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◆( ^ω^)百鬼夜行のようです 【第二話 百年河清とて燃ゆるは想い。 後編】

前の話/インデックスページ/次の話

1 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 20:56:33.76 ID:nW1OvLqWO

ブーン速。さん
ttp://hoku6363.fool.jp/yakou-yakou/0000.php
くるくる川 ゚ -゚)さん
ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/?mode=m&no=163
面白蛇屋さん
ttp://hebiya.blog40.fc2.com/?mode=m&no=9295

まとめて下さってます、ありがとうございます。



2 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 20:59:21.10 ID:nW1OvLqWO


 好きだよ、好きだよ、好きだよ。
 あねさま、あねさま、あねさま。

 あなただけが好きだよ。
 ずっとずっと好きなんだよ。

 あなたが故郷を離れる前から。
 あなたがあの男に想いを寄せる前から。



     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【第二話 百年河清とて燃ゆるは想い。 後編】



 あねさまを泣かせる奴は許さない。
 あねさま悲しませる奴は許さない。

 俺があねさまを守るんだ。
 俺のあねさまを守るんだ。

 届かないなんて解ってる。



3 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:00:03.79 ID:nW1OvLqWO

 のんびりと盛岡屋を歩くは赤い振り袖。
 少しばかり幼い柄を纏うのは、長い黒髪を一つにまとめて垂らす美貌。

 あの、しぃによく似たかんばせ。
 明るそうな笑顔を浮かべるそれは、鎌鼬の真ん中。


(*゚∀゚)「よぉ流石の、元気かぁ」

(´<_` )「あ、つうさん。元気ですよ」

(*゚∀゚)「あねさまは座敷か?」

(´<_` )「ええ、でも今は客人が来てますから邪魔しない様に」

(*゚∀゚)「客人……? おー、わぁっとるよ」


 ひらひらと弟者に手を振って、つうは姉が居る座敷へと足を進める。

 姉への客と云う言葉だけで、何処と無く不機嫌そうな顔になるつう。
 しかしそれをぐ、と飲み込み、平静を装ってみせる。



4 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:01:10.53 ID:nW1OvLqWO
 俺が嫌な顔をすると、あねさまは悲しむからな。
 ただでさえ、でぃに振られてあねさまは悲しんでいるんだ。

