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◆从 ゚∀从 Channelers のようです 第六話 『 ネガティブ・シンドローム ── VS. ヒッキー① 』

前の話/インデックスページ/次の話

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 23:55:34.34 ID:NVz5kYS00
 
   (* ^ω^)


  (((* ^ω^)))


 (( (((* ゚ω゚))) ))


   ( ゚ω゚)





 ゜+.( ‘ω‘)゜+.゜


  まとめ: http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html



2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 23:58:16.10 ID:NVz5kYS00
 
「間もなく3番線に──方面行きがまいります。
 危険ですから、黄色い線の内側まで──」


(;-_-) 「はぁ……はぁ……」


 列の一番前に立ち、息を荒げている男がいる。
 痴漢を働こうと色めき立っているのでは決してない。
 青い顔で唇を震わせている彼は、高潔なる一つの決意を胸に、今日この場所で電車を待っているのだ。


(;-_-) (今日こそ、今日こそは、僕は)


 二度目の挑戦だった。
 彼は過去に一度、このホームからの飛び込みを試みるつもりで、失敗している。


(;-_-) 「……」


 それは最後の最後、
 あとは勇気のひと絞り、といったところで踏ん切りが着かなかったこともあるが、
 加えて、彼にとって想定外のハプニングが起きたためでもあった。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/12(木) 23:59:42.73 ID:oOXgNcgxO
wktk


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:00:37.47 ID:nQ5GHYqK0
 
(;-_-) (──きたっ!)


 警笛の音とともに、巨大な鉄の箱が近づいてくるのが見える。
 彼は掌を握り締め、身体を強張らせた。
 勇気を出すのは一瞬だ。  ただ二、三歩、足を踏み出すだけで全ては終わる。
 それだけで、生という縛りから、繰り返される地獄から、悪辣な澱みの沼から解放されるのだ。


(;-_-) (もうすぐだ、踏み出すんだ、さあ、さあ……)


 ドクン、ドクン、ドクン。
 早鐘を打つ心臓の鼓動が、列車の規則的な走行音と同調する。
 ホームのアナウンスは耳鳴りのノイズとなり、針金のように彼の脳を縛り、そのまま食い込んでくる。


(;-_-) (行け、行くんだ、さあっ!)

(;-_-) 「──っ!」


 一瞬の出来事だった。


 ブレーキ音をけたて、突入してくる電車に向かって。

 ふらりと、一人の男が飛び込んだ。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:02:25.02 ID:nQ5GHYqK0
 
「あ……」

「きゃああ──!?」

「うわっ……!」


 肉体は瞬時に弾き飛ばされ、只の肉片へと変容を遂げた。
 轟音と悲鳴が交じり合う。  喧騒が辺りを包み込む。
 ホームからの転落。  それは、日常が非日常へ転落する瞬間でもあった。


 電車到着の長いベルと同時に。

 一人の男の命が消えた。

 わずか一歩を踏み出したことで、長く暗い、死出の旅路へ誘われたのだ。


(i||i-_-) 「なっ……!?  あ、あああ……」


 そう。
 彼の、真横に立っていたサラリーマンが。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:04:26.39 ID:nQ5GHYqK0
 
●第六話 『 ネガティブ・シンドローム ── VS. ヒッキー① 』

-----

('A`;) 「……ったく。 聞いてなかったぞ、こんなの……」


 駅に向かう交差点をせかせか歩いている俺はごく一般的な男の子。
 人と違うところがあるとすれば、今しがたクリーニング屋に寄ってきたってとこかナー。
 名前は内藤ドクオ。  男の子と呼んでいい年齢なのかは知らん。


('A`;) 「……んー。  コインロッカーに置いてきたほうが無難か……?」

(;'A`) 「しかし、ンな事でわざわざお金使うのもなあ……」


 これから俺は、駅でギコと落ち合う手筈になっている。  バイトも早めに上がらせてもらった。
 先日、彼ら兄妹の言う『あの人』とやらに会いに行く約束を交わしたためだった。


('A`) (……)


