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◆  _  ジョルジュは取り戻すようです <最終話(前)>

前の話/インデックスページ/次の話

1 : ◆BXpnga8YvJwe :2010/06/26(土) 22:52:29.81 ID:GhPrma0I0
4月某日 駅のホーム
俺「いやー飲んだ飲んだw徹夜明けで飲み会は効くはwwwwwwwwwww」
俺「さーて終電だしここで乗り換えて・・・あれ電車まだ来てn」グシャ

俺「ちょwwwww痛すぎワロタwwww血出たwww歯ww欠けたwwwwwwwwww」
オサーン「おーいホームの下隠れろ! 早く!」プワーン
俺「あれ?w原稿入ってるUSBメモリwwwあったw回収おkwwwww」

IP「ワッショイwwwwwワッショイwwwww」
俺「こわっw高っwwwwwwwてめーら落とすなよw!絶対落とすなよ!wwwwww」

数分後 駅の便所
俺「あごの肉がwビローンwwwうはwもどらねえwww血がwwwアゴが生理wwwwこれがほんとのケツアゴwww」
駅員「いやーあと2分遅かったら轢かれてましたねw救急車よんだから乗ってねw」
俺(ショタホモ変態小説が遺稿とかww死ぬるwwwでも救急車初めてwwちょっと嬉しいwwww)

その二日後
俺「ウイルス性腸炎ktkrwww2時間おきにトイレwwwうはw腸炎ダイエットwこれはww流行るwwwwww」
俺「つか全身打撲痛えw腹痛えwwwwwwトイレまで這っていくとかマジ重傷wwwwwwwwwww」
俺「だれか助けてwwwwwwwwwwwwマジでwwwwwwwwwwwwwwwwwwww死んじゃうwwwwwww」

まとめさん くるくる川 ゚ -゚) http://kurukurucool.blog85.fc2.com/
自作品置き場 http://xcyv9xdvhq.sakura.ne.jp/l03_back/

さらに数日後
俺「脳神経外科でアゴの抜糸wwwwwてめぇwwwビビらせんなバーローwwwwwww」
脳外科「いやーキレイに切れてよかったですね、これきれいに治りますよwなんかあったら来てねww」
俺「もう来ねえよざけんなバカwwwww死ねwwwつかアゴ微妙にうまく動かねえwwwww」

最終回(前)



2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 22:54:23.80 ID:GhPrma0I0

             ,. -ー─-- 、___
            ,,( ,        ̄`ー、
           ;'""ノ';{  iー       ヽ
          {  (e 人  |' ̄ ̄/`ー!  |
           ー-'"| !  |    |  /!  |___ ,、
             _! ||  }   ー─|  | / ヽ、
            ''''ー'"{  |       |  /  /`ー-`
              _ | ./       ヽ__ /
             三`'/

     というようなこともあり、投下が遅れましたごめん

      あと長くなったので二回に分けて投下します
        今日が前編、後編は明日の夜投下
     なので今日は閲覧注意じゃないんです、ごめんね


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:02:23.23 ID:GhPrma0I0
<最終話(前)>

                      - 1 -

厚く毛足の長いカーペットに舗装された階段は、革の靴底から音を奪う。
磨かれた冷たい金属の手すりに歪んで写る己の横顔を見ながら、黒い
スーツの男が歩を進める。
  _
( ゚∀゚)「……」

だらりと下げた右腕を庇い、それでも違和感のないよう意識しながら、
ジョルジュは二階に続く階段を上る。
  _
( ゚∀゚)「二階……廊下の反対側、社長の自室の隣、か」

しぃではない、もう一方のメイド。
高岡が彼に告げた部屋を目指し、慎重に歩を進めていた。


――しぃを取り戻す。
   その為にジョルジュは、陽動と社員の扮装でもってギコ社長の屋敷に
   侵入していた。

   彼を手助けしたのは、しぃと同じ立場にあるメイド、高岡だ。

   彼は、高岡がどんな思いで彼の依頼に応えたか、その真意を知らない。
   だが高岡は彼の頼みを受け、ジョルジュを屋敷に招き入れた。

   屋敷の周囲を巡回する黒服に扮し、彼はしぃの救出に向けてその
   一歩を踏み出した――


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:03:13.31 ID:qj1r0VdwO
そりゃまた随分と壮絶な


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:03:47.37 ID:GhPrma0I0
  _
( ゚∀゚)「……よっこらせ、と」

最後の一段に足を掛け、身体を引き上げる。
進路に首を巡らせると、同じように絨毯を敷かれた廊下が一直線に伸びて
いるのが見えた。

左側の壁には、裏庭に面した窓が並んでいる。木枠の大きな窓から、午後の
日光が差し込む。反対側にはいくつかのドア。中ほどからは壁はなく、代わり
に金属の手摺になっている。

廊下の端からは、手摺の向こうは見えない。そこは吹き抜けになっている。
階下、すなわち一階のホールを見渡すことができる作りになっており、そして
階段で一階と繋がっている。

廊下の幅はさほど広くはなく、窓側の端を歩いていても、ホールから完全に身を
隠すことはできないだろう。

すなわち。
もしもまだホールに残っている者がいて、そしてその人物が二階のジョルジュに
目を留めれば、彼の作戦は失敗となる、ということを意味する。
  _
( ゚∀゚)「たく、面倒臭え作りにしやがって……見つかったらどうしてくれんだよ」

口の中で悪態を吐く。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:03:48.91 ID:f5Uo/Ccx0
なんという壮絶な前書き……
お大事に支援


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:06:02.51 ID:GhPrma0I0
裏口からの侵入は、正解だった。
邸内に見張りの姿はなく、既に侵入されているとはまだ気付かれていない筈と
彼は判断する。他に手段がなく、それが狙いとはいえ、幸運だった。
  _
( ゚∀゚)「ま、他に手はなかったしな。後は、吹き抜けをやり過すだけだな」

