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◆(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」~助け屋GU~のようです 十四日目 暁

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1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:04:21.26 ID:05DdPa2d0


どこかの世界の、いつかの時間。
弱虫ですぐ泣いて、ほんの少しだけ変わっていて、……何よりとても優しい男の子がいました。
彼の周りには人も人じゃないモノも沢山いて、みんな彼と同じく“ほんの少しだけ”普通ではありませんでした。

…でも。きっとそういうものなのでしょう。
人には言えない事情や取り返せない過去なんて、誰でも一つぐらいは持っているものです。
変わることも、進むことも、強くなることも、中々できないもので。


――それでも今日も、きっと明日も明後日も、彼等は助け合って生きていきます。
「世界中の誰だって――ひとりじゃないから」
……これは、そんな物語。


(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!!」~助け屋グロウアップ~のようです



十四日目 暁
『別れを告げるということ ――三月の昼下がり―― 』




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:07:18.25 ID:05DdPa2d0
どこかの世界のいつかの時間だった。
森の中。かなり身長のある男が、背に負った女を気遣いながら走っていた。
目の前がよく見えなかった。一重に立ち込める霧の所為だ。普通の人間なら迷ってしまうだろう――

 ――普通の人間、ならば。
 その身体中泥だらけの男には、“人間としての”名前がなかった。


「……もう、いいよ」

額に冷や汗を浮かべながら、女が言った。今にも消えてしまいそうな声だった。
寝巻きにカーディガンを羽織っただけの服装だ。元より丈夫な方ではない。少々――限界が近かった。
それは彼女を背負って走る男もまた、同じだった。

「なに言ってるん、だよ……」

苦笑いしつつ、男は返す。
……言いながらも振り返ることはない。疲労を気取られまいとしていた。

「お前がいないと、俺は……」

「……ふふっ。いつもはそんなこと言ってくれないのに。面倒臭がりの、出不精のくせに、こんな時だけ……」

力なく、儚く、女は笑う。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:10:15.28 ID:05DdPa2d0
二人は訳あっての逃走の最中だった。そして、その逃走は同時に――闘争でもあった。
「愛の逃避行」などという生温い、生易しいものでは決してない。追いつかれれば、捕まればどうなるか分からない――そんな。
先述のロマンチックな響きのある言葉より、「絶体絶命」の方がまだ的を射た表現になってしまう状況。

「四面楚歌ね……」

出自は中国である男がそう呟いた――瞬間。
何処からともなく、深い霧の中より、歌が流れてきた。

「……? 英語、じゃない……」

かと言って中国語なわけでもない。日本語でもないし、そもそもこちら側の言語ではないようだった。
深く、染み入るような。この鬱蒼と広がる森に似合っている詩歌。
そして歌は途切れ、今度は声が聞こえてきた。

「――お察しの通り英語じゃない。古ノルド語だよ」

音源を辿ってみてば――前方。木の太い枝に人が座っていた。
美しい金髪を持つ、碧眼の美女。御伽噺に出てくる妖精の如き印象を与える女だ。
加えて言えば実際に、

「私は妖精だよ。人間のニセモノの――妖精」

素性を尋ねられる前に、自らそう名乗った。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:13:20.23 ID:05DdPa2d0


さて、と妖精は言った。
北欧の山々が似合いそうな彼女だが、存外言葉も流暢だ。

「たとえニセモノでも妖精だから――願いを一つぐらいは、叶えてあげよう。簡単なのだけ、ね……」

正直な話では、気まぐれで。
もっと踏み込むと人生勉強――彼女は作家なのだが――芸の肥し、というやつだった。

“簡単なのだけ”ということで、つまりは、二人を逃がす力はないらしい。あらゆる分野で空間移動は至難の業なのだ。
男は女に意見を求めたが、「……もう決まってるんでしょ?」と一蹴されてしまった。
確かに、一つだけ。やっておかなくてはならないことがある。


男はしばらく頭を垂れていたものの覚悟を決めた。
今までのように他人任せで、面倒がってはいられない。これは自分の問題だ。
些か虚勢を張った、強い語調で彼は言う。

「――伝言を、お願いしたいんだ」


――妖精はそれを聞き届けた。
三月も終わりの頃である。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:16:17.21 ID:05DdPa2d0
……………


