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◆(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!」~助け屋GU~のようです 十四日目 午前

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91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 20:58:22.97 ID:05DdPa2d0




――頼むから、黙って愛させてくれ。



(,,゚Д゚)「もしもし○○?今すぐ来て!!」~助け屋グロウアップ~のようです



十四日目 午前
『息絶えるということ ――深く暗い森の中で―― 』





93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:01:23.46 ID:05DdPa2d0
――やはりそこは、深い森の中だった。
川辺。背刺さっていた矢を抜くと、血が噴き出した。血は――紅かった。


(;ノAヽ)「いっつ……。……逃避行ならぬ、決死行だ……」

自嘲するように男――人に擬態した蛟は笑う。そして、それは決して笑い事ではないということは、明白だ。
自分の身体も、背負っている者の身体も。だんだん冷たくなっていく。
前者は血の流し過ぎ。後者は衰弱だ。

(;ノAヽ)「この気持ち。あの主人に伝えてあげれば良かった、かな……」

いや、元は俺が伝えてもらったんだったか――と。再び、ノーネは笑う。
なくなっていく体力も。削ぎ取られていく気力も。この気持ちの前では大した問題ではなかった。


i!iiリ; ヮノル「……ねぇ、」

木にもたれるようにして座っていた女が、口を開く。
冷や汗が流れ出ている。唇は青白く、顔面も色を失っているが――それでも。
明るく――その表情は程遠かったが――明るく、彼女は呟く。



94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:04:23.77 ID:05DdPa2d0


i!iiリ; ヮノル「ひとりじゃ、ないから……」

搾り出すような声だった。
ノーネも限界が近いが――彼女はより酷い。

 でも。
 それでも、言葉を続ける。

i!iiリ; ヮノル「ひとりなんかじゃ、もう、ないから――」

男はぎゅっと女を抱き締める。
そんなことをしても病状は回復しない。分かっていた。分かって、いた。
儚く、力なく笑った。彼女は――言った。


i!iiリ;^ ヮ^ノル「――死ぬのも……わるくないね」


分かっていた。分かっていた。分かっていた。
無駄だということも。いつかは追いつかれることも、全部。
そして――儚く笑う彼女を、彼女達を、自分では救えないということも。



95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:07:22.95 ID:05DdPa2d0
……………


特務機関の独立第零遊撃部隊にはレモナという少女がいて、
彼女は、基本的に帝都最強であり『FOX』の切り札であるモララーという隻眼の男の下で使用されている。
その、最強をいいように使う最強は現在、海外出張中。この場合は、

|゚ノ ^∀^)「――トソンさんに命令権が移るんだけど、あの人も色々あってね」

“色々”――具体的に言うなら、身体を人間に戻していた。
改造人間であるので血液から臓器まで人工の物が多い。骨格などイシルディンだ。武装に至ってはヒイロアカネである。
とても深刻な“戦うしか能のない”彼女が、何故わざわざ不利な人間に戻ろうと調整されているかと言えば。

(#゚;;-゚)「妊娠、ですか?」

|゚ノ*^∀^)「そー。育休だってさ」

育児休暇、というか。……実際は「母体と子供の保護の為」という意味合いが強かったりする。
特異点能力者の帝都最強と、オーバーテクノロジーと遺伝子操作に因った決戦兵器。
将来有望過ぎる子供なのは間違いがない。

――当然。
これから事を起こそう、としている輩にはたまったものではない。



96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:10:19.76 ID:05DdPa2d0
|゚ノ ^∀^)「だから、僕は暇なの♪」

――そうレモナが言ったのは、診療所から出てたった一時間後のこと。
週三日程度の割合で不定期に休業になる情報屋は、幸運なことに、今日は昼間から営業していた。

分かったことは、三つだった。
一つ、蛟のノーネは現在追われているということ。二つ、それは誘拐と暴行の罪だということ。
最後に――その“狩り”の為に、特務機関の人間が出張っているということ。


( ^Д^)「……どの部隊ですか?」

問いには答えず、ブロックのチョコレートを一つ一つ積み上げていく。
誰からも当然のこととして、粗雑と思われがちなレモナだが、丁寧で繊細な動作もできないことはなかった。

