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◆( ^ω^)百鬼夜行のようです 【第三話 百折千磨その身に背負い。 後編】

前の話/インデックスページ/次の話

1 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 20:55:56.42 ID:o62meJ39O
ブーン速。さん
ttp://hoku6363.fool.jp/yakou-yakou/0000.php
くるくる川 ゚ -゚)さん
ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/?mode=m&no=163
面白蛇屋さん
ttp://hebiya.blog40.fc2.com/?mode=m&no=9295

まとめて下さってます、ありがとうございます。


三話後編
ちょっと
ながいよ


2 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 20:57:42.30 ID:o62meJ39O

 父と母を、病で亡くした。
 残された娘もまた、病に侵される。

 病により崩れたその顔、腐り落ちた腕。
 泣きながら父を呼び、母を呼び、血を吐きながらも生を叫んだ。

 痛い、苦しい、死にたくない。
 幼い頭は壊れかけているにも拘わらず、ただただ生を求めて。

 ごぽり、血を吐く。



     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【第三話 百折千磨その身に背負い。 後編】
      【閲覧注意】


 そんな幼子に手を差し伸べたのは、憑き神。

 それは一時の気の迷いか酔狂か、それとも、




4 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 20:59:30.59 ID:o62meJ39O


 闇の中、仔犬は土の中に埋められていた。
 頭だけを地面から出し、目の前には生肉が一つ。

 森の中、犬は涎を垂らして舌を伸ばした。
 もう十日程、何も口にしてはいない。

 目の前にある肉を何とか食もうと、唾液を垂らし、舌を目一杯伸ばす。
 しかし舌先は肉に触れる事無く、血の匂いだけが鼻を突く。

 ひゅうひゅうと、荒く細い息を吐く。
 右目に突き刺さった短刀が、ふるりと揺れた。

 血膿を垂れ流す右目、腐った肉が短刀の重みに負けて裂ける。
 しかし犬は、もう痛みすらも感じはしない。
 ただ血走り明後日の方を向いた左目を、必死に肉へと向けようとしていた。

 吠える事も喚く事も出来なくなった、ただの犬。
 ただの犬は、今や死にかけの犬。

 空腹に見開かれた目、痩けた頬に震える頭。


 そんな犬を見下ろす、何者かの影。



5 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:00:22.67 ID:o62meJ39O

 不意に掲げられたのは、月の光をきらきらと反射させる一振の太刀。

 刃は空気を引き裂き振り下ろされ、ざん、と犬の頭を刎ね飛ばした。


 犬の目玉は明後日の方へぐるりと回り、声を上げる事もなく事切れた。

 ひょいと転がった頭を持ち上げて、影はげらげら下品に笑う。
 けたたましく、楽しそうにげたげたと。

 そして頭を放り投げて、地面へぐちゃりと叩き落とす。


 影の姿は、鳥とも獣ともつかぬ形をしていた。



 横たわるは犬の死骸。

 首を刎ねられ前足を切られ、目玉の潰れた犬の死骸。


 犬が最後に見た物は、真っ白い月と翼の影。




6 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:01:52.11 ID:o62meJ39O

 ふと瞼を持ち上げると、己が肘置きに身を任せて転た寝をしていた事に気付く。
 のそりと傾いていた身を起こし、すっかりよれてしまった白装束を見下ろす。

 ぼんやりした目を辺りに巡らせれば、座敷には己しか居ない事が分かった。
 ああ、白稚児はまだ戻っていないのか 最近は帰りが遅い。

 そんな事を考えては、犬の耳を持つ頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
 頭に乗っていた烏帽子が、床へと落ちた。


 夜に眠ると、嫌な夢を見てしまう。
 眠るまいとしているのに、一人になると眠ってしまう。

 ああ、白稚児が居れば。
 あの賑やかしい白稚児が居れば、目もさえる。


 男はのったり立ち上がり、烏帽子を拾い上げて座敷の隅へと放る。

 無精髭の生えた顎を左手で撫でて、半開きの右目を瞬かせた。




7 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:03:14.86 ID:o62meJ39O

 障子をぱしんと開けて、外へと出る。
 冷たくなった風が頬を撫でた。

 闇に落ちた世界の中で、爛々と煌めく白い月を見上げ、右目を細くする。
 潰れた右目に光は届かぬが、左の目から入る明かりにつられて動く。

 眉をきゅと寄せ、高い鼻の先をするりと指先で撫でてから息を吐く。
 人間の匂いが、嫌と云う程に溢れた町。
 決して好めぬ匂いは、己の存在の根底からなる出来事の所為か。


 男、犬神は人を好まない。
 元より人に憑く事が前提の妖怪。
 それなのに、憑く事をしない犬神。

 好みはしないが憎みもしない、稀なるけだもの。
 犬神はぼさぼさの髪をぐしゃりと掻き上げて、
 苛立たしげに、障子の縁をがつんと蹴った。


(‘_L’)「…………未だ、帰らんか、白稚児め」


 ぽつりと呟き、人差し指の爪を噛む。
 そしてその指で障子に穴をぷすりと開けて、座敷へと戻った。



8 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:05:22.13 ID:o62meJ39O

 くう、と鳴る腹を押さえる。

 自炊などしよう筈もない犬神は、奥歯をぎりりと噛み締めて
 側にあった化粧箪笥を、目一杯力を込めて蹴り上げた。

 苛立ちに顔を歪め、脂汗が頬を伝う。

 歪む顔は苛立ちの他にも、どこか恐怖に似た物も混ざって見えた。


 ぐううと低く唸り、己の頬へ爪を立てる。
 空腹を紛らわせ様と力を込めれば、薄い頬の肉を爪が裂く。

 空腹は、恐ろしい。
 目の前の肉を食えずに殺された夜を思い出す。

 空腹は、憎らしい。
 地の中は冷たく息苦しく、ただただ痛みばかりが己を襲った。


 嗚呼、腹が減った。


 障子の骨をがんと殴り、木屑へと変えても空腹はおさまらない。

 それどころか、腹は余計に減るばかり。



9 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:06:49.03 ID:o62meJ39O

 獣の耳をぺたりと伏せて唸る。
 長い爪は頬やら肩やら腹に食い込み、赤く濡れていた。


 腹が減ったと獣の声で叫ぼうとした時に、
 がらり、反対側の障子が開いた。


 「たっだーいまっ! …………って、何だこれ!?」

(‘_L’)「白稚児……」

 「もー、おやっさんまた暴れたの? お腹空いたなら自分で作りなよ」

(‘_L’)「お前、何の為に存在するか、忘れとらんか」

 「わたし間違ってないよ、だってわたしは仕事行ってるもんさ」

(‘_L’)「…………良いから、飯にしろ」

 「あーはいはい…………あり、わたしの化粧箪笥……」

(‘_L’)「蹴った」



10 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:07:08.78 ID:o62meJ39O
 獣の耳をぺたりと伏せて唸る。
 長い爪は頬やら肩やら腹に食い込み、赤く濡れていた。