 横断歩道の前まで来た途端、歩行者信号が赤に変わる。
 足を止めて手提げを下ろす。  目の前を駆け抜けるエンジン音、走行音、クラクション。
 周りに顔のないニンゲンどもがわらわら集う。  俺は一つ溜め息をついた。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:06:36.61 ID:nQ5GHYqK0
 
('A`) 「……憧れていた『特別な何か』って、全然特別じゃないな」 ボソリ


 色のない世界に向かって、俺はどこか厨二的なセリフを吐きかけ、目を細めた。

 (,,゚Д゚) (*゚ー゚)

 先日出会った、異端の能力者『 チャネラー 』兄妹であるギコとしぃ。
 彼らの持つ異常ともいえる聴力や、暴漢を片手でぶん投げる恐るべきパワー……。
 『超能力者』という言葉から想像できるものとは多少違っていたが、
 それでも充分に常軌を逸した能力だと呼んでいい。

 そして驚くべき事に、この俺……
 何の取り得もないフリーター男・内藤ドクオの内にも、
 彼らの持つそれ、超能力に類する ”何か” が潜在しているのだと言う。 


('A`) 「……エ○シード!」


 ──それは、
 相手の肌に触れることで、能力を使えなくする、という特性。

 なんだっけ、ドラクエの……マホトーン?  FFのサイレス?  たぶんそんな感じ。
 ただし、能力者と密接してるとき限定。  詳しく調べていないからそれ以上はわからないけど。
 ブーンを相手に何度か試してみたので、『 何かそれっぽい能力がある 』ことだけは立証済みだった。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:08:18.28 ID:nQ5GHYqK0
 
('A`) 「○ール!」


 ──だが。
 正直、日常生活においてのそれ……『 封印能力 』 は、本当になーんの役にも立たないと言っていい。

 透視でもない。  サイコキネシスでも、テレパシーでもない。
 神が俺に与えし特別な才能……超能力は、
  『 肌が触れている間だけ、相手の超能力を封じる 』 という、それだけのシロモノだ。
 利便性はおろか、使い道すら見当たらなかった。


('A`) 「オー○ー・○ニス!」


 そして、『 チャネラー 』 が持つもう一つの特徴──その殆どが ”多重人格者” だという特異点。
 ギコに内在するもう一人の人格は『 タカラ 』。  しぃちゃんには『 つー 』、
 我が弟、肉まん野郎のブーンには『 ロマネスク 』がいるという。

 自分の中に別の ”誰か” がいる。  ……考え難いことだ。
 だがしかし、俺が、いち『 チャネラー 』 として超能力を有している以上、
 その ” 誰か” は、いつ目覚めてもおかしくない状態だと言う。

 願わくば、そいつが凶暴性を有しない、平和を愛する優しい心の持ち主であらん事を。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:10:36.82 ID:nQ5GHYqK0
 
('A`) 「炎とマシンガンの……接、ん?」

('A`;) (……あ)


 気付けば俺は、色々な『 暗示の呪文 』を口に出していたらしい。  周りの視線がチクチクと刺さってくる。
 タイミング良くというか、ちょうど信号が変わったこともあり、俺は早足で歩き始めた。


(;'A`) (なんか……落ち着かないよなあ。
     俺の心の中に、知らない誰かが棲みついてる、なんてさ……)


 そもそもこれは、『 Channel 』  に関しての話を、ギコ達から聞いたことがきっかけだった。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:12:26.25 ID:nQ5GHYqK0
 
---

(,,゚Д゚) 『人格(チャネル)の切り替えは、強い自己暗示によって行うんだけどな。
     慣れないうちは ”スイッチ” に頼ることになると思う』
 
(;'A`) 『はい?  自己暗示?  スイッチ……?』

(*゚ー゚) 『自分が別の何かに変わることを、強く意識するような……
     うまく言えませんけど、変身するという強固な意志を、
     ”何らかの動作” に関連づけ、それを媒介として表出させる感じです』