 これ以上、悲しまない様に。


 美貌の鎌鼬三姉妹。
 そう呼ばれる事に、つうは慣れている。

 あねさまは美しいし、妹のでぃも傷だらけだが愛らしい。
 つう本人も特に、悪い気はしない。

 それよりも、気掛かりなのはしぃの事。
 あやかしを保てぬからと鎌鼬の仕事をしているが、しぃの顔は曇る一方。

 一緒に鎌鼬を続けようと、あやかしを保てなくなってきた姉に持ちかけたのは、つう。
 悲しそうに俯く背中を見るのが嫌で、辻斬り紛いの事を始めたのも、つう。

 妹のでぃにも持ちかけたが、振られてしまったのはしょうがない事だと思っている。
 でぃは、医者の元に身を置いているのだ。

 姉以上に、誰かを傷付ける事を嫌がるのだ。


 だからしょうがなく、二人で始めたら辻斬り。
 あやかしを保つ為の儀式。



5 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:01:57.25 ID:nW1OvLqWO

 しかし、先日。
 つうは少しばかり、手元が狂ってしまった。

 手慣れている筈の、人の脚を少しだけ傷付ける行為。
 姉が転ばせて自分が少しだけ脚を斬ると云う行為。

 それなのに先日、つうは脚を切り落とした。
 己の鎌が何れ程よく斬れるか、理解していた筈なのに。

 少し加減を間違えて、すぱり、ごろりと、脚を斬り落とした。


 あの事は悔いている。
 やり過ぎたと、後悔している。

 しかしあの時は混乱するしぃを連れて、逃げ出すのがやっとだった。


(*-∀-)「……大丈夫、だったんかなぁ……あいつ」


 あの後ろ姿、焦げ茶の羽織は見覚えがある。
 自分も馴染み深い、内藤の倅。

 だからこそ、余計に悔いているのだ。
 仲の良い相手に、取り返しのつかない事をしたのだから。



6 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:02:38.20 ID:nW1OvLqWO

 ああ、謝りに行きたいな。
 でもそれは、叶わぬ事。

 そんな事をすれば、しぃは余計に悲しんでしまうかもしれない。
 愛しい愛しいあねさまを、悲しませるなんて出来やしない。


 あねさま。
 愛しいあねさま。

 幼い頃から恋い焦がれたあの美貌。
 優しく愛しいあねさまの全て。

 ぎこなんぞと知り合う前から、ずっとずっと愛していたのだ。
 届く筈のない想いだと解ってはいる。

 これは姉に対するそれではなく、女として姉を愛してしまっている禁忌。


 口にはしない、表には出さない。
 それでもそれでも、あねさまだけをあいしてる。

 つうにとって、しぃを泣かせ悲しませるもの全てが、悪であり敵であった。



9 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:03:48.37 ID:nW1OvLqWO

 そんなつうの耳に、姉の泣き声が届いてしまった。
 哀しい切ないと、泣き叫ぶ様な泣き声が。


 座敷に近付いた時、離れた廊下に居ても聞こえるしぃの声。
 そして坊っちゃんを呼び、坊っちゃんがしぃを呼ぶ、声。

 さっと顔色を変えて、つうは先程までの、坊っちゃんに対する申し訳なさを投げ捨てた。

 頭の中がしぃの泣き声と、殺意でぐちゃぐちゃに混ざり合う。
 冷静さは瞬時に消え失せ、ただ殺意だけがつうを包み込んだ。

 赤い振り袖を翻して、廊下を駆け抜け、座敷へと走る。


 あねさまを泣かせる男を、殺す。


 小さく、あねさまとつうは呼ぶ。

 その声に、黒い影が機敏に跳ねて障子を開け放っていた。



11 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:04:40.12 ID:nW1OvLqWO



(;,^Д^)「…………」


 内藤宅の座敷に、医者である狸のたからは居た。
 正座をして縮こまり、俯きながら広い座敷に、ぽつんと。

 あの坊っちゃんに、留守番を任せたとだけ告げられ、逃げられてしまった。
 小心者のたからには、それを破って逃げ出す根性等は持ち合わせていない。

 しかし一刻も早く逃げ出したい。
 この屋敷に住まう、あの鬼に見つかる前に。


 屋敷の鬼は、坊っちゃんが脚を失った事でひどく憔悴している。
 しかしその内側は、恐らく、怒りと殺意でどろどろ。

 あの坊っちゃんの、脚を、切り落とされたのだ。
 無理もない、無理もない事。



12 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:05:00.00 ID:nW1OvLqWO

 十数年前、坊っちゃんの世話役となった鬼。
 その鬼は坊っちゃんの父親代わりとなり、坊っちゃんを育てて来た。

 父親として、しかし兄の様に、愛情を注いで我が子の如く育ててきた坊っちゃん。
 己を救った敬愛するあやかし達に与えられた、坊っちゃんの世話役と云う仕事。

 誇りを持って全うしてきた。
 愛情を持って全うしてきた。

 尊敬と感謝を持ち、恩返しをしたくて。
 父性と慈愛を持ち、立派に育て上げたくて。


 それなのに、それなのに。

 自分がふと目を離していた間に、坊っちゃんはかたわものになってしまった。


 自責の念と、怒りに苛立ち、悲しみ、後悔。
 脚を失わせた己の無力さに怒り、苛立つ。
 脚を失ったと云う事実に、悲しみ、後悔をする。

 そして、脚を奪った相手への、殺意。



13 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:06:25.34 ID:nW1OvLqWO

 鬼の中でぐろぐろと渦巻いているであろうそれを、想像するのはいとも容易い。
 たからも、鬼の過保護さはよく見てきた。

 父と云うより母にも似ているその愛情は、まさしく我が子へのそれ。
 我が子を傷付けた相手へ、鬼はどうする。


 鬼の怒りは強い物。
 鬼とは、欲望に純粋な物。

 あの鬼は餓鬼、しかし、餓鬼と云えど鬼に代わりはない。


 鬼は怒ると、何をする。
 鬼が怒りて、


( A )「…………よぉ、たから」

(;, Д )「っ!?」


 たからの後ろで、ゆらりと、立っていた。



15 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:07:05.01 ID:nW1OvLqWO

(;, Д )「どっ……ど、どどど……どく、お、さ……」

( A )「久々だなたから……まぁ、茶でも、飲んでけや……」

(;, Д )「は、はひっ……」


 背を向けているから、たからには鬼───どくおの表情を伺う事は、出来ない。

 しかし、しかしそれでも、背中に突き刺さる殺気は、嫌と云うほどに感じていた。

 きりきりと痛む胃をぎゅうと押さえて、たからは冷たい汗を流す。


 怖い。
 おそろしく、怖い。

 まるで後ろから襲いかかられ、首でも咬み千切られそうな威圧感────咬み、千切られそうな。


(;, Д )(…………どう、しよう……)



17 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:08:01.52 ID:nW1OvLqWO

 そうだ、そうだ忘れていた。
 先程たからが坊っちゃんの手当てをした時、自分はどんな状況に陥った。

 堪えきれないのではないかと云う、空腹を感じた筈だ。
 狸の己でも、抗い難い空腹を感じてしまったのだ。


 ならば、どくおは。

 餓鬼であるどくおは、あの匂いを、一晩中嗅いでいたのではないのか。


(;, Д )(……もしかしたら私は、とんでもない状況なのかも知れない)


 思い出す血の匂い。
 肉の断面にこぼれる血、食欲を刺激する匂い、甘い、鉄の様な匂い。

 脳裏に浮かべるだけで腹が鳴りそうなそれを、餓鬼がずっと見て感じていたのだとしたら。
 餓鬼の空腹と云うのは、今、何れ程の物なのか。

 狸のたからでさえ、兄に声をかけられなければかじりつきそうになった。
 少しの間見ただけで、どうしようもない食欲に苛まれたのだ。

 一晩中、あれを一晩中感じていて、自分は我慢できるのか。


 無理、だ。


19 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:08:53.29 ID:nW1OvLqWO

 無理だ無理だそんな事が出来るものか。
 兄が居たとしても弾みで噛み付きそうになるのに、そんな事が出来る訳がない。

 濃い血肉の匂いとは、そう云う物なのだ。
 あやかしがあやかしを保つ為の、もう一つの方法とも云える物なのだ。

 あやかしとしての仕事をする事も、人間の血肉を食む事も、本能に従うと云う事。
 つまりあやかしが人の血肉に食欲をそそられてしまうのも、本能。

 それも食欲と云う物は、相当の理性が無ければ抗えぬもので。

 食欲に特化した鬼である餓鬼が耐えるのに、どれだけ、理性が必要か。


('A`)「ほらよ、茶と菓子だぞ」

(;, Д )「ほぎゃあっ!?」

('A`)「何を奇っ怪な声で鳴いてんだお前は、狸ならぽんぽこ云っとけ」

(;,^Д^)「す、すみません……あとそれ腹を叩く音です……」

('A`)「へいへい、腹鼓でも叩いてろ」

(;,^Д^)(あれ……?)



20 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:09:59.33 ID:nW1OvLqWO

 ひょいと戻ってきたどくおは、たからの前に茶と茶菓子を置いてから定位置に座った。
 その顔は何時もと変わらず、うすぼんやりとしており、掴み所が無い。

 たからは力が抜けた様に息を吐き、机に置かれた茶菓子に目を落とす。

 湯気の立ち上る緑茶の隣には、愛らしい梅の花を模した菓子。
 薄紅色のそれの真ん中には、ちょんと黄色い飾りが乗せられている。

 器用な物だなあと感心しつつ、手を合わせて頂きますと頭を下げた。
 どくおは畳みに投げ出されていた瓦版に目をやったまま、へいへい、と面倒臭そうに応えるだけ。

 黒文字で一口分を切り取って口に運ぶと、口の中で餡がほろりと崩れて溶ける。
 上品な甘さと共に鼻に抜ける梅と酒の爽やかな香りに、たからは、ほう、と息を吐いた。

 匂いだけで、少しばかり酔いそうになる。


(,,^Д^)「これは、梅の餡……?」

('A`)「去年の夏に梅酒漬けたからな、中身に混ぜた」

(,,^Д^)「美味しいです、梅の形に梅酒の餡とは……」

('A`)「如月は梅見月だからな」

(,,^Д^)「…………風流ですね、どくおさん」

('A`)「顔に似合わず、を飲み込んだだろ今」


21 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:11:42.11 ID:nW1OvLqWO

(,,^Д^)「……でもちょっと、冬っぽくはない、かも?」

('A`)「梅の味が夏向けだからなー、だからそれは失敗作」

(,,^Д^)「……」

('A`)「がつがつ食って処理してけ、そんなもん坊っちゃんには食わせられねェ」

(,,^Д^)「……はい…………どくおさんも食べませんか?」

('A`)「味見で腹一杯」

(,,^Д^)「普段は失敗なさったのはどうしてるんですか……」

('A`)「しょぼんがぺろりと」

(,,^Д^)「ああ……甘いの、好きですよね……彼」

('A`)「飼い主によく似やがったよ……」

(,,^Д^)「……でも、美味しいです…………けど……」

('A`)「けど?」

(,,^Д^)「…………梅酒、多いです……」

('A`)「……下戸だったな、たから」



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 21:13:05.64 ID:yskNNcqy0
相変わらず和菓子が美味そうしえん