 腹が減ったと獣の声で叫ぼうとした時に、
 がらり、反対側の障子が開いた。


 「たっだーいまっ! …………って、何だこれ!?」

(‘_L’)「白稚児……」

 「もー、おやっさんまた暴れたの? お腹空いたなら自分で作りなよ」

(‘_L’)「お前、何の為に存在するか、忘れとらんか」

 「わたし間違ってないよ、だってわたしは仕事行ってるもんさ」

(‘_L’)「…………良いから、飯にしろ」

 「あーはいはい…………あり、わたしの化粧箪笥……」

(‘_L’)「蹴った」



11 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:08:15.49 ID:o62meJ39O

 「…………壊れてるよ? おやっさん」

(‘_L’)「だから、蹴った」

 「こっ……こんなろおおおおお!! わたしのなのにいいいいいいいッ!!」

(‘_L’)「すまん。 飯にしろ」

 「おやっさんのぶわぁあああああかッ! でっきらいだあああああああああッ!!」

(‘_L’)「喧しい、大体、貴様、戻るのが遅い」

 「わたしはおやっさんと違って仕事してんのっ! この無職っ!!」

(‘_L’)「…………」

 「……ごみんなさい」


 白稚児と呼ばれる娘が帰宅すると、嫌な静けさを纏っていた座敷に灯がともる。

 犬神はどっかとその辺りに腰を降ろして、機嫌の悪そうな顔で娘を見る。
 しかし娘は己の所有物を壊された事に頬を膨らませ、犬神の額をごんと小突いた。



12 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:09:01.91 ID:o62meJ39O

 ふと、犬神は顔を白稚児に向け、首を傾げた。
 白稚児細い体から、仄かに血の匂いを感じて眉を寄せる。


(‘_L’)「……白稚児」

 「んー? ご飯なら待ってよー」

(‘_L’)「違う、血の」

 「ん?」

(‘_L’)「…………何でも、無い」

 「はい? ……んもー何なのよー、ご飯なら今からするから待っててよねー」

(‘_L’)「…………」


 白稚児の身体から、血の匂い以外に
 唯一とも云える友人の匂いを感じて、犬神は口を閉ざした。

 あいつ、何かしたのか、と。



14 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:10:36.05 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「中華が食いたい」

('A`)「横浜にでも行け」

( ^ω^)「お腹が空いた」

('A`)「俺も空いた」


 坊っちゃんとどくおは、寒そうに身を縮めながらぼんやりと立っている。

 二人が立つ場所は、町の中央盛岡屋。
 の、前。

 立つ理由は、盛岡屋店主の盛岡狢に会う為である。

 しかし会いに来たのは良いものの、どう会い何の話をすれば良いのか解らず。
 ただただぼんやりと、二人はその場に立ったまま時を過ごしている。

 腹が減った、寒い、足もだるい。
 俺達は何をしているんだと二人が思い始めた時に、ふと背中へと声が投げ掛けられた。



16 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:12:46.25 ID:o62meJ39O

爪'ー`)y‐「やーやー、そんな所でどうしたのぉ?」

( ^ω^)「お、狐どんかお」

('A`)「よう、ペド」

爪'ー`)y‐「あははは、もう好きに呼んでよぉ……」


 二人へと声をかけたのは、こゆいこんじきの長髪を束ねた白い着物の色男。
 片手に長い煙管を持ち、もう片方には何かを抱えている。

 狐、ふぉっくすはへらへらと笑いながら肩を落とす。


爪'ー`)y‐「どうしたのさぁ? 何かお使いもの?」

( ^ω^)「や、盛岡の旦那に会いに来たんだけど……」

爪'ー`)y‐「あー……まぁ、会いにくい奴ではあるしねぇ」

( ^ω^)「お、知り合いかお?」

爪'ー`)y‐「化かし獣の仲間ではあるからねぇ、獣の妖怪はもともとみんな仲良しさぁ」



17 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:14:36.80 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「おー、ところで」

爪'ー`)y‐「ん?」

( ^ω^)「何を抱えとるんだお」

(;TДT)爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「犬を」

(;TДT)そ

( ^ω^)「ああ、犬かお」

(;TДT)「ぉ、お前もおれを犬扱いするのかー!」

( ^ω^)「おーよしよし、わんこだお」

(;TДT)「犬扱いするなー! おれはそんなに犬に見えるのかー!?」

( ^ω^)「んじゃなんだお?」

(;TДT)

(;TДT)「……おおかみ……」

( ^ω^)「ははっ」



19 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:16:03.26 ID:o62meJ39O

 ふぉっくすが小脇に抱えていたのは、黒に近い茶灰色をした中型の犬。
 犬と云うには形が少しばかり違い、情けない顔で坊っちゃんに抗議をする。

 地面に下ろされた犬、もとい狼は、ちょんと座って坊っちゃん達を見上げる。
 姿形は確かに狼のそれなのだが、どうにも顔が情けない。


 狼な名は、もかぁ。
 よく、もかと呼ばれる狼は、れっきとした由緒正しき妖怪である。

 それも、気高く高潔な。


(;TДT)「みんな……みんなおれを犬って云うのかー……」

( ^ω^)「ああすまんお、つい」

(;TДT)

( ^ω^)「わんころり」

(;TДT)「もぎゃあああああん!!」



20 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:17:31.17 ID:o62meJ39O

爪'ー`)y‐「いやぁ先刻見つけてね、つい持ってきちゃったぁ」

(;TДT)「人が日向ぼっこしてたの叩き起こしといてそれかー!」

爪'ー`)y‐「ところで坊っちゃんに鬼子ちゃん、何で狢に?」

(;TДT)「無視なのかー!!」

( ^ω^)「ちょっと色々あるみたいだから……うーん、百鬼夜行の手伝いも……」

(;TДT)「色々なのかー?」

( ^ω^)「おっおっ、色々だお。そういや、もかは犬神を知ってるかお?」

(;TДT)「昔おれが育ての親をしてた犬神かー?」

( ^ω^)

( ^ω^)「嘘いくない」

(;TДT)「何でそう疑うのかー!」

( ^ω^)「いやだって……ねぇ……」

('A`)「なぁ……」



21 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:19:21.24 ID:o62meJ39O

(;TДT)「仔犬の頃から育ててたけど、犬神に使われて……
      犬神になってからも、色々と世話してあげてたのにかー……」

( ^ω^)「…………まじかお?」

(;TДT)「まだ疑うかー……これでも狼の妖怪なのにかー……」

( ^ω^)「……じゃあ、白稚児は知ってるかお?」

(;TДT)「茶屋の緑っ子の事かー?」

( ^ω^)「おお、その子が最近様子がおかしいのは知ってるかお?」

(;TДT)「?」

( ^ω^)

(;TДT)

( ^ω^)=3

(;TДT)「いま役立たずって思ったかー!?」

( ^ω^)「ははは」



22 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:21:37.42 ID:o62meJ39O

(;TДT)「緑っ子の最近は知らないけど、狢が連れ込み茶屋に出入りしてるのは……」

( ^ω^)「狢とも知り合いかお?」

(;TДT)「まあ……狢のが、妖怪としては後輩だから……」

( ^ω^)

爪'ー`)y‐「ま、君の先輩は僕やぎこだけどねぇ」

(;TДT)「そ……そうだけど……」

爪'ー`)y‐「何? 狢もぺどぉ?」

( ^ω^)「らしいお」

爪'ー`)y‐「この町は変態だらけだねぇ」

(;TДT)「お前が云うかー……」

爪'ー`)y‐

(;TДT)

<ゴベンナザイッ!!



23 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:23:09.30 ID:o62meJ39O

爪'ー`)y‐「話って、そのぺどの件?」

( ^ω^)「まあそんな感じだお」

爪'ー`)y‐「はぁん……あいつ、人として大事な部分が欠けてるからねぇ」

( ^ω^)「欠けてるの、かお?」

爪'ー`)y‐「店はやってるけど、精神的に人間として大事な気遣いとかがねぇ」

( ^ω^)「あー……人間らしさが欠落気味かお」

爪'ー`)y‐「そ、『よくわからない』狢だから……しょうがないのかも知れないけどねぇ」

( ^ω^)「化かす狐どんなんかは、人間らしいお」

爪'ー`)y‐「場数踏んでるからねぇ……何かあったら云いにおいで、叱るから」

( ^ω^)「……ありがとうだお、狐どん」

爪'ー`)y‐「前線からは退いたけど────これでも狐の長、がきには負けんよぉ」



24 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:25:13.55 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「狐どんは、強いお……話は昔からよく聞いたお」

爪'ー`)y‐「あははぁ、若い頃はねぇ、やんちゃしたもんさぁ」

('A`)「女とっかえひっかえ」

爪;'ー`)y‐「そう云う話!?」

(;#)ДT)「昔は女遊び激しかったから……」

爪'ー`)y‐

(;#)ДT)


<ハギャーン!!


