_プー゚)フ「“インビジブル・フォース”との交戦で死ななければならないんだ、お前らは」

( ・∀・)「ボスに報告するためにね」

<_プー゚)フ「そう」


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:50:36.82 ID:fT7d6Eau0
エクストは苛立ちを吐き出すように靴を打ち鳴らした。
煙草を取り出し火をつけ、一息大きく吸った。

<_プー゚)フ「だがお前らは生き延びた。三発だぞ!?RPG-7を三発!粉々になるはずだった!」

<_プー゚)フ「あげくにこんなところまでたどり着いて……まことに迷惑な存在だよ。ワインストック」

( ・∀・)「嬉しいよ、その言葉」

<_プー゚)フ「……まあいいさ。無能な部下と助っ人は任務中の事故で死亡。俺の孤独な奮闘空しくブツは船に渡り、この国を離れた」

<_プー゚)フ「そう報告すれば、社長も分かってくれる」

( ・∀・)「どうかねぇ」

<_プー゚)フ「それじゃあ」

さっさと逃げればいいものを。
この男は愚かにも、格好をつけて右手を上げた。
銃撃の合図だ。
この街でそんなことをやってる暇があるなら、一秒でも早く走り出すべきなのに。


<_プー゚)フ「死ね」


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:55:23.54 ID:fT7d6Eau0


数多の銃弾が、体を叩いた。
自分の肉体が、意思と無関係にダンスを踊る。

(  ∀ )「―――」

銃声が重なり、騒音となって港を覆った。

皮膚が破裂し、骨が砕ける。
血液が嘘みたいに頭部から吹き出し、足元に落ちていった。

痛い。熱い。

それはエクストも同じだった。


<_フ  )フ


彼はすでに地に伏せていた。
腕は千切れている。
首も取れかかって、破れた肉の隙間から臓物が漏れ出ていた。


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 22:59:14.28 ID:fT7d6Eau0
まったく、根性がないな。
僕なんて、もう四桁を超える鉛玉が体を突き抜けているというのに。


第一、こんなわけのわからない狂人どもを信用するからこんなことになるのさ。
彼らが君を生かしておく理由なんてないだろう。

なにが“インビジブル・フォース”だ。
どいつもこいつも頭が悪い。




(  ∀ )「………あ゛ぁ――――……」

ようやく銃撃が止んだ。
埃と硝煙の先に、目を見開く男たちがいる。
原型のなくなったエクストの死骸に目をやり、無理やり笑って見せた。

(  ∀ )「痛かったよ―――……」

もう傷はない。
血液は問題なく身体をめぐり、心臓は強く鼓動している。


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:02:34.05 ID:fT7d6Eau0
( ゚ ゚)「Who………Who the hell are you……」

( ・∀・)「知り合いに消去士だった男がいてね」


車から離れていて正解だった。
流れ弾でボディに少し穴が開いているが、問題はないだろう。

ロクデナシの愛車のトランクを開け、中から鉄と火薬の塊を取り出す。
なぜあのロクデナシの車のトランクにこんな物が入っているのかは分からない。
まあ、どうせ賭けか何かでふんだくったのだろう。


( ・∀・)「アイツは消しやがったんだ。僕の――――」

( ・∀・)「僕の“死”を」


弾頭はPG-7VS。ルーマニア製だ。


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:05:55.45 ID:fT7d6Eau0


( ゚ ゚)「………Run!!」

照準は前方約20メートル。
ランチャーを肩に担ぎ、腰を落とし、グリップをしっかりと握る。
僕も爆発に巻き込まれるかもしれないが、構うものか。

トリガーに掛けた指に力を込めて、言った。



     僕 を な め る な
( ・∀・)「DON'T FUCK WITH ME」


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:09:34.14 ID:fT7d6Eau0


スモッグに汚れた夕陽が街を照らす頃、僕は事務所に戻った。

部屋の奥にあるデスクに、経理の女の子が座っている。
彼女はぼろきれを纏った僕に一瞬だけ視線をやり、またすぐに手元の資料に顔を落とした。
ロクデナシは、ソファーの上で鼾をかいて眠っていた。

( ・∀・)「戻ったよ」

(゚、゚トソン「お疲れ様です」

雑多に書き殴った報告書を女の子に手渡す。
僕はため息をついて、ロクデナシを床に落としてソファーに座った。

テーブルには新しいウィスキーのボトルが置いてあった。
グラスに少し注いで、一口飲んだ。

( ・∀・)「依頼は果たせなかったよ」

(゚、゚トソン「そうですか」

( ・∀・)「申し訳ない。僕の力不足だ」


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:14:10.35 ID:fT7d6Eau0
力なく俯く。
とんでもなく疲れた。
もう二度と狐の会社に関わるものか。

ふた口目のウィスキーを飲もうとしたところで、デスクの電話が鳴った。
経理の女の子が報告書を片手に、素早く取った。

(゚、゚トソン「ラウンジ事務所です」

一言か二言交わし、女の子は僕に目を向けた。
通話口を手で覆い、僕を呼んだ。

(゚、゚トソン「FOX.カンパニーの社長さんから」

受話器を受け取り、耳に当てる。

( ・∀・)「お電話代わりました。モララー・ワインストックです」


【ひさしぶり。今日はどうだったかね】


狐の声が、鼓膜を揺らす。
もうどうにでもなれ。
僕は電話越しに隠すこともせず、大きく息をついた。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:17:16.53 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「誠に申し訳ないと思っております。ブツを取り戻すことはできませんでした」