(;'A`) 『???』

(*゚ー゚)b 『切り替え自体は、一種の催眠術みたいなものです。
      ”スイッチ” は、” 揺れる五円玉 ”と例えてみればわかりやすいでしょうか?』

(;?A?) 『???????』

(*゚ー゚) 『一定の動作であるとか、秘密の呪文・合言葉みたいなものでもいいです』

(;'A`) 『……ごめん、君らの言ってること、やっぱよくわかんないわ……』


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:14:38.99 ID:nQ5GHYqK0
 
(,,゚Д゚) 『んーとだな……
     例えば、俺の切り替え”スイッチ”は、首と腕の骨を鳴らすことなんだけど』

(,,゚Д゚)ヾ 『そうすることで、闘いを強く意識するみたいなんだ。
      もともと俺の癖だったんだけどさ、関節鳴らすのは』

('A`) 『骨を鳴らす?  ただそれだけで、ギコは ”タカラ” に変身するってのか?』

(,,゚Д゚) 『……もちろん ”切り替える” という意志のもとで行うのが前提だ。
     最初は ”スイッチ” のコントロールができなかったから、
     骨をポキポキやるたびにチャネルが切り替わっちまってたけどな。
     そのうち、ちゃんと使い分けが出来るようになった』

(*゚ー゚) 『言い方は変だけど、無意識のうちに出てしまう癖が、
     チャネルを切り替える ”スイッチ” になることもあるみたいです。  ギコ君のはその一例』

('A`) 『ふえー……』

(*゚ー゚) 『因みに私の場合は、直接 ”彼女” に呼びかけます。
     そうだよね、つ……』

(,,;゚Д゚) 『んわぁああー!!』

(;*゚ー゚) 『ほえ?』


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:16:39.51 ID:nQ5GHYqK0
 
(,,;゚Д゚) 『い、いーから、今はあいつに代わる必要ねーからよ!』

(*゚ー゚) 『あ……ご、ごめんね』

(,,;゚Д゚) -3 ホッ

('A`) 『……ええと』

(;'A`) 『つまりその……噛み砕いて言うと、
     ある特別な動作を行ったり、合言葉を口にする事で、人格が交替するっていうの?』

(,,゚Д゚) 『ん、そういうこと』

(*゚ー゚) 『慣れちゃえば、”スイッチ” に頼らなくとも、
     感覚的に切り替えが可能になる、らしいです』

(;'A`) 『は、はあ……』

( ^ω^) 『おっお。 そういう事だったのかお』

('A`) 『よくわからないが、人格が替わる切っ掛けみたいなものがあったんだな』

(*゚ー゚) 『そうですね。 ”チャネル” に目覚めるきっかけは人によって様々です。
     そのきっかけとなった行為が、そのまま ”スイッチ” になっちゃうことも珍しくありません』


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:18:27.64 ID:nQ5GHYqK0
 
(*゚ー゚) 『だから最初のうちは、本人が望む望まないに関わらず、
     何かの拍子にうっかり ”チャネル” が代わっちゃうこともあります。
     その原因を見つけて、徐々に ”スイッチ” として意識し、慣らして行く、みたいな』

( ^ω^) 『ちょうど僕がそんな感じだったお……』

('A`) 『ブーン、お前はどうやって ”ロマネスク” になったんだ?』

( ^ω^) 『え?』

( ^ω^) 『……』

(; ^ω^) 『……』

(; -ω-) 『き、企業秘密だお……』

(;'A`) 『???』


---


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:20:10.19 ID:nQ5GHYqK0
 
 結局ブーンは、『 チャネル 』の切り替え方を教えてくれなかった。
 そんなわけで、俺は『 もう一つの人格(アナザー・チャネル) 』に目覚めることもなく、
 以前と変わり映えしない生活を送っている。


\('A`)> (もしくは決めポーズか……?  どっかの戦隊ヒーローみたいに『変身!』的な)


 クスクス>ΩΩΩ Σ('A`)  ΩΩΩ<ヒソヒソ


('A`;) (そんだけのために、わざわざこんな恥を晒すのは……)


 いや、そもそも。
 果たして、人格が変わることの利点ってあるのだろうか?

