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◆/ ゚、。 /『The Rainmaker and“Lemegeton”』のようです…… 第九夜 「せめて、人間らしく」

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1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:35:51.88 ID:aNle1FRK0


/ ゚、。 /『小さき鍵』とレインメイカーのようです……



――Now I lay me down to sleep,
  
  I pray the Lord my soul to keep;
  
  And if I die before I wake,
  
  I pray the Lord my soul to take.





                        (『Now I lay me down to sleep』より)







2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:38:43.05 ID:aNle1FRK0
――第九夜――
「せめて、人間らしく」

(#゚;;-゚)「…………」

暗い部屋だった。
布切れ一枚を纏っただけの状態で、年齢で言えば中学生になったところの少女が、角でもたれるように座っていた。
体中至る所に傷跡があった。それでもしばらく見つめていたい誘惑に駆られるような、そんな美しさを持つ少女だった。

涼しげな目元。冷ややかな目線を周囲に飛ばす。
ここは一人だが、他の場所には似た境遇の人間が沢山いることも知っていた。

(#゚;;-゚)「…………」


――どこかで啜り泣く声が聞こえた。
自分も祈ってみようかと思った。けど、やめた。


理由は単純だった。
名前すらない少女は祈るべき神を――どころか、叫ぶべき両親の名も想うべき友人の名も、何も知らなかったからだ。
「多分天国なんてものがあったとしても……自分はやはり孤独なんだろう」
そんな風に思った。らしくない感傷だった。



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:41:32.66 ID:aNle1FRK0
……………


/ ゚、_ /「つぁ――っ!!」

片目がないというのは中々不便だ。距離が計りづらい。
「居合い」は“距離感を狂わせる剣術”とも言われるが、こちら側の距離感が狂っているのにどうやって狂わせることができるのか。
動けば動くほどピントが合わなくなっていく。

<-Д-=>「どうしたっ!動きが鈍いぞ!」

/ ゚、_ /「もう若くないので無駄に動かないだけです」

<-Д-=>「大して変わらんだろうにっ!!」

――言い合いながら、剣を打ち合わせる。
否。日本刀は本来刃を合わせないもの。強度で負けている威織は回避が主となる。

ヒュン!

/;゚、_ /「いたたたっ」

ぶしゅっ、という音で肩口が切り裂かれた。
これで制限時間が付加されることになる。十分かからずに出血多量で倒れることになるだろう。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:44:35.68 ID:aNle1FRK0
/ ゚、_ /「おかしいな……」

技量では勝っている。相手は異形だが異能ではない。
こちらは本職。いかにプロのプレイヤーと言えど、負ける気はしない。

/ ゚、_ /「どうにも……ッ!」

<-Д-#>「くぁっ!!」

刀が――弾かれる。
僅かに欠けた。出鱈目なまでの馬鹿力だ。並みの剣客では受け流すことすらできないはずである。
実際問題、相手の周囲を滑るような移動法――『神楽舞』を用いた動き方でなければ腕の一本ぐらいは飛ばされていたかもしれない。


/ ゚、_ /「なんか……アレだな、」

――平たく言えば、興が乗らないのだ。
久々に、らしくもなく純粋に“他人の為”に戦っている所為だろうか。
高校生の頃までは多かったが先輩の一件以来すっかり止めていた。先日の占い師のこともほとんど騙しで慈善事業などではない。

/ -、_ /「…なんで、こんなことやってんだろ……」

動かない身体に、今更過ぎる問い。
そこで迷う時点で蒼い死神はやはり――『善人』などではなかったのだ。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:47:37.80 ID:aNle1FRK0
……………


――その、ほぼ同時刻。
真っ黒い死神を背負ったただの教師が深夜の街を歩いていた。
四区分で言えば、東ブロックの外れ。清流とは言えない川に架かる橋の上だった。

爪; -)「下ろせ……」

( ФωФ)「嫌である」

爪; -)「いいから、下ろせよ……」

ほとんど無意識に。うわ言のようにフィルギャは呟き続ける。先ほどからずっとこの調子だ。
男の背広をぎゅううと強く握り締めながら、悔しさが滲み出る口調で。

爪; -)「また人が死ぬんだ。身体じゃなくて、心が……死ぬんだ」

( ФωФ)「…………」

爪; -)「見捨てられた人間は、心が――死ぬんだ。どうでもよくなっちゃうんだ。全部、全部、――全部だぞ?」

――それは。
さもすれば泣いているんじゃないかと錯覚するような声だった。



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:50:33.85 ID:aNle1FRK0
誘拐だったわけでも、孤児だったわけでもない。
ただ――実の両親に売られたかつての少女は、呻き苦しみ続ける。

爪; -)「もう、嫌なんだよ。そんなのを見るのは……」

……それはかつてのような。
ドロドロとした劣情でも、ギラギラとした激情でもなかった。
もはや復讐などどうでも良かった。穢れ切った身体も、あるのかないのか分からない心も。