爪'ー`)y‐「今はりりちゃん一筋だよぉ?」

( ^ω^)「それもどうかと」

爪'ー`)y‐「まあまあ、いけめんだし」

( ^ω^)「関係無いけど否定は出来んから腹立つお」



27 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:27:22.45 ID:o62meJ39O

爪'ー`)y‐「ま、狢は置いといて先にわんころちゃんとこ行ったらぁ?
      僕やこの犬の名前を出せば、会ってくれる筈だからねぇ」

( ^ω^)「そうだおね……このまま居ても会えなそうだし、明日にでも出直すおどくお」

('A`)「へいへい」

( ^ω^)「ありがとうだお狐どん、んじゃまたー」

爪'ー`)y‐「まったねーん」

爪'ー`)y‐「…………」

(;#メ)ДT)「……ふぉっくす?」

爪'ー`)y‐「…………何か、良くない物を尻尾と耳から感じる、もかも気付いてるか」

(;#メ)ДT)「……うん」

爪'ー`)y‐「近く……何か起こる」

(;#メ)ДT)「…………今夜、遠吠えで報せておく」

爪'ー`)y‐「ああ……その前に、体温めるために付き合ってもらうよぉ、もか」

(;#メ)ДT)「手加減してほしい……」



28 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:29:00.90 ID:o62meJ39O



 すっかり暗くなった町の中、仕事を終えた可愛屋が暖簾を下ろす。

 後片付けをする店主へと頭を下げて、一人の娘がしゃんと背を伸ばした。


ミセ*/ー゚)リ「お疲れさまでした、姐さんっ!」

o川*゚ー゚)o「お疲れさん、遅くまで有り難うね」

ミセ*/ー゚)リ「その分、お給金に色つけてくださいね?」

o川*゚ー゚)o「はいはい、遅くなる前に帰りや?
     最近は辻斬り何かが多いみたいやから、巻き込まれなね」

ミセ*/ヮ^)リ「はあい! また明日!」


 前掛けを外して袖を下ろしたみせりが、風呂敷包みを片手に手を振った。

 そして店主に背を向けると、その笑顔を消して風呂敷を持つ手に力を込める。



29 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:30:54.18 ID:o62meJ39O

ミセ /- )リ「……辻斬り、ね……あんま、変わらないかもね」


 ぽつりと呟き、主の待つ住処とは逆方向へと歩き出す。

 そして可愛屋から随分離れた所で、辺りを見回してから建物の影に身を隠す。
 手早く帯を解いて着物を脱ぐと、風呂敷の中から白い着物を取り出した。

 ささっとそれを身に纏い、右目を覆う手拭いを外して頭に乗せる。
 顔を隠す様に乗せられた手拭いの隙間から、左目だけがちらりと覗く。

 手拭いを外した事によって降りた髪。
 着物を畳んで風呂敷に包むと、隠してあったゴザと共に持ち上げた。


 その姿は、そう

 丸で、夜鷹のそれであった。



30 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:32:18.44 ID:o62meJ39O

 みせりは昼には見せない笑みを口許に浮かべ、人気の少ない通りを歩く。
 頭に乗せた手拭いの端を噛みながら、ちらりと辺りを見回し、客を探す。

 目についたのは、身なりの悪くはない男。

 その側へとゆっくり歩み寄り、隣へ立つと、愛嬌たっぷりに微笑んでみせた。


イ ルノー^)リ「ねぇね、ちょいとそこなお兄さん……わっちを買ってかないかい……?」

 『あん? ……何だ夜鷹か……』

イ ルノー^)リ「ふふ、哀れな夜鷹に恵んでおくれよう、お兄さん……っふ、うふふっ……」


 男に擦り寄る幼い体に、男は唾を飲み込んでみせりを見る。
 襟から覗く白い首に鎖骨、膨らみの分からぬ様な幼い乳房が透けて見えた。

 しかし幼さを感じさせないその言葉遣いと仕草に、
 男は頭の中で、揚代の勘定をし始める。



32 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:33:47.94 ID:o62meJ39O

 ごくりと唾を飲み込めば、男の手がみせりの左頬を撫でる。
 若々しく、其処らの夜鷹とは違い、張りと柔らかさを持つ肌だった。

 頬に触れるだけでも吸い付くように心地好い肌だと分かる。
 これならば、着物の下の肌はどれだけ上等か。

 半分しか見えぬが、顔も愛らしい。
 この娘が夜鷹の値段で買えるなら、買わぬ方が損だと言えよう。


 男はにたりと笑いながら、みせりの顔をよく見ようと腰を屈める。

 幼い娘は、それだけでも値が張る。
 そう考えれば、この娘は破格の安さだ。


 『ほう……結構可愛い顔してんじゃねぇか』

イ ルノー )リ「可愛い……? わっちが、可愛いっての……?」

 『あ……? あぁ、そりゃ、』



33 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:34:12.61 ID:o62meJ39O

 誘い文句を口にすると、みせりはおかしそうにころころ笑った。
 空いている手を男の腹の辺りに当てて、さもおかしそうに。

 袖で口許を隠して笑い、手拭いでその顔が見えなくなる。

 と、みせりは勢い良く、手拭いを外して


イ ル。∀゚)リ「こんな顔でも……可愛いってぇのかいッ!?」

 『ひっ……ッ!?』


 はらりと落とされた手拭い。

 その下にある右の目は、醜く歪み崩れて居た。


 それを見た男は顔を青くして後退り、情けない悲鳴を上げて逃げ出した。

 ああ情けない、右目が崩れてるだけじゃないか。

 みせりは機嫌の悪そうな顔をして、
 左手に握られた男の財布を、風呂敷の中へと捩じ込んだ。



34 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:35:20.18 ID:o62meJ39O

 小娘が一人働いた所で、その給金はたかが知れている。
 己が食う分すら稼げやしないが、可愛屋の店主は出切る限りの額を包んでくれる。
 これ以上、可愛屋の店主に迷惑はかけられない。

 そして、主に無心するのは、もっと嫌で。


 病で死にかけの己を拾い、白稚児として生まれ変わらせたのは犬神。
 その犬神に、迷惑なんぞはかけられない。

 この崩れた顔の己を雇ってくれる、育ててくれる。
 それだけが支えで、それだけが唯一で。


 生きるためならば、何でもするさ。
 例えば、がきを買おうとする野郎の財布を頂いたり。

 血は見せない、殺しちゃいない、悪い事だが天罰と思え。


 みせりは顔を歪め、手拭いを頭に乗せた。

 この身を買わせた事なんて、一度もない。
 みんな逃げて行くのだから。

 買われる事なんて
 一度も、なかったんだ。



35 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:35:49.90 ID:o62meJ39O

イ ルノ- )リ「…………死んじまえ、がきを買う様な奴らは」


 ぽつりと呟き、歩き出す。
 その脳裏に浮かぶのは、ただひたすらな痛み。


 何度もこの仕事をしてきたが、一度だって本当に買われた事はなかった。
 崩れた顔を見せれば、誰もが悲鳴を上げて逃げて行く。

 あの男以外は。
 あの男以外は、皆、逃げて行った。

 みせりを初めて汚したあの男、以外は。


(´・_ゝ・`)「娘」

イ ルノ- )リ「ッ!?」



36 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:36:18.89 ID:o62meJ39O

 ふらふらと歩いて居たみせりの足が、自然と止まっていた。
 すると、何時からそこに立っていたのか、一人の男が口を開く。

 短く僅かに癖のある黒髪、そこから生える獣の耳。
 飾り気は無いが上等な着物を纏うその男は、静かにみせりの前までやって来た。

 細い手を取り、腰を屈める事もせずにみせりを見下ろす。
 その、威圧感。


(´・_ゝ・`)「さあ、行こうか」

イ ルノ- )リ「…………やだ……」

(´・_ゝ・`)「君に金は渡した筈だ」

イ ルノ- )リ「……でも、やだよ…………」

(´・_ゝ・`)「…………」

イ ルノ- )リ「…………痛いのは……もう、やだ……」



37 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:36:38.35 ID:o62meJ39O

 絞り出すように呟くみせりを、ひょいと腕で抱き上げた。
 みせりが声を上げるよりも早く、その口を押さえて顔を近付ける。

 口を手で押さえられたみせりの目の前へ、男の顔が迫る。
 大きく黒目の大きな目玉に、通った鼻筋の高い鼻。
 整った顔立ちのそれは、表情をぴくりとも変えずにみせりを見つめていた。