 ギコ達があまりにもあっけらかんと話すものだから、つい『 そういうモノ 』なんだと納得してしまったが、
 二種類の超能力が使えるようになることと引き換えに、『 人格が増える 』というのは、
 余りに大きな代償だと感じてしまう。

 実際の多重人格障害は精神疾患の一種だし、発症によって苦しんでいる人間は大勢居るはずだ。
 『 チャネラー 』における『 二重人格 』は、精神病のそれとは異なるもの……だとは言っても、
 赤の他人と身体一つで共存してゆかねばならなくなるなんて、多大な不都合が纏わりつきそうなものだが。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:22:13.26 ID:nQ5GHYqK0
 
('A`) 「……はあ」


 俺の中に潜む別人格と、そいつが秘めたもう一つの能力……。
 これだけ聞けば、なんて耳触りのいいキーワードだろうと思う。

 そりゃあ勿論興味はある。  あるのだが、今の自分は別段それを欲していない。
 ただでさえコミュニケーション能力の低い俺が、他人とこの肉体を介して共同生活だなんて。

 望まぬ『 チャネル 』の潜伏。
 それは目下、俺の抱える悩みの種の一つだった。


('A`;) 「はぁ……今からギコ達の言う 『 あの人 』 とやらに会ったら、
     強制的に 『 チャネル 』に目覚めさせられちゃうのかなあ」

('A`) 「そう考えると、なんかすげーマンドクセぇ……」


 そして現在。
 俺のもう一つの悩みごとは、その右手、下げた紙袋の奥に存在する。


('A`;) 「……」


 ブーンに頼まれて、バイトの終了と同時にクリーニング屋へ取りに行かされた洗濯物。
 手提げ紙袋のサイズが割と大きめなのには、それなりの理由があるのだ。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:24:31.35 ID:nQ5GHYqK0
 
ε- ('A`) 「はふー……ぅ」


 そうやって、歩道の真ん中で深深と溜め息をついた直後。


「……やっ!」

Σ(゚A゚;) 「!!」


 唐突に後ろから叩かれたことで、俺の猫背が、しゃん、と伸びた。


ミ(;'A`) 「!???」

从;゚∀从ノ 「あっ……」

( ゚A゚) 「!」


 急いで振り向くと、さらなる驚きが俺を待ち構えていた。
 そこでは、ギターケースを抱えたハインさんが目を丸くしていたからだ。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:26:32.57 ID:nQ5GHYqK0
 
从 ゚∀从 「お、驚かせちゃったかな? ごめんねっ」

('A`;) 「いひゃ、そ、そんな事は!」

从 ゚∀从 「バイト終わったんだ?
       早かったねー、今帰り?」

('A`) 「は……」

(*'A`) 「はひ!」


 思わず声が上擦ってしまう。  そんな俺の様子に、ハインさんはくすりとはにかんだ。
 切れ長で黒目がちの瞳が正面から俺を見据える。  薄い唇が微笑みの形に歪む。
 ちくしょう、今日もかわいい。  かわいすぎるぜハインさん。


(;'A`) 「は、ハインさんは、今から歌いに……?」


 聞いた瞬間に若干の後悔が襲う。  愚問、どうしようもない愚問だ。 
 ギター持って駅前を歩いてるんだ。  彼女は当然、演奏しに行く途中に違いない。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:28:21.49 ID:nQ5GHYqK0
 
从 ゚∀从 「うん!  ひょっとしてドクオ君、聴きに来てくれるとこだった?」

('A`) 「あ……いや……」


 待ち合わせの時間を考えるに、ハインさんの曲を聴いて行く暇はなさそうだった。
 最初から真っ直ぐ駅に向かうつもりだったのに、
 何故だかその事に後ろめたさを感じてしまい、俺はまごまごと言いよどんでしまう。


从 ゚∀从ゞ 「……そっかー。  残念っ」

(;'A`) 「ご、ごめん。  今日はちょっと用事が……」

从 ゚∀从 「用事?  ははーん、デートだな?」

Σ(;'A`) 「ち、ちがっ!  金輪際違うから、マジで!」


 彼女はそうやって、サラリととんでもない事を言ってのけるのだ。
 まるで、テンパる俺の反応を楽しんでいるかのように。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:30:53.16 ID:nQ5GHYqK0
 