23 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:13:06.50 ID:nW1OvLqWO

(,,^Д^)「…………」

('A`)「…………酔うなよ」

(,,^Д^)「きついです……梅酒」

('A`)「……悪い」


 茶で流してはいるものの、茶菓子に含まれる酒気は食えば食う程に強く感じられ。
 たからは情けない顔をしながら、ひく、と一つしゃっくりをついた。

 酒そんなに入れたかなと首を傾げるどくおは、頬を染めるたからに肩を竦める。


('A`)「水いるか?」

(,,^Д^)「あ……いえ……ぇぅ……」

('A`)(やだ、この子酔ってる……顔変わってないのに……)



24 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:13:44.32 ID:nW1OvLqWO

(,,^Д^)「どくおさん……どくおさん、すみません、どくおさん……」

('A`)「んあ?」

(,,^Д^)「私が……私がへたれなばっかりに……私が……」

(;'A`)

(,,;Д;)「でぃさんが……ひぐ……でぃさんが、どくおさん……ぇぐ……内藤さん……」

(;'A`)「何を言いたいのかさっぱり解らねぇよ……」

(,,;Д;)「ずびばぜん……ずびばぜん……ふっ……ぇぐ……ひぐ……」

(;'A`)「お前もうべろんべろんに酔ってるだろ……」

(,,;Д;)「酔って、な……ひぐっ……うっ、ぐすっ……」

(;'A`)「ああもう、水持ってくるから待ってろ」

(,,;Д;)「私がへたれなばっがりにでぃさんを苦しめで内藤さんに怪我を……うぇぇぇぁぁぁぁぁあ……」

(;'A`)「うっせェなお前は悪くないだろそれ! 引っ張んな!」

(,,;Д;)「う゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ……」

(;'A`)「離せ! 蹴るぞ! 離せ!!」



25 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:15:16.51 ID:nW1OvLqWO

 席を立って水を入れに行こうとするどくおの足にしがみ付き、たからは畳に突っ伏してしゃくりあげる。
 すみませんすみませんと繰り返すその頭を数度踏むが、離れる様子はなく。

 えぐえぐ涙を流すたからは、どくおにひたすら謝罪を繰り返していた。

 こいつどうしようと面倒臭そうな顔をするどくおに、細い声が投げ掛けられる。


(#゚;;-゚)「ぁの……たからのあにさま、いてはりま……」

('A`;)「あ……」

(;#゚;;-゚)「……す……ね」

('A`;)「……いてはります」

(;#゚;;-゚)「え……えろうすんません……たからのあにさま、お酒……?」

('A`;)「……ううん、これはきっと俺が悪い……」

(;#゚;;-゚)「? ? ?」



26 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:16:11.56 ID:nW1OvLqWO

 げし、とたからを蹴飛ばして離れると、縁側でひょいと顔を出した幼子の元まで移動する。

 訛りの強い言葉で話す幼子は、濃い緑の着物を纏い、身体中に古い傷跡が這い回っている。
 しかし純粋そうな顔で首を傾げては、ただ不思議そうにどくおを見上げていた。


('A`)「でぃ、どうした?」

(#゚;;-゚)「んと、風邪引いたて患者さん来てはるから……」

('A`)「……悪い、使い物にならねェと思う」

(;#゚;;-゚)「せや……ね……たからのあにさま、お酒ごっつ弱いから……」

('A`)「飲ませてはねェんだけどな……」

(#゚;;-゚)「? ほんなら、何で……?」

('A`)「菓子に梅酒使った」

(#゚;;-゚)「ああ……」

('A`)「ああ……って……」

(#゚;;-゚)「ようある、事やから……酒饅頭で酔わはるもん……」

('A`)「もう病気だろそれ……」



27 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:17:26.71 ID:nW1OvLqWO

('A`)「まあ上がれ、何か飲むか」

(#゚;;-゚)「へ、へぇ……おおきに……」

('A`)「ココアとミロどっちが良い」

(#゚;;-゚)「ほな、あったかいミロで……」

('A`)(まさかのノン突っ込み)


 でぃを上がらせて台所に向かうどくお。
 その後ろ姿をぼんやりと見ながら、でぃはちょこんと座布団の上に正座をする。

 未だに突っ伏して泣きじゃくるたからの頭を膝に乗せ、よしよしと後頭部を撫でた。
 たからはそれでも泣き続け、何も言わずにでぃの膝を涙で濡らす。

 泣き上戸、なんとかならないかなあ。
 困った様に頭を傾けて、でぃは小さくため息を転がした。


 困った主人だなあ、と、すこうしだけ笑って。



28 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:18:08.84 ID:nW1OvLqWO

('A`)「ほらよ、ミロと菓子」

(#゚;;-゚)「あ……おおきに、どくおさん……」

('A`)「何だ、熱いなお前ら、膝枕か」

(*#゚;;-゚)「ぇ……ぇへ……」

('A`)「ほら飲め、たからに溢すなよ」


 色恋沙汰も幼子の戯言と思うのか、戻ってきたどくおは軽く茶化して
 でぃの前に茶色の液体が入った湯飲みと、先ほどの茶菓子を置いた。

 頭を下げて手を合わせ、でぃは小さくいただきますと呟いてから差し出された物に手をつける。
 ミロと梅の茶菓子は合わんよなあと思いつつも、どくおは幸せそうに甘さを頬張る幼子を見ていた。


