◆スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

◆( ´_ゝ`) Channelers のようです 第一九話 『 孤高の超念動能力者(サイコキネシスト) ── VS. ニダー② 』

前の話/インデックスページ/次の話

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:39:48.48 ID:V3ExJ/jW0
 



「お待たせしました、どうぞ」


 部屋の奥よりかけられた声に、俺はソファから立ち上がった。
 背の高い観葉植物の脇を通って、磨りガラスの嵌めこまれた特徴的な形のドアへ向かう。






3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:42:24.38 ID:V3ExJ/jW0
 
('A`) 「あ……どうも」


 待合室もそうだったが、診察室もおよそ一般的な診療所のイメージとは異なる空間だった。
 室内の家具は暖色系でまとめられ、辺りには仄かなアロマオイルの芳香が漂っている。
 ビーンズ形というのか、緩やかにカーブしたウッドテーブルの正面に通され、いそいそと着席した。


(´<_` ) 「はじめまして。 すまなかったね、長いことお待たせして」


 ようやく会えた 『 先生 』 は、想定外に若々しい男性だった。
 椅子の背へ手をかけつつ、端正なマスクをにこやかに緩ませている。

 しなやかな細身の長身に、これまた長い白衣が靡く。
 サイド分けの長髪を後ろで束ねた姿は、
 本物の医者というより、まるで医療ドラマに登場する若手俳優といった雰囲気だ。


('A`) 「あの、他の患者さんは……」

(´<_` ) 「うん、今日は午後休診だから大丈夫。
       これは診療外の個人的な相談だと考えてもらえればいいよ。
       もちろん、初診料もいただきません。 ご安心を」




4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:45:18.76 ID:V3ExJ/jW0
 
 そう言うと、先生は一枚の名刺と、キャンディの詰まった小さなカゴを差し出した。
 俺は会釈のあと、『 まったりアボカドあめ 』 と書かれた包みを取り、中身を口に運ぶ。
 受け取った名刺には、“ 流石メンタルクリニック 院長 流石イサム ” とあった。

 院長。
 目の前に座するイケメンは、院長。
 雇われ医師でもカウンセラーでもなく、この診療所の主だというのか。
 見た感じ俺とあまり変わらないように見えるが、いったいこの人、幾つくらいなのだろう。


(´<_` ) 「まずは自己紹介から。 当クリニックの院長、流石といいます。
       ギコ君たちとは、彼らの亡くなったお母さんと、私の姉が古い知り合いでね」

('A`) 「あ、はじめまして、内藤ドクオです……。
    今日はお忙しい中すみません、よろしくおねがいします」 コロコロ

(´<_` ) 「いやいや、あまり硬くならなくていいよ。 リラックスリラックス」


 そう言って流石先生は白い歯を光らせるが、
 はてさて、こんな状況で緊張するなというほうが無理な話だ。
 なんとなく勝ち組と負け組という見えない線引きを感じ、卑屈な気持ちすら芽生えてくる。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:47:57.84 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「話はだいたい聞いているよ。
       彼らは君のことをとても慕っているみたいだね」


 本日俺をここまで連れてきてくれたのはギコだったが、
 当の彼は用事があるとかで、すぐにどこかへ立ち去ってしまった。
 その結果、俺はひとり、面識もなにもない 『 先生 』 との対話へ臨む羽目になったというわけだ。
 ……果たして、これが慕われていると言えるのかどうか。

 『 チャネル 』 の症状に対する相談という名目だが、
 場所が場所だけに、診療を求めて来院するのとなんら変わらない形になっている。
 仲介役のギコがいない上、時間外に対応してもらったこともあって、
 俺はなんとなく心苦しいものを感じていた。


('A`) 「いえ、それはその、ありがとうございます」

(´<_` ) 「ははは、礼儀正しいのはいいことだね」


 流石先生はふたたびのイケメンスマイルを繰り出した。
 が、すぐに真面目な顔つきに戻ると、
 傍らのクリップボードを手に取り、書面へ目を通しつつ言った。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:50:16.10 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「早速だけど、ちょっと聞かせて欲しいことがあるんだ。
       ギコ君からあらかじめ “ 超能力障害あり ” と伺っていたもので、
       一応さきほど問診表を書いてもらったわけだけど」

('A`) 「はい」


 そこまで述べると、先生はこころもち怪訝な面持ちになる。


(´<_`; ) 「ここにある、“ オブラートを食べると女になります ” というのは……」

(;'A`) 「はあ、文面どおりの意味でして」


 俺はぼりぼり頭を掻きながら答えた。

 なにせ、それ以外に自分の症状を表現しようがなかったのだが……。
 改めて他人の口から聞くと、なんだか売れない芸人の持ちネタみたいだな。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:52:36.53 ID:V3ExJ/jW0
 


                http://boonstyle.web.fc2.com/chane/chane.html


     http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html   纏.


              http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html





10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:55:23.81 ID:V3ExJ/jW0
 
 ~ ~ ~


从'、`;リル 「……とまあ、こういうワケなんです」

(゚<_゚ ; ) 「な、なんと……」


 数分後。
 俺はトイレで女の姿になり、診察室へ戻ってきてみせた。

 予想していた反応ではあったが、先生は相当の衝撃を受けたようである。
 目を丸くし、中腰の姿勢で、俺の全身を穴の開くほど見つめている。

 口で色々と説明するのは苦手なので、実際に見てもらったほうが早いと踏んだわけだが。
 それでも、あまりにもこう、まじまじ見つめられると……。
 どうにも気恥ずかしくて仕方が無い。


(´<_`; ) 「こう言っては失礼かも知れないが、気を悪くしないで答えてほしい。
       本当にその……性別そのものが、転換、しているのかね?」

从'。`リル 「え、はい。 こんな感じで……」 グイ

Σ(´<_`; ) 「い、いや大丈夫! 別に見せなくて大丈夫!」


 Tシャツの襟を引っ張ってみせたところ、先生は慌てて立ち上がり、俺の眼前で手を振った。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:57:50.65 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_`; ) 「そうか……いや、申し訳ない。 取り乱してしまった。
       なるほど。 人格とともに、体組織そのものが変質してしまう、と」

从'。`リル 「それでその、俺のこの症状については……」

(´<_` ) 「本当に申し訳ないが、私も初めて目にする現象だ。
       ここまで全身にくまなく影響を及ぼすような症例は、今まで聞いたことがない」

从-、-;リル 「……ですよねー」


 自然と溜め息が漏れた。
 まあ、この反応からして、おおむね想像通りの返答だったが。

 先生はふたたび椅子に腰掛けると、「信じられない」 とでも言いたげな様子で、
 小さく首を振りながら述べた。


(´<_`; ) 「多重人格の患者さんが、表出した人格によって、肉体に変容をきたすことはある。
       脳波の波形が変わったり、利き腕が逆になったりといった形でね」

从゚、゚リル 「へえ……」



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:00:30.02 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「そうでなくとも、思い込みなどの精神的要素が
       身体へ影響するケースは、ままあることなんだ。
       プラシーボ、なんて言葉は聞いたことがあるだろう?」

从'。`リル 「あ、はい」

(´<_`; ) 「……まあ、これも厳密には多少意味合いの異なる例えだけどね。
       そもそも、精神と肉体は切り離して考えることのできないものであり、
       それらを包括した心身医学こそが、私たちの専門なんだ。

