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◆/ ゚、。 /『The Rainmaker and“Lemegeton”』のようです…… 第八夜 「妖刀狗肉」

前の話/インデックスページ/次の話

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 22:54:43.15 ID:tsVWVuI50


/ ゚、。 /『小さき鍵』とレインメイカーのようです……



――Wee Willie Winkie runs through the town,
  
  Upsatirs and downstairs in his night-gown,
  
  Rapping at the window, crying through the lock,
  
  Are the children all in bed, for now it's eight o'clock?





                        (『Wee Willie Winkie』より)




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 22:57:08.41 ID:tsVWVuI50
――第八夜――
「妖刀狗肉」

爪; -)「がっ、はッ……!!」

――弾き飛ばされ宙を舞う。
力任せの一撃、ではない。力学的に見て最も効率的な身体の運用法によって生み出された剣撃。
黒い少女はそのまま消費者金融のビルから落下する。肺の中の息が残らず吐き出された。

<-Д-=>「つまらん、な。…悪いことは言わない。さっさとその鎌を渡せ」

追うように屋上から飛び降りた男は見た目的にはただの高校生だった。
より厳密に言えば、「ツーハンデッドソードをあろうことか片手で振り回す細目の高校生」だった。
…ただの高校生、とは表せないかもしれない。頬に二本入った紅い線も妖しい。

爪;゚ -゚)「誰が……貴様なんぞにッ」

<-Д-=>「――そうか」

露出の高い服装の、短いスカートの、というか誘惑してるのかと勘違いしてしまいそうな黒尽くめの少女。
その返事を聞くが早いか2メートル近い剣を振り上げる。
――獲物の頭蓋骨を粉砕する意図で。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:00:09.30 ID:tsVWVuI50


爪; -)「――――っ!」

駄目だ、死ぬ。
…少女が二度目の『死』を覚悟した――その瞬間。刃が静止した。


誰かが彼女を庇うように割り込んできたからだ。
黙って、彼は立ち上がる。

(;ФωФ)「ハァー…ハァー……」

スーツを着た二十代半ばぐらいの男。
息も絶え絶えでありながら、必死の形相で両手を広げ、抵抗の意思を示していた。
…ただの何の力もない一般人にも関わらず、だ。

爪;゚ -゚)「またッ――お前はいつもいつも!保護者気取りが!!」

(;ФωФ)「喋っちゃ駄目である!傷口が――」

腐れ縁。しょっちゅう自分の戦いを邪魔する男に対し、這い蹲りながらも文句を言う少女。
言われた男も男で、いつものことと言わんばかりの調子である。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:03:10.90 ID:tsVWVuI50
…そして。
それを見て、逡巡するかのように僅か目を開いた高校生。


――彼に二人の関係性は分からない。
たまたま知り合い、成り行きで心配する側・される側になった彼等を、知らない。
ただ――。


<-Д-=>「…そうか、フィルギャ。お前は『死神』だと言うのに、まだ心配してくれる相手がいるのか」

“殺さない死神”。
そんな異名を持った『死神』である、タイガー=クルアルは黒尽くめの少女の名を呼んだ。
……彼とは違い、名前さえも捨ててしまった死神の一応の名を。

<-Д-=>「それは良いな。ああ、――とても良いことだ」

爪;゚ -゚)「…………」

<-Д-=>「一日だけ待とう。一日だけ……待とう」

――言い残し、さっさと踵を返すタイガー。
彼はその名に反し、とても慈悲深い死神だったのだ。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:06:13.69 ID:tsVWVuI50
……………


/ ^、。 /「恋をするように~、声を重ねればKISSっ♪ 私のはぁとは~」

(;'A`)「――どうした?かつてないほどにご機嫌だけど」

――春先、イオとドクオが出会ってから数ヶ月が過ぎた頃。
割と高級なマンションの一室。ドクオが何故か持っている合鍵で勝手に入ってきた時のこと。
コルクボードの写真達を眺めながら、錬金術師は歌っていた。

/ ゚、。 /「……何気に入り浸ってますよね。ピンポイントで僕が居る時に限って来るし」

('A`)「帰る場所もないしなぁ」

/ ゚、。 /「家ないんですか?」

('A`)「良い時はカプセルホテルやカラオケボックス。悪い時はトイレだな」

……本格的に可哀想な人のドクオ。
まず仕事が安定していないのだから仕方ないとも言える。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:09:15.41 ID:tsVWVuI50
('A`)「…強かったりすりゃ、仕事もあるんだろうけどな……」