('A`)「美味いか」

(*#゚;;-゚)「おいひー……」

('A`)「所で、何でお前は鎌鼬の仕事に参加しねェんだ?」

(;#゚;;-゚)「ぶっ!?」

(,,;Д;)「熱っ!?」



29 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:19:18.13 ID:nW1OvLqWO

('A`)「ほれ、拭け」

(;#゚;;-゚)「お、おおきに……あの……」

('A`)「で、何でだ?」

(#゚;;-゚)「……どくおさん、知って……?」

('A`)「坊っちゃんと狸共が話してるの聞いてな」

(#゚;;-゚)「…………ほんなら、あねさまが、あやかし保たれへんのも……」

('A`)「ああ、聞いてた」

(#゚;;-゚)「……うちも、ね……一緒にしよて、云われたん……」

('A`)「……だろうな」

(#゚;;-゚)「せやけど、うち……お医者様の、たまごやの……せやから、」

('A`)「治すとは云え、痛がるのを見るのは、嫌と」

(#゚;;-゚)「…………うん……うちがやらんて云うたら、やめると思った……
      あねさまも、つうちゃんも……やめると思ったん」

('A`)「……」



30 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:20:38.54 ID:nW1OvLqWO

(#゚;;-゚)「せやけど…………うちが、参加せんから……怪我したひと、いっぱい来るようになったん……」

('A`)「……でぃは知ってるか、坊っちゃんの脚」

(#゚;;-゚)「? 内藤さんも……怪我、を……?」

('A`)「脚をな、…………切り落とされた」

(;#゚;;-゚)「!? な、……なっ……!?」

('A`)「脚を片方、失った」

(;#゚;;-゚)「そんな、そんな……つうちゃん……っ…………あぁっ……
      ごめんなさぃ……ごめんなさぃっ……うちが……っ!」

('A`)「鎌鼬の薬も、狸な薬も……落ちた脚を繋げられねェ、だろ」

(;# ;;- )「せやけど、せやけどっ……あぁぁっ……!!
      ごめんなさっ……ごめんなさぃいっ…………!!」

('A`)「お前が謝っても、どうしようもねェ、だろ?」

(;# ;;- )「せやけどぉ……っ!!」



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 21:21:01.42 ID:BiABKuZ0O
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hyakkiyakou02.gif


前の時の物だけど
つんの服とか描写なかったから違うかもしれん


32 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:22:13.16 ID:nW1OvLqWO

 湯飲みを落とす様に置き、でぃは小さな手のひらで顔を覆う。
 そしてか細く謝罪を繰り返し、混乱しきった目を指の隙間から覗かせていた。

 己の姉達がとんでもない事をした。
 己が止めなければいけなかった。

 それなのに何も知らずにのうのうと、どくおに


 どくおに、


(#゚;;-゚)「どくお、さん…………おなか、は……?」

('A`)「んあ?」

(#゚;;-゚)「おなか、減らん……かったん……?
      血ぃいっぱい出ると、うちでも……おなか空くん……」

('A`)「ああ、あやかしはそうだな、人の血肉は腹が減るもんだ」

(#゚;;-゚)「どくおさん……は……? どくおさん、その……鬼さん、やろ?」

('A`)「ああ……餓鬼、だな」

(#゚;;-゚)「…………おなか……すかん、の……?」



33 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:23:31.89 ID:nW1OvLqWO

('A`)「……俺を何だと思ってんだ」

(#゚;;-゚)「ふ、ぇ?」

('A`)「俺は坊っちゃんと長く暮らしてる、人になろうとする鬼だ
      てめぇの食欲くらい、制御出来らぁよ」

(#゚;;-゚)「ふぇ……どくおさん……」

('A`)「昔は、何度も食おうとしたからな……今はもう、平気なんだ
      ま、腹が減らねぇかと云われたら多少は減るけどな」

(#゚;;-゚)「…………すごぉい……」

('A`)「だろ」

(#゚;;-゚)「……どくおさん、……怒ってはる……やん、ね……」

('A`)「何にだ?」

(#゚;;-゚)「うちの、事……つうちゃん、あねさまの事……」

('A`)「何でだ?」

(#゚;;-゚)「ふぇ……? だって、内藤さんの……あし……」



34 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:24:15.16 ID:nW1OvLqWO

('A`)「故意に脚ィ切り落としたんじゃねェだろ、それに、しぃの気持ちも解らんではない」

(#゚;;-゚)「せや、けど……」

(;'A`)「お前らは俺を悪鬼羅刹か何かだと思ってんのか……?
      これでも人間らしい感情として、同情くらいは出来るんだぞ……」

(;#゚;;-゚)「ぃ、いえ……あの、その……」

(;'A`)「そりゃあよ、腹が立たねぇ訳でもねェけど……そんなには怒り狂わねえよ……」

(;#゚;;-゚)「……よ、よかった……」

(;'A`)(こいつらの中では俺いこぉる怖い鬼の方程式が出来上がってんのか……)

('A`)「……どうする? でぃ」

(#゚;;-゚)「?」

('A`)「坊っちゃんと狸は、お前の姉の所に言ったみてェだ
      お前はどうする、姉を止めに行くか?」

(#゚;;-゚)「っ!」

('A`)「どうする、?」

(#゚;;-゚)「…………」



35 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:25:20.89 ID:nW1OvLqWO

(#゚;;-゚)「……いく、あねさまのとこ…………そんで、やめてて云うて……みんなに謝るん」

('A`)「よし、良いがきだ」

(#゚;;-゚)「……いいこ、ちゃうよ……わるいこや」

('A`)「それを決めんのはお前じゃあねェ、んじゃ行くか」

(#゚;;-゚)「……たからのあにさま、は?」

('A`)「ほっとけ、そら行くぞ」


 泣き疲れて寝息をたてるたからを、そっと膝から下ろしてでぃは立ち上がる。
 どくおものんびりと席を立ち、縁側から庭へと降りた。

 草履に足を突っ込んで庭を歩くどくおに続き、でぃも慌て外へ出た。


 庭から家の裏へと向かうどくおは何かを探すように首を巡らせ、きょろきょろ。

 そんなどくおを不思議そうに見ながら、でぃはただ首を傾げた。



36 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:26:30.93 ID:nW1OvLqWO

('A`)「お、あった」

(#゚;;-゚)「わ……金棒や」

('A`)「不要品潰すくらいにしか使わねェんだけどな、最近は……ま、持っといて損は無かろ」

(;#゚;;-゚)(使うよぉな事にならんかったら……ええなぁ……)