       ……がしかし、女性の人格に転換すると同時に、
       肉体全てが瞬時に女性のそれに変わってしまうなんて、こんなのは……」

从'。`リル 「ああ、そのことなんですけど」


 俺はそこで先生の言葉を遮り、自らの “ 症状 ” について説明した。


(´<_` ) 「では、人格が変わっているわけではない、と?」

从'。`リル 「はい。 ……今のところ、自分がドクオであるという自覚はあります。
       これがチャネラーの症状であれば、普通はもっとこう、
       個性的な “ 別人格 ” が表に出てくるんですよね?」

(´<_` ) 「“ チャネラー ” ……か、ふむ」



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:03:21.70 ID:V3ExJ/jW0
 
 その単語を聞いた途端、先生は真剣な顔立ちになった。
 テーブル上に両手を組み、小さく溜め息をつく。
 
 なんというか、様になっているなあ、漠然とそう思った。
 少女漫画にでも出てきそうな線の細い風貌で、
 こうやって正面から見つめられると、何故だか知らないが、どぎまぎしてしまう。
 精悍な感じのギコとは対照的だが、しかしどちらも端正な容姿であることには変わりない。

 それに、しばらく会話してみて感じたことだが、
 先生の纏う落ち着いた雰囲気は、話していてどこか心地よい。
 ギコやしぃちゃんが信頼を寄せるのもわかる気がした。
 そんな先生の、俺の目を見据える真摯な表情に、こちらも自然と背筋が伸びた。


(´<_` ) 「君の言う事はおおむね正しいよ。
       ギコ君たちにそう聞いたのだろうからね。
       ……ただ、根本的な部分への認識が不足したまま、
       “ チャネラー ” という呼称を多用するのは、あまりお勧めできることではない」

从'、`リル 「……?」

(´<_` ) 「よし、ではひとまず、君の症状については置いておこう。
       先に、ギコ君やしぃちゃんが発症している特殊な多重人格障害と、
      “ チャネラー ” のことについて、順を追って説明してゆこうか」


 先生はそこで 「ちょっと待ってね」 と話を区切り、席をたつ。



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:06:17.01 ID:V3ExJ/jW0
 
 暫時ののち、湯気のたつカップを両手に隣室から戻ってきた。
 漂うアロマに、ハーブティーの鮮烈な芳香が入り混じる。

 一口飲み終え、カップを置いたところで、先生による説明がはじまった。


(´<_` ) 「まず、“ チャネラー ” というのは、正式な名称ではない」

从'。`リル 「え?」

(´<_` ) 「その呼び名はここ数年で広まったもので、もとは警察の隠語からきている。
       ……つまり、俗称に過ぎない呼び方だよ。
       警察の間では、最近はもう少し略して “ ねらー ” と呼んだりすることが多いらしいがね」

从゚、゚リル 「警察……ですか?」

(´<_` ) 「ああ。 正しくは、“ 二極化性解離性同一性障害 ”……。
       意味合いは多少異なり、この呼称はいわゆる精神疾患、
       あくまでも、多重人格障害の一パターンだと考えてほしい。

       別個のアイデンティティを有する “ 人格 ” が、
       一人の肉体において複数内包されることとなる、神経症の一種だ」


 俺は首をひねった。
 それって、普通の……という言い方は変だけど、いわゆる多重人格と変わりないってこと?



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:09:14.17 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「但し、近年急増しているこの疾患においては、
       通常の疾患では3人以上潜伏するケースの多い “ 人格 ” が、
       主人格と副人格の二種に限定されるという症状が、大半を占めている」

从'、`リル 「……」

(´<_` ) 「さらに、人格同士で自由な意思の疎通が可能であったり、
       必ずしも記憶の欠如を伴わないため、
       パーソナリティの連続性を保持している場合が多い、という点が特徴的だ。

       ……が、従来の多重人格障害にも似たようなケースは存在するため、
       これだけで判別するのは早計なのだけれどもね」


 口元に手を添え、ふんふんと頷いてみせる。
 なんだか難しい話に聞こえるが、要はしぃちゃん達にファミレスで聞いたことのおさらいみたいなものだ。
 先生は二、三度咳払いし、続けた。


(´<_` ) 「もう一つ、この疾患を決定づける非常に大きな特徴は、
       “ 超能力障害 ” を伴うケースが多いということ」

从'。`リル 「疾患……」



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:11:54.54 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「そうだ。 まずこの根本的な部分を誤解しないでほしい。
      ” 二極化性解離性同一性障害 ” はあくまでも神経症の一種であり、
      我々が取り扱い、ケアしてゆくべき領域にある、精神疾患のひとつなのだよ。
      彼らの苦しみを理解し、治療に向けての手助けをする、そのために私たちがいる」


 それは一人の精神科医としての見解なのだろう。
 身振りを加えた先生の弁には、少しづつ熱が篭ってゆくように感じた。


(´<_` ) 「先ほども言ったとおり、“ チャネラー ” というのはもともと、
       超常現象の絡む犯罪、その犯人を指し示す、警視庁内部の隠語からきている。
       最近では、単純に “ 超能力者 ” という意味に捉えられがちだが……。
       正直なところ、外ではあまり無闇に使わないほうがいいだろう」


 ──多少ややこしいが、つまり、先生の言う事をまとめるとこうだ。
 ギコやしぃちゃんに話を聞かされて以来、一緒くたにしていた節があったが、
 “ チャネラー ” と “ 最近生まれている二重人格者たち ” は、必ずしもイコールではないということ。

 近年、突発的に二重人格を発症した者の内にも、超能力が発現しない者はいるし、
 副人格との奇妙な共同生活がうまくいっている例自体、そう多くはないのだという。
 人格解離に伴うストレスにより、別の精神疾患を併発してしまう者もいるらしい。



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:14:19.31 ID:V3ExJ/jW0
 
从'、`リル (色んなケースがあるもんなんだな……)


 二重人格の超能力者を俗に “ チャネラー ” と呼んでいるが、
 そのルーツは警察の隠語だと先生は言った。
 これはすなわち、“ 超能力” という、現代科学では説明できない謎の力の存在が、
 既に公的に認知されていることの証明でもある。


从'。`リル 「ところで院長、ちょっと質問があるんですけど」

(´<_`; ) 「いや……院長って。 なんだい?」

从'、`リル 「あの、さきほど “ 超能力障害 ” っておっしゃいましたけど」

(´<_` ) 「ああ」

从'。`リル 「 “ 超能力 ” が “ 障害 ” になるケースって、あるんですか?」
 σ

 そこまで口にしたところで、自然とある人物の顔が浮かんだ。
 ──ビルの屋上で出会った、催眠能力者のあの男。
 彼こそ、身に余る超能力による犠牲者だったといって間違いないだろう。


(´<_` ) 「……ふむ、それもおそらく、
      ギコ君やしぃちゃんのケースしか見たことがないからこそ生まれる疑問だろうね」



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:16:42.99 ID:V3ExJ/jW0
 
从'。`;リル 「いえ、それはその……」


 ブーンやクー、物を滑らせる大男など、
 “ チャネラー ” との遭遇には事欠かない昨今だったわけだが。
 なおも神妙な先生の雰囲気に、言い出すタイミングを失ってしまった。


(´<_` ) 「彼らはある意味幸運な例だといえる。
      ……超能力が、日常生活を送る上での障害になっていない、という意味でね」


 そこで言葉を切ると、先生は微かに目を伏せ、続ける。


(´<_` ) 「余計なお世話かも知れないけれど、聞いてほしい。
       いいかいドクオ君。
       間違えても、超能力を
       “ よくわからない、なにか便利な力 ” であるとは、考えないで欲しいんだ」


 そう述べる先生の横顔には、僅かに影が差しているように思えた。

 ……超能力が、便利な能力ではない?
 そこらの物を思うさまにぶん投げ、遠くのささやき声すらキャッチできるような、
 あんなに利便性の高い異能力たちが?