(,,-Д-)「レモナちゃ――」

|゚ノ*^∀^)「――僕、お兄ちゃんのこと大好きだよ?」

それと同じだった。いくら子供でも、いくら化物でも、いくら最強でも。
それぐらいは。
それぐらいのことは、――分かっているのだ。

|゚ノ*^∀^)「けど、……こっちにも通さなきゃ駄目な流儀があるんだよ、お兄ちゃん♪」


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:13:23.20 ID:05DdPa2d0
(,,-Д-)「……そっか。ありがと」

|゚ノ ^∀^)「無理強いしないんだね」

二十個ほど積み上げた塔。一番上の一つを口に放り込みながら、不思議そうに言う。
冴え冴えとした強烈な魅力も――どこか。
寂しそうで、曖昧だ。

|゚ノ ^∀^)「お兄ちゃんがお願いするなら、僕は味方になる」

o川;゚ー゚)o「えっ……」

|゚ノ -∀-)「お兄ちゃんの仲間の為に、FOXの全部隊と戦ったっていいんだよ?」

おそらく、それでもレモナは勝つだろう。圧倒的に理不尽な暴力を以て、向かい来る者全てを薙ぎ払うはずだ。
――だから。
だから、その提案は――仲間の為に一つの組織を潰す、ということだった。

 何の罪もない人間を。
 自分達の為に――犠牲にするということだった。


|゚ノ*^∀^)「……どぉする?」


110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:16:24.77 ID:05DdPa2d0
(,, Д)「――いや、いいよ。もう」

ギコは、特に迷うこともなく返答する。
それは「たとえ大切な仲間の為であっても、罪のない人を犠牲にはできない」ということでは――“ない”。

(,, Д)「大体、向こうが誰かなんて調べる必要なんてなかったんだよ」

|゚ノ ^∀^)「そうかなぁ。敵を知れば百戦ナントカ~って言葉もあるよ?」


 ――そんなレベルで。
 ギコール・ハニャーンは生きては、いない。


(,,゚Д゚)「“敵”じゃない。俺は、話し合いに行くんだから。相手が誰かなんてことは――知らなくてもいいんだ」


八咫烏は嘆息した。猫又は微笑んだ。銀狐は頷き、鎌鼬は肩を竦める。
狼男は苦笑いをしながら席を立ち、ジンは拍手を送り、件は半ば呆れて、首のない騎士は抜いたままだった剣を納めた。
そして。

爪*^ー^)「……くぁ。やっぱり、ギコはそうだったね!」

仁を司る麒麟は、当たり前だと言わんばかりに欠伸を漏らした。


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:19:20.05 ID:05DdPa2d0


|゚ノ ^∀^)「……ギコールお兄ちゃんは、違うね。僕のお兄様とも、お兄ちゃんとも、違うね」

トン、と茶色い塔を押す。心地良い音が鳴りながら崩れ落ちる。
あっさりと。何気無い動作で、あっさりと。

|゚ノ ^∀^)「到底無理な計画のことってさ……『バベルの塔』って言ったりするらしいよ?」

いつぞやに伝え聞いた話だ。シチュエーションもほとんど同じだった。
けれど、ギコの返答は全く違った。

(,,゚Д゚)「一回崩れたぐらいで諦めたりしないよ。崩れたのなら、拾って、やり直せばいいだけなんだからさ」

そう、事も無げに言って、三個ほど摘みバーを出て行く。
目を擦りながら奥から出てきたペニサスが、「代金は?」と訊ねたが……どうにも聞こえなかったようだ。
別にそこまで真剣でもなかったらしく、特に引き止めることもしなかった。

('ー`*川「崩れたらやり直せばいい、か……」

|゚ノ*^∀^)「そもそも崩れてもないのにねっ♪」

もう助けるつもりはない二人は笑った。
……その理由が愛想を尽かしたのではないということは、言うまでもないことである。


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:22:20.66 ID:05DdPa2d0
……………


(;ノAヽ)「はぁ……はぁ……」

――分不相応なことをしたな。
重い足取り。川に沿って進みながら、男のカタチをした蛟は思う。

i!iiリ; ヮノル「…………」

(;ノAヽ)「くそっ……」

背に負っている少女は、もう、喋る気力もないようだ。ただ黙って、目を閉じていた。
彼女がこんな状態になった何割かは、明らかに自分の責任だった。


耳を澄まして追っ手の様子を探ってみる。
どうやら、今のところまだ追いつかれていないらしい。“まだ”追いつかれてはいない。

(;ノAヽ)「追いつかれるまでもなく、何処へも行けないんだけど……」

一方的に縁を切った主人には頼りたくなかった。
きっと無償で助けてくれるだろう――けれど、だからこそ、頼るわけにはいかない。



117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:25:19.99 ID:05DdPa2d0
思えば狭い交友関係だ、と自嘲するように笑う。
百年と少し。人間の倍ほど生きていて、できた知り合いが「助け屋」だけだった。