 ひょい、と屋敷の影から取り出したのは、持ち手に赤い布を巻いた巨大な金棒。
 とげを無数に持つそれを持ち上げて、引き摺りながら庭を出ようとした時。


 『よう鬼子、鬼ごっこでもすんのかぁ?』

('A`)「捕まえて食うぞ」

 『そぉ云うなよ鬼子ちゃんよぅ』


 何処かからかけられた声に、どくおの顔が僅かに歪む。
 楽しそうに げろげろ と鳴くそれの姿を探し、辺りを見回した。



38 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:28:15.32 ID:nW1OvLqWO

 何処から聞こえるのか解らずに苛つく顔を見せるどくお。
 その背中から目をそらしたでぃは、しゃがみこみ、足元の草むらに手を突っ込み。


(#゚;;-゚)「あ、蛙さんめっけ」

(;^Д^)「げこっ! に、握るなよぅ!」


 ぐわしと、片手で大きな蝦蟇を握り締めた。


(#゚;;-゚)「どくおさん、しゃべってはるの、この蛙さんやよ」

(;^Д^)「げろっ!? こ、こんのおちびよぅ……」

(#゚;;-゚)「おくち達者な蛙さんやねぇ……」

('A`)「…………よぉ、蝦蟇のぷぎゃー」

(;^Д^)「…………やっほーげんきー?」

('∀`)「がきに捕まえられてやんのプギャーwwwwww」

(;^Д^)「うぉぉぉぉぉうぃむかつくぞぉぉぉぉぉぉ!!」



42 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:31:53.08 ID:nW1OvLqWO
 でぃの手の中でじたばたともがく蝦蟇、ぷぎゃー。
 冬だと云うのに冬眠もせず、その辺でだらだらとしていたのは、この蝦蟇もまたあやかしだからで。

 普段は坊っちゃん宅の井戸に住んでいる、一種の居候でもある。


('A`)「まあさっさと話を進めたいし新キャラのお前に興味は無いからとっとと消えろ」

(;^Д^)「ひどくない? いきなりでひどくない!?」

('A`)「あ 蝦蟇の油ってのは、万能だよな」

(;^Д^)「……まぁ、俺っちの油は紛い物じゃないしねぇ……」

('A`)「傷とか治すんだよな」

(;^Д^)「……まぁ、うん……ぶっちゃけ、ちぃと薬」

('A`)「切れた脚とか治す?」

(;^Д^)「……うん」

('A`)「落ちた脚とか繋げられる?」

(;^Д^)「濃度の高い油なら……頑張れば……」

('A`)「よし出せ、油出せ」

(;^Д^)「いきなり!? 出ないよ!? 出てもこれ冷や汗だよぉぅ!?」


43 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:34:06.44 ID:nW1OvLqWO

('A`)「喧しいわ、絞れでぃ」

(#゚;;-゚)「へぇ……ぎゅっとな」

(;^Д^)「あだだだだ出ない出ないよそれじゃ! 内臓とか出るよぉぅ!?」

('A`)「じゃあ出せ、油」

(;^Д^)「……気安く云うけど、本物の蝦蟇の油って下手すると国宝物よ……?」

('A`)「そうなのか? でぃ」

(#゚;;-゚)「鎌鼬より狸より、河童の軟膏よりもすごいお薬なん……切り傷なら薄くひと塗りでなおるの」

('A`)「よし、絞れ」

(#゚;;-゚)「ぎゅー」

(;^Д^)「出る出る出る出る主に内臓とか出るよぉぉぉぅ!!」

('A`)「構わん、やれ」

(#゚;;-゚)「ぎゅっぎゅっ」

(;^Д^)「あぎゃぎゃぎゃぎゃ! 待って待って死んじゃうのぉぉぉぅ!!」



44 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:36:20.06 ID:nW1OvLqWO

('A`)「死んで良いから油を出せ」

(;^Д^)「鬼! 悪魔! 人でなし!!」

('A`)「鬼だから」

(;^Д^)「何でそんなに俺っちの油ほしいの!? いじめ!?」

('A`)「説明めんどくせぇ」

(;^Д^)「そんな殺生な!?」

('A`)「良いから出さねぇとケツから空気入れてパーンするぞ」

(;^Д^)「過去に何度かやられかけたから本当に止めてぇ!?」

('A`)「悪がきも居るもんだな」

(;^Д^)「お前んとこの坊っちゃんだよぉぅ!!」

('A`)

(;^Д^)