从 ^∀从 「あはは、否定しすぎ!
       ちょっとくらい見栄張って、 ”そうそう、デートっす~” とか言っちゃってもいいのに」

(;'A`) 「だって本当に違うし、ハインさんがそうやってからかうから……」


 屈託なく笑う彼女は今日も魅力的だった。
 それに対して俺は、ひたすらしどろもどろの返答しかできないでいる。
 第一、こんな場所でハインさんに会うなんて考えもしてなかったわけだしさ。

 一般的なコミュニケーション能力のある男であれば、
 多少面食らったところで、それなりの切り返しができるんだろうけれど。

 彼女いない歴=年齢という非モテロードをひた走ってきた俺にとっては、
 デートなどとという言葉自体が、見るも眩い『 非日常 』でありまして。


从 ゚∀从 「ほーんと正直者だなー、ドクオ君は」

(;'A`) 「嘘つけないだけだよ。  なんつーか、あんまり突然すぎて……」

((从*゚∀从 「とか言っちゃってー。 
        ホントは、その荷物も彼女へのプレゼントとかじゃないのー?」

Σ(;'A`) 「のわぁあああっ!  らめっ!」 サッ


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:33:01.94 ID:nQ5GHYqK0
 
 紙袋を上から覗き込むハインさんに対し、俺は身を捩り抗った。
 彼女は一瞬不思議そうな顔をしたが、
 すぐにギターケースのベルトを担ぎなおし、くりくりした瞳で見つめてくる。


从 ゚∀从 「つれないなあー。
       最近話す機会なかったし、バイトの話とか、色々聞きたかったのにー」

(;'A`) 「あ、マジでごめん、明日こそ絶対に本当に必ず……」

从 ^∀从 「別にいいって!
       またいつでも聴きに来てね!  それじゃっ!」


 彼女はそう言うと、からりと笑い、手を振った。
 アコギを背負って歩く後ろ姿は快活で、全身が生気に満ち満ちている。

 どうやら今日はこの駅前広場ではなく、公園のほうで路上を演るみたいだった。
 きっとこれから、その元気を歌声に乗せ、辺り一面へ振りまいてくるのだろう。


('∀`*) 「……」


 半ば放心状態のまま彼女の背中に手を振り返していた俺は、
 ほどなく、通り掛かった自転車のベルによって、現実に引き戻されたのだった。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:35:06.13 ID:nQ5GHYqK0
 
-----


 その頃ギコは、既に駅のホームでベンチに腰掛けていた。


(,,゚Д゚) 「ったく、面倒くせぇなゴルァ……」


 ぶつぶつ言いながら脚を組みかえる。
 常に20分前行動。  ズボラな外見や態度とは違い、彼は意外と几帳面なのである。
 駅前でも待合室でもなく、わざわざホームで待ち合わせるところがせっかちな性格を表している。


「間もなく2番線に──行き快速列車が参ります──」

(,,゚Д゚) 「あー、早く来ねえかな……ん?」


 傲岸不遜な姿勢でホームを見ていたギコは、
 電車の到着を待つ人々、その先に、ふと違和を感じた。


(,,゚Д゚) 「……なんだアイツ?」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:38:38.88 ID:nQ5GHYqK0
 
(;-_-) 「……」


 列の最前で、しきりに辺りを見回している男がいた。

 見るからに怪しい、という出で立ちでもないが、
 落ち着き無くきょろきょろと様子を窺い、
 常に体を揺らすような動作が、どことなく不審な様相である。


(,,゚Д゚) (鉄ちゃんってやつか? きめぇなー)


 ベルが鳴り響き、列車がホームへ侵入してくる。
 なんということもなく、ギコはその様子を眺めていた。

 と、その時。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:40:53.28 ID:nQ5GHYqK0
 
(,,゚Д゚) 「──ッ!!」


 二列に並ぶ人々の最前。
 スーツに身を包んだ若いOLの身体が、前方へふらりと傾いた。

 細い左足が白線を越え、
 ──そして、そのまま。


Σ(;,,゚Д゚) 「なっ……!」


 まるで吸い寄せられるかのように──


 もう一歩を、踏み出したのだ。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:42:30.78 ID:nQ5GHYqK0
 