補足しよう。
強かったらの仮定は“喧嘩”が、ではなく“殺し合い”が、である。
そんなわけで、ロビー国の王子への手紙を書くFOX隊員に訊ねてみた。

('A`)「どうやった強くなれるかな……」

/ ゚、。 /「全身の骨を一度折って、強化して、右手に鬼の角でも埋め込めばいんじゃないですか?」

(;'A`)「何処の裏十三家崩月!?」

/ ^、。 /「目指せ、崩月流甲一種第二級戦鬼!」

……ご機嫌だった。
鈴木=フラメス=イオリエ。好きな物は暗黒ライトノベル。
特に悪びれる様子もなく、そのままの調子で更に繋げる。

/ ゚、。 /「……でも実際問題、右腕に『鬼』じゃないですが、『竜』を宿した人なら知ってますけどね」

('A`)「そろそろ本気で化物になってきたな、お前の知り合い……」


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:12:08.69 ID:tsVWVuI50
回想でもするかのように目を細めるイオ。
手をすりすりと擦り合わせながら、

/ ^、。 /「懐かしいな……。凄い人でね、ブレーンクローの要領で人を投げるし電柱折るし……。ああ、自販機投げたこともあったらしいなぁ」

('A`)「…そんな自動喧嘩人形みたいな奴との思い出を『懐かしい』の一言で片付けるお前が一番凄いよ」

“そんな自動喧嘩人形みたいな奴”。
…は、実は帝都で、否、この国で最も有名な歌手のことだと言うことは、ドクオが知る由もない。
加えて言うと今室内に流れているラジオ番組のメインパーソナリティーでもある。

/ ゚、。 /「ほら、僕って友達少ないじゃないですか」

('A`)「いや、お前の交友関係は把握してねぇよ」

どこぞの王子様と友達なのは知ってるけどな、と繋ぐ。
大体友達の少なさに関するなら彼が大口を叩けるわけもない。
携帯のアドレスが……以前に、携帯そのものを持っていないのだから。

/ ゚、。 /「まぁとりあえずは少ないんです。この家を知ってる人だって――」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:15:11.82 ID:tsVWVuI50


その時だった。
ピンポーン、という気が抜けるようなインターホンの音。
この夜分。訊ねて来そうな人間は、知らない。

/ ^、。 /「あんまりいないはずなんですけど……」

可能性。
――およそ六割。上司、マタンキ=A=テュール。おそらく仕事関係。
――それ以外。同僚、ジャンヌ=H=ラウラ。酔っ払って何となく勢いで。
――大穴。『絶対正義』、都村トソン。間違いなく説教しに。

/ 、 /「(トソンちゃんだったらどうしよう……)」

扉の前にて、居留守の選択肢。割と本気で悩むFOX隊員。
しかし都村トソンの場合だとすると、扉を蹴破って入ってくる恐れがあるので(というか実際一度あった)意味がないことに気づく。
溜息をつく。
そして大人しく覗き穴に目を近づけると、

/ ゚、。 /「おや」

意外な人物達が、そこにはいた。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:18:28.19 ID:tsVWVuI50
……………


('A`)「……誰?」

/ ゚、。 /「死神仲間と……誰?」

(;ФωФ)「保護者である!」

/ ^、。 /「死神仲間とその保護者らしいです」

――全身黒尽くめの少女を背負った男。
何処となく教師風の彼を、イオは躊躇うことなく招き入れた。
最も広い部屋、居間に運ばせる。事情は――元より、大体把握している。

爪; -)「はっ……くぅ…」

/ ゚、。 /「…………」

傷だらけの彼女――フィルギャ=グルヴェイグを丁寧にソファーに寝かせ、ざっと見る。
一応は生体科学の専門でもあるのだ。
触診をしようかと思ったが、止めておいた。それは彼女の身の上を知るが故の配慮。幸い大きな怪我はないようだ。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:21:28.35 ID:tsVWVuI50
/ ゚、。 /「大きな怪我はない、んですが……力の使い過ぎですね」