(#゚;;-゚)「ぎゅっ」

(;^Д^)「きゃあああああ!!」



45 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:37:09.77 ID:nW1OvLqWO


 ばあん、と開け放たれた障子。
 しぃと坊っちゃんが驚いて顔を向けるよりも早く、黒い影が二人を抱えて座敷の奥へと飛び込んだ。

 畳の上を転がって、坊っちゃんは目を白黒させながら顔を上げる。
 すると、つい先ほどまで座っていた座布団に、鋭い鎌が突き刺さっていて。


( ゚∋゚)「内藤さん、お怪我は?」

(;^ω^)「く、くっくる!? 何だお、何事だお!?」

(* ∀ )「……ちっ、鳥畜生が……」

(;*゚-゚)「つ……つう、ちゃん……?」

(* ∀ )「おい、塩大福……」

(;^ω^)「お、お?」

(* ∀ )「お前……あねさま、泣かせたな……?」

(;^ω^)「あ……や……その……あの……」



46 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:38:35.91 ID:nW1OvLqWO

(* ∀ )「俺のあねさまを泣かす奴ぁ、誰ひとりとして許しゃあせん。
      いとしいいとしい俺のあねさまを悲しませる奴ぁ────俺が殺す」


 ばさり、赤い振り袖がめくれて、つうの白い手首があらわになる。
 手首の外側からずらりと伸びるは、白銀に輝きし鋭利な刃物。

 鎌鼬の斬り役、つう。
 姉を狂愛する、あやかし。

 もう片方の鎌を座布団から引き抜いて、ゆらり立ち上がり坊っちゃんを睨む。
 その眼は、怒りと殺意にどろどろに溶けては燃え盛り、笑みさえ浮かべていて。


 突然の事に言葉を失う坊っちゃんとしぃ。

 そんな坊っちゃん目掛けて床を蹴ったつうから逃れる為、
 くっくるは坊っちゃんを肩に担いで走り出した。

 空を斬った鎌につうは舌を打ち、障子を突き破って座敷を飛び出したくっくるを追って外へ出た。



47 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:39:32.92 ID:nW1OvLqWO

(#*゚∀゚)「あっひゃひゃひゃ! 待てやクソがああああああ!!」

(;^ω^)「好きで泣かせたんじゃないんだおおお! 悪かったおおおお!!」

(#*゚∀゚)「お前があねさまを泣かせた事に変わりはないんじゃボケがああああああ!!」

(;^ω^)「すまなかったおこの通りだお勘弁してくれおおおおお!!」


 廊下を走り抜ける、黒い影と赤い影。

 くっくるの肩に担がれた坊っちゃんは、後ろを追ってくるつうに手を合わせて頭を下げていた。
 しかしつうがその様な事で許す訳もなく、鎌を振り回しながら追うばかり。

 そこらじゅうの物を切り裂きながら駆け抜けて、つうは己の鎌を血で濡らそうと怒鳴る。


 妖怪随一とも云われる素早さを誇る筈の鎌鼬が、速さで劣ってしまっている。
 相手は鳥とは云え、重い荷物を抱えた筋肉だるま。

 それに速さで劣ると云う事に、自尊心も傷付けられ。
 つうの怒りと苛立ちは、豪雪の如く積もるばかり。



9 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:40:27.29 ID:nW1OvLqWO

 姉を泣かせただけでなく、素早さには自信のあるつうよりも速い。
 こいつらはどれだけ俺をおちょくれば気が済むんだと歯軋りをし、鎌を繰る。

 しかしその鎌も、坊っちゃんにもくっくるにもかすりはせず空を切るばかり。
 ああ腹が立つ、ああ苛立つ。
 この鎌を血で染めねば、渦巻く怒りはおさまりはしない。


 店の外へと飛び出したくっくるを追うも、追い付けない。

 しかし、このまま逃げるばかりで済む筈もあるまい。
 一度は止まって、つうを捩じ伏せねばどうしようもなかろう。


 狙うはその時。
 人混みの中で奴等は周囲を気遣い、ろくにやり合う事は出来ない筈。

 だからその時に、首でもどこでも切り裂いてやる。


 そうにやりと笑った時、つうの背中に、何かが叩き付けられた。



50 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:42:11.91 ID:nW1OvLqWO

(;* ∀ )「あだっ!? なっ……んじゃボケェッ!!」

(#´・ω・`)「むきゅっ!!」

(#*゚∀゚)「あぁ!? クソが、甘ったれ管狐はすっこんどけやッ!!」

(#´・ω・`)「むきゅうううう!!」

(#*゚∀゚)「チッ……一丁前に威嚇なんぞしやがって……ッ」


 つうの背中に体当たりをしたのは、坊っちゃんから離れていた管狐しょぼん。

 外に出て、一瞬動きの止まったつうに、今だと頭からぶつかりに行ったしょぼんは、
 体毛をぶわりと逆立てて威嚇をし、坊っちゃんに手出しをするなと言葉にならぬ鳴き声で告げる。

 しかしつうにしてみれば、そんな威嚇は畏怖すべき物でも何でも無くて。
 舌打ちをすると、威嚇しかえす様に手首の鎌を大きく振るった。


 つうの鎌をひょいとかわして、しょぼんは体の中で唯一固いとも云える頭をつうの肩に叩き付ける。
 それはまるで小動物の攻撃、猫に対して鼠が攻撃を仕掛ける様な物。



52 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:44:28.12 ID:nW1OvLqWO

 大して痛みも感じぬそれを軽く振り払い、つうは邪魔だと鎌で牽制する。
 しかししょぼんは、しなやかに細長い体をくねらせ、鎌を避けて。

 僅かに切られた体毛をはらりと舞わせ、つうが降り下ろした刃に向かって、しょぼんは口を開いた。


 がきり、受け止められる刃。
 金属のぶつかり合う様な音をさせて止まったそれに、つうが驚愕に目を見開く。

 鋭利な鎌を受け止めたのは、しょぼんの口。
 しかしその口からは、普段は見えぬ無数の牙が覗いていて。

 慌てて腕を引こうとするが、しょぼんに噛み付かれたそれは押す事も引く事も出来ず。

 冷たい汗が、背中を伝った。


(;*゚∀゚)「なっ……おまっ……」

(#´ ω `)「むぎゅううううう……」

(;*゚∀゚)「は、離っ……離せっ、おい!!」

(#´ ω `)「むっぎゅうううううううッ!!」

(;*゚∀゚)「ッ!?」



54 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:47:13.64 ID:nW1OvLqWO

 しょぼんが一際大きく呻いた、その瞬間。

 ばきゃり、と、つうの右手の鎌は、砕け散った。


(;*゚∀゚)「…………へ……?」


 鋼の如き鎌をぼりぼりと、しょぼんはぞろり揃った牙で噛み砕き、咀嚼する。

 鎌を砕かれた事で拘束からは解放されたが、つうはその場から動けずに居た。

 己の鎌を受け止めるだけでも予想外の事だったと云うのに、
 この甘ったれな愛玩動物らしい口が、金属と変わりの無い鎌を噛み砕いたのだ。

 それも、牙を生やして、咀嚼をして、ああ、ごくり、飲み込んだ。


 こいつは、何だ。


(;*゚∀゚)「おま……え……?」

(#´ ω `)「ふぅぅぅぅ……むぎゅうううう……」

(;*゚∀゚)「ひっ……!?」



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 21:47:20.23 ID:yskNNcqy0
しょぼん最強疑惑


56 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:48:51.65 ID:nW1OvLqWO

 宙を浮かぶしょぼんが、じり、とこちらへと動く。
 そこでやっと、つうも一歩後ずさる。


 つい先程まで恐れる相手ではなかった物が、今や恐怖の対象となりつつある。

 戸惑い、混乱し、寒い筈なのにつうの額や頬には汗が、流れる。
 先刻までは怖くも何ともなかった威嚇が、今は怖い、恐ろしい。

 自然と目尻に涙が浮かんで、言い様のない恐怖感に襲われ、つうは逃げ道を探す。
 この正体の解らないの恐怖から、目の前の、管狐から逃げ出したくて。

 先刻まで己の中で渦巻いていた怒りも殺意も、より強大な殺意の前に投げ捨てる。
 こんなものを相手にはしていられない、恐ろしい、襟巻きの様な、愛らしい筈の獣が恐ろしい。