一度息を吐き、吸う。

できることはただ一つしかない。背筋を伸ばし、いかにも不審者然としないよう
堂々と歩き、吹き抜けを通り過ぎることだけだ。それでも、ホールに彼の顔を
知っている者……ドクオか、ブーンがいた場合はどうなるかは分からない。

幸運に頼らざるを得ない策は、策として不完全だ。
だが、限られた時間で用意できる「もの」にも限界があり、従ってどこかで妥協
せざるを得ない。

左手で、右肩をさする。

不安要素は、多い。
だが、やるしかなかった。
  _
( ゚∀゚)「行くか」

覚悟を決め、ジョルジュは普段よりもむしろ大股に踏み出した。
  _
(; ゚∀゚)「……」

視界が歩行に合わせて上下に揺れる。
その右端に映る手摺、その先の明るい、開けた空間が大きくなる。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:08:02.30 ID:GhPrma0I0

一歩、また一歩。

そこにあるかもしれない危険に、近づく。

心臓の鼓動が大きく感じる。
首筋から背中を詰めたい汗が伝い、恐怖に近い毛穴が開くような緊張を伝える。

ここまで来て、引き返すつもりはない。
もしも発見された場合どのような目に遭わされるか、想像していない訳でもない。

だが、それ以上に。



――た、す、け、て



高岡とギコに責められたしぃが発した言葉。
それが、原動力となる。
  _
( ゚∀゚)(お前は確かに、俺を助けてくれたんだ。昔の俺を許してくれて、そして)

ならば。
その依頼に応えない理由は、どこにもなかった。
  _
( ゚∀゚)(……依頼、か。確かにそうだよな。確かに、お前は、たすけて、ってそう言った)


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:08:34.06 ID:BY8xs2FP0
また懐かしいのが来たなwwww

遂に完結か!うれしいのぉ


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:10:37.04 ID:GhPrma0I0
  _
( ゚∀゚)(それでも……)

声を伴わない呟きが漏れる。
  _
( -∀-)「俺さ、お前の顔……もう一度、見たいんだよ」

その呟きに、他ならぬ彼自身が力を与えられる。
後押しされるように、足が一歩、二歩と踏み出す。



――そして。
   廊下を行く彼の上半身が、手摺越しにホールの空気に晒された。


  _
(; ゚∀゚)「……」

階下の様子は、不用意に伺えない。
ただ、さり気なく、そこに何かを確認するとも取れないよう、一瞬、目を向ける
ことができただけだった。
  _
(;-∀-)「……」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:11:55.17 ID:Z8vOuSMuO
待ってたよ
支援


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:12:43.48 ID:IHdgCZOw0
大丈夫?支援


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:12:51.48 ID:GhPrma0I0
ホールの中央にうずくまり震える、運送会社の制服を身に着けた男。
あの様子では、何かしらの暴力を加えられたことも考えられる。

その脇に潰れて落ちているのは、彼自身が陽動のために送り付けた荷物だ。
あの様子では、いささか不評だったらしい。

そして、彼に身体の側面を向け、ホールに立つ二人の男。
二人は、ドクオでもブーンでもない。彼が始めて見る男達のようだった。

ひとまずは安堵する。



――だが、不意に。



その内の片方が首を巡らせ、一階から彼の姿を認め……そして、指差した。
  _
(;-∀-)「っ!」



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:14:53.32 ID:GhPrma0I0



――時間は、数分遡る。



ブーンがホールを飛び出し、程なくしてドクオが無言で去った。
彼ら四人が気付かぬうちに高岡は姿を消している。

残された兄弟は邸内の見回りをするでもなく、配達員を横目に見ながら
他愛のない会話を続けていた。
兄者は弟者と会話しながらも、再び取り出した携帯電話を操作している。

不意に、何かに思い当たった様子で声を上げた。

( ´_ゝ`)「……なあ、弟者」

(´<_` )「どうした? 兄者」

携帯電話を掲げ、そのディスプレイを指し示した。
弟者はそれを覗き込む。

そのブラウザの画面には、画像を読み込み中であることを示すアイコンが一杯に
敷き詰められ、そのままの状態で停止していた。

( ´_ゝ`)「携帯が急に反応しなくなったぞ。何だ、これは?」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:14:57.87 ID:qz4AZgi7O
大変だったんだな……頑張れ支援


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:16:37.56 ID:GhPrma0I0
(´<_` )「……」

兄者から携帯電話を手渡された弟者はその画面を見つめ、何度か終話ボタンを
押し込む。何の反応も返ってこないことを確かめ、首を振った。

(´<_` )「……兄者。こいつは携帯用のブラクラだ。
      一体、何のサイトを見ていたんだ」

( ´_ゝ`)「OK、ブラクラゲット」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「……あー……まあ、色々な。
      言っておくが、職務放棄じゃないぞ? 情報収集だ、情報収集」

落ち着き払って反論するが、片時たりとも携帯電話から目を離していない者の言葉
ではない。弟者は手をひらひらと振り、返す。

(´<_` )「分かった、分かった。
      その私立探偵とやらの情報がネットに落ちてるとは思えんが。
      携帯でまでブラクラ拾うとは、流石だな兄者――お」

言い差し、兄者に顔を向けた弟者。

その視線の先――兄者の頭上――に、彼らと同じスーツを着た人物の姿が映った。



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:18:52.04 ID:GhPrma0I0
(´<_` )「なんだ、俺らの他にも見回りがいるじゃないか。
      良かったな、兄者。思う存分携帯いじりができるぞ」

彼は手を挙げ、その人物を指で指し示して兄者に告げる。兄者も首を巡らせ、二階を
行くその男を見た。

( ´_ゝ`)「おお。本当だ。
      だがな、俺のは携帯いじりじゃない。情報収集だぞ」

(´<_` )「分かってる。
      ……うるさい奴らはいないし、意地にならなくてもいいのにな、全く」

強弁する兄を、やれやれ、と言いたげな様子で見遣り、弟者は会場の人物におざなりに
手を振った。その人物も、一拍遅れておずおずと右手を差し上げ、応える。

( ´_ゝ`)「まあ、いいじゃないか。あいつらに任せておけば、俺たちに出番はないさ。
      外も巡回してる。いちいち命がけで、あんなガキ一匹取り戻しになんか来るか?」