――ギコール・ハニャーンという人間は、結構モテる。
放ってはおけない感じ……母性本能をくすぐられる姿かたち性格をしているからだ。
その、ある意味で『カリスマ』と言って差し支えない才能は、主に、

(#゚;;-゚)「ご主人様、次にスーパーに行きましょう。今日は卵が安いのです」

o川*>ー<)o「んーんっ!次は洋服店がいいなっ。ギコ君はいっつも、安物の服ばっか着てるし」

イ从 ーノi、「いや……もう帰ろう……。我は。疲れた……」

(,,;Д;)「ギコーン……。ちょっとは意見まとめる努力してよ……」

まぁ、有体に言っての“人以外”に発揮されている。
右手を握る猫又(半妖)に引っ張られ、左腕に纏わりつく銀狐に甘えられ、背中の鎌鼬に文句を言われる。
ハーレム状態に見えなくもないが……ギコ本人的には、もう、「姉妹ばっかりの家の長男」みたいな気分である。

(,,うД;)「誰か連れてくれば良かった……」

「助け屋」の男性陣。
八咫烏やら狼男やらジンやら夜行やら首なし騎士やらに、まるでダチョウ倶楽部のようなやり取りで買い物を押し付けられた経緯があるのだが……
……ここでは割愛しておこう。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:19:15.66 ID:05DdPa2d0
o川*゚ー゚)o「……んー、でも、結局でぃちゃんは、当主様のことが好きなんでしょ?」

(;#// -/)「なっ――!それを言えば、いづなさんは人妻なのです!!」

イ从゚ ー゚ノi、「知らぬ。昔の話だ。……どこぞの銀狐は。初対面の高校生を誘惑してたらしいがな」

o川*^ー^)o「サービスだよ、サービス」

(# ;;-)「……処女の癖に」ボソッ

o川#^ー^)っ「んんー? なんか言ったのは、この口かなぁ? ファーストキスもまだな、この口かなぁ?」

(;#>;;-<)「ううぅぅ……、キスぐらいしたことあるのです!当主様と!!…………人工呼吸でしたけど」

イ从゚ ー゚ノi、「それは入らぬだろうに」



(,,;Д;)「……そして、なんでわざわざ揉めそうな話題に持っていくの……」

“女”が周囲に三人いて――“姦しい”。
「両手に花」と書いて――「嫐」。悩ましく、騒がしい。
甲骨文字から始まる、中国四千年の漢字の文化の偉大さを実体験で知るギコだった。



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:22:19.27 ID:05DdPa2d0


と、その――瞬間。

(;゚Д゚)「――!!」

剣呑ながらも和やかだった雰囲気が、一変した。
いや、雰囲気も周囲も変わってはいなかった。正しく言えば、変わったのはギコの内面。
稀代の英雄、決戦兵器を内包している――中身である。湧き上がるような不安。嫌な予感がしたのだ。

(;-Д-)「(ううん、これは……)」


 ――まるで大事なアルバムの一冊を紛失してしまったような。
 ――まるで身体の一部を抉り取られたかのような、心の一部を削り取られたかのような。


o川*゚ー゚)o「……どうしたの?」

(; Д)「家に――違う、つーさんの診療所……あそこに行こう」

心配するキューに、頭を抑えつつ返す。
体調不良のためではなかった。第六感以上に正確な――予言に等しい啓示に準じた行動だ。



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:25:17.26 ID:05DdPa2d0
……………


(ノリ*゚ -゚ノリゝ「――つーさんって、」

(*-∀-)「……なに?」

(ノリ*^ -^ノリゝ「僕ちんより、全然、胸小さいですよねっ。きゃはは」

直後、異端医・高岡翼が飲んでいたコーヒーで咳き込んだのは、「全然」という単語の誤用の所為では勿論ない。
素直そうな風貌は童顔。短髪と快活な調子。うっかりすると、中学生にも見えてしまいそうな彼女は――実際は二十代も折り返しを過ぎている。
中学生に見える、ということは、若々しいということであるし――哀朱の言う、そういう意味でもある。