 大変な物を敵に回しているのではないか。


 そう気付いた時にはもう遅く、しょぼんは口をがぱりと大きく開き、つうへと飛び掛かっていた。



59 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:51:17.17 ID:nW1OvLqWO

(;* ∀ )「ひっ……うわあああああっ!?」


 己の首目掛けて飛び掛かるしょぼんに、
 つうはその場にへたりこんで、腕を顔の前に掲げて情けない悲鳴を上げた。

 しかし、訪れると思っていた痛みは、


 『そぉい!!』


 掛け声と共に飛んで来た、何かによって遮られた。


 めきり、と何かが何かに当たる音。
 そして、「むぎゅっ」と云うしょぼんの悲鳴。

 辺りはしんと静まり返り、つうは暫くそのままの体勢で居たが
 妙な音と、訪れない痛みを不思議に思い、そっと腕を下ろした。



60 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:52:42.15 ID:nW1OvLqWO

 恐る恐る瞼を持ち上げて、視線を持ち上げる。

 すると、そこには青鼠色の足元。
 ゆっくり足の主を見上げれば。


('A`)「おい、大丈夫か鎌鼬」

(;*゚∀゚)「へ……?」

('A`)「大丈夫かってんだよ、どうなんだ」

(;*゚∀゚)「あ……あ、ああ……うん……だいじょぶ……」

('A`)「そうかそうか、そぉい!」

(;* ∀ )「あぎゃんっ!?」


 地べたに座り込んだつうの前に立っていたのは、餓鬼どくお、その人で。

 つうに二度無事かを問い掛けて、大丈夫である事が解ると、頷きながらその頭に拳骨を叩き込んだ。



61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 21:54:00.05 ID:pjcQYEcO0
しょぼん無双ktkr


62 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:54:18.33 ID:nW1OvLqWO

(;* ∀ )「はぎゃぁぁぁぁあ……いっでぇぇぇぇぇ……」

('A`)「痛くしたんだよド阿呆が、何してっか解ってんのかお前は」

(;*゚∀゚)「あ、う……」

('A`)「しょぼんに感謝しろよ、人殺しにならずに済んだんだ」

(;*゚∀゚)「……うう」

('A`)「……お前の姉を、余計に悲しませずに済んだんだぞ」

(;*゚∀゚)「ッ!!」

('A`)「反省しろ。おーい坊っちゃん、無事かー」

( ^ω(#)

('A`)



64 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:56:53.76 ID:nW1OvLqWO

( ^ω(#)

('A`)「どうしたのその顔」

( ^ω(#)「金棒は痛かったお」

('A`)

( ^ω(#)

('∀`)「てへっ」

(#^ω(#)「どうして金棒投げたし」

('A`)「だってしょぼんが」

(´xωx`)キュウ

('A`)

( ^ω(#)

('A`)「一応、助けに来たんだぜ……?」

( ^ω(#)「うんありがとう、でも怪我は増えた」



65 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:58:15.48 ID:nW1OvLqWO

('A`)「ごめんな坊っちゃん、でも黙って抜け出したのは誰だ」

( ^ω(#)「すみません僕です」

('A`)「ところで後ろの何」

( ゚∋゚)

( ^ω(#)「陰摩羅鬼」

('A`)「凄く……まっちょです……」

( ゚∋゚)「初めまして、くっくると申します。本日から内藤さんの乗り物となりました」

('A`)「予想以上に礼儀正しい」

( ^ω(#)「あと火車も乗り物としてげっつしたお」

('A`)

('A`)「まあ……良いか……」



67 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 21:59:58.69 ID:nW1OvLqWO

( ^ω(#)「ところでどくお、何でまた此処に?」

('A`)「ああ、でぃ連れて来たんだ」

( ^ω(#)「お、しぃの事でかお?」

('A`)「おう、坊っちゃんも話しに来たんだろ? どうなった?」

( ^ω(#)

('A`)

( ^ω(#)「どう……なったっけ……?」

('A`)「何しに来たんだよ……」

( ^ω(#)「ま、まあ部外者があれこれ口を挟むのもアレだから、当人達で話させた方が……」

('A`)「だから何しに来たんだよ……」

(´xωx`)キュウ



68 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:00:42.43 ID:nW1OvLqWO

(;*゚∀゚)(…………自分でやっといてなんやけど……話が見えん)

(#゚;;-゚)

(;*゚∀゚)(ええと、内藤のを斬って……あねさま泣いてて……内藤のを追っかけ回して……)

(#゚;;-゚)

(;*゚∀゚)(そんで、ええと……管狐が怖くて、……? 何がどうなったんや……?)

(#゚;;-゚)「つうちゃん」

(;*゚∀゚)「ほびゃあっ!?」

(#゚;;-゚)「……つうちゃん、また悪い事したん……?」

(;*゚∀゚)「へ、ぇ、で、でぃ? い?」

(#゚;;-゚)「内藤さんのあんよ斬っただけでなく……また悪い事したん……?」

(;*゚∀゚)「ぇ……あ……や……あの……」

(#゚;;-゚)「……」

(;*゚∀゚)「……怪我、させては……ない、よ……?」



69 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:02:09.71 ID:nW1OvLqWO

(#゚;;-゚)「……つうちゃん……まだ悪い事、するん?」

(;*゚∀゚)「え」

(#゚;;-゚)「あねさま止めんと、一緒にまた、するん……?」

(;*゚∀゚)「や、その……あの……」

(#゚;;-゚)「……あねさまがいっとう、傷付いてる……つうちゃん、あねさまを傷付ける……?」

(;*゚∀゚)「あ……」

(#゚;;-゚)「うちもう、あねさまが傷付くんもつうちゃん悪い事するんも……見たないん……」

(*゚∀゚)「…………でぃ」

(#゚;;-゚)「うちが……ちゃんと、止めてって、もっと云わんとあかんかったんね……悪いん、うちや」

(*゚∀゚)「違う…………それは違う、でぃ……俺が……」

(#゚;;-゚)「……つうちゃん、あねさまに、云おう……一緒に、やめよて」

(*゚∀゚)「…………うん」



71 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:03:37.81 ID:nW1OvLqWO

(#゚;;-゚)「あんね……ぎこさまもね、あねさまが人間なっても……好きやと思うん」

(*゚∀゚)