もはや階上を見ることすらせず、兄者は続ける。
既に、興味は「同僚」から再起動した携帯電話の画面に戻っていた。
弟者も、退屈そうに天井を仰ぐ。

(´<_` )「だな。そんなバカがいたら、お目にかかってみたいもんだ」



――三人の遭遇は、それきりで終わった。





21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:21:01.64 ID:GhPrma0I0
  _
(; ゚∀゚)「……やれやれ。
     どうなってんのか知らねぇが……バカでありがとよ」

痛む右腕を下ろし、ジョルジュは安堵した。

彼にとっての幸運は、ホールに彼の顔を知る者がいなかったことであり、また同時に、
一階にいた兄弟がドクオ達ほど仕事熱心ではなかったことだ。

しかし、実際の所、ドクオ達以上にこの仕事に執着している者は、屋敷の内外にもいない。

ギコ社長の「我が儘」で社員が狩り出されるのは度々のことであり、しかも今回は社長の
個人的な「ペット」絡みだ。部下にとっては二重の意味で気の進まない仕事だ。

ただし、二度にわたる脅しに屈しなかった彼に、ドクオはある意味で執着している。
そしてブーンは、そのドクオに従っている。

目下、最大の脅威はこの二人のみだった。

そして、彼の扮装は、やはり無用のものではなかった。
その点では、この幸運は彼自身の備えが呼び込んだものとも言うことができた。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:22:46.24 ID:GhPrma0I0
  _
( ゚∀゚)「まあ、いいか。
     そろそろ……ラストスパートだな」

吹き抜けを通り抜け、一旦足を止める。

再び始まった右手の壁に設えられた、最も手前のドア。
他のどのドアよりも大きい両開きのそれは、ギコ社長の私室のものに他ならない。
ならば、その一つ先のドアが、目指す部屋だ。
  _
( ゚∀゚)(ここにきて、いきなり社長とご対面、なんてのは勘弁してくれよな――)

心臓は、未だ早鐘を打っている。
それは続いている緊張のせいでもあり、同時に「依頼人」にあと一歩の所まで辿り着いた
緊張のせいでもあった。
  _
( ゚∀゚)「もう少しだ。待ってろよ……しぃ」

呟きが、漏れた。



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:25:12.19 ID:GhPrma0I0

                      - 2 -

足音が完全に消えていることを確認し、力を籠めて踏み込む。
社長の私室のドアを、数歩で通り過ぎた。

今、彼の目の前には、目指す部屋の入り口がある。
  _
(; ゚∀゚)「……ふう、っ」

いつの間にか額に滲み出た汗を拭った左手を、ゆっくりとドアノブに掛ける。
冷たく硬い金属のノブの感触を確かめ、回した。

鍵の心配はない。
このドアには他のドアと異なり、外鍵が設置されている。


  _
( ゚∀゚)『なるほどな。部屋の場所は分かったよ。
     で……カギは、どうしたもんかね?』

从 ゚-从『鍵の心配は、要らない。その部屋、外鍵になってるから』
  _
( ゚∀゚)『なるほど。しかし、なんでまた?
     普通の部屋が外鍵なんて珍しいな。物置やなんかじゃあるまいし』

从 ゚-从『……』



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:27:05.15 ID:GhPrma0I0
高岡は、その理由を語らなかった。
ただ、そこにしぃはいる。それならば、そこに向かうだけだ。
ジョルジュは、それ以上の事を考えるのは止めた。

押し開くドアは、重い。
  _
(; ゚∀゚)「……っ」

緊張か、そこから来る疲労がそう感じさせるのか。
彼は左手一本でドアノブを支え、全身を預けるように体重を掛けてドアを開いた。

空調の効いた室内から、涼しく乾いた風が廊下に吹き込む。
同時に、その冷えた空気はどこか重い、すえた臭いを含んでいるように感じられた。

室内の絨毯も、廊下同様に厚い。
音を立てないようドアを後ろ手に閉じ、彼は室内を見回した。

閉じられた大きな窓から、日光が差し込んでいる。
広い、部屋だった。

空調の吐き出す乾いた冷風に、ドレープの深い、厚い生地のカーテンが揺れた。
  _
( ゚∀゚)「……」

違和感を覚える。

明るく、広く、空調は整っている。
にもかかわらず、重苦しく、耳の奥が痛むような不快な沈黙、そして空気。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:28:48.96 ID:GhPrma0I0
  _
( ゚∀゚)(……)

奇妙な調度の配置だった。
まず最初に彼が感じたのは、それだった。

正方形に近い広い部屋に、テーブルはない。部屋の中央に、開けた空間が残されている。
向かって右側の壁に沿うように背の高いキャビネットが並べられている。
日光を照り返す透明度の高いガラス戸の内側に、ガラスの食器が輝いているのが見えた。

左奥の窓際には大きなソファ、クローゼットの戸。その奥に沿うようにコート掛けが置かれて
いる。これだけの広さを持つ空間で、コート掛けが室内に放置されているのは妙だと思えた。

その、コート掛けと、ソファに。
そこに彼は、馴染みの深い「もの」を認めた。
  _
(; ゚∀゚)「……!」

心臓が跳ね上がる。
引き摺られるように足が出た。
  _
(; ゚∀゚)「おい――!」

足音を殺すことも忘れ、駆け出した。

コート掛けには、見慣れた給仕服が掛けられていた。
そして、ソファには、濃い色の、薄地のガウンのような衣服を纏った少年が横臥していた。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:30:24.23 ID:GhPrma0I0
部屋の奥を向いた顔は伏せられ、表情は見えない。

そして、動く様子はない。

冷静な判断は、できなかった。
彼自身でも滑稽だと思えるほどよろけ、何もない絨毯に躓きかけて、その少年の元へ、
自由に動く左腕を伸ばして、走り寄った。

(* ー )「…………」

ソファの前に跪き、横たえられたその顔を覗き込む。
薄く、目を閉じ、微笑んですらいるような表情で、「少年」は動かなかった。
  _
(  ∀ )「……」

手が震える。
彼自身の意志を性格に伝達しない、震える左手を伸ばし、手の甲で額に掛かる前髪を
払った。払い、ガウンに包まれた細い身体を見下ろした。
  _
(  ∀ )「……しぃ」