 その威圧感に涙を浮かべ、みせりは体を小刻みに震わせる。

 すると男は、薄い唇をそっと開いた。


(´・_ゝ・`)「私は、君を買った」

イ ルノ- )リ

(´・_ゝ・`)「私には、君を自由にする権利がある、そうだね」

イ ルノ- )リ


 ぽろり。
 みせりの目から、涙が零れた。



38 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:37:47.17 ID:o62meJ39O

 あれは、何時だっただろうか。
 つい最近の筈なのに、もう随分と前の事の様に感じる。

 いつもの様に、こうして男を誘っては財布を抜き取って。
 そんな『悪事』を働いていると、ある男が目に入った。

 それは滅多に表へ出てこない、盛岡屋の旦那。
 盛岡でみたす、その人だった。


 あの盛岡屋の旦那ならば、たんまり金も持っているだろう。
 それに、盛岡屋の旦那がこんな手口には引っ掛かりやしないだろう。

 上手く行かなかった時は、冗談だと笑って逃げてしまおう。

 もし他の男と同じ様に引っ掛かったなら、それはそれで美味しい。
 がきに手を出そうとする奴には天罰さ、なんて。


 そう思って、軽い気持ちで、近付いた。



40 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:38:39.81 ID:o62meJ39O

イ ルノー )リ『ちょいと、そこなお兄さん……わっちを買ってかないかい……?』

(´・_ゝ・`)『……夜鷹か』

イ ルノー )リ『哀れな夜鷹に恵んでおくれよう、お兄さん……っふ、うふふっ……』

(´・_ゝ・`)『構わない、どうやら君は可愛らしい顔の様だ』

イ ルノー )リ『可愛い……? わっちが、可愛いっての……?』


 いつもの手口で、いつもの言葉。

 用意しておいた言葉を口にするだけで、
 盛岡屋の旦那は、表情を変えずに頷き、手を差し出す。


 ああ何だ、やっぱりこいつもそうなのか。
 じゃあ、脅かして財布を頂こうか。

 にやりと笑って、みせりは手拭いを外した。
 いつもの、様に。



41 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:39:11.16 ID:o62meJ39O

イ ル。∀゚)リ『こんな顔でも……可愛いってぇのかいッ!?』

(´・_ゝ・`)

イ ル。∀゚)リ

(´・_ゝ・`)

イ;ル。∀゚)リ

(´・_ゝ・`)『行こうか』

イ;ル。∀゚)リ『ぇ、ぁ、あ、あの、?』

(´・_ゝ・`)『地べたでするのは好まない、畳の方が君も良いだろう』

イ;ル。∀゚)リ『いえ、あの、え、え? ま、待ち、わたし、顔、?』

(´・_ゝ・`)『それが、どうしたと云うんだい』

イ;ル。∀゚)リ『え? え? ま、待っ、待って? わたし、よ、妖怪だよ?』

(´・_ゝ・`)『そう、私もだ。さあ行こう』

イ;ル。∀゚)リ『いや、だから、その、わたし子供だし、妖怪で、こんな顔、え?』



43 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:39:49.44 ID:o62meJ39O

(´・_ゝ・`)『私は、君を買うと云った』

イ;ル。∀゚)リ『はひっ』

(´・_ゝ・`)『君は買われた、私に』

イ;ル。∀゚)リ『……は、ひ』

(´・_ゝ・`)『さあ、行こうか』

イ;ル ∀ )リ『は……ひ』


 それはもう、拒絶など出来る空気ではなく。
 軽く言いくるめて逃げ出せる様な男でも、なかった。

 相手が悪かった。
 そう、相手が悪かったのだ。

 優しい顔をしているからと、嘗めてかかった結果がこの様。
 狢とは、『よくわからない生き物』なのだ。

 大人しい顔の内側で、何を考えているか等、理解出来よう筈もない。

 しかし幼いみせりは、盛岡屋の旦那が狢と云う事すらも知らなかった。



44 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:40:50.23 ID:o62meJ39O

 それからは、地獄と云うに他ならぬ日々。


 狢は幼き肉体を引き裂く。
 幼子はきぬを裂く様に叫ぶ。

 耳を塞ぎたくなる様な悲鳴は茶屋の外にも響き、
 目を塞ぎたくなる様な光景がそこで繰り広げられる。

 血を吐く様に叫び、唾液も涙も流しながら痛い痛いと悲鳴を上げるのだ。


 茶屋の主人は止めに入りたい気持ちを抑え、耳を塞いで聞かぬふり。

 相手はあの狢。
 何かがあれば、こちらにも火の粉がかかる。


 つんざく幼い悲鳴に、苦しめられながらも。
 何も出来ずに皆は口を閉ざす。



47 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:41:44.36 ID:o62meJ39O



『やぁああああああッ!! 痛い、いだいよぉっ!! やだあああああああああッ!!!!』

『ふむ、生娘だったのか』

『やだっ、ひ、ぃ、いだいっ! いだいからぁあっ!! 無理だってばあああああッ!!』

『金ならば渡した、君に私を拒否する権利は無い筈だ』

『やっ、は、ぁ、ひっ、ひぎぅッ! ぐぇ、ぉ、ぁ゙あ゙あああああああああッ!!』

『ふむ、入り切らないか』

『あが、ぁ、ぐぇうっ! いだっ、いだい、よぉッ!! やぁあああぁああッ!!』

『ふむ、』

『いや、やっ、いやあああっ!! 抜いてッ! 抜いてってばぁああッ!!』

『…………』

『ごめんなざいっ、ごめんなざぃいッ!! ゔあ゙あ゙あ゙あああああああああああんッ!!!!』



49 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:42:07.52 ID:o62meJ39O


 連れて行かれたるは連れ込み茶屋。
 でみたすは顔を隠す事もせず堂々と、幼い娘を座敷へ連れて行き、押し倒した。

 必死で顔を隠していた手拭いを剥ぎ取り、両手をそれできつく結ぶ。
 乱暴に開かれた着物を中途半端に脱がせ、幼い体に手を這わせた。

 人間の頃につけられた傷跡に、病の跡。
 それらを嘗めて、未発達な肉体を蹂躙した。


 その平らに等しい胸に触れれば、みせりは肩を震わせた。
 その可愛らしい唇を貪れば、みせりはほろほろ涙を流した。
 その幼い蕾を引き裂けば、みせりは白い喉を晒して泣き叫んだ。


 獣に其の身を壊されて、白稚児はただただ泣き叫ぶ。
 痛い苦しい悲しい嫌だ。

 ただただひたすら泣き叫ぶ。


 痛いよ 助けて いぬがみさま。



50 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:42:30.86 ID:o62meJ39O


 幼い体にそんな物を受け入れられる訳もなく、そこは無惨にも引き裂かれる。

 血を流して涙を流して、声を張り上げて叫んだ。
 喉から血が出んばかりの勢いで、優しさの欠片もないその行為に泣き叫んだ。

 痛みと云えた物でもない、激痛と呼ぶにも易しい痛み。
 本当に、身を引き裂かれる痛みにみせりは泣き狂った。

 己の耳へ、ぶちぶちと身が裂ける音が届くのだ。
 薄い肉を裂いて、抉り込み、骨をみしみし軋ませて。
 己の体が、壊されて行くのだ。

 その恐怖たるや、想像を絶する物で。
 目の前で無表情に己を犯す男の存在が、恐怖を更に強くさせる。


 痛くて恐ろしくて、みせりは己の所業を呪った。

 あの様な、すりの真似事をしていたから、こんな目にあった。
 悪事を働けば、その身には罰がふりかかる。

 みせりはただただ泣き叫び、ごめんなさいを繰り返す。


 もうしませんもうしませんだからもうやめてくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 21:42:43.30 ID:sHJcvlCEQ
oh……