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:19:17.40 ID:V3ExJ/jW0
 
从'。`リル 「……失礼かもですけど、違うんですかね?」

(´<_` ) 「ああ。 全く違う。
       超能力とは、今のギコ君やしぃちゃんのように、
       巧みに操れるようなスキルばかりではない」

从'。`リル 「はあ」

(´<_` ) 「私たちには守秘義務があるから、
       患者さん固有の症状について、君に詳しく語ってあげることはできない。

       けれどね、違うんだ。 これだけは知っていてほしい。
       現代医学の領域で対処しきれない “ 症例 ” である限り、
       超能力とは必ずしも、人類の新たな可能性を示唆する “ 便利な能力 ” ではないんだ。

       従来の超能力者──“ エスパー ” たちの抱えていたそれと同じようにね」

从'、`;リル 「えすぱー……ですか」


 ううむ、どことなくオカルティックな話になってきた。
 だが、実際に超能力という馬鹿げた力の存在することが前提である以上、
 俺に疑問を挟む余地はなかった。



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:21:37.04 ID:V3ExJ/jW0
 
 先生は静かに、淡々と言葉を紡いでゆく。


(´<_` ) 「脳神経系になんらかの異常を発したことで、超常的な力を発現させた者たちがいる。
       歴史の片隅で苦しみ喘ぐ彼らを、世間は “ エスパー ” と呼んだ。
       ……その上で、社会は彼らを畏怖し、忌み、拒絶した。

       世に言う超常現象としては認識されていたものの、
       彼らの超能力が、社会的に有効に活用されたという記録や文献は数少ない」

从'。`リル 「え……」

(´<_` ) 「人の手に負えない不条理な現象、原理不明・原因不詳の災厄──。
       つまりPSI(超能力全般)とは、
       基本的に制御のできない、もしくは制御の非常に難しいシロモノだったのだ」


 先生はそこで一呼吸おき、紅茶に口をつけた。
 ──かちゃり。


(´<_` ) 「 ” ファフロツキーズ現象 ” というものを知っているかな?」


 カップとソーサーが触れ合う音に続き、些か突拍子もなく語られたその言葉。
 俺が頭を振ると、先生はわかりやすく解説してくれた。



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:24:16.06 ID:fARePHHs0
知らんな


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:24:20.88 ID:V3ExJ/jW0

 ファフロツキーズとは、空から様々なものが降り注ぐという、超常現象の一種である。
 近年の国内では、大量のオタマジャクシが降ってきた……なんて例もあったとか。

 それらに纏わる殆どの事例は、竜巻などの自然現象によるものだと考えられているが、
 中には “ テレポーテーション ” が発現したとしか思えないようなケースも、
 僅かながらあるのだという。


(´<_` ) 「数十年前、アメリカのニューメキシコ州での話だ。
       とあるカルト教団が大規模な宗教催事を行ったのだが、
       その際、2キロ離れた集落において、農具・日用品などが忽然と消えうせ、
       そこからさらに10キロほど離れたハイウェイへ、一斉に降り注いだ……という事例がある」


 ある同等の指向を持つ人間だちが集団を形成した際、
 脳波が偶然にリンクすることで、超常的な力がもたらされる場合がある。
 無論この例では、潜在的な能力を発現させた当事者も周りのものも、
 すべて無自覚のままに、テレポートという事象だけが結果として残った。

 しかし、その時観測された夥しい量の電磁波は、
 近くにあった干渉電波望遠鏡群の映像をかき乱すほどだったという。



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:26:47.98 ID:V3ExJ/jW0
 
从゚、゚;リル 「……へえ~……」


 ……とはいえ、俺には気の利いたコメントひとつ考える余裕は無く、そう相槌を打つ他なかった。
 先生の言う事が眉唾だというわけではないが、それにしても “ テレポーテーション ” だなんて。
 真剣な表情も相俟って、余計にシュールな印象だけが残る。

 俺が目をぱちくりさせていると、先生は 「他にも」 と切り出した。


(´<_` ) 「18世紀中ごろ、イタリアのベローナ近郊で、コルネリアという婦人が焼死した。
       不可解なことに、彼女の寝ていたベッドに損傷はなく、 
       婦人の全身だけが焼き尽くされ、灰になった……という、とても痛ましい事件だ」

从'。`リル (あ、なんかそれは聞いたことがあるような)

(´<_` ) 「以後、世界の至るところで、多数の人体発火現象が報告されている。
       発火能力── “ パイロ ・ キネシス ” とは、
       暴走の危険が特に大きく、発現させた者の命を奪う可能性が高い、
       厄介なPSIだ」


 パイロキネシス──主に、不可解な人体発火の原因として取り沙汰される超能力。
 あたり構わず燃焼・誘爆現象を引き起こすものもあれば、
 先生が語った例のように、生体のみを焼き尽くすものなど、様々なバリエーションが存在する。



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:28:55.97 ID:fARePHHs0
ほうほう
支援


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:30:15.82 ID:i1oSkmAz0
へえ
支援


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:31:51.62 ID:V3ExJ/jW0
 
 原理は依然不明だが、
 一説によると、大気中の水分を瞬時に酸素と水素に分解し、起爆するのだとか。
 大気中の水分……。

  水?


从゚、゚リル 「それって、結果的に “ 水を操っている ” ことと同義だったり……」

(´<_` ) 「そういった超能力も観測事例がある。 いわゆる “ ハイドロ ・ キネシス ” 」


 先生の返答は想定していたものとは少々違っていたが、
 結果的にはやはり、“ あの女 ” を強く想起させる事へと繋がった。

 19世紀初頭、フランスに公爵お抱えの名高い奇術師がいた。
 普段から雨に濡れることがなく “ 傘いらず ” という触れ込みで評判になった彼は、
 触れることなく池に波紋を起こしたり、
 流れている水の方向を変えるという、不思議な力を有していたらしい。


(´<_` ) 「彼は “ ハイドロキネシスト ”、
       つまり水などの液体を媒介に、
       テレキネシス(念動力)を発現させる、超能力者だったのだが」

从'。`リル 「……だが?」



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:34:36.18 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「──晩夏のある朝、自宅の庭にて変死しているのが見つかった。
       体中のあらゆる場所から、さまざまな体液を噴出させて、ね」

从'д`i||リル 「うへぁ」


 ……なんとなく、そういうオチがつきそうな予感はしていたが。
 念動力、つまりキネシス系の超能力(PK)が、発現させた者自身へ不幸を招いたケースは、
 過去にいくつも散見されるのだと、先生は続けた。


(´<_` ) 「……とまあ、あえて特徴的な事例を引き合いに出してみたのだけれども、
      これだけだと、きみはただのオカルティックな噂に過ぎないと、
      話の信憑性に疑問を抱くかもしれないね」