再び、手を伸ばす。
色の失せ、僅かにやつれたその頬を、撫でた。
  _
( -∀-)「……ああ――」



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:32:22.85 ID:GhPrma0I0



――温かい。



――そして、横たわるその両肩は、微かに。
   余程目を凝らさなければ分からないほど、小さく、上下している。



(* ー )「……」
  _
( -∀-)「は、はっ。
      くそ……何だよ、驚かせやがって」

手は、しぃの頬に添えたまま。
全身から力が抜け、絨毯に尻餅を付くように腰を下ろした。

この屋敷に入ったときから、ずっとそうだった。
緊張と、興奮と、恐怖が渾然として、胸中に渦巻いていた。
それら全てが一度に溶け、流れた。

涙を堪え、先程までとは違う理由で震える手でしぃの頬を撫でる。

言いたいことはあったが、何一つ言葉にはなりそうにない。
ただ、覚えのあるそのぬくもりを掌に受けていた。



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:33:58.93 ID:GhPrma0I0
(* ー )「――」

つい、と、目を閉じたまま、しぃの左腕が動いた。
小さな、細い指の手を頬に置かれたジョルジュの手に沿わせ、静かに取る。

(* ー )「――ジョルジュさん。
     手……タバコ臭い」

細い、囁き声。
  _
( -∀-)「お前な。開口一番それか?
      もうちっと、可愛げのある挨拶があるんじゃないのかよ」

笑い、軽口を返す。
声が震えないように努めて、ではあったが。

ソファの下に座った彼の目の前に、横向きのしぃの顔がある。

左手を上げ、しぃの手を取る。
今度はジョルジュ自身の頬に、その手を押し当てた。

広い袖から伸びたしぃの腕が視界を横切った。
その手首に、夜着の合せ目から覗く首筋に、その周りを一周する赤い擦過痕が見える。
ジョルジュは目を伏せ、その傷跡から視線を外した。

(* ー )「なんだ……やっぱり、夢みたい」

目は、まだ閉じられている。
そのままで呟く。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:35:35.04 ID:GhPrma0I0
  _
( ゚∀゚)「お前、何言ってんだよ」

(* ー )「だって、ほっぺた、つるつるだよ。
     ヒゲ、ちくちくするはずだもん」
  _
( ゚∀゚)「剃ったの。ったく、悪かったな。
     いいだろ? 別に俺が、身なり整えたって」

(* ー )「ふふっ……うん。やっぱり、夢じゃない」

ゆっくりと、目を開く。
深い紺色の瞳が眩しげに細められて、目の前の彼の顔を見た。

(*゚ー゚)「……ジョルジュ、さん」

瞬く間に、その両眼に涙が溢れた。

(*;ー;)「ジョルジュさんっ――!」

身体を起こしながら、ジョルジュの肩に縋り付く。

(*;ー;)「ああ……ジョルジュさん。ジョルジュさんだぁ……。
     夢じゃないよね、ホントなんだよね。
     逢いたかった……ジョルジュさん、っ、逢いたかったよっ……!」

スーツの肩に顔を埋め、何度も首を振りながら、何度も、ジョルジュさん、ジョルジュさん、と
繰り返す。スーツの肩が濡れるのにも構わず、呼ばれる度にジョルジュは頷きを返した。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:37:06.02 ID:GhPrma0I0
声は細かった。
身体も、彼と別れた時より痩せているように見えた。

しぃが、ここでこれまでどんな目に遭わされて来たか。
痩せた身体、身体に残る傷跡、それらを見なくとも想像に難くなかった。
肩が、胸が、抉られるように痛んだ。

ジョルジュは左腕一本でしぃの肩を抱く。力を籠めて、胸元に抱き寄せる。
ただ泣かせるに任せ、そして、言葉を落とした。
  _
( -∀-)「ゴメンな。ずいぶん、遅くなっちまった。
      ……俺のせいで、お前まで」

彼は、確かにこの少年に助けられたのだ。
しぃは、文字通り自分の身を犠牲にして、彼を救ったのだ。
あの映像の中で、責められるしぃの顔が、身体が、思い出された。

(*;ー;)「――ううん。ボクが勝手にしたことだから、だから、言わないで……」

顔を彼の肩に埋めて、しぃは途切れ途切れにか細い声を上げる。

(* ー )「でも、ボク、ボク……怖かったよ……。ぼ、ボク、っ……!」
  _
( -∀-)「ああ……ああ、そうだよな。
      よく、頑張ったな」

肩を震わせるしぃの頭を見下ろして、頷く。



36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:38:54.64 ID:GhPrma0I0
  _
( -∀-)「もう、忘れるんだ。
      お前を、二度とあんな目に遭わせたりしない。
      そのために、ここまで来たんだからな」

それを聞いて、初めてしぃはソファに身体を起こす。
表情を曇らせ、当然の疑問を発した。

(*゚ー゚)「そうだよ、ジョルジュさん。
     なんで? どうやって、ここまで来たの……?」
  _
(; ゚∀゚)「う、あー……いや。
     その、いろいろあってな。まあ、何とかして、こう……」

言葉を濁すが、しぃは反応しない。ただ、彼の目を見詰めている。
誤魔化せようはずもない。

諦め、彼は立ち上がって頭を掻いた。
  _
( ゚∀゚)「……はあ。ま、隠しても仕方ねえか。
     忍び込んできたんだよ。お前の同僚に助けて貰ってな。
     家宅不法侵入に未成年者略取、ってとこか」

(*゚ー゚)「え……」
  _
( ゚∀゚)「社長サンに見つかったら、警察に突き出されるかもな。それか、病院かな?
     集中治療室送りか、霊安室直行か。どっちになるかは知らねえけど」