('A`)「…力の使い過ぎ?じゃ、このコスプレみたいな格好の子はアレか、超能力者なのか?」

/ ゚、。 /「いえ」

と、否定する錬金術師。
低血圧気味で蒼白い顔。その頬を手で撫ぜる。
…答えを決めかねているイオを見て、二人の会話に男が割り込む。

( ФωФ)「彼女は『死神』である」

/ ゚、。 /「…ええ、そう……。――確かに一応は『死神』というカテゴリーの異形ですね」

('A`)「死神?アンタの先輩と同じ?」

――佐伯デレ。鈴木=フラメス=イオリエの高校生時の先輩。
不幸な偶然と自身の過失によりこの世を去った彼女。その、デレもまた――『死神』だった。
『東邦の死神』と呼ばれ、右腕よりプラズマの矢を放っていた少女。

/ ゚、。 /「説明しないと、ですか……」


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:24:46.55 ID:tsVWVuI50


――超能力者の超能力。
そのエネルギー源が何か、という問いは意外と簡単だ。
…体力と精神力。普通の人間が運動をする場合とさして変わらない。

だが。

/ ゚、。 /「『死神』はニックネームみたいなものでして。彼女等はその性質故、『超能力者』と『人外』の中間に位置しているんです」

('A`)「…それで、普通の超能力者と何が違うって言うんだ?」

/ ゚、。 /「――そのエネルギー源が、です」

――だが『死神』と呼ばれる者は違う。
彼等は――“人の魂”を直接的なエネルギーに還元できる存在なのである。


つまりは、
“人を殺せば殺すほど強くなる超能力者”。
それが、『死神』の定義。



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:27:12.99 ID:tsVWVuI50


( ФωФ)「――そんなことは、ないのである」

唐突に。
黙って話を聞いていた男――杉浦紀行が言った。

ただ。ただただ哀しいという風に。
ひたすらに、その死神の少女を想って。

( ФωФ)「そんなのは、哀し過ぎるのである。こんな子供に……」

/ 、 /「くつくつくつ」

――笑った。
小さく苦笑するように。あるいは、嘲笑するように。
まるで人ではないかのような無表情で、鈴木=フラメス=イオリエは、笑った。

/ 、 /「あの甘い死神が見逃すはずだ……」

彼は、知っていた。
二人の死神が争っていることも。その――本当の意味も。
理解して、それでも放っておいた。…蒼き死神はフィルギャを心配してくれる人間ではなかったのだ。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:30:08.29 ID:tsVWVuI50
しかし。
ただ場所を伝えられただけの杉浦はそんなことなど知らない。
無知が故に、懇願した。

誠実に。律儀に。
まともな感性と常識を持った、普通の人間として。
当たり前に。当然に。言うまでもなく。

( ФωФ)「…彼女を、助けてやって欲しい」

/ ゚、。 /「いいですよ」

(;ФωФ)「我輩だって詳しい事情は知らない。けれど、こんな小さな娘が傷ついているのだ。協力してくれたって――え?いいの?」

予想外の答えだったらしい。
この部屋に住まう人間をどのように伝え聞いていたのかは知らないが、イオは基本的に助けを求められたら助ける人間である。
…少しばかり制約はあるのだが。

/ ゚、。 /「断る理由がないですし。負ける気もしませんし」

ちらと壁に立てかけてあるそれを見る。
まだ、ほんの数度しか使う機会に恵まれていない戦利品。
殺人狂ではないが――さっさと慣れておきたいのも事実なのだ。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:33:09.28 ID:tsVWVuI50
/ ゚、。 /「それにですね、」

と、繋げ。彼は信じられないことを口にする。
普段の人の良さそうな印象とは程遠い――重く暗い曇天のような雰囲気。
それでいて、その親しみやすさはまったく崩さずに。横たわる少女の耳元で、静かに。

/ ゚、。 /「以前から聞きたかったんですよ」

爪; -)「……?」

/ ^、。 /「大勢の人間に回されたり子宮を潰されたり膣と腸が繋がるのはどんな感じなのか、って」


――僅か、数秒で。
数秒で杉浦はそれまでの姿勢を改め、少女を丁寧に背負い、イオの部屋を出て行った。
それは当たり前のことでもあり――また、信じられないほど愚かなことでもあった。