しえん


52 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:43:20.25 ID:o62meJ39O
『ひ、ぃ……ぇぐっ……ごめんなざい……ごめんなざいぃっ……』

『…………』

『も、じないがらぁ……ごめんなざい……ごめんなざい……っ』

『何故、謝る?』

『ひぐっ、ぅ……わたしが、騙したり、した、からっ……』

『私は、騙されては居ない』

『ぇ……』

『私はただ、君を買っただけだ』

『……じゃ、あ……』

『次は何時、あの場に立つ』

『へ……?』

『何時、あの場に立つ』

『…………来、週……』

『そうか、なら、また来週に』

『やっ…………やだ、やだぁ……っ』


53 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:43:39.74 ID:o62meJ39O

 泣きじゃくり、みせりは子供の顔でいやいやと頭を横に振った。

 そんなみせりの姿に、でみたすは懐から小さな包みを取り出し
 みせりの上でその包みを開き、中身をばら蒔いた。

 赤く濡れた布団の上に巻き散らかされたのは、小判。

 何十枚と云う小判を散らかされ、みせりは目を真ん丸にして顔色を無くした。


『これで、足りるか』

『…………な……で…………何でぇ……っ』

『云っただろう、私はただ、君を買いたいだけだ』

『ふ……っう、ぅぅ……ぅ、うわぁあああああんっ! うぁああぁぁあああぁああッ!!』



 ああ、罰は終わらない。

 この小判はきっと、わたしを地獄へ落とす金。
 わたしは地獄へ落ちたのだ。



54 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:44:42.47 ID:o62meJ39O


イ ルノ- )リ「……」


 つい最近の過去に思いを馳せて、みせりは布団の上で足を投げ出し、座っていた。

 乱れきった着物、足の間から流れる赤。
 何度抱かれ様とも、この身は裂ける。

 その度に血を流し、痛みに涙を流す。
 幾度抱かれ様が、この身はきっとあの男を拒絶する。

 散らかされた小判を指先で集めて、そっと風呂敷の中に仕舞った。
 でみたすの姿はどこにもなく、座敷にはみせり一人だけ。

 叫びすぎて痛む喉を押さえ、枯れた涙に眉を寄せた。


イ ルノ- )リ「…………死んじまえ……がきを、買う奴なんて……」


 恨み言だけが、今のみせりを支えていた。
 己が悪いと分かっていても、全てをそのまま受け入れる事は、出来なかった。

 それはきっと、幼さ故。
 十やそこらの子供には、出来なかった。



56 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:45:23.25 ID:o62meJ39O

 着替えをし、血を拭って身支度をする。
 そしてふらふら茶屋を後にすると、みせりは主が待つ住処へと戻る。

 落ち込みきっていた顔を無理に笑わせ、元気良く障子を開ける。
 すると腹を空かせた主が、むくれた顔でみせりを迎えた。

 呆れた顔で夕飯の支度をして、一緒に食事をして。
 適当に話なんかをして、風呂に入って眠りにつく。

 翌朝早くに目を覚まし、朝食の用意をしてから
 眠らずに座敷の隅で膝を抱えていた主に行ってきますと伝え、仕事に行く。


 それが、日常。

 犬神は人としての仕事はしていないが、たまに、誰かを祟れと云う依頼が来る。
 一つ祟れば、暫くは食って行けるだけの金が入る。

 犬神は対象が死なぬ程度に適当に祟り、金を貰って生きていた。
 そうして今まで生きて来たし、これからもそれは変わらない。

 白稚児を迎え入れてから生活はある程度変わったが、変わりはしない。

 ただ適当に、生きる為だけに生きている。



57 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:45:53.56 ID:o62meJ39O

 生きる為に、白稚児が血を流していると気付きながらも。
 犬神は何も云わず、ただ不機嫌そうな面を見せるだけ。

 それは何をすれば良いのか、何を云えば良いのか解らぬ故。
 獣として生き育ち死んだ犬神、人らしさ等を未だ持つ事が出来ぬ若輩者。

 この犬神は、ふぃれんくとは、若い。
 ふぃれんくとを育てた狼よりもずっと若く、狐等よりずっとずっと若い。


 人慣れをしていないふぃれんくとの唯一とも云える友人は、よりによって、あの狢。

 白稚児を壊す張本人である狢は友人で、しかし白稚児を壊し、嗚呼、どうすれば良いのか。


 頭を抱える犬神御仁。
 衝き神は、人間が苦手。

 衝く相手であり、理解しきれぬ相手である人間。
 どうにもこうにも、苦手な存在。


 犬神は静かに、溜め息を吐いた。
 明日にでも、呼び出して話でもしてみよう。



59 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:47:26.17 ID:o62meJ39O

 白稚児は狢に壊され。
 犬神は何も出来ず。
 狢は何を考えているか解らない。

 そんな日々は変わらず、坊っちゃんとどくおは顔を見合わせる。


 二人が立つのは、犬神宅の玄関先。
 手土産片手に会いに来たは良いが、またもどうすれば良いかと棒立ち。


( ^ω^)「……」

('A`)「……」

( ^ω^)「僕ら、影薄くね?」

('A`)「云うな」

( ^ω^)「主人公なのに」

('A`)「云うな」

( ^ω^)



61 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:48:39.64 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「……また棒立ちしてても始まらんお」

('A`)「……だな」

( ^ω^)「とんとん、っと……失礼しますおーいらっしゃいますかおー?」


 戸口の縁を軽く叩いて、坊っちゃんは家の中へと声をかける。

 すると、少しの間を置いてから床の軋む音と、男の声が返ってきた。


 『誰、だ』

( ^ω^)「内藤と申しますお、少しよろしいでしょうかお?」

 『何用だ』

( ^ω^)「僕が催す百鬼夜行のお手伝いをして頂きたいのと、…………みせりちゃんについて」

 『…………』

( ^ω^)「…………」



63 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:49:56.39 ID:o62meJ39O

 考える様なたっぷりの間を置いてから、がらりと、戸が開いた。


(‘_L’)「……入れ」

( ^ω^)「有り難う御座いますお、失礼しますお」

('A`)「失礼します」

(‘_L’)「…………百鬼夜行、とは」

( ^ω^)「減り行くあやかし共が消えゆく前に、どかんと一つ花火を上げたく思いましてお」

(‘_L’)「……ほう」

( ^ω^)「お手伝い、頂けますかお?」

(‘_L’)「考えて、おく」

( ^ω^)「有り難う御座いますお」

(‘_L’)「…………みせり、の事か」

( ^ω^)「僕はよく可愛屋に行くのですが、最近、彼女の様子がおかしく見えましてお」



65 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:51:13.26 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「…………」

( ^ω^)「ですので、何かあったのかと老婆心が」

(‘_L’)グゥゥゥゥ

( ^ω^)

('A`)

(‘_L’)

(‘_L’)「すまん」

('A`)「腹が、減ったんですかい?」

(‘_L’)「ああ」

('A`)「んじゃ、これでもどうぞ」

(‘_L’)「?」



67 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:52:26.98 ID:o62meJ39O

 犬神の家へと上がり込み、坊っちゃんと並んで座っていたどくおが、持参した手土産を差し出す。
 風呂敷を解いて重箱の蓋を開けてみせれば、そこにはぎっしりと詰まった桜餅。