-----

 待ち合わせの時間まで若干の余裕があることに気付いた俺は、途中で駅前のコンビニに寄った。


('A`) 「うう~オブラートオブラート」


 リュークのリンゴ。  猫型ロボットのドラ焼き。  東場だけ強い人のタコス。
 そんな、俺にとっての麻薬的フード。  それがオブラートなのである。
 未だ禁断症状の出た試しはないが、今後については確証がない。

 でんぷんの淡白な味わい。  舌で溶けるじんわりとした感覚。
 容器から取り出す際、半透明の薄い幕を指で捲る悦び。  たまらんものがある。

 家の薬箱に入っている買い置きに手を出すとブーンに怒られるので、
 俺専用のオブラートを買っておこうと思い立ったのだった。  そう、いわばお菓子感覚で。


(;'A`) 「んー、なんか微妙に高ぇ気がするな……」


 何でも売ってる代わりに、コンビニエンスな代金が折込済み。
 やっぱり餅は餅屋だ。  途中でドラッグストアに寄っておけばよかった。


('A`) 「……ん?」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:44:31.09 ID:nQ5GHYqK0
 
 棚に置かれたオブラートの横を見ると、見慣れぬ赤いパッケージが目に飛び込んできた。
 最初はコンドーさんのバリエーションかとも思ったが、陳列された場所からして違うハズ。
 あれ、これって……。


Σ('A`) 「……す、ストロベリー風味だと!?」


 丸いフォントを目で追い、俺は驚愕した。
 よ、よりによってオブラートに……いちご味があるというのか。


('A`;) (……ふ、ふん。  女子供じゃあるまいし)


 高尚なるオブラートをフルーティに演出するなど、愚。  愚の骨頂である。
 誰がこんなモノに製品化のGOサインを出したのだ。  ダメだ。  ダメすぎる。
 お前らはオブラートの魅力をまるでわかっちゃいない。

 無機質だから、淡白だからいいのだ。 
 あの、無色・無味・無臭のクールな透明感こそが、我々を虜にするのだろうが。


('A`) 「甘いオブラートなんて邪道!  お薬飲めないスイーツ(笑)どもの我侭に振り回されおって!」

('A`) 「自己満足的商品開発乙」

(#'A`) 「女子供に媚びる姿勢が透け透けだぜ!」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:46:49.12 ID:nQ5GHYqK0
 
   ・

   ・

   ・


「362円になりまーす」 チーン

('A`;) (なにこれ高っ!)


 袋に入れるか聞き返すこともせず、シールだけ貼って寄越した店員を横目で睨みながら、
 俺は赤いパッケージを上着のポケットに捩じ込んだ。


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:48:34.37 ID:nQ5GHYqK0
 
-----

 列車のブレーキ音とともに、聞きたくない音もまた、はっきりとギコの耳に届いた。
 一瞬の間を置いて、劈くような悲鳴。  喧騒。  混乱。


(;,,゚Д゚) 「ま、マジかよ……!」


 開いたドアから覗く乗客たちの呆けたような表情と、ホーム側の雑然とした空気のギャップが、
 この空間が既に非日常へ転換したことを示していた。


(;-_-) 「あ、あ、ああ……」

(;-_-) 「うわあああああ!!!」


 そんな中。
 先ほどまで列の最前に……つまり、転落したOLの横にいたあの男が、
 一際大きな喚声とともに駆け出す姿が見えた。
 すると、男の動きに合わせるかのように、周りにいた数名が一斉に走り出す。


(,,゚Д゚) 「な、なんだ!?」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:51:01.38 ID:nQ5GHYqK0
 
 ギコは思わず立ち上がった。  男たちは階段の方向、こちらへ真っ直ぐ向かってくる。
 そして、その集団が彼の横を通り過ぎようとした瞬間。


(,, Д ) 「!?」


 顔面へ布団を押し当てられたかのような圧迫感とともに、ギコの視界は白濁し、
 続けて、強烈な不安感が彼を襲った。


(,, Д ) 「……」


 もうイヤだ、イヤだ、イヤだ。
 暗い、怖い、恐ろしい、ここには居たくない。

 ──死にたい。


(,,||| Д ) 「……!!」


 まるで磁石で吸い寄せられるかのように、
 ギコは男のほうへ衝動的に駆け出しそうとしていた。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:52:57.23 ID:nQ5GHYqK0
 