(;'A`)「お、おい……」

/ ゚、。 /「――だから、」

だから、甘いと言うんです。
…そんな風に彼は言った。当然の感想だった。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:36:10.53 ID:tsVWVuI50
……………


「……ちょっと、道をお尋ねしたいんですが」

<-Д-=>「?」

ある会社――詐欺詐称の幽霊会社の屋上だった。
テナントなど全くおらず、ガラガラのビル。かろうじて鍵はかかっていたはずだがタイガーにそんなことは関係ない。
単純に壊して入った。理由は特には、特筆すべきほどのものは、なかった。

街並みを眺めていた彼に声をかけたのは彼より少し年上。
蒼白い顔をした笑顔の青年。もはやトレードマークと化した白衣はなく、若者らしいカジュアルな格好をしている。
振り返り、立ち姿を見ると――左手の物が気になった。

<-Д-=>「お前、それは、」

――言葉が途切れた。
白い布状。つまりは片手だけの手袋が、投げ渡されたからだ。

<-Д-=;>「………っ」

その意味を理解した瞬間――、


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:39:09.77 ID:tsVWVuI50


「遅いです」

――間合いが詰まっていた。一足一刀から、一気に零距離。否、零ではなく斬撃における最適距離である。
姿勢がひどく低い。曲げた片膝がコンクリートについてしまいそうな、その姿勢から全力で以て腰を回転させる。
親指が鍔を押したカチリという音を聞いた。右手は既に柄だ。回避など間に合うはずもない。
その居合は一説によれば片山伯耆流。幕末の人斬りが使ったとされる、高速の逆袈裟抜刀――!


<-Д-=;>「ッ!!」

ガギィィン、という金属と金属が擦れる音が響いた。
同時に飛沫が舞う。血飛沫ではなく水飛沫。斬りかかった青年の刀から飛んだ水。

「――『玉散り白雨』という名前らしいです」

鍔迫り合い。
瞬間。相手を押したその反発力で後退しつつ彼は言う。

「大気中の水分を吸収して、刀身を濡らしているんだとか」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:42:07.59 ID:tsVWVuI50
――抜刀術の為に造られた刀。
刀身を濡らす意味は、摩擦係数を減らすことにあった。
『PA計画』の残骸。荒巻の屋敷にて火事場泥棒で盗み出した武器だ。

「別に名乗るほどの身分じゃないですけど、折角日本刀を持ってるんですし、名乗りましょう」

男は“鈴木=フラメス=イオリエ”ではかった。
“錬金術使いのレインメイカー”でもなければ“東邦の蒼い死神”でもなかった。
ただ――。

/ 、 /「雨斎院家、第二宮司継承者――」

その立ち姿。
構え方呼吸法、全てで主張する。

/ ゚、。 /「――雨斎院威織です」


シベリア州に存在する雨斎院白魔神社。
同時に魔術結社でもある神社神道の家柄。その正統後継者。
家を出てさっぱり帰らぬ跡取り息子が、そこにはいたのだった。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:45:07.32 ID:tsVWVuI50
……………


/ ゚、。 /「……フェイクなんですよ。貴方は」

<-Д-=>「だろうな。あの妖刀の居場所を教えた男も――真っ当な人間でないと思った」

――帝都VIP。エリアで言えば東地域……あまり治安のよろしくない場所だ。
ネオンの煌く街を見下げ、二人は対峙する。

/ ゚、。 /「荒巻の爺さんが人攫いをやってましたが……不思議なことにね、爺さんいなくなっても、なくならないんですよ。全然」

<-Д-=>「ああ。あの爺基本的に子供好きだからな」

目的の為の手段は選ばないだろうが、と笑う。

そう。あれも――嘘だった。
筋の通った答えではあるが……全てではなかったのだ。

/ ゚、。 /「すると、もう。限られちゃうでしょ。可能性って」

<-Д-=>「そうだな。あの鎌が欲しい俺を焚きつけて得をする奴など、限られてくるな」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:48:19.10 ID:tsVWVuI50