ギコと出会うまでは「寂しい」という感情すら――知らなかった。
そして、他の想いも、きっと彼等のおかげだ。


(;ノAヽ)「まったく、余計なことを……」

いつだったか――おそらくはギコが高校生だった頃だろう――に、彼にも知らない『感情』があることを知った。
ノーネから見る、様々な意味で“人間らしさ”の師であるギコール・ハニャーンが持ちえないものがあることを、新鮮に感じたことを覚えている。

しかも、それは殺意や悪意などではなかった。
純真無垢で、甘酸っぱいような。その心地良い感情を――彼は知らないと言っていた。

その理由を聡い八咫烏ならこう推測するだろう。
「多分、前世の記憶ってやつが……基本人格の方が制約をかけてるんでしょ」と、そんな風に。
もっとも。十二月のあの場に居合わせなかった蛟には知る由もないことだが。


(;ノAヽ)「……それでも、さ。ご主人様よ……」

知る由もないノーネは、ちょっとした優越感を覚えた。
もし生きて帰ることができたなら――きっとありえないだろうが、もしもできたなら――あの主人に教えてやろうと思った。


118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:28:20.71 ID:05DdPa2d0


 見ているだけで息が詰まったり、
 その人と話している時が楽しくて仕方なかったり、
 近くにいてくれないと、心にぽっかりと穴が開いたみたいで、

 ずっと一緒にいたくて、離れたくなくて、
 弱くなってしまったと錯覚し、実際に脆くなってて、
 どうにかして自分の物にしたい、心を犯され、溶かされる――。




                                                  ――もういっそ、
                                                       殺してしまいたくなる。



(;ノ∀ヽ)「はは……。ご主人様、よ……。この感情はな、悪くないんだぞ……」

それは、死をも恐れぬ絶対の禁忌だ。
今すぐ息絶えようとも悔いはない。
しいて心残りがあるとすれば――愛しい人達を守れなかったということだけ。そして、それが最大の後悔だった。


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:31:20.85 ID:05DdPa2d0


――と、その時。


「――歴史が繰り返すっていうのは、人間が進化していない証拠だけど」

(;ノAヽ)「!!」

「私達だって、そうそう、進化したりしないわ」

抑揚のあまりない、しかし、そうでありながら心地良く響く声。
静か。虚無的。さもすれば現実その他を小馬鹿にしているような印象を与える調子でもあった。

「私達だって、大して変わらず愚かだもの」

その“私達”という単語に自分が含まれているということはノーネにも分かった。
私達――つまり、人外。人ならざるモノ。


しかし、見た目で言うならば、その女は人間の姿をしていた。
少し茶色めの髪。目鼻の整った穏やかな顔立ち。純白のワンピース。年齢を悟らせない若々しい立ち姿。

見た目だけで言えば、彼女は変り種の歌手でしかなかった。


123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:34:21.05 ID:05DdPa2d0
――だが。
人ならざるモノである――蛟は直感的に理解した。

(;ノAヽ)「(こいつは……ヤバイ)」

とんでもない奴が出てきた。
それがノーネの彼女に対する第一印象だった。

 頭が回らない。
 呼吸が止まりそうだ。
 指一本すら、――動かせない。


ノーネは、自分自身のことを「適当で感受性の薄い奴」と考えていた。長所だと言い張りはしないが、それ故に冷静に行動できると思っていた。
事実つい先ほどまでは、命を懸けた逃走でも動揺せずに最善手を取ってきたつもりだ。

なのに。

(;ノAヽ)「(なんだよ、これ……)」

恐怖。これが恐怖というなら、今までの人生の平和さと言ったら。
こんなもの埒外だ。こんなものと平然と会話をしていた(らしい)主人は、頭がどうにかなってるんじゃないかと思う。
猫又にしろジンにしろ麒麟にしろ、誰でもいいから気づけよ、と声に出さず毒づいた。



125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:37:21.61 ID:05DdPa2d0
まあ――麒麟に関してだけ言えば。
ノーネが直感的に恐怖を感じ取れたように、本能的に分かっていたのかもしれない。