 それを見た犬神の腹が、更に大きく鳴いた。


('A`)「どんぞ」

(‘_L’)「良いのか、食って」

('A`)「土産ですんで」

(‘_L’)「…………いただく」


 どくおに差し出されたそれに手を伸ばし、ぐわしと掴むと口へと持って行く。

 一口かじり、味を確かめてひとつ動きを止めてから、一気にがつがつと口に押し込み始めた。

 そんなに腹が減っていたのか、それとも味が大層気に入ったのか。
 両手で桜餅を握っては次へ次へと口に押し込むふぃれんくと。

 それは決して上品な食い方ではなく、どくおは眉を軽く持ち上げたが、すぐに笑ってみせた。


 ぽろぽろとこぼしながらも桜餅を頬張るふぃれんくと。
 まるで子供の様だと、二人は顔を見合わせて笑う。



69 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:54:12.53 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「ほら、こぼしてますお犬神殿」

(‘_L’)「むぐ」

('A`)「落ち着いて食えよ、まだまだある」

( ^ω^)「ああほら、頬に付いてますお」

('A`)「茶入れる、台所借りるぜ」

(‘_L’)「もが」

( ^ω^)「食べながら喋らない、ほらまたこぼす」

(‘_L’)「もごご」

( ^ω^)「……あれが作ったんですが、美味しいですかお?」

(‘_L’)゙

(*^ω^)

('A`)「ほら茶だ、もうちっと落ち着いて食え」

(‘_L’)「もごごむぐ」

('A`)「だからまだあるから、両手でがっつくな」



71 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:54:41.58 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「げふ」

( ^ω^)「おー……見事に残り一段の半分」

('A`)「三段あったのにな、美味かったか?」

(‘_L’)「ああ、うまい」

('A`)「よしよし、気に入ったならまた作ってやるよ」

( ^ω^)「そうやって甘やかす……」

('A`)「犬神は餓えに弱いんだろ、だったらしょうがねェ」

(‘_L’)「空腹は、好かん」

('A`)「俺もだよ、餓鬼だからな」

(‘_L’)「…………」

('A`)「ん?」

(‘_L’)「……ごちそうさま、でした」

('A`)(やだ、本当に子供みたい……)

( ^ω^)(予想外だお……)



74 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:56:09.40 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「ところで犬神の、もかってのは知ってるかお?」

(‘_L’)「育ての親、だな」

( ^ω^)(本当だったんだ……)

('A`)「じゃあ、ふぉっくすは?」

(‘_L’)「強い」

( ^ω^)「ぎこ」

(‘_L’)「強い」

('A`)「杉浦」

(‘_L’)「怖い」

( ^ω^)「もか」

(‘_L’)「弱い」

( ^ω^)

('A`)

(‘_L’)



76 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:56:51.72 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「案外、怖くないんだおね、犬神」

(‘_L’)「怖く、思うか」

( ^ω^)「いめぇじ的には」

(‘_L’)「憑き神、だからか」

('A`)「疫をもたらす事が生業だろ?」

(‘_L’)「ああ」

( ^ω^)「でも話してみると普通だお」

(‘_L’)

(‘_L’)「そうか」

('A`)(ちょっと嬉しそうだな)

( ^ω^)(犬神面白いお)



77 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:57:19.21 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「…………」

( ^ω^)「どうしたお?」

(‘_L’)「じき、友が来るが、良いか」

( ^ω^)「お、僕らは邪魔じゃないかお?」

(‘_L’)「構わん」

('A`)「友ってのは、」


 すっかり和気藹々な空間で、どくおが問いを口にしようとした瞬間。

 玄関から、とんとん、と誰かの訪問を告げる音が届いた。

 ふぃれんくとは軽く手をあげてから立ち上がり、玄関へと移動し戸を開ける。
 二人は顔を見合わせて、不思議そうに首をかしげた。


( ^ω^)「友……って、居たのかお」

('A`)「それは失礼だろ坊っちゃん、否定はしねェけど」



79 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:59:10.88 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「お邪魔そうだったらおいとまするお、みどりちゃんの件は僕らが口を出す事でもなし」

('A`)「まァ確かにな、ただのお節介だしよ」

( ^ω^)「……桜餅、無くなったお」

('A`)「よく食うよな」

( ^ω^)「…………」

('A`)「……家にまだある」

(*^ω^)

(‘_L’)「待たせた」

( ^ω^)「お! お帰りだお」

('A`)「他の客ってのはァ……」

(´・_ゝ・`)「やあ、失礼するよ」

( ^ω^)

('A`)



80 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:59:31.93 ID:o62meJ39O

(´・_ゝ・`)「君達は、確か内藤の」

( ^ω^)「あ、な、内藤のせがれですお」

('A`)「その使用人のどくおだ」

(´・_ゝ・`)「私は盛岡でみたす、すまない、邪魔をして」

( ^ω^)「あ、いえいえこちらこそ」

(‘_L’)「座れ、狢」

(´・_ゝ・`)「ああ、すまない」

( ^ω^)

('A`)

( ^ω^)(けいおす)

('A`)(云うな)



82 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 21:59:54.31 ID:o62meJ39O

 犬神ふぃれんくとの友として現れたのは、二人が先日会おうとして断念した、狢その人。

 狢、でみたすは犬神の横に腰を下ろして、無表情のまま首を傾げる。


(´・_ゝ・`)「珍しい、君が私を呼び出すとは」

(‘_L’)「話がある」

(´・_ゝ・`)「話とは?」

(‘_L’)「お前、…………何か、あったか」

(´・_ゝ・`)「?」

(‘_L’)「最近、何か……あったか」

(´・_ゝ・`)「いや、特には」

(‘_L’)「……そう、か」

( ^ω^)(……犬神は、みどりちゃんの事を知ってるのかお?)

('A`)(みてェだな)



83 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:00:54.05 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「…………」

(´・_ゝ・`)「…………」

(‘_L’)「お前、雌の匂いがするぞ」

(´・_ゝ・`)「雌? …………ああ、昨日買ったからか」

(‘_L’)「……雌を、買っているのか」

(´・_ゝ・`)「ああ、少し」

(‘_L’)「珍しいな」

(´・_ゝ・`)「私も一応は雄だからね」

(‘_L’)「…………」

(´・_ゝ・`)「…………」

( ^ω^)(居づらいお)

('A`)(云うな)



85 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:01:16.87 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「どんな、」

(´・_ゝ・`)「うん?」

(‘_L’)「どんな、雌を買っている」

(´・_ゝ・`)「何故?」

(‘_L’)「答えろ、狢」

(´・_ゝ・`)「……幼い娘だ」

(‘_L’)「…………何故、だ」

(´・_ゝ・`)「何故、だろうね」

(‘_L’)「好んで、幼子を買うのか」

(´・_ゝ・`)「いいや、そういった趣味は無い」

( ^ω^)(十分だと思うお)

('A`)(ぺど怖い)

( ^ω^)(云うなお)



86 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:01:34.76 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「ならば、何故買う」

(´・_ゝ・`)「……何故だろう、あの少女が欲しいからだろうか」

(‘_L’)「欲しい、?」

(´・_ゝ・`)「ああ、一目見た時からあの少女を買いたくなった」

(‘_L’)「…………」

(´・_ゝ・`)「何故だろうね、これは何だろうか」

( ^ω^)「恋じゃね?」

(‘_L’)

(´・_ゝ・`)

( ^ω^)(やべぇ声に出してたお)

('A`)「ばかやろう」

( ^ω^)「どくおも出てる出てる」

('A`)「いっけね」



88 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:03:59.85 ID:o62meJ39O

(´・_ゝ・`)「……恋、か」

( ^ω^)「あー……まぁ、一目惚れじゃないかお?」

(´・_ゝ・`)「一目惚れ……ふむ、所謂、初恋だ」

(‘_L’)「お前、幾つだ」

(´・_ゝ・`)「君が云うか」

(‘_L’)