しぃは眼を見開く。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:40:35.17 ID:GhPrma0I0
(;゚ー゚)「……ジョルジュさん。なんで、そんなコト……」
  _
( ゚∀゚)「……」

言いたくは、なかった。
  _
( -∀-)(依頼だから。さんざ、そう言ってきたっけな)

ただその言葉だけで済ませるのは気恥ずかしさを覚える。
照れもあるが、それ以上に、しぃに責任を感じさせたくなかった。
だが、ここまで来れば言わない訳にもいかない。
  _
( -∀-)「……お前が。
      お前が、たすけて、って、そう言ったのが分かった。
      放っておけなかったんだ。だから……取り返しに、来た」

(* ー )「……っ……!」

また、しぃが眼に涙を滲ませる。

だが、これ以上悠長に話をしている暇もない。
落ち着いたのであれば、すぐにもここを出る必要があった。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:42:23.38 ID:GhPrma0I0
  _
( ゚∀゚)「とりあえず、だ。あんまりゆっくりしてる余裕もないぜ。
     もう、落ち着いたか? 一人で歩けるか?」

(*゚ー゚)「う、うん……大丈夫だよ」

帰りは、行きとは違う。
しぃを連れ、ドクオやブーンに発見される前にここを出なくてはいけない。
  _
( ゚∀゚)「よし。服は……そこのメイド服しかねえのか。
     まあ、いいか。すぐ、着替えるんだ。急いで出るぞ」

(*゚ー゚)「あ、うんっ」
  _
( ゚∀゚)「よし。いいか? ここからは大急ぎだ。何としても――」



    「――見つかる前に、ここを出なければ、か。
     長居しすぎたな。ゴルァ」



――声は、ジョルジュの背後から。
   部屋の入り口から聞こえた。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:47:57.12 ID:GhPrma0I0

                      - 3 -

ソファから下りたしぃが、ぴくり、と身体を震わせ、立ち尽くす。

(;゚ー゚)「あ……!」
  _
(; ゚∀゚)「……っ」

ジョルジュもゆっくりと立ち上がり、入り口を振り返る。
そこには、二人の男が立っていた。

('A`) 「……」

ポケットに両手を突っ込んだ、陰気な顔の男。

そして、その男よりも数段高価なスーツに身を包み、傲然と彼らを見る男。

(,,゚Д゚)「く、くくっ……惜しかったな。だが、囮に、変装か。近頃の銀行屋は、
    盗人の真似まで覚えさせられるのか。参ったものだな」

低く喉を鳴らす。眼は、笑っていない。
陰気な男――ドクオを警戒しながらも、ジョルジュは普段通りの調子で手をひらひらと
振ってみせた。
  _
( ゚∀゚)「あー……本当なら、もう少し早めにおいとまするつもりだったんだけどな。
     居心地が良かったもんで、ついつい長居しちまった。お邪魔してるよ」



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:50:07.74 ID:GhPrma0I0
内心には、焦りがある。だが、それを表情に出す訳にはいかない。
  _
(; ゚∀゚)(……少し、まずい……かもな)

(,,゚Д゚)「光栄だな。
    なら、どうだ? もう少し休んでいけ。遠慮は要らんぞ、ゴルァ。
    なあ、しぃ。お前が、もてなしてやるか? くくっ」

(; ー )「あ……う、っ……」

余裕の口振りで答える。しぃは顔を青ざめさせ、床に座り込んだ。
その後ろでドクオがドアを閉め、ポケットから取り出した鍵で内鍵を施錠した。
かちり、という金属音が、沈黙する彼らの間に響いた。

(,,゚Д゚)「……心配は要らんよ。お前を、警察に突き出すつもりはない。
    お前の方からそう懇願することになるかもしれんが、な……ドクオ」

ギコ社長の背後に戻っていたドクオに声を掛ける。
彼は、無言で薄く笑い、頷いた。

部屋の中央の広い空間を挟み、四人は対峙する。
入り口のドアにギコ、ドクオ。窓際にジョルジュ、そしてしぃ。

均衡が崩れた。
ドクオが、ゆらり、と、二人に向かい一歩を踏み出したのだった。

('A`) 「……覚えてるか? 次は殺す、そう言ったな」

その目に表情はない。
ただ決められた事を告げるように、無感情に告げる。


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:52:28.09 ID:GhPrma0I0
  _
(; ゚∀゚)「ちっ――」

ジョルジュはドクオに背を向け、窓に向かう。
外には、ベランダの手すりが見えている。
ジョルジュは窓に取り付き、錠と取っ手を探った。
  _
(; ゚∀゚)「――っ?」

だが。
その窓には取っ手も、錠前も見当たらない。

窓は、嵌め殺しだった。

(,,゚Д゚)「壊そうなどとは思うなよ? 割れんよ。
    普通の板ガラスとは違うのでね……く、くははっ」

愉悦の表情を浮かべて、ギコは言い放つ。

('A`) 「この部屋が何だか、知らないのか。
    そこのガキに聞いてみればどうだ」

ドクオが無表情で後を続ける。
言われ、彼は傍らのしぃを振り返った。

(; ー )「……」
  _
(; ゚∀゚)「おい、しぃ?」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:54:39.15 ID:GhPrma0I0
しぃは身体を震わせ、両腕で自らの身体を抱いて、うずくまっていた。
怯えを含んだ虚ろな視線が、ギコに向けられていた。

('A`) 「ここは、プレイルームだ。
    ガキ共が『客』をもてなすための」

吐き捨て、右のポケットから手を抜く。
抜かれた右手には、切っ先の尖ったダガーが握られていた。
以前にジョルジュに向けられたものと同じだ。

('A`) 「内側からは、開かない。そして、完全防音だ。壁も、窓も」
  _
(; ゚∀゚)「……!」

ジョルジュの顔色が変わる。
ドクオは歩を進める。部屋の中央、二人から数メートルの距離にまで近づいている。

('A`) 「分かるか? お前がどんなに叫んでも、部屋の外に声は漏れない。
    だから、お前を、ゆっくり解体してやれる」

そう言い、嗤った。
唇を捲れ上がらせる、ギコとは違う、暗いサディスティックな笑み。
ジョルジュの顔を覗き込み、その表情を楽しむように、続けた。

('A`) 「後悔する時間は、十分ある。楽しみにしていろ。
    そこのガキ、お前も」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:57:08.91 ID:GhPrma0I0
陰気で無気力な男が、この時は饒舌だった。