(;*-∀-)「(最近の高校生は――結構ある)」

(ノリ*^ -^ノリゝ「基本的に、男の子って胸の大きい人に弱いですよねー。うちのなんかもそうだしっ」

所々ハネた特徴的な髪型は彼女なりのこだわりがあるのだろう。……単に寝癖という可能性もなくはないが。
陽炎稲妻水の花。幽屋哀朱は、薄い化粧からも分かるよう、そういうところを気にしない。
デフォルトで勝負、という点においては――二人の女性は共通していた。

(*-∀-)「(でも、“うちのなんか”って口ぶりを見るに……アイスちゃん、末者君のこと好きなのかな?)」

カップを傾け、由なし事を思い、自身の身体的コンプレックスを考えないようにする高岡翼。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:28:22.51 ID:05DdPa2d0
ところで、と哀朱が話を変える。
サイズ云々は彼女が女性の知り合いにあった時に話題にする定型なので、特に意味はないのだ。

(ノリ*^ -^ノリゝ「つーさんはどうして異端医に?」

(*゚∀゚)「どうして? なに、学校で進路でも聞かれた?」

(ノリ ^ -゚ノリゝ「そーゆーわけじゃないんですけど、なんとなくですっ。きゃはっ」

『異端医』は、特殊な職業だ。
正規な免許も組合もあるにはある召喚師よりは――それもかなり場面が限定される際物だが――少なくともマイナーだ。
一般的に言うと闇医者になってしまう。もっともつーは医師免許を持っているが、それは“人間の”であり、“人以外”のではない。

(ノリ ^ -^ノリゝ「妖怪治すのに免許はないし……。そんな、言っちゃあアレですけど妙な職業……」

(*-∀-)「超能力者も診るけどね」

というか、何でも診る。
本来、彼女は著名な機関で職につけるような――実姉には及ばずとも、かなり優秀な人物だった。

(*-∀-)「(……まあ、あの人は生態学者みたいなもんだったけどさ)」

それでも何でも診たことには変わりがない。
絶対絶無の“とある科学者”の弟子の姉。間接的ではあるが、つーも“あの天才”の弟子になる。


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:31:16.95 ID:05DdPa2d0
(*゚∀゚)「けど、キッカケって言うなら――」

そこまで言って。
彼女は、デスクの上にあるノートパソコンの向こう側に手を伸ばした。
逡巡しながらも古びた写真立てを手に取り、振り返る。

(*-∀-)「――この写真かな……って、アレ?」


(ノリ*^ -^ノリゝ「うわー!スク水がある!!僕ちん、これ大好きなんだよねー」


(*゚∀゚)「…………」

振り返ったが――既に、興味を失くされていた。控えめに言ってもスゲェ失礼な高校生である。
これもいつものことなので、つーは嘆息しつつデスクに向き直る。
席から見える窓の外。とある泣き虫な召喚師もどきが、仲間に付き添われて玄関に向かうところだった。


(;*゚∀゚)「本当に来たし……凄いですね」

高岡翼と幽屋哀朱と――もう一人。
先ほどから黙ったままだが、この部屋にはもう一人、いたのだ。
つーが話しかけたのは、診察用のベッドに上品に座る彼女。最後の一人だった。


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:34:17.15 ID:05DdPa2d0
……………


(*゚∀゚)「……よく来たね。お茶でも出したいところだけど、」

(,,゚Д゚)「――そんな場合じゃない、でしょ?」

一分ほど後。ごくたまの奇跡的な勘を発動させたギコに、つーは首肯して返す。
明るさが半減し、深刻さが三乗された室内。
哀朱は入れ違いに出て行った。彼女の役目は、今パチパチと手を打っている客人を連れてくるまでで終わっている。


ζ(-、-*ζ「……やるね、ギコさん。アイスちゃんから聞いてた通り」

――細められた碧眼がギコを一瞥する。
美しい金髪を持った、妖精のような女性。スタイルの良い、平たく言っての美人だ。
ここにギコを“呼んだ”のは他でもない彼女、――デレだった。