(;ノAヽ)「アンタは……、なんだ……?」

「“何者か”という問いは、この場合あまり意味がないわ。“何を行いに来たか”という質問ととっていいのかしら」

(;ノAヽ)「……そうだ。なにをやってる……?」

質問には答えず、女は黙って顔面の半分を覆っていた包帯を解いた。
白く濁った片目が露わになる。やがて、隠されていなかった方の目も白く白く濁った。
両目がちゃんと機能していることを確認すると、トレードマークの包帯を巻き直す。

「何を行う為に来たか、」

よく味わうかのように反芻。
そして、目を細め、親しみを込めた視線を向けた。


「――助けに来たに決まっているわ。遠くへ行ってしまった友達の代わりにね」


……発言の意味は分からなかった。
ただ。ノーネにも、彼女が味方であることは、十二分に分かった。


124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:36:12.76 ID:naya7TTM0
蛟←これ何て読むんだ?
ずっと蚊だと思ってた


129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:39:18.93 ID:PvaKycyx0
>>124
ミズーチ?(・∀・ )


130 :「蛟」は「みずち」です。中国系の竜の一種。:2010/06/05(土) 21:40:21.53 ID:05DdPa2d0
……………


< - _・->「…………」

――深く暗い森の中だった。
聖職者のような服装――その実科学の限界を体現する戦闘服――に身を包んだ青年が、歩いていた。
がりがり、と音が鳴り続けている。巨大な剣を引き摺っている所為だ。

思えば遠くへ来たものだ、とコイヌは思う。
勿論それは屋敷からの距離ではなく、時の流れ的な意味だ。


特務機関に所属し、かつ『EXAMドライヴ』を装備する人間は大抵、“どうしようもない”人間であることが多い。
自身の右手。篭手のような機械的な装甲が装着されている。
それは、死をも恐れぬ人間が化物に対抗する為に生み出した武器であり、――使用者の命を削って爆発的な戦闘力を発揮する禁忌だった。

< - _・->「(――いつ、死ぬんだろう)」

切り込み隊長のポジションの彼は、よく、そんなことを考える。
いつ死ぬか分からぬ職業。加えてFOX最強の男がそうであるように、勝ち続けても後遺症が残る。
自分で選んだ道なので文句はないが、それでも、中々に救われない話だった。



131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:41:36.93 ID:naya7TTM0
>>129
ググってきた

確かに蚊って名前の龍なんて悲しすぎるよな……
スレ汚しすまんかった


141 :自分は神道・修験における水神は「ミツチ」と書いて区別します。:2010/06/05(土) 21:43:29.48 ID:05DdPa2d0
その伴侶である、コイヌの尊敬する上司は育児休暇らしいが、そのまま引退すべきだとコイヌは思う。
あの人は既に“死に体”だからだ。

< ゚ _・゚>「(神経が千切れかけてる。少なくとも、日常生活で車椅子を使わないと駄目なぐらいには)」

上司――都村トソン。最近はやたらと睡眠が多くなった。
肘掛椅子に座って、黙って目を閉じていることが多い。まるで老婆のように。

< - _・->「(あの人――もう、目が見えないんだ。見えない時の方が、多いんだ)」

聞くに、原因不明の副作用は着々と伝播している。
やがては脚もまったく動かなくなるだろう。目も完全に失明するだろう。全ては時間の問題。


 改めて言うまでもないことだが。
 その光景は、ピルグリム=ケパロスの未来の姿でもある。


< - _・->「……っと、いけないいけない。仕事中だった」

気にしても仕方ないことだ、と開き直り歩を進める。
コイヌはFOXの誇る猟犬でありながら、割と諦めの良い男だった。



144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:46:21.82 ID:05DdPa2d0
暗い森を抜け、僅かに開けた場所。さらさらと小川が流れる音が聞こえる。
実にのどかな光景だ。
血生臭い追撃戦が行われている場所には、到底、思えない。


しいて例外を挙げるなら――

从//ー'从「こんにちは、騎士さん」

――その、流れる水の“真上に”ワンピース姿の女がいたことぐらいである。


<;゚ _・゚>「…………っ!」

咄嗟に身構える。
当然のことながら、人間は水の上に立つことなどできない。
彼が信仰する宗教の経典には、そういう話もあった気もするが……それも、紛れもない『奇蹟』なのだ。

と、言うか。
“水の上に立つ”ぐらいのことはこの場合問題ではなかった。

<;゚ _・゚>「渡辺、綾……っ!!」

問題は、目の前の彼女が“知り合いである”ということだった。


145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:49:25.36 ID:05DdPa2d0
……数年前。彼がまだ、今ほどの実力をつけていない頃。
目の前の女に――正しくは彼女の友達に――こっ酷い、痛手を負わされたことがあるのだ。