( ^ω^)「すみません、話が進まないから仕切って良いですかお」

('A`)「まあ茶でも飲めよお前らは」

(‘_L’)「うむ」

( ^ω^)「えーと、狢さん?」

(´・_ゝ・`)「うん?」

( ^ω^)「みどり……みせりちゃんを買ってるのかお?」

(‘_L’)「ぶっ」

(;'A`)「熱ッ!?」



90 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:04:56.55 ID:o62meJ39O

(´・_ゝ・`)「知っているのかい、彼女を」

( ^ω^)「よく行く店の看板娘」

(´・_ゝ・`)「なるほど」

( ^ω^)「んで犬神さんの白稚児」

(´・_ゝ・`)

(´・_ゝ・`)「なるほど」

( ^ω^)「ちゃんと喋れお」

(´・_ゝ・`)「だから、ふぃれんくとの様子がおかしかったのか」

( ^ω^)「おかしくもなりますお」

(´・_ゝ・`)「確かに、我が子の様に可愛がっているからね」

( ^ω^)「で、何か云う事は?」

(´・_ゝ・`)「はて」

( ^ω^)(どついたろか)



92 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:06:41.87 ID:o62meJ39O

('A`)「あー……坊っちゃんが女だとするだろ」

(´・_ゝ・`)「ふむ」

('A`)「俺は坊っちゃんの親代わりだろ」

(´・_ゝ・`)「ふむ」

('A`)「その坊っちゃんが酷い目にあわされてたら、俺は怒るだろ」

(´・_ゝ・`)「ふむ」

('A`)「つまり犬神もそんな状況な訳で」

(´・_ゝ・`)「ふむ」

(´・_ゝ・`)

('A`)

(´・_ゝ・`)「すまない」

('A`)(どついたろか)



93 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:07:14.50 ID:o62meJ39O

(´・_ゝ・`)「なるほど、ふぃれんくとは怒っているのか」

(‘_L’)「平たく云えば」

(´・_ゝ・`)「君は私がみせりを買っていると、知っていたのか?」

(‘_L’)「彼奴から、血とお前の匂いがした。あと呼び捨てにするな」

(´・_ゝ・`)「なるほど、だから私を呼び出したのか。私とみせりの事を聞くために」

(‘_L’)「ああ。だから、呼び捨てにするな」

(´・_ゝ・`)「すまない、君の白稚児だと知っていれば手を」

(´・_ゝ・`)

(´・_ゝ・`)「出していたかも知れない」

(‘_L’)「殺すぞ」

(´・_ゝ・`)「すまない」

(‘_L’)「死ね」



94 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:07:34.58 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「盛岡の旦那は……あー…………その、優しくは、せんのかお? みせりちゃんに」

(´・_ゝ・`)「と、云うと?」

( ^ω^)「いや、血の匂いって……その、あの……もう、初めてと云うわけでは……?」

(´・_ゝ・`)「ああ、幼子だからね彼女は」

( ^ω^)「知っとるわ。だから、優しくは……」

(´・_ゝ・`)「優しくすれば、時間がかかるだろう」

( ^ω^)「まあ……うん…………そうなの?」

('A`)「聞くな童貞」

( ^ω^)ニラッ

(´・_ゝ・`)「時間をかければ、彼女は嫌がるだろう」

( ^ω^)

(´・_ゝ・`)「だから、手早く」

( ^ω^)(最低だー)



95 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:07:51.48 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「……好きなのかお、みせりちゃんが」

(´・_ゝ・`)「らしい」

( ^ω^)「自分でも不思議に思わなかったのかお? その、誰かに……夢中? になるの」

(´・_ゝ・`)「思った、だから毒婦の君に相談に行ったりもしたよ」

( ^ω^)「何て云われた?」

(´・_ゝ・`)「確か、『好いたおなごに優しくもせず金で繋ぎ、それは男のする事じゃあありんせん』と」

( ^ω^)(なんというおっかさん、これは間違いなくおっかさん)

(´・_ゝ・`)「怒鳴られた後に殴られた」

( ^ω^)(おっかさんGJ)

(´・_ゝ・`)「その時は、好いていると自覚が無かったのでよく解らなかったが、なるほど」

( ^ω^)「…………自覚した今は、どんな気分だお?」

(´・_ゝ・`)「清々しい」

( ^ω^)「清々しくない人も居る事を忘れるなお」



97 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:08:32.31 ID:o62meJ39O

(´・_ゝ・`)「……ふぃれんくと」

(‘_L’)「何だ、殺すぞ」

(´・_ゝ・`)「すまなかった、君の娘を傷付けて」

(‘_L’)「……」

(´・_ゝ・`)「私はどうも、人らしさが欠けている様だ、君よりもずっと」

(‘_L’)「一言多い」

(´・_ゝ・`)「……すまなかった、もう、買う事は止めようかと思う」

(‘_L’)「思うじゃなくて、止めろ」

(´・_ゝ・`)「善処する」

(‘_L’)

('A`)「すとっぷ犬神すとっぷ牙を剥こうとしないの」

(‘_L’)「全力で殺す」

('A`)「止めなさい、桜餅やらねェぞ」

(‘_L’)「すまん」



98 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:08:47.69 ID:o62meJ39O

( ^ω^)「あーめんどくせえお、良いからお前さんは落ち着いてお前さんはみせりちゃんに謝る」

(‘_L’)「……うむ」

(´・_ゝ・`)「解った」

( ^ω^)「あとどくおは僕に桜餅を更に作る」

('A`)「はいはい」

( ^ω^)「じゃあ僕らはもうめんどくせえから帰るお、後は好きな様にしてくれお」

(‘_L’)「うむ」

( ^ω^)「去り際に一発」


( ^ω^)⊃゙#)_ゝ・`) デュクシ


( ^ω^)「はい解散」

('A`)「またなー」

(‘_L’)「ああ、また」



99 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:09:11.64 ID:o62meJ39O

(‘_L’)「……」

(´#)_ゝ・`)「……」

(‘_L’)「帰ったな」

(´#)_ゝ・`)「ああ」

(‘_L’)「……殺すのは、止めてやる」

(´#)_ゝ・`)「……」

(‘_L’)「お前は、友だからな」

(´#)_ゝ・`)「…………すまない」

(‘_L’)「俺は、少し人らしくなった、次はお前だ」

(´#)_ゝ・`)「…………」

(‘_L’)「……人になれ」

(´#)_ゝ・`)「…………ああ」

(‘_L’)「あと、みせりは、やらん」

(´#)_ゝ・`)チェッ



100 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:09:29.76 ID:o62meJ39O


ミセ*/-゚)リ「…………」

ミセ;/-゚)リ(なんかすっげー久々な出番な気がする)


 みせりはいつもの茶屋の座敷に、一人ぽつんと存在していた。

 赤い布団の上で正座をし、己を呼び出した男を待つ。


 突然呼び出されたため、その格好はいつもの姿。
 布を眼帯代わりに前髪を持ち上げており、顔を晒したままだったが、気にせず茶屋へとやって来た。

 そしていつもの部屋で、いつもの布団の上に座る。
 橙色の着物の袖を暇そうにいじくっては、俯き息を吐いた。


ミセ /-゚)リ(……また、痛い事されんのかな……)


 これも、悪事を働いた罰か。

 生きる為とは云え、悪事を働いたのだからしようがない。
 そう、己に言い聞かせる。





101 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:09:59.57 ID:o62meJ39O

 俯くみせりの耳に、みしり、廊下の軋む音が届いた。
 その音に体をびくりと震わせて、膝の上で拳を固く握る。

 身構えるみせりの目の前で、障子がゆっくりと開かれ。

 身なりの良い男が、姿を現した。


(´#)_ゝ・`)「……やあ、みせり」
  _,
ミセ;/д゚)リ

(´#)_ゝ・`)「どうしたんだい、面白い顔をして」
  _,
ミセ;/д゚)リ「ど、どうしたんだはこっちの台詞でしょ……なにその顔……」

(´#)_ゝ・`)「ああ……怒られてしまってね」
  _,
ミセ;/д゚)リ「…………」

(´#)_ゝ・`)「君の事で、怒られてしまった」
  _,
ミセ;/д゚)リ!!