从'。`;リル 「と、とんでもない! だって……」

(´<_`; ) 「おっと失礼。
       君もまた、超能力に類する力を持っているんだったっけか。
       それで、その症状とは?」

从'。`リル 「ええと……。
       院長は “ アンチサイ ” って言葉を御存知ですか?」

(´<_` ) 「……えっ」


 俺がその言葉を告げた途端、先生は呆気に取られたかのように、ぽかんと口を開けた。



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:37:35.50 ID:V3ExJ/jW0
 
 簡単に説明すると、先生は眉間に皺を寄せ、ふんふんと頷いた。


(´<_` ) 「……そうだったのか。
       肌に触れている間、その相手はPSIが使えなくなってしまう、と」

从'。`リル 「そうなんですけど、この姿になると、それも消えてしまうみたいで」

(´<_` ) 「日常生活において、何か不都合を感じることがあれば、遠慮なく話してごらん。
       力になれることがあるかも知れない」

从'、`;リル 「ありがとうございます。 とはいえ、今のところ……」


 特にない、と答える以外なかった。
 けれど、それを告げたときの先生の柔和な表情と、その話し振りから察するに、
 おそらくこれは幸せなことなのだろうと思う。

 催眠能力者の男がそうであったように、
 コントロールできない超能力が発現することは、当人を含めて、不幸な結果にしか繋がらない。

 さらに聞くと、嘗ての超能力者 “ エスパー ” におけるそれは、
 多重発症の危険性すら孕む、本当にどうしようもないシロモノだったのだとか。



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:40:21.52 ID:V3ExJ/jW0
 
 テレキネシスによるポルターガイスト現象に悩まされていた女性が、
 多元指向性のあるテレパシー障害を併発したことで、
 発狂し、ひとつの集落を全滅させた事件など……。

 過去、エスパーたちの辿った数奇な運命には、悲劇という単語が絶えず付き纏っていたのだ。
 そう先生は語った。


(´<_` ) 「しかし、だ。
       近年増加傾向にある “ チャネラー ” に関しては、
       その能力が限定的である代わりに、
       本人の意思で制御可能なケースが散見される」


 限定的というのは、従来の超能力者、つまりエスパーほど強い能力ではなく、
 かつ “ ひとつの人格にひとつの能力 ” という制約があることについてだ。
 その代わりに、“ チャネラー ” の中には、自らの超能力をコントロールできる者が多く存在する。

 そこでもやはり、俺の脳裏には “ チャネラー ” を象徴する、ひとりの女の姿が浮かんだ。
 “ エスパー ” のように、危険な能力に自身を殺されることなく、
 いたって器用にそれらを扱いこなす、ハイドロキネシスト・兼・パイロキネシストの女。



39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:42:47.60 ID:V3ExJ/jW0
 
从'。`リル 「それじゃ、“ チャネラー ” たちは、“ エスパー ” に比べて幸運だと言えますね」

(´<_` ) 「とんでもない。
       現代科学で定義できない力がもたらすのは、概ね悲劇ばかりだよ。
       その点だけは、今も昔も変わりない」

从'、`;リル 「……はぅ」

(´<_` ) 「“ 二極化性解離性同一性障害 ” ──これは、突発性の神経症だ。
       チャネルに目覚めてしまった者の大半は、
       “ 精神疾患 ” に加えて “ 超能力障害 ” という、
       二重の苦しみを背負わされた、大いなる災厄の被害者なんだ」


 そして、“ チャネル ” 発症の原因は今もって不明なまま。
 これはおとぎの国の物語ではない。
 現代のこの世界で、現実に起こっていることなんだよ──。

 そう語る先生の横顔は、やはりどこか陰が差して見えた。


(´<_` ) 「超能力については、精神のエネルギーがその規模を左右することが知られている。 
       心因性の要素が大きく働いていることは間違いない」


 トラウマであるとか、はたまた異常心理に近い性質を持った者のほうが、
 より強力かつ厄介な超能力が発現する傾向にある、という、非公式なデータも存在するらしい。



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:45:29.49 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「脳への部分的な負荷が、超能力の謎を紐解く鍵のひとつだと考える学者は多い。
       ……まあ、私は脳科学については専門外であるため、
       これ以上の私見は避けることとしよう」


 先生はそこまで述べると、残っていた紅茶を一気に流し込み、小さく溜め息をついた。

 色々と回り道した気もするが、
 “ 超能力による超常現象に悩まされている ” 人間ではなく、
 “ 超能力を自己の意思で操ることのできる ” 人間が、
 “ チャネラー ” だという認識で、おおよそ間違いはなさそうだ。


ε- 从-、-リル 「ふう……」


 俺も先生に倣い、ゆったりカップをかたむける。
 微かな甘みをともなって、馥郁たるジャスミン・フレーバーが口内をうるおした。


(´<_` ) 「すまない。 不安にさせてしまったかな」

从'。`リル 「あ、いえ」



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:48:19.01 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「……ドクオ君。
      君に “ もう一つの超能力 ” が発現することのないよう、私も祈っておくよ」


 カップを置いて一息つき、垂れた前髪を何気なく払った瞬間、先生はぼそりとそう言った。


从'。`リル 「うーん……大丈夫だと思います。 根拠はないですけど」

(´<_` ) 「ふむ。 しかし、“ チャネル ” が生まれ、アンチサイという超能力が発現した以上、
       もう一つの能力が開花してしまう可能性は、充分すぎるほどある」

从'。`リル 「いえ、さっきも言いましたけど、人格自体は変わってないですし。
      それに……」

(´<_` ) 「それに?」

从゚、゚リル 「あっ」

(´<_` ) 「うん?」



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:51:31.67 ID:V3ExJ/jW0
 
从'、`;リル 「いえ、なんでもないです」


 そこで俺は思わず口を噤んだ。

 ──そうだった。
 自分の症状が “ チャネラー ” たちのそれと違うことはわかったが、
 その原因だと思われるあの変なクスリについて、先生に語ることはできないんだった。

 なぜならば……。
 ここに来る際、“ 箱 ” のことについては話さないよう、ギコから口止めされていたのである。
 意外なことに、ギコ達はこれだけ親身にしてくれる先生に対して、
 肝心な “ 箱 ” に関する情報を、一切伝えていなかったのだという。

 その理由はふたつあった。
 ひとつは、箱の存在を知らせることによって、先生に危害が及ぶような事態を避けるためだ。
 ギコ達は、彼らの両親の亡くなった原因が、 あの箱にあるのではないかと睨んでいる。

 俺、そしてギコ達が所持している、“ 小箱 ”。
 銀色の模様に彩られ、似通った外殻をもつが、その形状は少々異なる。
 俺の箱にはオンナニナルカプセルが、ギコ達のそれにはディスクのようなものが入っていた。



46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:54:34.69 ID:V3ExJ/jW0
 
从-、-;リル 「……」 ズズ…


 紅茶をすすりつつ、俺は自らの体へと視線をかたむけた。
 カップを支える細く白い指。
 薄いシャツをぐい、と押し上げる、まるっこい二つのふくらみ。
 下を向いたことで、長い髪がふたたびしだれ、視界を覆わんとする。

 ……情けないが、起こってしまっているこれは現実の出来事なのだ。
 日本全国探したところで、このような作用をもたらす薬が市販されている筈がない。

 ギコの持つディスクの中身は想像もつかないが、
 それでも、俺のこの姿を見る限り、どこぞの悪党が狙う理由には充分すぎるほどだろう。
 ハイドロキネシスト・クーの語った話の内容で、それはもはや確信に変わったと言ってもいい。


(´<_` ) 「そうそう。 おかわりが欲しければ、遠慮なく言ってくれ。
       茶葉が余って困っているくらいなんだ」


 そしてもうひとつの理由はというと、
 先生の親類──正確には姉にあたる人物が、警察の関係者であるからだ。

 両親の殺害に関する捜査段階で、彼らに何があったのかはわからない。
 だが結局のところ、ギコ達は、警察というものをあまり信用していないようなのだ。
 “ 箱 ” を先生に提示することで、
 証拠物件のひとつとして警察に押収されてしまうことを、ギコ達は危惧している。