目の縁が、僅かに赤い。
暴力を振るうことに、興奮している。陶酔している。

(; ー )「……!!」

ナイフの切っ先で指し示され、しぃは息を呑んだ。

('A`) 「お前は、殺さない。そこの探偵をバラしたら、後片付けだ。
    そうだな……いつもの『客』の後片付けと同じように、床を舐めて掃除して貰うか」
  _
(; ゚∀゚)「……」

(; ー )「……あ……あ、あ」

ドクオは小首を傾げ、しぃを見下ろす。
そして、また一歩進む。

('A`) 「床掃除の後は、ゴミ掃除だ。
    安心しろ。細切れにしてやる――」

笑みを大きくして、継いだ。

('A`) 「――その方が、消化が良いだろう?」

ギコの姿を見、それだけで緊張に晒されてたしぃ。
ドクオのその言葉で、その小さな身体は限界に達した。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/26(土) 23:58:52.11 ID:GhPrma0I0
(*;ー;)「うあ、あ……ああっ……!!」

両手で頭を覆い、しぃは涙を零す。
哀れなほどに身体を震わせ、首を振りながら嗚咽を漏らし始めた。

(*;ー;)「やだ、やだ……やだ、あっ……!!」
  _
(; ゚∀゚)「おい、しぃっ!」

腕の中で、取り乱したしぃは首を振り続けている。
髪が大きく揺れ、涙と唾液が絨毯に落ちた。

(*;ー;)「やだよ、怖いよ、ジョルジュさん、怖いよ……。
     怖い、こわい、やだっ、やだあっ……!
     そんなのイヤだよ、ジョルジュさん……ジョルジュさんっ……!」

しぃの呼吸は荒い。
極度の緊張と恐怖で、パニックを起こしかけている。

ジョルジュは屈み、しぃの肩を抱く。
震えを止めるように押さえながら、ドクオを睨んだ。
  _
(# ゚∀゚)「てめぇ!」

(,,゚Д゚)「いいことだ。早速、躾けの効果が出ているようだな? くくっ」

ジョルジュはドクオを見、そしてドアの前で喉を鳴らし笑うギコを見た。
ただギコを見るだけで、ドクオに恫喝されるだけで、これほどまでに怯えるだろうか。



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:00:39.17 ID:1Dy1ZWzo0
  _
(# ∀ )「ッ!」

(*;ー;)「ぃ、ひ、ひっ……ごほっ、はあ、ああっ。
     やだ……もうやだ、許して……許して、許して、ぇっ……!」

この部屋にしぃを閉じこめ、どんな「躾け」をしたのか。
それを想像するだけで、目の前が赤く染まるような怒りが込み上げる。
  _
(  ∀ )「……」

違う。

今すべきことは、怒りに身を任せることではない。
今は、手が届く所にいる。それだけが、違う。

ふ、と、全身に充満し始めた激情を逃がす。
しぃの顔を横から覗き込み、ジョルジュは笑って見せた。
  _
( ゚∀゚)「なあ、しぃ。聞こえるか?」

とん、とん、と、背中を掌で叩き、撫でる。
静かな、柔らかい声で、呼びかける。

(*;ー;)「ひ……はッ、……っ?」
  _
( ゚∀゚)「忘れてたよ。お前にまた会えたら、言わなきゃなって思ってた。
     帰ったらさ。海、行こうぜ」

(;゚ー゚)「ジ、ジョルジュさん……?」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:02:22.07 ID:uEZLzUku0
肩を上下させながら、何事かというように彼を見上げる。
彼の言葉を聞いたドクオは、眉を釣り上げた。それを無視して続ける。
  _
( ゚∀゚)「まだ海水は冷たいだろうけど、見るだけなら大丈夫だろ。
     じきに暖かくなるしな。水着も買って、二人で、行こう。
     本物の海、初めてだって言ってたよな?」

(*;ー;)「……っ……!」

しぃの肩の動きが、むせるような激しい呼吸が、徐々に緩やかになった。
その涙に濡れた顔を見て、ジョルジュはまた笑い、立ち上がった。

ドクオが、彼の顔を覗き込んでいる。
理解できない、と言った風に首を振る。

('A`) 「お前は、帰れない。どこにも行けない。どこにもだ。そう言った。
    また耳を悪くしたか? 気でも違ったのか?」

ジョルジュは、首を振り返す。
  _
( -∀-)「――銀行屋ってのは、他人様に金をくれてやる職業じゃない。
      貸したら、いつかは必ず、返して貰わなきゃいけねえんだ」

('A`) 「……」

突然の言葉。その真意を測りかね、ドクオは沈黙する。
ただ、ダガーを胸元に引き上げた。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:04:25.78 ID:1Dy1ZWzo0
  _
( -∀-)「行きはよいよい、帰りは怖い……って奴さ。貸すのは簡単、問題は取り返す時だ。
      そいつがしくじったら? どうすれば取り返せる? どれくらい?
      それを貸す段で考えておかない奴は、二流だ」

('A`) 「……」
  _
( ゚∀゚)「必ず、どこかに穴がある。ミスも不可抗力も。
     問題は、最悪の状況に備えるかどうかなのさ。ちょうど今みたいにな。
     行きは俺一人だけど、帰りは違う。逃げることも、隠れることもできない。なら……」

ドクオの姿勢が、変わる。
ジョルジュから数メートルの距離で立ち止まると、上体を僅かに前傾させた。
ダガーを握る腕を自然に畳み、身体の前面に構えた。

これ以上の会話は無益。そう判断したのが見て取れる。
  _
( ゚∀゚)「まあ、ちょっと待ってくれよ。
     こう見えても、あんたにゃ感謝してるんだぜ……よ、っと」