その全てが――声高に主張していた。
復讐や禁忌で人が救われるはずもない。そんなことは分かっている。

爪; -)「もう……嫌なんだ」

胸に湧き上がる想いに熱い吐息を噛み殺す。
“自分は、もういい”。自分が救われたいとは思わない。


爪; -;)「嫌なんだよ、もう、全部……」


だけど。
自分じゃなくても、自分のような思いをしている人には、――救われて欲しいのだ。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:53:34.95 ID:aNle1FRK0


「――すげぇな」

カチ、カチと。
進行方向の手摺に腰掛けている些か貧相な顔をした青年。
ガスも切れかけのライターで、タバコに火をつけようとしながら言う。

('A`)「アンタ、すげぇよ。なんて言うか……格好良い。すげぇカッコいいじゃん」

(;ФωФ)「……あなたは、」

('A`)「あー分かった。多分、似てるんだ」

話に聞いた美人の先輩さんに似てるんだ――と。納得したように小さく、呟いた。
当然スギウラにもフィルギャにも意味が分からない。
しかし、“分からないけど、分かった”。矛盾しているようだが、確かに二人はそう感じた。

('A`)「もしかして『死神』って皆そんななの? クールでニヒル気取ったお人好しばっか?」

爪; -)「っ!そんなこと……ッ!」

('A`)「――そんなこと、あるよ。あの美人さんも、アンタも、今戦ってる錬金術師だってそうだね」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:56:36.31 ID:aNle1FRK0
点かない百円ライターを放り捨て煙草を懐にしまう。
出てきた溜息は少しの『呆れ』――そして、ほとんどの『尊敬』だった。

('A`)「思えば、部屋でのやり取りだって試してたんだろうぜ」

――本気で心配してくれる人間がいないのなら助けるに値しない。
言葉の裏の意味は、そういうことではなかったか。スギウラが効率など無視して激怒したから、今動いているのではないか。
今日この瞬間に売られようとしている子供達もそうだろう。フィルギャが本気で彼等を想っているからこそ――助ける為に戦っているのだ。


 “自分は、もういい”。自分が救われたいとは思わない。
 ――だけど自分じゃなくても、自分のような思いをしている人には、救われて欲しい。


('A`)「すげぇ馬鹿だな。……で、馬鹿」

爪; -)「……なんだ無礼者」

('A`)「アンタもいい加減『自分の大切さ』ってものを自覚した方がいいぜ?」

――今お前を背負ってくれてるのは、誰なんだよ?
生まれてこのかた両親に抱かれたことのない、まして背負われたことなどないドクオは。
……少しだけ羨ましそうに、そう言ったのだった。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:59:35.15 ID:aNle1FRK0
……………


――終わりは唐突に訪れた。
嵐の如き剣戟は――乱入者によって、幕を下ろされる運びとなった。


「――イオさんっ!!」


聞こえた声は育ちの良さが滲み出るようで。
それだけで威織には予想がついた。

瞬間的に這い蹲る。
紛うことなき世界の神秘――『魔法』の射程範囲はべらぼうに広い横一閃。


<-Д-;>「はっ……?」

一瞬だけ、反応が遅れた。
ガキィンという音。ツーハンデッドソードが、何か斬撃のようなものを喰らい真上に弾かれた音だった。
理解はできない。暗器や飛び道具だとしてもここまでの威力は出まい。



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:02:33.51 ID:aNle1FRK0
だから。
一瞬だけだが、反応が遅れたのだ。


 そして、それが致命的な隙となる――!!


/ 、 /「――さぁて、シメとしましょうか。可哀想な子供達を助けに行かなきゃ駄目ですし」

速かった。刹那と表現してもまだ遅いような速度だった。
既に白雨は何処にもない。捨てた後だ。フリーになった右手をさながら竜の顎のように開く。膠着状態の身体――首根っこを容赦なく掴む。
それは一陣の風の如く痛みを感じる暇すら与えぬ咬みつきだ。足を踏ん張り腰を回す。腕だけではなく全身を使っての一撃。

――全身全霊でのドラゴンクロー・スラム。
ただし落ちるのはマットではなく、暗いビルの谷間だ。


<Д =>「――――っ」

/ ゚、_ /「…………」

殺さない死神は何も言うことなく落ちていく。
泣き言も、言い訳も。裏稼業である誇りを持って、落ちていく。
――その姿が僅かに満足気に見えたのは、威織の錯覚だったのだろうか……



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:05:34.14 ID:aNle1FRK0


/ ゚、_ /「――それで王子。こんな深夜に何用でしょうか」

「そんなことよりイオさん。やるべきことがあるでしょ?」

青年は。
魔法使いかつ、後に隣国の王となる青年は銀色の髪を夜風になびかせていた。
奇蹟を顕現する儀礼剣を手にした姿は、たとい普段着でも冴え冴えするほど優雅だ。

(´・ω・`)「……僕も自分の国でもないのに口出しをする気はありません」

/ ゚、_ /「知ってます」

(´・ω・`)「でも今日の“商品”には僕の民も入っています。放ってなんて――おけませんよ」

くつくつくつ、と雨斎院威織は笑った。
済んだ空と淀んだ街に。普通ぶった悪人と外道気取りのお人好しに。

/ ゚、_ /「こんな訳の分からない世界でも、結構、粋なとこがあるじゃあないですか」

――さぁ、そろそろ行こう。
心を失くしてしまう前に教えてやらねばなるまい。
この世に都合の良い奇跡などはない。人を救うのは神様でも仏様でもなく――同じ人間なのだと。