ζ(-、-*ζ「私は伝言を頼まれただけ」

(,,゚Д゚)「伝言……?」

ζ(゚ー゚*ζ「――そう。あなたのお仲間から、ね」



82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:37:17.97 ID:05DdPa2d0
(#゚;;-゚)「お仲間、というと……」

ζ(゚ー゚*ζ「――まぁ。それを切る、って伝言だったんだけど」

“それを切る”とは――縁を切る、つまり、仲間ではなくなるということ。
召喚師のスキル的に直せば『契約の破棄』となる。本来は主人からやるものだが、ギコに限っては例外だっだのだ。
黙考。黙り込むギコに、デレは続ける。

ζ(-、-*ζ「初対面で言うのも悪いけど、明らかに似合ってない真面目な口調でね、」


 ――今までありがとう。
 俺は、ギコール・ハニャーンという人間の召喚獣であり、「助け屋」の仲間であったことを誇りに思う。
 一身上の都合で旅に出る。探さないでくれると嬉しい。


(,,-Д-)「……他には?」

ζ(゚ー゚*ζ「『よく面倒くさがったりしてて、ごめん』だって」

(,,゚Д゚)「…………」

その言伝は――『蛟』という龍からの。
ノーネという、酷い億劫屋からの、一方的な別れの挨拶だった。


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:40:18.33 ID:05DdPa2d0
o川*-3-)o「ジコチューだな~。お別れぐらい、ちゃんと言いにくればいいのにっ」

(,, Д)「…………違う」

ブーたれたように呟いたキューにボソリと――しかし、はっきりと反論した。
不思議そうな顔をした鎌鼬。怪訝そうな猫又。
俯いたままのギコは、「違う」と、もう一度言った。

(,,゚Д゚)「つーさん。さっき、俺が『そんな場合じゃない』って言った時……頷いていましたよね?」

(*-∀-)「……さぁ、どうだったかな」

はぐらかす異端医。彼女は“あえて分かるように”誤魔化していた。
買い物の途中で感じた悪寒。デレが呼んだから、ではない。


あれは――サインだ。
仲間が危機の時に起こる、フィードバック現象だ。
呪力線で繋がっている召喚師と召喚獣は、半ば一心同体。未熟であろうが、それは同じである。


(,,-Д-)「……デレさん。ノーネちゃんは、どんな様子でしたか?」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:43:22.71 ID:05DdPa2d0
あらかじめ事情を説明しつーを制しておき、自身も蛟から口止めされていたデレ。
白磁のような腕につけた時計を見ながら、言う。一言。「それを聞いてどうするの?」と。
ギコは滅多にない――強い口調で言い返した。


(,,゚Д゚)「――それを決めるのは俺です。俺は召喚師である前に、――彼の仲間ですから」


今度は――デレが黙る番だった。
二分弱の沈黙。呼吸の音だけが聞こえる室内。誰も言葉を発しなかった。

ζ(-、-*ζ「その生き方、損するよ」

(,,゚Д゚)「いくら損をしようが、値千金の友情の方が大事です」

「恥ずかしげもなくよく言うよ」と苦笑する。やれやれ、と言った具合に首を振った。
そして、十四時間前、と前置きし――彼女は告げる。

ζ(゚ー゚*ζ「背中に衰弱した女の子を背負ってて、本人は――鏑矢が二本刺さってて、血だらけだった」

――最後まで言い終わる前に、乱暴にドアが閉まる音が響いた。
デレがそちらを見た時には、もう――「助け屋」のメンバーは、全員、すっかりいなくなった後だった。
「場所も聞かずにどうするんだろ」とデレは再び苦笑し、つーもやれやれと再び嘆息しつつ、携帯を取り出した。


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:46:19.96 ID:05DdPa2d0
……………


( `ハ´)「――よく来て下さいましたな、御三人」

――深く、暗く、広がる森を見ながら男は言った。
VIP州と隣の州との境、山岳地帯の奥地。どことなく中華の流れを汲むことが分かる屋敷の客室だった。
着流しの壮年の男。口と顎にたくましい髭を蓄えた男が、鎮座する三人に言った。