肩を動かし、スーツの上着から左腕を抜き、脱いだ。
それを、しぃの肩に掛ける。

(*゚ー゚)「……あ、え……っ?」



――それだけ。
   ただそれだけの動作で、ドクオの、ギコの表情が歪んだ。
 


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:06:50.27 ID:1Dy1ZWzo0
(;,゚Д゚)「な――?」

(;'A`) 「……!」

その眼は、ジョルジュの上半身に据えられている。
自らが見たものを信じられない、といった様子で、凝視した。

正確には、ジョルジュの右肩を。

白い清潔なワイシャツ。その右肩には、革のベルトが巻き付けられている。
いや。それは、正確にはベルトではない。
  _
( ゚∀゚)「わざわざ教えてくれたよな。
     この部屋は完全防音だって。それは、つまり――」

肩を固定するベルト。それは脇腹に斜めに掛かり、そして脇から腰にかけての部分は
膨らんだ筒状に成形され、脇のすぐ下からベルトのラインまで一直線に垂れ下がる。

その長さは、およそ60センチ。
丈が長めのスーツの裾には、十分隠すことができた。
  _
( ゚∀゚)「――最悪の状況に備えた甲斐があった、って事だよ」

散弾銃を収めた、革製のショルダーホルスター。
それが、ジョルジュの右肩を固定していた。


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:09:02.48 ID:1Dy1ZWzo0
それを抜き放つ。

重く滞った室内の空気が、にわかに張り詰めた。

銃身を包み込むラバーコーティングのポンプに右手を添え、まだ残る痛みに顔をしかめながら
力を籠め、引く。

弾丸が薬室に抽送される硬質な作動音が、室内に響いた。
その重さが、彼が持つ鉄の塊が模造品などではなく、本物の散弾銃であることを告げていた。

左腕一本で構えた散弾銃を、ドクオの胸に向け、構える。

(;'A`) 「……お前。
     正気か?」

やがて、呻くように、ドクオが漏らした。



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:11:12.08 ID:1Dy1ZWzo0

                      - 4 -

(;,゚Д゚)「……っ……!」

ドクオの背後で、ギコが息を呑む。
その視線は、ジョルジュの散弾銃に据えられていた。

スチールを削り出して造られた黒い銃身は、短く切り詰められている。
さらに、銃床――身体に押し当てて銃身のぶれを防ぐための部品は、通常の散弾銃の
ように末広がりではなく、銃身からほぼ直角に突き出る、拳銃に似た形状をしていた。

散弾銃の銃身を切り落として全長を縮める改造は、俗に「ソウドオフ」と呼ばれる。

ジャケットの内側に、通常の手段では防御できない破壊力を持った散弾銃を隠すことが
できるこの改造は、銃大国であるアメリカですら、行うこと自体が違法行為とみなされる。

それがどれほどに危険なものであるかが、このことからも容易に窺い知ることができる。

ただし、彼が手にする散弾銃はこのような違法行為のなされたものではなく、あらかじめ
この改造を施された、警察を初めとする法執行機関用のモデルだ。



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:13:06.51 ID:1Dy1ZWzo0
彼がショボンに調達を依頼したものの中で、もっとも入手が困難なもの。



(´・ω・`)『違うよ。
      ……差し支えなければ、ひとつだけ、改めて教えて欲しい。
      君は一体、これから何をする気なんだい? これじゃ、まるで……』



ショボンに彼の行動を訝らせたものの正体も、これだった。
  _
( ゚∀゚)「あんたと違って暴力は嫌いなんだ。
     できることなら、出したくなかったよ」

そうドクオに告げるジョルジュの左手は、わずかに震え、揺れている。
散弾銃自体の重量、そして、緊張のためだった。

(;'A`) 「……」

ダガーを構えたまま、だがドクオは動けずにいる。
発射可能な状態の銃口を向けられるということ、それ自体が、異常なプレッシャーになっている。

重い空気に搦め捕られたように、その場にいる全員の動きが止められている。
誰もが――散弾銃を構えたジョルジュ自身でさえもが。

緊張、そして沈黙。


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:15:10.77 ID:1Dy1ZWzo0
  _
( ゚∀゚)「……俺は」

その中で、ジョルジュが、重い口を開いた。
掠れた声が漏れる。
  _
( -∀-)「俺は……帰りたいだけなんだ」

銃は下げずに、足元にうずくまるしぃを見下ろして溜め息を吐いた。
その表情には勝利を確信した優越感も、敵対者への怒りもない。

ドクオの目を見据え、静かに続けた。
  _
( -∀-)「暴力を振るうのも、振るわれるのもゴメンだ。
      これ以上、迷惑を掛ける気はない。俺は、こいつを連れて帰りたいだけなんだ。
      アンタには関係ない話だろ? なあ、頼むよ。もう……勘弁してくれよ」

言葉を切り、戦闘態勢を取ったままのドクオを見る。

優位にありながら、その声は哀願するような響きを帯びている。
それは、彼の偽らざる本音だった。

('A`) 「……。
    ……は、はっ」

笑う。息を漏らし、構えていたダガーを、だらりと身体の脇に下ろした。
その動作に、ジョルジュの銃口が、ぴくり、と反応した。


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:17:24.47 ID:1Dy1ZWzo0
  _
( ゚∀゚)「そうか。ありがてえ――」

全身の緊張を緩め、ドクオに声を掛ける。

瞬間。



(#'A`) 「は――ッ!!」



ドクオが、動いた。

ダガーを瞬時に腰だめに構え直す。
両手でしっかりと柄を保持し、切っ先をジョルジュの下腹部に向けて、姿勢を下げる。
二人の間にあった距離を埋めるべく、鋭く息を吐いて、走った。

(;゚ー゚)「ジョ、ジョルジュさんッ!!」

しぃが警告を発する。
  _
(; ゚∀゚)「クソッ――!」

ドクオにとって、ジョルジュの言葉は休戦の提案とはなり得なかった。
むしろ、挑発でさえあった。

その理由は、ドクオ自身だけが知っている。



73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:19:34.53 ID:1Dy1ZWzo0
ドクオは、己の能力に自信を持っている。
暴力によって敵を圧倒する、という能力をだ。