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:08:35.09 ID:aNle1FRK0
……………


(#゚;;-゚)「…………」

やはり、そこは暗い部屋だった。
ただし啜り泣く声はもう聞こえなかった。数秒前まで断末魔のような声が聞こえていたが……どちらにせよ、どうでも良かった。
もう彼女は存在しないモノ。名前も戸籍も存在せず――何処にも行く場所などないのだ。


――やがて。
暗い部屋に僅かな光が差し込んだ。


/ ゚、_ /「あぁ、どうも」

片目を瞑った優しそうな印象の青年だった。
それが嘘偽りだとしても、自分に向けられた笑顔を彼女は初めて見た。

/ ゚、_ /「なんか……貴女は違いますね。本職っぽい。慰み者って訳じゃなさそうですが……」

(#゚;;-゚)「しがない奴隷です」

/ ゚、_ /「そうですか。それは大変だ」



13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:11:36.78 ID:aNle1FRK0
そう、少しも大変そうじゃない、微塵も同情していない口調で言った。
まじまじと見つめる彼が次の所有者だろうか。少女愛好の趣味があるようには見えないけど。
……今までと全く同じように彼女はそう思った。だから、名乗った。

(#゚;;-゚)「苗字は東郊です。名前はありません。戸籍はないので、好きに扱ってくれれば結構です」

/ ゚、_ /「『東郊』ですか……。はぁ……じゃあ、『でぃ』かな」

(;#゚;;-゚)「…………は?」

――それが『自分の名前』だと、彼女は気づけなかった。
名前はないと言ったが、家畜や道具に名前をつける人間などそうそういないものだ。
つまりは、彼女は十三にしてそのような人生しか送っていなかった。

だから、驚いたのだ。
何気なく名前を与えた青年に。

/ ゚、_ /「似た感じの人……人じゃないですけど、それで。元はロビー国叙事詩第三章の女傑の名前からです。誇っていいですよ?」

(;#゚;;-゚)「あ、あの……」

/ -、_ /「僕が主人ってわけですか? じゃあ、戸籍は頑張って用意しておきます」



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:14:34.70 ID:aNle1FRK0
何だか訳の分からないうちに話が進んでいく。
強烈な違和感。それは、“人間として扱われたこと”へのむず痒さだった。

/ ゚、_ /「では最初の命令を。……“僕の弟のところへ行って下さい”。理由は多分、向こうに行ったら分かります」

(;#゚;;-゚)「え? あ、はい……」

/ -、_ /「『鬼籍に入る』って言葉がありますけど、――貴女が出会ったのは『奇跡』です。良かったですね」

――その時は、彼女はただ、曖昧に頷くだけだった。
しかし数日後。または数週間後。あるいは数ヶ月、数年後に振り返ると――はっきりと分かるのだ。

/ ゚、_ /「訳分かんない世界でも、やっぱり美しいですよね。ねぇ?」

(;#゚;;-゚)「え? ……ええ??」


 自分はまだ、終わってなかったと。
 どうでもよくなんてない。生きている限りは、『希望』はなくとも『可能性』はあるのだと。
 そして、その可能性を現実にしていくのは――彼女が祈れなかった神様ではなく、自分自身であり人間なのだと。


後に独りではなくなった彼女は、漠然と。しかし、確信を持ってそう思っている。
……もっともそれは威織に関係ない話だが。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:17:35.68 ID:aNle1FRK0


――これから私は眠りにつきます
  
  神様 私の魂をお守りください
  
  もしも、目覚める前に死んだなら
  
  神様 どうか私の魂をお召しください 






――第九夜 終――

…There is no security on this earth. There is only opportunity.
Anytime and Anywhere. There is a result which was not possible to foresee.





16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:20:35.54 ID:aNle1FRK0
短くてごめんなさい。
まとめは、くるくるくーるさんです。
本日の英文は随分と当たり前なもの。後半部分は引用ではないので間違ってるかも……


さて。
第八夜と第九夜はリンクしている作品が多いです。

一つ目はブログ内短編。
「(;ФωФ) 死神に・が、憑かれて・憑いてしまったようです 爪゚ -゚)」です。

二つ目は連作短編。
「(´・ω・`) 曰く、「男は皆魔法使い」のようです」から始まる『魔法使いショボンシリーズ』。

三つ目は一ヶ月前に投下。
「(;^Д^)「俺は惚れっぽくもないし流されやす(以下略)」のようです」です。

一つ目はフィルギャの前日談。二つ目は王子の背景とか。
そして三つ目は、でぃとイオの弟の後日談。
お暇ならばどうぞ。


では、これにて。



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:57:40.28 ID:E5Hr5PeoO



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:00:12.09 ID:Y+9iMuWBO
おつ


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