平たく言うと「昔負けた相手」だった。

从//ー'从「……あら、コイヌちゃん。挨拶は、なしかしら?」

<#゚ _・゚>「お前なんかに誰が挨拶などするかッ!」

从//ー^从「粋がっちゃって。前はクーちゃんに一頻りボロボロにされて、泣いちゃってたのに」

柔和な笑みを浮かべつつ、ヨーロッパ式のお辞儀・カテーシーをした。
それがまた妙に決まっていて癪に障る。優雅さだけなら、どこぞの王族の末裔と言われても信じてしまいそうである。
しかも、コイヌが大剣を構えているのに全く自分のペースを崩さない。大物なのか、天然なのか。

<#゚ _・゚>「一体、何しに来た?」

从//ー^从「“なにをしにいらっしゃったのですか”、でしょ?」

<;- _・゚> ビリッ

間延びした口調。発言を訂正されただけなのに――全身が粟立った。
言葉の重みが、違い過ぎる。


149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:52:23.20 ID:05DdPa2d0
<;- _・->「容赦はしませんよ。渡辺、……さん」

纏わりつく恐怖を振り払うように切っ先を上げる。
無論、その二メートル強の大剣はただの鉄の塊ではない。相性なら、最高だ。

从//ー'从「容赦? それは強者がするものよ。ちゃんと生きたままトソンちゃんの所へ返してあげるから、簡単に死なないでね?」

<#- _・->「そうやって、いつもいつも馬鹿にして……!俺だって前のままじゃない……」

歯軋りしつつ、捻り出した言葉。
しかし、人殺しの決意を前にしても。渡辺は、少し茶色い髪をなびかせただけだった。

从//ー'从「貴方は変われないわよ。誰も、変わることなんてできやしないの。少なくともそう簡単には、ね……」

<#゚ _・゚>「うるさいっ!!」

从//ー从「そういう私も……」


“もし変われていたなら”って思わないこともないわ。
……その一言はおそらく、敵対者である少年に向けたものではなかったのだろう。
元より、渡辺はそういう人間ではない。ここに来たのも代わりに過ぎない。遠くへ行ってしまった友人との約束を守りに来たに過ぎないのだ。


150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:55:24.27 ID:05DdPa2d0
FOXの兵士は動揺をひた隠し、装甲を展開する。

< - _・->「『S型EXAMドライヴ』起動……」

――単調な音声。それを合図に身体が、思考速度が、魔力が、限界以上に増強される。
これを以て彼は『人間』から『兵器』へと成り下がる。国家を脅かす化物を殺す為だけの兵器に、成り下がった。
それは、神への冒涜だ。黙って十字を切った心の内は如何様なのだろうか。

対し、

从//ー'从「1649年。遥か昔の祖先の弔い合戦とさせて貰うわ――」

渡辺の瞳が、白く染まる。
敵対していたはずの赤い竜と白い竜の混血。その末裔であることを考慮すれば、なるほど上品な雰囲気も納得がいくものだろう。
神道の巫女のように“宿している”のではない。彼女それ自体が神であり、――“竜”であった。


从//ー'从「ああ、最初の質問に答えておくわね」

彼女は何の感慨もないように言う。
それが当然なのだということを声に出さず、けれど声高に主張しながら。

从//ー'从「――私は渡辺綾よ。それ以外に理由はないわ」


153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 21:58:24.24 ID:05DdPa2d0




<#゚ _・゚>「役はハルム、背負うは正義! 第一突撃部隊副隊長、帝国国家緊急権を行使し突貫します!!」

軽々と剣を持ち上げ、ゆらりと構え直す。
体重を前に傾け、雄叫びを上げながら、人を超えた速度で突撃する。

从//ー'从『――ハイル』

たった一言。されど、一言。
それだけで準備は終わっていた。白磁の如き細腕が、ドクンと“蠢いた”。



 ――そして。
 白熱し白濁し白狂した。一陣の風が吹き抜ける。

 曖昧な距離の中間地点で、『竜殺し』と『竜王の末裔』は――――激突する。





158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/05(土) 22:01:24.61 ID:05DdPa2d0



十四日目 午前



竜殺しと竜王の末裔の闘争。
それとほぼ同時に窮北相仕は目標を補足していた。
攻めるか、待つか。彼女の下した決断は……




―― できることならば、互いに幸せに終わる物語を ――






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