『蒼ざめた馬の少女』フィルギャ=グルヴェイグ。
彼女にはある特徴がある。一つが手にする大鎌。他人から狙われることさえある呪われた鎌を持っている。

…そして、二つ。
彼女は――奴隷商売が嫌いなのだ。
見つければ、どんな手段を使ってでも止めてしまうほどに――。

/ ゚、。 /「乙女の秘密を暴露するのは気が引けるので止めておきますが……彼女も結構エグイ人生だったらしいです」

<-Д-=>「そうでなければ『死神』なぞにはなるまい」

感染らんさ、と他でもない死神は嘯く。
彼もまた前の死神から能力を受け継いだ――“感染した”元人間だ。
絶望を覗き――絶望に魅入られた。

殺さない死神。
誰よりも殺された痛みを知るからこそ、極力は殺さない。

“人を殺せば殺すほど強くなる”。
……されど、人は容易にそこまで堕ちることはできないのだ。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:51:18.22 ID:tsVWVuI50
<-Д-=>「……そう、そうなのだろう。“邪魔者の足止め”が俺の役割なのだろうな」

ええ、と目の前の青年は肯定。
誰かにとって、ここ数日で人攫い・人身売買をしようとする集団にとって都合の良いシナリオ。
フィルギャという危険因子。それを彼女を狙う者に情報を提供することで足止めする。そしてタイガーは分かっていて計画に乗った。

これから売られようとする人間達。彼等は何の引け目もないにも関わらず、『死神』と同じだったのだ。
――絶対数的に、本気で心配する人間がいなかった。

/ ゚、。 /「そこまで分かって、退きませんか」

<-Д-=>「退かないな。俺は極力他人の人生に介入しないようにしている」

しれっと死神は言う。
極力“殺さない”代わりに、同じだけ“助けない”死神。
それもまた――正しいのだろう。この裏の世界に生きる存在としては。賢明で、真っ当な生き方なのだろう。


…そんな定石を見失い死んだ人間を、イオは一人知っている。
“嫌いじゃなかった”けど“賢くはない”。思い出す度――そう思ってしまうのだ。
どうして僕なんかの為に、と。いつも天も知らぬ雨が降る。

/ ゚、。 /「……なら、実力行使と行きましょうか」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:55:14.25 ID:tsVWVuI50
<-Д-=>「お前の事情は知らない。だが戦うのなら相手にはなるつもりだ……しかし、」

僅かに――言い澱む。
最後の最後まで迷ったかのように首を振り、

<-Д-=>「――お前、片目見えてないんだろう?」

――核心をついた。
あまり人に知られていない、知られたない秘密。それは確実な弱みになるからだ。
対し、青年はとても小さく笑うと、スッと手で目を覆った。そして、まるでコンタクトを外すように指をそのまま――“入れた”。

…見えていない、というのは適切でない表現だったらしい。
見えていないんじゃなかった。眼球自体がないので最初から見えようがなかったのだ。


/ ゚、_ /「さぁ、古い意味での決闘です。貴方がどのような絶望を見たのかは知りませんが――」

義眼を適当に放り投げ、構えを正す。
片目。雨斎院威織は……まだ当然のようにその名を名乗っていた頃の彼は、先ほどと同じように、かつて自らの目を“自分で抉り取った”。
それは贖罪の為に。ただ――それだけの為に行われた行為だった。


/ ゚、_ /「――これが、僕の見た絶望です」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:58:08.66 ID:tsVWVuI50


――ちびのウィンキー 街駆け回る
  
  ナイトガウン着て 階段を上ったり下りたり
  
  窓叩いて 鍵穴から叫ぶ
  
  「良い子達、寝たかな?もう八時だよ?」





――第八夜 終――

…When childhood dies, its corpses are called adults.
And most ignorance, ――childhood is vincible ignorance. We don't know because we don't want to know.
However a little knowledge learning is a dangerous thing. In that case even such ignorance is better than that.




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 00:01:07.97 ID:C4RmO5Df0
ご支援ありがとうございました。
そろそろ終わりが近いです。

「子供らしさが死んだ時、その残骸を大人と言う」
「そして大抵の無知――つまりは子供らしさは克服でき、そうでないのは知ろうとしないからだ」
「しかし半端さは危険である。それならばいっそ何も知らない方がマシだ」
…こんな風になっていればいいんですが。




さて。予定では十四話構成です。
十話でガラリと雰囲気が変わって遣る瀬無く終わります。
悪党に、ハッピーエンドは、ありえねぇ。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 00:17:03.24 ID:1MUC8M1z0
乙!


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