(´#)_ゝ・`)「言葉と同時に手が出る、よく似た親子だ」



102 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:10:28.98 ID:o62meJ39O
  _,
ミセ;/д゚)リ「……あたしの、こと?」

(´#)_ゝ・`)「ああ、君の事だ」
  _,
ミセ;/-゚)リ「…………誰に?」

(´#)_ゝ・`)「ない、」

(´#)_ゝ・`)

(´#)_ゝ・`)「いや、それは、伏せよう」
  _,
ミセ;/-゚)リ「? ……あの…………何も、しないの?」

(´#)_ゝ・`)「ああ…………もう、君を買う事を止める」
  _,
ミセ;/-゚)リ「!?」

(´#)_ゝ・`)「今まですまなかった、苦しませて。君は自由だ、それじゃあ」
  _,
ミセ;/Д゚)リ

(´#)_ゝ・`)「もう会う事はないかも知れないが、また、」



103 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:10:49.65 ID:o62meJ39O
  _,
ミセ;/Д゚)リ「ちょい待ち!」

(´#)_ゝ・`)「うん?」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「い、いやいやいや……あ、あっさりしすぎだろい!?」

(´#)_ゝ・`)「そう、かい?」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「だ……だってあんた、今まで、? な、なんであんな事してたのさ?」

(´#)_ゝ・`)「どうやら私は君に一目惚れをしたらしい」
  _,
ミセ;/Д゚)リ

(´#)_ゝ・`)「だからだろうね、君を買ったのは」
  _,
ミセ;/Д゚)リ

(´#)_ゝ・`)「好いた女を苦しませていると気付いた、だからもう買わない。すまなかった」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「解せん」

(´#)_ゝ・`)「ふむ」



104 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:11:20.77 ID:o62meJ39O
  _,
ミセ;/Д゚)リ「や、あの……うん……? まあ、その、あたしが悪い事してたんだし……」

(´#)_ゝ・`)
  _,
ミセ;/Д゚)リ「痛かったりすんのは、罰だと……その」

(´#)_ゝ・`)「君は、私を許してくれるのか?」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「…………まあ……悪いの、あたしだし……」

(´#)_ゝ・`)「……有り難う」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「……こっちこそ、ごめんなさい」

(´#)_ゝ・`)「…………」
  _,
ミセ;/Д゚)リ?

(´#)_ゝ・`)「また、抱いても」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「駄目です」

(´#)_ゝ・`)チェッ



105 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:11:52.15 ID:o62meJ39O
  _,
ミセ;/Д゚)リ「……まあ、いいや…………あたしもまっとうに生きるから」

(´#)_ゝ・`)「もう、夜鷹の真似事はしないのか?」
  _,
ミセ;/-゚)リ「うん……怖いし、悪いから」

(´#)_ゝ・`)「しかし、生活は?」
  _,
ミセ;/-゚)リ「仕事増やすよ……」

(´#)_ゝ・`)「君が嫌でなければ、」
  _,
ミセ;/-゚)リ「おめかけさんにはなんないよ?」

(´#)_ゝ・`)「それは今は控えておくよ、ただ、資金援助をしようと思って」
  _,
ミセ;/-゚)リ「今はかよ……でも、悪いし」

(´#)_ゝ・`)「私からの罪滅ぼしだ、大人になったら妻になってくれればそれで良い」
  _,
ミセ;/-゚)リ「なんという鬼畜な条件」

(´#)_ゝ・`)「冗談だ」
  _,
ミセ;/-゚)リ「冗談に聞こえないから」



106 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:12:08.67 ID:o62meJ39O
  _,
ミセ;/-゚)リ「…………おやっさんが許すなら、お願いします」

(´#)_ゝ・`)「ああ、解った」

ミセ /-゚)リ「…………」

(´#)_ゝ・`)?

ミセ*/ー^)リ「……あんがと」

(´#)_ゝ・`)グラッ

(´#)_ゝ・`)

(´#)_ゝ・`)「行こう、君が盗った物は私が返しておく」
  _,
ミセ;/-゚)リ(今の間はいったい)

(´#)_ゝ・`)「……家まで送ろう」

ミセ*/ー゚)リ「う、うん……あんがと」

(´#)_ゝ・`)グラッ



108 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:13:02.32 ID:o62meJ39O


( ^ω^)「寒いおー」

('A`)「んだな」

( ^ω^)「影の薄さが寒いおー」

('A`)「云うな」


 (゚、゚トソン フヨ
/ ゚、。 /  フヨ


(゚、゚トソン「よう、大福餅と鯵の開き」

( ^ω^)「お、とそん」

(゚、゚トソン「伝言だ、ぺど変態から」

('A`)「居すぎて解らない」



109 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:13:41.29 ID:o62meJ39O

(゚、゚トソン「『百鬼夜行参加する』だとよ」

( ^ω^)「狢の旦那かお」

(゚、゚トソン「あと犬神」

( ^ω^)

( ^ω^)「もうやだこの町」

(゚、゚トソン「変態しか居ねぇな」

( ^ω^)「普通の人間なんか居ないんだお……」

(゚、゚トソン「目の前に居るだろ」

( ∩ω^)「くっ、目にゴミが……!」

( ∩ω(#⊂(゚、゚トソン ゴシュッ

('A`)「大変な親持ったな、だい」

/ ゚、。 /"



110 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:14:02.15 ID:o62meJ39O

 可愛屋の長椅子に腰掛けて、団子を貪る坊っちゃんとどくお
 その前へふらりと現れたのは、都村屋の若き店主とそん。

 一反木綿の背に乗り、ふわふわと浮かんでは綺麗に切り揃えられたおかっぱが揺れる。

 その口から告げられたのは、盛岡屋のでみたすと犬神ふぃれんくとからの伝言で。


( ^ω(#)「まあ、順調に集まってきたお」

('A`)「だな、今は何匹だ?」

( ^ω(∩)「数えてないおー」

('A`)「じゃ、帰ったら計算すっか」

( ^ω(#)「おー」


 坊っちゃんは頬を撫でながら、ぼんやり空を見上げ息を吐く。



111 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:14:17.52 ID:o62meJ39O


 狗神様の細道は

 行きはこわくて

 帰りはよいよい、ってか。


 くすりと笑い、熱い茶をずずとすすった。


⌒*リ;´・-・リ「いやぁあああああああああっ!!」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「うぎゃあああああああああああっ!!」

爪*'ー`)y‐「待て待て待て待てりぃりちゃあああああんぅふはははははははぁ」

(´・_ゝ・`)「みせり待つんだ、逃げるんじゃない」


 春とは云えまだまだ寒い日が続くなあ、と、団子を口いっぱいに頬張った。



 『三話後編 おわり。』



112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 22:14:36.78 ID:m4jzwo150
犬神さんかわいいです支援


113 :◆XCE/Wako2nqi:2010/02/28(日) 22:14:50.60 ID:o62meJ39O

支援有り難うございました。

ほぼ使い回しです。申し訳ないです。
長かった。申し訳ないです。
ミスしました。申し訳ないです。

それでは、これにて失礼!


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 22:16:04.48 ID:sHJcvlCEQ
乙。


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 22:24:01.75 ID:XUfsMDI00
乙 来週も楽しみだ


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 22:25:43.04 ID:pahlDRfV0
乙!
次も楽しみだ


118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 22:32:00.05 ID:Dy6zQQmU0
ニラッにワロタ乙


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