( ・∀・)「そのうえプラズマンとフィレンクトを死なせてしまい、貴社には多大な損害を………」

【なあに、そんなに気を落とすことはない】

( ・∀・)「ですが」

【エクストの謀反は、じつはね、私も知ってたんだ】

( ・∀・)「え?」

ブラインドの隙間から見える外の景色は、闇に沈もうとしていた。
狐の声は冷たく、鋭く尖っていた。

彼と直接話をするのは初めてだが(電話越しの会話を直接といえるのかは分からないが)、
カードボードはよく平気で受け答えができるものだ。
受話器を通しても、狐の言葉は相手を震え上がらせる色を含んでいた。

一刻も早く受話器を放り投げたいと思ったが、そういうわけにはいくまい。

( ・∀・)「知っていた?」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:19:45.65 ID:fT7d6Eau0
【ああ。“インビジブル・フォース”に情報を流して、ブツを盗む手助けをしていたことも】

( ・∀・)「それじゃあ……」

【私はそういう人間を憎んでいるが、興味はあったんだ。面白い奴だと思った】

【だから今回の任務を、奴にやらせてみた。どんなふうに死んでいくのだろうってね】

経理の女の子は僕に一片の注意も払ってはおらず、ディスプレイに文字を打ち込んでいる。
カードボードは口を僅かに開いて、床で昏睡している。
僕は窓際に立って、信じられない思いで狐の話を聞いている。

【君には謝罪したいと思っていた。私の実験につき合わせてしまって、悪かった】

( ・∀・)「いえ、そんな」

【フィレンクトがそっちに向かっている。今回の報酬を受け取ってくれ】

彼は生きていたのか。
“インビジブル・フォース”の追撃を一人で受けて、この世に留まっていることができる人間がいたのか。
僕にとってそれは、この日聞いた話の中で、最も救いのある内容だった。


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:23:07.91 ID:fT7d6Eau0
( ・∀・)「しかし――――ブツはあなたにとって、いや世界にとって」

( ・∀・)「重要な意味を持ったものではなかったのですか?」

【あんなもの、いくら奪われても構わん。大したものじゃない】

【確かに、世界がひっくり返るほどの発明だった。だが、それがどうした】

事務所へ続く階段を上る、足音が聞こえてきた。
ゆっくりとした、質量のある音だ。
今にも、扉を開けてその足音の主は事務所に入ってくるだろう。

【こんな世界がどうなろうと、私の知ったことではない】

【ご苦労だった、モララー君。ではまた】

通話が切れると同時に、事務所の呼び鈴が鳴った。
僕は事切れた受話器を手に、経理の女の子が訪問者を迎えに行くのを、言葉を失ったまま眺めていた。


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:26:36.46 ID:fT7d6Eau0


(‘_L’)「失礼します」

(゚、゚トソン「あなたは?」

(‘_L’)「FOX.カンパニーのフィレンクト・ブルーグラス」

(゚、゚トソン「まずは武装解除をおねがいします。両腕を頭の上に」

彼は荷物を床に置き、女の子の取り調べを受けた。
その間、僕はずっと彼の顔を見ていた。
機械のように無表情だ。
今朝と何の変わりもない。

所持品の検査が終わり、彼は襟元を整えて事務所に入った。
手に持ったハードケースをテーブルに置き、蓋を開ける。
中にはきちんと揃えられて紙の巻かれた札束が、隙間なく詰まっていた。


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:29:50.82 ID:fT7d6Eau0
(‘_L’)「FOX.カンパニーからの報酬です。受け取ってください」

( ・∀・)「……生きていたのか」

(‘_L’)「当然でしょう」

( ・∀・)「逃げきったのか?」

(‘_L’)「逃げられたんですよ」

( ・∀・)「やっぱりキミ、普通の人間じゃない」

(‘_L’)「あなたも」


彼が帰った後、僕はカードボードを叩き起こして事務所を後にした。
経理の女の子は報酬の整理をするため、まだ少し残るという。

タクシーを拾って家路につく途中、僕はずっと“ある発明”について考えていた。

(,,゚Д゚)「俺の車、どこにあるんだろうな」

( ・∀・)「さあね」

(,,゚Д゚)「今頃バラされて海を渡っているかも」

( ・∀・)「そうだといいね」


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/11(月) 23:35:04.92 ID:fT7d6Eau0
彼の車が帰ってくることはもうない。
“インビジブル・フォース”の報復で粉々にされてしまったのだから。

(,,゚Д゚)「ところで、酒飲むかい?」

( ・∀・)「飲まない」

(,,゚Д゚)「スケコマシめ」

( ・∀・)「ロクデナシよりいいさ」


家から数十メートルのところでタクシーを降り、挨拶もなくカードボードと別れた。
疲れた体を引き摺り、自宅へ向かう。

久しぶりだった。
こんなにもカードボードを憎んだのは。

( ・∀・)「くそ」



――――僕はどうしようもなく死にたかった。




88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 00:00:59.83 ID:ucH8Q5da0




Chapter 4   End





90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 00:04:30.81 ID:ucH8Q5da0
最後の最後でさるさん喰らった・・・
ちくしょう・・・

支援ありがとう
ずいぶん間が空いてしまいました
前回の投下を覚えてくれている人居るのかな

なにはともあれ、支援ありがとう
また来ます


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 00:05:02.98 ID:A2Wyr8g70
乙!


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/12(火) 00:16:17.26 ID:i0ZQXqH+O
って終わりかよ乙


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