( `ハ´)「それとも、二人と一人、と言った方がよろしいか?」

権力者であり貴族。この屋敷――ひいては、“この組織”の主である男は「シナー」と呼ばれている。
その組織に呼ばれた二人の方、見た目は普通の高校生の男が答える。
……いや。まともな“普通の高校生”は二振りも鉈を携えていたりはしないだろうが、本体に限る話である。

ミ*-∀-彡「別に、僕は……ねぇ?」

いつもよりは幾分か大人しい寝癖。青年はふー、「津出諷」と言う名を持つ『運営』の構成員。
彼が話題を振った相手は向かい側に座る、これまた青年である。
ただし。こちらは年齢は二十前後。幼さが残りながらも、精悍な顔つきをした男だった。

< - _・->「他意がある物言いですね。なにか、ご不満でも?」

ミ*^∀^彡「まさか。『FOX』の切り込み隊長とご一緒できて光栄です」


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:49:20.09 ID:05DdPa2d0
そうですか、とそつなく返した彼。ピルグリム=ケパロス。昔ながらの愛称は「コイヌ」だった。
彼も、牧師服の如き改造戦闘服と――その脇に置いた二メートル強の大剣さえなければ、普通の青年だと言えるかもしれない。
剣というよりは、鎚。鞘も何もない鉄の塊を横目で見ながら、ふーの隣の少女が口を開く。

〈:メ゚-゚〉「……“それ”は、槍だと思っていましたが」

< - _・->「本来は槍と剣です。今日は剣の方だけ――ということです」

〈:メ゚-゚〉「失礼しました」

口まで覆う黒いマフラーで傷が隠されている少女。茶色っぽい髪は、やはり後ろ手にくくられていた。
窮北相仕――という、ふーの部下だった。

( `ハ´)「大層ご立派な討伐用の武器、です。さて。『運営』のお二人は――」

ミ*-∀-彡「護衛、兼、傍観です。おそらく大丈夫でしょうが、ここまで攻め込まれることがあれば、喜んで戦いましょう」

( `ハ´)「ほっほっ。津出蓮機関長からのサービス……ですかな?」

ミ*゚∀゚彡「本来は業務連絡だったんですけどね。……問題が収まっていないようなので、僭越ながら」

事前に渡されていた資料を思い出しながら、言った。
化け物退治。連れさらわれた女性を取り戻し、誘拐犯を始末する。単純な話だった。



89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:52:19.54 ID:05DdPa2d0
< ゚ _・゚>「追撃済、ということですが」

( `ハ´)「ええ。逃げられ――否。隠れられてしまいましたがね」

それは、ちょうど半日ほど前のことだった。
以前からうろついていた獣が、小間使いの女を攫ったのが二日ほど前。

ミ*-∀-彡「実害はないので放っておいたのがマズかったですか。報告を受けた時点で来るべきでした」

詫びる秘匿機関の構成員は――その当時、生徒会長としての接待を行っていたので、対応が遅れたのだ。
“遅れさせた”とも、言えるかもしれないが。わざわざ、そんなことを仄めかせる必要はなかった。
ダメ押しで、コイヌが訊いた。

< ゚ _・゚>「その化け物は、殺してしまっても、構わないということで?」

( `ハ´)「無論ですよ」

シナーは、まるで国家の転覆を謀るかのような調子で、答えた。
落ち着き払った。
けれど、何処か緊張した様子で、答えた。

( `ハ´)「あの化け物――蛟を始末して下さい」

それはちょうど――ギコが、診療所を出た頃だったという。


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:55:18.23 ID:05DdPa2d0



十四日目 暁



類は友を呼ぶ。
お人好しの近くには、お人好しが集まってくる。

 主人に心配をかけまいとした蛟。
 伝言を頼まれた妖精もどき。
 そして、その気遣いをあっさり無視した仲間達。

類は友を呼ぶ。
同属は同属を呼ぶのだ。
最後の伏せ札は――さて、如何様か?



―― できることならば、互いに幸せに終わる物語を ――






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