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:57:57.41 ID:V3ExJ/jW0
 
 殺人犯との唯一の繋がりである(かもしれない)小箱。
 呆れたことに、少年たちは自ら犯人を捕まえるつもりでいるのだ。
 “ 箱 ” 以外の手がかりなんて、ほぼ無いに等しいというのに。

 正直なところ、浅はかだと思う。  子供の考えだと思う。
 それでも、ギコが真剣な表情で頼み込む姿に、
 俺は “ 箱 ” について口外しないという約束を承諾する他なかった。


从'、`リル 「……どうせ発現するのなら、便利で人畜無害なのがいいです。
      紅茶を美味しく淹れる能力とか」

(´<_` ) 「ははは。 そういうのは、自助努力によって成すべきことだよ。
       ギコ君たちがそうであるとは言わないが、
       彼らのように利便性の高い能力が発現すると、
       人は目的のために時間や労力を割くことを放棄してしまう。

       無論、日常生活が困難になるような能力に比べればマシではあるけどね」

从'。`リル 「ですよねー。
       というか、一歩間違えば相当ヤバいのーりょくですもんね、アレ」

(´<_` ) 「……」



50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:00:28.93 ID:V3ExJ/jW0
 
"从゚、゚リル (ん?)


 ヤバいという言葉に反応したのか、先生は急に真顔になった。
 あれ、やばい?  何か地雷を踏んでしまったかな。


(´<_` ) 「ヤバい能力……というのも、色々存在するが」


 かたときの沈黙を経て、先生は唐突にそう切り出した。


(´<_` ) 「PSIの中でも、特に厄介で、危険な能力がふたつある。
       ひとつはサイコ・キネシス、もうひとつはマインド・コントロールだ」


 超念動能力(サイコキネシス)。
 水や火 ・ 電気などの媒介を必要としない、純然たるテレキネシス。

 それも正確には、離れた位置から対象物へ直接圧迫をかけるもの、
 電波のように、肉眼では見えない波動を飛ばすものの二種類があるのだという。



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:03:14.93 ID:V3ExJ/jW0
 
从'。`リル (見えないチカラ……かぁ)


 それってかなり便利じゃね? なんて呑気な考えを抱いたのも一瞬だった。
 先生の語った過去のケースは、
 やはり他と同じく、超能力という障害の “ 症例 ” にすぎなかった。

 ラップ現象、ポルターガイストと呼ばれる心霊現象(と思われていたもの)の原因は、
 おおかたサイコキネシスの暴走によるものだ。
 とにかく制御の難しい超能力で、感情の昂りによって暴発する危険性を常に孕んでいる。
 発現した者の日常生活が困難になる事例も少なくはないらしい。


(´<_` ) 「私が知る限り、サイコキネシスを自在に扱うことのできる人間は、
       ほとんど存在しない」


 先生はそう言って眉間に皺を寄せる。
 “ できる ” 、“ しない ” ……現在形?


从'、`リル 「コントロールできる患者さんもいらっしゃる、ってことですかね」

(´<_`; ) 「ああ、いや。 そういうわけじゃないんだが、ね」


 自分の口ぶりが 『 過去の事例 』 とは違うと気づいたらしく、先生は少し言いよどんだ。
 小さく咳払いし、先を続ける。



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:05:42.39 ID:V3ExJ/jW0
 
(´<_` ) 「もうひとつの能力、マインド・コントロールについては……まあ、その名の通りだよ。
       他者の精神を掌握し、強制的に屈服させ、意のままに操る。
       まさに悪魔の能力と呼んでも過言ではない」

从゚、゚;リル 「強制的に、ですか」


 ごくり。
 生唾を飲み込む音が予想外に響き、俺は慌ててカップに手を伸ばす。

 同じ精神系(ESP)でも、屋上で出会った催眠能力者のそれとはまったく違う能力。
 自己の意識と同調させるのではなく、
 相手の意識をそっくり乗っ取って、操り人形にしてしまう……。
 そんな恐ろしい超能力が、この世に存在するというのか。


(´<_` ) 「人は、特別な力を手にすれば行使せずにはいられない。
       偶然に身についたそれらは、ときに欲望を具現化し、人を破滅へと導く。
       さらには社会の規律をも歪めうる、不可視の 【 暴力 】 なんだ」


 抗い難き 【 暴力 】 が次々に生み出され、世に氾濫したとき……。
 この社会はどうなってしまうのだろうか?

 先生は嘆息し、テーブル上で両手を組んだ。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:08:19.40 ID:V3ExJ/jW0
 





  『 PSIとは抗い難き天災であり、かつ人災にも転じ得る、悪魔の与えし能力だ 』








57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:10:36.27 ID:V3ExJ/jW0
 
===
==



 明くる日のバイト帰りのこと。
 俺は駅構内の喫煙ルームで、ひとりぼんやりと考えていた。


( 'A`)y-~~ (はぁ……)


 たまにしか吸わない煙草は、
 ほの甘い圧迫感を肺中へ満たすと同時に、霞んだ脳を冴え渡らせる。
 言いようのない倦怠感と引き換えに。

 おそらくだが、先生は超能力というものの存在自体をあまり快く思っていないのだろう。
 それは、自身がPSIを持たない故の嫉妬だとか、そういう俗物的な類のものではない。

 超能力に苦しむ患者を診てきた精神科医としてはもちろんのこと、
 その根底には、一人の人間としての、
 計り知れない、なにか暗い感情が渦巻いているようにすら感じた。



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:13:19.65 ID:V3ExJ/jW0
 
( 'A`)y- (邪推、といえばそうだけど)


 ──たぶん。


( 'A`)y- (先生もまた、超能力が生み出した不幸を、
       身をもって経験した人間の一人なのかも知れない)


 なんとなくだが、そう思った。

 このような体質になってからも、
 俺はきっと “ 超能力 ” という神秘の力に、ある種の羨望を抱いていたのだと思う。

 誰しも夢想したことがあるだろう。
 華麗に地を駆け、念波で仲間と交信し、悪の組織を迎え撃つ正義の味方。
 爆炎をひらりとかわし、念動力を駆使して戦う、見目麗しいサイキック・ヒーロー。

 しかし、現実はもっと、ドロドロに生々しいものだった。
 非力なダメ人間の俺が得た異能の力は、これまた非力で使えないアンチサイ能力だった。
 頑張ったところでぎりぎりサポート役が限度だろう。  見せ場なんてない、永遠の脇役だ。

 さらに言えば、金にならない。
 身を守れるわけでもない。
 日常生活でプラスに作用することがない。



60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:16:16.88 ID:V3ExJ/jW0
 
('A`) (けど、それはきっと幸せなことだったんだ)


 半分ほど残っていたキャスターワンを灰皿に落とし、ガラス張りの隔離室をあとにする。

 超能力というどうしようもない力を得たことで、苦悩し、時には生命さえ失ってしまう者達がいる。
 異能が生み出す現実社会の歪みと、その上に堆く降り積もる、人々の不幸な結末。
 毒にも薬にもならない、チープな “ 能力 ” しか持たない俺には、
 そんなもの、これまで想像だにできなかった。

 催眠能力者の男は、制御できない異能力で、図らずも他人の命を奪ってしまった。
 デパートで遭遇した凶悪犯は、滑らせる能力を悪用し、人々を恐怖の淵へと突き落とした。


『 悪魔の与えし能力だ── 』


 先生の言葉が、落ち着いた音色で蘇る。

 だが、それでも。
 超能力が普通に生きるうえでの障害なのだとしても。
 一歩間違えば破滅を呼び込む災厄の種だとしても。

 最後には、誰かを救う希望であってほしい。

 そんな理想論にしがみ着いていたいという気持ちも、この心に深く根を張っていた。



61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:19:13.97 ID:V3ExJ/jW0
 
 ~ ~ ~

 それからしばらくのち。

 公園へ着いた俺は、珍しいことに、
 ハインさんの正面という特等席でその歌声を堪能していた。


从 -∀从 ~♪

(*'A`) (嗚呼。 しかし今は、この場所にしがみ着いていたい)