(#゚;;-゚)「…………つうちゃん?」

(;*゚∀゚)「あ、う、うん、そやな、うん」

(#゚;;-゚)「ほんなら一緒に云いにいって……みんなに謝ろ?」

(*゚∀゚)「……うん、そやな……」

(*゚ー゚)「…………つうちゃん、でぃちゃん……」

(#゚;;-゚)「ぁ……」

(*゚∀゚)「あねさま……」

(*゚ー゚)「……おおきに、ね……うちの事、考えてくれて」

(#゚;;-゚)「あねさま、」

(*゚ー゚)「…………ごめんね、二人を、うちの我が儘に巻き込んで」

(*゚∀゚)「……俺は、俺が好きで、した事や。せやからあねさまが気にする事やあらへん」

(#゚;;-゚)「うちも、あねさまの為に、なんもしとらんよ……ごめんね、あねさま」



73 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:05:01.93 ID:nW1OvLqWO

( ^ω^)「……丸く収まりそうだお」

('A`)「本当に坊っちゃん何しに来たの?」

( ^ω^)「乗り物げっつの為に?」

('A`)

( ^ω^)「まあ良いじゃないかお、何とかなるならそれで」

('A`)「まあ、良いけどよォ……」


 僕らの出る幕無かったお、と坊っちゃんは少し困った様に笑う。
 どくおはその頭をすぱんと殴り、肩を竦めて少しだけ笑った。

 後は当人同士で何とかなりそうで、ただ見ているだけだった坊っちゃん達はそっと三人に背を向ける。

 と、


(*゚ー゚)「お坊っちゃんっ!」

( ^ω^)「お?」



75 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:06:22.10 ID:nW1OvLqWO

(*゚ー゚)「脚の事……本当に、申し訳御座いませんでした……
      お詫びにはならんと思います、せやけどうちに出来る事があったら……!」

(*゚∀゚)「俺らに、出来る事があったら」

(#゚;;-゚)「出来る事、がんばってするん……!」

(*゚ー゚)「つうちゃん……でぃちゃん……」

( ^ω^)「おー……んじゃ、しぃはぎこと話し合ってからみんなに謝って来なさいお」

(*゚ー゚)「へ」

( ^ω^)「つうはしっかり働いて、二人に楽させる」

(*゚∀゚)「へ」

( ^ω^)「でぃは立派なお医者になるんだお」

(#゚;;-゚)「へ……へぇ……」

( ^ω^)「あと、三人は僕が成す百鬼夜行に参加。以上、かいさーん」



76 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:07:16.61 ID:nW1OvLqWO

(;*゚ー゚)「あ、あの、でも、それじゃ脚のお詫びには……」

( ^ω^)「しぃも、もうぎこと向き合えるかお?」

(;*゚ー゚)「ふぇ?」

( ^ω^)「もう、あやかしじゃなくなるからーって、めそめそしないお?」

(*゚ー゚)「……はい、つうちゃんにもでぃちゃんにも、皆さんにも、もうご迷惑はお掛けしません」

( ^ω^)「ならばよし、んじゃかいさーん」

(;*゚∀゚)「ま、待て待て待て、それやとお前の脚の詫びには」

( ^ω^)「別にそんなに気にしてないから良いお、めんどくさいし」

(;*゚∀゚)「せ、せやからって……」

(#゚;;-゚)「あの……あねさま、つうちゃん……」

('A`)「それに脚もくっつくしな」

(;*゚ー゚)(;*゚∀゚)「へ?」



77 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:07:56.33 ID:nW1OvLqWO

('A`)「云ってなかったか、そういや」

(#゚;;-゚)「うん……」

(;*゚ー゚)「ど、どう云う……?」

('A`)「蝦蟇の油はちぃと薬、以上かいさーん」

(#゚;;-゚)「か……かいさーん」

(;*゚ー゚)(;*゚∀゚)「……さーん……?」


 んじゃまたな、とどくおはでぃの頭をぐしゃぐしゃに撫でて軽く手を振る。
 そしてくっくるの背に坊っちゃんを乗せると、呆然とする二人に背を向け、歩き出した。

 途中でのびているしょぼんと金棒を拾い上げて担ぎ、
 背中で戸惑う鎌鼬の声を聞きつつ、さっさと帰路に就いてしまった。


( ^ω^)

( ^ω^)「えっ?」



79 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:09:36.70 ID:nW1OvLqWO

('A`)「どうした坊っちゃん」

( ^ω^)「脚……くっつくのかお?」

('A`)「ああ、蝦蟇から油搾り取った」

( ^ω^)「いや、さっぱり展開が読めないし駆け足過ぎるし」

('A`)「俺には読めてるし気にしない」

( ^ω^)「いやいやいやいやいや」

('A`)「良いだろ別に、鎌鼬も何とかなったし、ほら」

( ^ω^)「お?」


 どくおが足を止めて後ろを振り返り、随分と遠くなった鎌鼬を指差す。

 それにつられてくっくると坊っちゃんも振り返れば、
 鎌鼬三姉妹の所に、狸の親玉が合流したらしいところで。

 何やら少しばかり揉めている様に見えるが、ちらりと狸がこちらを見ると、にこやかに頭を下げた。



80 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:12:09.00 ID:nW1OvLqWO
( ^ω^)「…………僕、本当に行った意味あんのかお……?」

('A`)「知らね、良いから帰って脚繋げるぞ」

( ^ω^)「……はーい」


 何処と無く腑に落ちない顔をしたが、坊っちゃんも、まあ良いかと笑って手を振った。

 何とかなったなら、良いか、と。



 何やらくるりとまあるく収まってしまった、鎌鼬の一悶着。

 坊っちゃんのお陰で鎌鼬はその冷静さを取り戻し、落ち着けたと云う事は、坊っちゃんは知らぬまま。

 しかし深くは考えず、まあ良いやと坊っちゃんは笑うだけ。
 その朗らかさに、何人が救われているか等、知るよしもなく。


 さあ帰って飯にしようとけらけら笑い、
 草臥れ果てた蝦蟇と火車が待つ屋敷へと向かうのであった。

 ちゃんちゃん。



 『二話後編 おわり。』



81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:13:03.30 ID:RRQ+ORxx0



82 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/14(日) 22:13:29.47 ID:nW1OvLqWO

支援ありがとうございました。
駆け足? 元からだよ。
たから? ぽんぽこだよ。

>>31
おおお有り難う御座いますうううすげぇぇぇぇぇぇ!!


それでは、これにて失礼!


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:16:05.64 ID:yskNNcqy0
おつおつ!


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:17:39.14 ID:BiABKuZ0O
おっつ乙の(,,^Д^)ぽんぽこ!


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:21:39.53 ID:7fhrbzlx0
(,,^Д^)ぽんぽこ乙!


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:29:24.51 ID:pjcQYEcO0
おつ
順調に俺のシューが近づいてきている


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  1. ■ [くるくる名無しさん]

    ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
    空気のが爆竹よりましか
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