Σ(,, Д ) 「うぶっ」


 しかし、そのまま何か柔らかいものにぶつかり止まる。


Σ(,,゚Д゚) ハッ

(,,゚Д゚) 「あ、うん?  ……あれ?」


 ギコはすぐさま正気を取り戻した。
 目の前に立ち尽くす大きな人影。  おそらくは衝突した相手だろう。
 何が何だかわからない状態のまま、彼はその人物を見上げた。


J( ‘_L’)し 「……」

(,,゚Д゚) 「……?」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:55:46.73 ID:nQ5GHYqK0
 
J( ゚_L゚)し クワッ

J( ゚_L゚)し 「いやあああああ!!」

(;,,゚Д゚) 「……え!?」


J(#゚_L゚)し 「チカン!  痴漢よ!!  駅員さ──ん!!」

Σ(;,,゚Д゚) 「ちょっ!?  ちが、うわあああああ!!」


 ホームの淵、青い顔で事態の収拾にあたっていた数名の駅員が、すぐにギコのほうへと向き直った。

 ──鬼の形相で。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:57:27.40 ID:nQ5GHYqK0
 
-----


 駅の切符売り場にて、俺は先ほど買った『 いちごオブラート 』を取り出した。


(;'A`) 「うお、なんとほのかなピンク色……」


 赤いチェック模様に、でっかいイチゴのキャラクター。
 無駄にポップなパッケージから、女子供御用達という印象は拭えない。
 中から一枚を丁寧に取り出すと、ガムを食べるような感覚で口に放り込んだ。


('A`) ムシャムシャ

('A`)

(*'∀`) (甘酸っぱひ……)


 おうふ、これはなかなか……思ったよりイケるじゃないか。
 舌の上でじんわり溶けるでんぷん質。  ちょっとした幸せに頬が緩む。


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:58:43.76 ID:AjJSkNtE0
そうか・・・オブラートってうまいのか・・・。
今度探してみよう。支援。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:59:33.25 ID:YT6/h2YAO
チョコ味とかメロン味とかもあるらしいな


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 00:59:48.49 ID:nQ5GHYqK0
 
('∀`) 「ん?」


 その時、ポケットの中の携帯がバイブした。
 ディスプレイに表示された発信元は、ギコ。
 慌てて時計を確認するが、約束の時間まではまだ10分近くある。


('A`)】ヽ 「はい、こちら内藤ドクオです。  発信音の後にメッセージを……」

『ドクオさん!  俺、ギコ。  今OKか?』


 悲しいほどに素で返されてしまった。


('A`)】ヽ 「まあその、OKだからこそ電話取ってるんだけどね……」

『ちょっと色々あって説明しにくいんだ。  待ち合わせ場所は変更!
 つーか、今日はせんせーんトコ行けそうにないや』


 彼の言う『せんせー』とは、我々がこれから会おうとしていた人物のことだ。 
 息を弾ませながら通話するギコの様子に、
 何か彼にとって喜ばしい急用でも出来たのかと邪推してしまう。


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:02:10.25 ID:nQ5GHYqK0
 
(;'A`)】ヽ 「ええ……もう切符買っちまったのに……」

『プラットホームで飛び降り事故が起きた。  ちゃねらーの仕業だ』

Σ(;゚A゚)】ヽ 「はいぃ!?」


 呑気に構えていた俺にとって、あまりに予想外の返答だった。
 そう言われてみると、確かに駅の雰囲気が変な気もする。
 さっきから慌しく職員が走り回っており……あ、警察まで来た。
 どうやら、この先のホームで何かがあったのは間違いないようだ。