 今日はまだ始めたばかりらしく、いつも周りを取り囲んでいる学生一団の姿がなかったためだ。
 立ち止まって彼女の演奏に聞き入る者は、普段に比べると疎らである。
 俺の横では、何回か見かけたことのあるボサボサ頭の男が、首でリズムを取っていた。

 すぐ目の前で、ハインさんは本当に気持ち良さそうに歌っている。
 彼女は今日もアンプを使用していない。
 己の生歌とかき鳴らす音が全て。 頑なにアコギ一本のスタイルを貫いている。


(*'A`) (凄いなあ。 以前より明らかに上達してる……)


 柔らかなハイトーンボイスと抜けのいいコードストローク。
 シンプルな組み合わせだが、織り成されるハーモニーは極上と呼んで差し支えない。
 俺はしばし、包みこむ幸福感に身を預けた。



62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:22:18.23 ID:V3ExJ/jW0
 
从 -∀从 「──♪」 ジャン


 曲が終わると、周りから自然に拍手が沸き起こる。
 今日は時間もあることだし、ハインさんの歌声を思う存分楽しめそうだ。
 彼女の可愛らしい姿をたっぷり目に焼き付けてゆくこととしよう。


从*゚∀从 「聴いてくれてありがとー!
       ええと、じゃあ次は……」


 と、俺がそう考えていた矢先のことだった。


<*ヽ`∀´> 「うい~。 ネーチャン。 アンタ歌手にでもなるニダか?」

从 ゚∀从 「へ? あ、はい」


 どこか見覚えのある風体の男が、
 植え込みの傍に立つハインさんのほうへ、ふらふらと近寄ってきた。



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:24:43.07 ID:UvQ+vMIa0
よく生きてたなニダー


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:24:52.69 ID:V3ExJ/jW0
 
<*ヽ`∀´> 「なかなかかわいい顔してるじゃないニカ。
        気に入ったニダ。 ほれ、こっちにきて酌を取れニダ」

从;゚∀从 「え?」

(;'A`) (ちょ……おいおい)


 おそらく酔っ払っているのだろう、男は馴れ馴れしくハインさんの肩に手をかける。
 彼女がその手を払うように身を引くと、
 男はふんと鼻を鳴らし、赤ら顔をだらしなく緩ませた。


<*ヽ`∀´> 「あーん、大丈夫大丈夫ニダ。 金なら払うニダ。
        歌もちゃんと歌わせてやるから、ヒック、早く来るニダよ」

从;゚⊿从 )) 「ちょ、ちょっと……」


 そう言ってふたたび右手を伸ばし、ハインさんの二の腕をぐいぐい引こうとする。
 ──限界だ。
 さすがにこれ以上の横暴を見過ごすのは、男がすたるってもんだろう。


(;'A`) 「や、やめてください。 彼女イヤがってるじゃ……」



68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:27:23.11 ID:V3ExJ/jW0
 
 俺は二人の間に割って入ると、両手を広げて酔っ払いと対峙した。
 できる限り憮然とした態度を崩さないように、角ばった男の顔を真っ直ぐ睨みつける。
 ……膝が笑っているのは、きっと気のせいだ。 たぶん。


<*ヽ`∀´> 「……」

(;'A`) 「……」 ドキドキ

<*ヽ`∀´> 「ほらネーチャン、お小遣いいらないニカ?
        早くこっちに来いニダ」

从;゚ο从 「やっ……」

Σ(;'A`) 「って、ちょっ」


 男は俺の脇をすり抜けると、またもハインさんのほうへ手を伸ばし、ギターのネックを引っ張った。
 無視かよ。


(;'A`) 「おい、やめろって」

<ヽ`∀´> 「ああん?」



70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:30:44.67 ID:V3ExJ/jW0
 
 俺は男の肩を掴んだ。
 ……酒臭い。
 瞬間的にそう感じたが、顔を顰める暇もなく。


Σ(;゚A゚) 「!?」


 がつっ。
 肩口に鈍い衝撃を受け、俺はその場で大きくよろめいた。

 振り返りざまの一撃だった。
 あろうことか、酔っ払いは左手の酒瓶を、俺の側頭部目掛けて思い切り打ち振るったのだ。
 反射的に右腕を上げたおかげで直撃は回避できたが、


(i||゚A゚)そ 「うげぇっ!?」


 続けて、突き上げるように腹部へ激痛が走る。
 目の前に火花が散った。
 俺のどてっ腹に、男の靴先が深くめり込んでいた。



71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:33:44.73 ID:V3ExJ/jW0
 
从;゚□从 「ドクオ君!」

<*ヽ`∀´> 「ホルホルホルホル。 だらしない奴ニダ」


 蛙の潰されるような情けない声をあげ、為すすべもなく膝をつく。
 周囲が俄かにざわめいた。
 鳩尾をおさえ、激しく咳き込みながら、俺は男の顔を見上げた。


(i||'A゚)゙ (──あっ!)


 この傲慢な面構え。
 そして、殴られる瞬間に見た威圧的な表情。

 ──思い出した。
 こいつ、以前にファミレスでしぃちゃんをさらおうとした暴漢じゃないか!


<*ヽ`д´> 「何見てるニダ? あ? 文句あるニダか!?」


 男は酒瓶を掲げて周囲に凄みを利かせる。
 成り行きを見守っていた数人の聴衆が、早足で四散した。



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:36:16.31 ID:V3ExJ/jW0
 
<*ヽ`∀´> 「さあ、あっちへ行くニダ。 そこの茂みでもいいニダよ」

从#゚⊿从 「やめてください。 人を呼びますよ!」

<*ヽ` 3´> 「フヒヒ! 怒った顔もいいニダね。 チューしてやろうニカ?」

从#゚Д从 「離せったら!」


 ハインさんはしなだれかかる男を突き飛ばし、その顔をキッと睨みつけた。
 彼女はされるがままというタイプじゃない。 もともと怒らせると怖い人なのだ。


<ヽ`∀´> 「いてっ……チッ」


 しかし、今回は少々相手が悪かったといえる。
 奴はその辺の酔っ払いとは違う。
 必要とあらば他人に刃物を向けることも躊躇わない、下賎なならず者である。



77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:39:05.57 ID:V3ExJ/jW0
 
<#ヽ`д´> 「人がヒック、下手に出てりゃあ、調子に乗りやがって」


 酔っ払いのこめかみに青筋が浮かんだ。
 嫌な予感が全身を駆け巡る。
 俺は力を振り絞り、咄嗟にハインさんの前へと立ち塞がった。


从;゚∀从 「あ……」

(;゚A゚) 「!!」

<#ヽ`д´> 「フザけんじゃぁ! ねえニダぁ!」


 直後、暴漢はこちらに向かって酒瓶を振りかぶっていた。
 ──マズい。
 直撃する!


(i||゚A゚⊂ヽ 「うわぁぁあっ!?」


 ばちん。

 乾いた炸裂音が、鼓膜を揺らした。



79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:41:40.70 ID:V3ExJ/jW0
 
(i||>A<⊂ヽ 「……」

(;'A`⊂ヽ 「え?」


 ……だが。
 響いた音の大きさに反して、俺の体に想像どおりの衝撃が届くことはなく。

 呆気に取られる我々の横で、凶器は回転しながら宙を舞っていた。
 暴漢の手から離れた四号瓶は、そのままからんと落ち、土の上に転がる。


<;ヽ`д´> 「な、ああ? 何をしたニダ?」


 酒瓶が、中空で……。
 なにかに、弾かれた?


『 ハ──ッはっはっはッ! 』

(;'A`) 「!?」


 その時だった。
 突如として響いた狂笑に、酔っ払いの暴漢を含め、三人の視線がそちらへ集中した。



81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:44:24.01 ID:V3ExJ/jW0
 
从;゚∀从 「!」

Σ(;'A`) 「あいつは……!」


 声の主は、ハインさんのストリートライブでよく見かける、ボサボサ頭の男だった。
 だが、普段とまったく様子が違う。
 というより、いつにも増して異様な様相なのだとも言い換えられるが──。

 ともかく。
 男は細長い黒塗りの長方形を掲げ、ひとり高笑いに興じていた。


                     はッ!
【+  】ゞ゚) 「はッ!                          はァ───ッ!!」
                             はッ!
              はッ!


(;'A`) (な、なんだアレ)


 デコPC? いや、“ 痛PC ” とでも呼ぶべきなのだろうか。

 漆黒の外面に十字をあしらった、まるで棺桶を模したかのようなノート型PC。
 男はそれを顔の横に抱えたまま、背を反り、体を揺らしていたのである。
 大仰な笑い声のリズムに合わせるかのように、キータッチの音が規則的に響いてくる。



82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:45:22.46 ID:p/7jPS030
何奴!


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:46:10.29 ID:i3SRqNwh0
何者!?


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:47:26.89 ID:V3ExJ/jW0
 
 やがて哄笑がおさまると、男は酔っ払いのほうへ指を向け、芝居がかった口調で言った。


【+  】ゞ゚)σ 「そこな下郎よッ!
           チッチッチッ……いかんなァ!」

<;ヽ`д´> 「あ?」

【+  】ゞ゚)ノシ 「ノン、ノン!  レディに手を上げるとは無作法極まりないッ!
          まったくなっとらん!  見てられんなッ!
          デートのお誘いくらい、もう少しジェントゥマンライクにできないものなのかねッ?」


 男は仰々しくジェスチャーを交えながら、居丈高に相手を挑発する。
 対する暴漢の顔はみるみる紅潮し、歯軋りとともに体を震わせはじめた。
 ……なんだかよくわからないが、こうかはばつぐんのようだ。


(;'A`) (……えっ!?)


 が、そこで俺はふと違和に気づく。



85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:47:32.64 ID:oxTkx+TbP
なんだ不審者か


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:48:19.34 ID:i3SRqNwh0
なんだ変態か


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:50:23.09 ID:cRcalE7n0
なんだ変質者か


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:50:17.36 ID:V3ExJ/jW0
 
【+  】ゞ゚)゙σ 「イ────っ ツ!  メェェェェエエエエエぃラコゥッ!!」


 男がモバイルを抱えているのは右手、そして酔っ払いを指差しているのは、左手。
 つまり、両手ともにキーボードに触れていない、はず。

 なのに、何故。
 タイピング音は相変わらずカタカタと、途切れることなく辺りに響いているのだ。


<#ヽ`Д´> 「ふざけんじゃねぇぇえニダッ!
        ばッ、ばかにしくさってぇッ!!」


 わなわな震えていた暴漢は、頭から湯気をたて、懐中より光り物を抜いた。
 ○○○○に刃物というのか、
 デパートで遭遇した大男といい、何故こうも悪党というものは……。

 と、そんな悠長なことを考えている場合ではない。
 暴漢はナイフを構えると、ボサボサ頭のほうに向かって真っ直ぐに駆け寄ってゆく。


从;゚∀从 「!!」

(;゚A゚) 「あ、危ない!!」



89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:53:10.84 ID:V3ExJ/jW0
 
【+  】ゞ゚)


 カタカタ、カタン。
 ひっきりなしに続いていたタイピング音が、そこでぴたりと止まる。


【+  】ゝ`) 「── “ 半径3メートルと、38センチ ” 」


 続けて、男は溜め息混じりにそう呟いた。


三<#ヽ`∀´>つ━l二フ 「ニダァァアア!」


【+  】_ゝ`) 「覚えておきな、オッサン。
         腕を伸ばして4倍と、さらにひとつまみの愛情を加えた絶対撃退領域。
         半径338センチ。  それが、おれの “ ゾーン ” だ」


 バタフライナイフのぎらついたブレードが、そして生命の危機が、すぐそこに差し迫っている。
 このような状況下にあってなお、彼は平然と台詞を紡いでゆく。



93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:58:31.23 ID:KxcvSiKz0
厨2なのにかっこいい…


94 :>>92訂正:2010/05/26(水) 23:59:38.81 ID:V3ExJ/jW0
 
           テ  リ  ト  リ  ィ
  】´_ゝ`) 「我が3メートル38センチに敵意を持って踏み込む者がいたならば──。
        おれはその円形ステージにおける、
        唯一無二の、絶対的超主役級(アルティメットヒーロー)」


 それから男はノートPCを閉じ、半身を捩った。
 まるで駆け寄る暴漢を押しのけるように、
 左手を前方へいっぱいに伸ばしてポーズを決める。


       そ
(( <#ヽ`Д´>つ━l二フ )) 「な、あ!?」


(;'A`) 「!?」


 その瞬間だった。
 今にも刀身を繰り出さんとしていた暴漢の体が、
 見えない何かに遮られたかのように、その場でぴたりと静止した。



『 そ し て 』



96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:00:52.54 ID:xmQuKoya0
 
 ( ´_ゞ`) 「あんたは───」
+  】⊂


          モ   ブ  
( ゙゚"_ゞ゚)p 「 格下の脇役 だ 」


 PCを左手に持ち替えると、男は空いた右手を力強く撃ち振るう。


Σ<`Д(;; #> 「ごはッ!!」

(;'A`) (なっ……!?)


 同時に、暴漢の顔が左方向へと傾いだ。
 ──それは、つまり。

 “ 見えないストレートが ” “ 暴漢の頬へ炸裂した ” ということ。



98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:03:22.48 ID:xmQuKoya0
 
( ´_ゝ`) 「出番しゅーりょー。  そろそろ退場の時間です──」

  _, 、_
( ´_ゞ`) 「よっと!!」


 続けざま、男は右腕をぐるぐる回して反動をつける。
 それから。

 後方へ引いた拳を、アッパーカットの要領で、勢いよく “ 打ち上げた ” 。


<#;;)Д > 「に、ニダぁあ───ッ!!」


 どすっ。
 厚い筋肉を殴打する音が、確かにこの耳に届いた。

 悲鳴とともに、暴漢の体がくの字に折れ曲がる。
 酔っ払いはそのまま数メートルほど吹っ飛び、
 ベンチ脇の植え込み目掛け、頭から突っ込んでいったのだった。



100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:06:21.83 ID:xmQuKoya0
 
(;゚A゚) 「な、こ、これは……」

(* ´_ゝ`) 「ん~。 なかなか派手ェ~に飛んでくれたな~」


 俺の眼前、右手をコキコキ鳴らしつつ頷いている、一人の “ チャネラー ” 。

 事態が収束しても、俺は金縛りにあったようにその場から動けなかった。
 指一本すら触れることなく、暴漢を撃退したボサボサ頭の男。
 いま目にした現象をどうにかして理解するべく、脳をフル回転させる。


( ゚A゚) (さ、さ)

( ゚A゚) ( 【 サイコキネシス 】──!?)