『今、俺は逃げた犯人を追ってる。
 ドクオさんの力が必要だ。  頼む、すぐ来て!』


(;'A`)】ヽ 「え、は、ええ!?」


 なんとも急すぎる展開だった。
 というか何だ犯人って。  飛び降り事故を引き起こした超能力者をギコが追ってる?
 それって──相手は殺人犯、ってことじゃないか。


(;'A`)】ヽ 「いやいや、ヤバいだろそれ!」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:04:37.87 ID:nQ5GHYqK0
 
『大丈夫、標的は ”ロックオン” してあるから。
 ちと離れちまったけど、追跡については問題ないぜ。
 あ、あれだな……』

(;'A`)】ヽ 「そういう意味じゃなくて、危険だって言ってるん……」


 ギコは特定の相手の呼吸音を記憶し、他と選り分けて聞き取ることができる。
 ”ロックオン” した相手が半径150メートルほどの範囲内に居る限り、
 その位置までわかるらしい。  なんて便利な能力だ。


『ドクオさん、駅から出て!
 近くにフレマあるの知ってるだろ?  ちょうどその右隣のビルだ。
 今から俺も入る……すぐ来てくれ、んじゃ!』

(;'A`)】 「いや、ちょ……」


 言いたいことを一方的にまくし立て、電話は切られた。
 フレンドマートと言えば、俺が今さっき寄ったコンビニじゃないか。
 その隣のビルに犯人が逃げ込んだってことか?


(;'A`) 「……ああもう!」


 考えることが億劫になった俺は、そのまま荷物を抱えて駆け出した。


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:07:16.60 ID:nQ5GHYqK0
 
 よくわからないが、とにかくギコと合流しよう。  んで説得しよう(犯人じゃなく、ギコを)。
 話せばわかってくれるハズだ。  同じ人間なのだから!
 説得の内容?  「あとは警察に任せよう」に決まっている。


(;'A`) 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 あ……あれ? 


(;゚A゚) 「はぁっ、はぁっ、は……」

Σ(i||'A`) 「……う、うっ?」


 しかし、走り始めていくらも経たないうちに息が切れてしまう。
 自らの体力不足を呪おうとしたが、
 その直後、猛烈な立ち眩みをもよおし、俺は近くの壁に手をついた。


(; A ) (な、え、なんだこれ……)


 意識が朦朧とし、足がふらつく。  まるで酔っぱらいの千鳥足だ。
 いやいや、いくら急に走り出したからって……こんな……。


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:10:35.28 ID:nQ5GHYqK0
 
 あまりのダメっぷりが情けないが、自嘲するほどの余裕も既にない。  
 その間にも、胸の鼓動がどんどん速くなってくる。
 やばい、なんだか、く、苦しい……。


「……はぁ、は……あぐっ」


 揺れる視界の中、必死で足を動かしていた俺は、前方から来た誰かにぶつかってしまった。


J( ‘_L’)し 「……」

「あ、す、すみません」

J( ゚_L゚)し クワッ

J( ゚_L゚)し ・・・。

J(#‘_L’)し 「……チッ」


 おかしい。  身体が気だるい、頭が重い。
 俺は壁伝いに移動すると、ふらふらのまま近くのトイレへ滑り込んだ。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:13:28.54 ID:nQ5GHYqK0
  
 個室でうずくまっているうち、動悸と目眩はすぐに治まった。
 それなのに、俺の心拍数は再度上がり始めている。


「……嘘、だろぉ?」


 その場にそぐわない、甲高い声が残響した。


「ま、また、なのか……」


 先ほどの体調不良は、どうやらこの事態の予兆だったらしい。

 長い髪を垂らし、痴呆のように口を開け、目を丸くしている人物。
 洗面台の前面、鏡に映し出されたのは……いつかの光景の再現とばかりに。


从゚□゚;リル 「……」


 紛れも無く。
 女の子になった、俺の姿だった。



 (続く)
 

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:14:52.51 ID:nQ5GHYqK0
( ‘ω‘) <支援ありがとう! またね!


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:16:05.01 ID:YT6/h2YAO
乙!
続き楽しみにしてる


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/13(金) 01:31:24.15 ID:CkHne83S0



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■この記事へのコメント

  1. ■ [くるくる名無しさん]

    ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
    ドックンの変身の条件がよくわからん
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