 ようやくその言葉が浮かんだのは、
 PCをキャリングケースに仕舞った男が、髪をかき上げた瞬間だった。





104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:09:15.92 ID:xmQuKoya0
 
( ´,_ゝ`)


 この横顔、どこかで見覚えが──。
 いや、違う。
 昨日会ったばかりじゃないか。
 俺、なんで今まで気づかなかったんだろう。

 ボサボサ髪の中から露わになった男の相貌は、あの流石先生とうり二つだったのだ。

 
从;゚∀从 「あ、あの……えっと……」


 ハインさんはしきりに両目を瞬き、口をぱくぱくさせている。
 無理もないだろう。
 あまりにも出し抜けに、 “ 超能力 ” なんていう、
 常軌を逸した力の行使される瞬間を目撃してしまったのだから。


从;゚∀从 「え? え? 触れて……なかった、よね?」

( ´_ゝ`) 「すごいでしょ、おれの気合い?
       あいつ相当ビビったんじゃない? 思わず吹っ飛んでいっちゃったよwww」

从;゚∀从そ 「あ、気合……なの?」

(* ´_ゝ`) 「いやーびっくりwww 普段からエアーパンチの練習しててよかったぜwwwww」



105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:11:39.29 ID:xmQuKoya0
 
 目を白黒させる彼女に対して、男はあっけらかんとそう言い放った。
 白々しいといえばそうだが、
 “ チャネル ” について無知な一般人には、こういう対応がベストなのかも知れない。


从 ゚∀从 「あ、あの、本当にありがとう」

( ´_ゝ`) 「いいってことよ……歌姫を守るのは、ナイトとして当然のつちょ」

(; ´_ゝ`) 「噛んだ……」

从 ^∀从 「あは、あはははっ。
       オサムくん、いつも通りでなんか安心したよっ!」


 親しそうにハインさんへ話しかける男と、照れ笑いで返す彼女。
 俺はその姿を交互に見やりながら、ひとりやきもきした想いに捕われていた。


(;'A`) (な、なんなんだよ一体……)


 礼を述べるタイミングを失ってしまったというのもそうだが、
 そんな事より、彼女が話している相手は、あの流石先生そっくりなのだ。
 垢抜けない格好を差し引いても、充分イケメンの部類に入る。



108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:14:22.80 ID:xmQuKoya0
 
(;'A`) (くっ、くそう、どこかで割って入らねば!)


 そうやってぽつねんと立ちすくんでいた俺が、
 脳内で “ 二人のキャッキャウフフを精一杯邪魔しよう大作戦 ” を
 打ち立てていたときのことだった。


「おまわりさん! こっちです!」

('A`) 「ん?」


 公園の噴水側から慌しい声が響く。
 振り返ると、一人の女性が、制服姿の警官を引き連れて走ってくる姿が見えた。


从 ゚∀从 「あ……」

( ´_ゝ`) 「おっと」


 ぃよし! ナイスタイミング!
 俺は心の中でガッツポーズした。
 ……なんのことはない、ハインさんたちの会話がそこで途切れたからである。



110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:16:45.50 ID:xmQuKoya0
 
 向かってきた警官は、訝しげな目つきで俺達の姿を眺め回した。
 そして開口一番、


「怪しい男と酔っ払いが喧嘩しているとの通報を受けて来たのですが……」


从 ゚∀从 ピクッ

('A`) ピクッ


 “ 怪しい男 ” というフレーズを聞いた途端、
 ハインさんや俺を含めて、その場にいる全員の視線が一箇所に集中する。


( ´_ゝ`) 「……」

(; ´_ゝ`) 「え? おれ?」



111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:19:16.28 ID:xmQuKoya0
 
「……よし。 ちょっとそこで話を聞かせてもらおうか」


(  _ゝ ) チーン


 ボサボサ頭を掻き毟る彼の姿を見とめると、途端に警官の目の色が変わった。
 どうやら無事に(?)怪しい男として認知されたようである。

 まあ、そりゃそうだ。
 流石先生にそっくりな男はにわかに身じろぎすると、ハインさんのほうへ向き直って言った。


(; ´_ゝ`)σ 「ハインちゃん!」

Σ从 ゚∀从 「え? は、はいっ」

( ´_ゝ`)σ 「演奏、明日も聴きにくるよん! 待っててちょんまげ!」



113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:21:38.60 ID:xmQuKoya0
 
 そうして。


( ´,_ゝ`)b 「……捕まらなかったらな」


 ぐっと親指を立てて “ いい笑顔 ” をつくると、


Σ(;'A`) 「あっ」 Σ从;゚∀从           三三三┏( ´_ゝ`)┛


 公園の入り口に向かい、一目散にダッシュしていった。


「こっこら、待ちなさい!  待てえっ!」


 警官が慌ててその背を追う。
 通報者の女性は、ハインさんの隣でぽかんと口を開けていた。



115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:24:15.62 ID:xmQuKoya0
 
 目をひん剥いて、必死に追いかける一人の警官。
 キャリングケースを脇に抱え、髪を振り乱しながら逃げてゆく男……。


( 'A`) チーン

从 ゚∀从 ヒュー


 残された俺達は、呆然とその後姿を見守るばかりだった。



117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:25:20.99 ID:aSDD88E+0
逃げやがった


118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:26:30.63 ID:xmQuKoya0
 
                                三 (; ´_ゝ`)

 ──と、まあ。
 これが彼、流石オサムとの初めての出会い──ではなかったが、


 少なくとも、
 “ 棺桶死 ” オサムという、ひとりの念動能力者。

 そして、


(;'A`) 「は、ハインさ……」

从*゚ o从


 ──ひょっとしたら。


Σ(;゚A゚)


 近い将来、
 恋のライバルになるかも知れない男との、初遭遇だった。



121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:28:20.88 ID:xmQuKoya0
 


      ┌ hannelers.                    ●
      └                           第
                                  一
                                  九
                                  話



       【 孤高の超念動能力者(サイコキネシスト) 】



      │
      │
      .V
      .S.
      .ニダー②                     (続く)


 


122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:28:30.13 ID:Hn1asrqA0
ドクオ!頑張れ!


123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:29:00.82 ID:BnmCUED8P
おおー・・・乙


126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:33:42.14 ID:9zWi2NyU0
乙乙!


127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:34:32.71 ID:AidBmvCHO
乙!


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 01:08:44.58 ID:DybNjwLM0
乙。


129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 01:13:31.50 ID:xGUxhGtH0

惚れた



前の話/インデックスページ/次の話

■この記事へのコメント

    ■コメントの投稿

    管理者にだけ表示を許可する

     

    検索フォーム

    お知らせ

    管理人へメール

    トップバナー画像をうざったい感じにしてみました。

    カレンダー

    04 | 2017/05 | 06
    - 1 2 3 4 5 6
    7 8 9 10 11 12 13
    14 15 16 17 18 19 20
    21 22 23 24 25 26 27
    28 29 30 31 - - -

    Team 2ch @ BOINC

    待ち続けている人がいる。
    だから僕らは回し続ける。
    ~まだ見ぬ誰かの笑顔のために~

    banner-88.gif
    CPUの時間
    ちょっとだけ
    貸してください
    (BOINC Team 2ch Wiki)

    ブーン系“短編”小説更新状況

      プロフィール

      kuru

      Author:kuru
      特に何も無いよ。

      カウンター

      トータルアクセス:
      ユニークアクセス:
      閲覧者数:



      クリックで救える命がある。
      上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。