その彼が、格闘技の心得もない、何の変哲もない一般人を二度までも脅し、痛め付けた。
それなのに、この私立探偵は屈しなかった。彼の恫喝に、一度も怯まなかった。

ドクオは既に、ジョルジュに敗北していた。

暴力をもって倒されることだけが敗北ではない。
ジョルジュは、彼が想像しない場所で、彼のプライドを踏みにじっていたのだ。

彼の本質は、紛れもなく狂犬そのものだ。
一度でも尻尾を丸めれば、今までに得てきた勝利全てが無意味になる。
従って彼に、退く、という選択肢はなかった。

(#'A`) 「ッは――――はああッ!」

鋭く息を吐き、走る。
犬歯を剥き出しにして、怒りとも笑いともつかない表情を顔面に貼り付かせて。

ジョルジュの目に映るドクオ。
ドクオの目に映るジョルジュ。
互いの姿が、互いの視界の中で大きくなる。

刃物を腰だめに、前屈みに身体ごとぶつかり、刺す。
それは自らの身を顧みず、確実に敵を倒すためだけの捨て身の突進だ。
傷も癒えていないジョルジュが、この距離でそれを止める手段はない。

自らが左手に握り締めたものを、使う他には。


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:21:40.06 ID:1Dy1ZWzo0
銃身に添えていた指を、引き金に掛ける。
  _
(; ゚∀゚)「――この、バカ野郎ッ!!」

叫ぶように吐き捨て――引き金を絞った。

映画の中の作り物の銃声とは違う。
重く低く、そして篭もった発砲音が、密閉された室内に、ずん、と響く。

発射の衝撃に銃身が跳ね上がる。
反動で左腕を振り上げ尻餅を付きかけるほどによろめき、後逸した。

黒く暗い銃口。
硝煙の煙と共に吐き出されたのは、しかし無数の鉄球でもなく、鉛の一粒弾でもない。
先端に十字の切り込みを入れられた、黒いゴム製の弾頭だった。

それが空気抵抗により切れ込みから不格好な十字の形に開いて減速し、しかし肉眼
では捉えることのできない速度で飛翔する。

それは、放たれたゴム弾は、砂の詰まった袋を殴るような低音と共に、ドクオの右胸
上部を強打した。

(;゚A゚) 「ご、ぶッ!!」

ゴム弾、とはいえ、至近距離から急所に直撃すれば死は免れない。それほどの威力を
伴った打撃がドクオの鎖骨と肋骨を砕き、部屋の入り口に向かって吹き飛ばした。

姿勢を崩して転がり、床に俯せに倒れ、顔と身体の前面で絨毯を擦る。
手にしていたナイフが、勢いを失ったゴム弾が、音もなく絨毯に落ちた。


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:23:34.48 ID:1Dy1ZWzo0
  _
(; ゚∀゚)「つ、っ……!」

肩関節と腰に、強い負荷が掛かる。
右手をそろそろと動かして、どうにか痺れた左腕を撫でた。

散弾銃は、ろくな経験もない人間が片手で十分に扱えるような代物ではない。
当たっただけでも幸運と言わなければなるまい。

ドクオは、前進するべきではなかった。
感情に任せずに後退していれば、狙いは外れていたかも知れない。

だが、彼のプライドが、感情が、それを許さなかった。
  _
(; ゚∀゚)「脚、狙ったはずなんだけどな……危ねえな。
     ……畜生。だから、嫌だって言っただろ」

苦いものを含んだ声を、俯せに倒れ伏すドクオに向けた。

(; A ) 「……」

ドクオは答えず、動かない。だがその両肩は微かに震え、呼吸に合わせ上下している。
無事とも言い難い様子だが、死んではいない。

(;゚ー゚)「……あ……」

(;,゚Д゚)「……!」

しぃは呆然と、倒れたドクオを見る。その両手は両耳を覆っている。


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:26:03.10 ID:1Dy1ZWzo0
ギコは動かずに硬い表情でジョルジュとドクオを交互に見ていたが、目の前で起こった
出来事を認識すると、我に返り憤りの声を上げた。

(;,゚Д゚)「な、き……貴様っ!」

ジョルジュはそれを聞き流して屈み、散弾銃のポンプに右手を掛ける。
だが消耗した腕力では固いポンプを前後させ、次弾を装填することができず、仕方なく
グリップの底部を床に突いて銃身を立て、左手でポンプを縦に動かして排莢した。

銃身の底部に設けられた、給弾口を兼ねた排出口から勢いよく空薬莢が飛び出し、
絨毯の上を転がった。
  _
( ゚∀゚)「分かっただろ。作り物なんかじゃない。
     弾は、まだ一発あるんだ。分かったら、そこを通してくれよ」

ふらつきながらも立ち上がり、ギコに告げる。
ただ、その言葉とは裏腹に散弾銃の銃口は床を向いている。

(;,゚Д゚)「貴様、じ、自分が何をしているのか、分かってるのかゴルァ!」

叫ぶように言う。
ジョルジュは、静かに返した。
  _
( ゚∀゚)「ああ、分かってるさ。
     俺は、こいつを連れて帰る。そのためなら、何だってする」

何故かは言わない。
問われても答える気はない。単純だが複雑な回答だからだ。


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:29:32.61 ID:1Dy1ZWzo0
(;,゚Д゚)「……渡さん」

食い縛った歯の間から、唸るように漏らす。

(#,゚Д゚)「俺が……俺が、そいつにいくら投資してると思う!
     手塩に掛けたペットだ、渡さんぞ……!」
  _
( ゚∀゚)「……」

ジョルジュではなく、しぃを睨み付け、吠える。

(#,゚Д゚)「なあ、しぃ。お前のようなガキに、俺がいくらつぎ込んだか知ってるのか?
     お前のような貧乏人のガキに『芸』まで仕込んでやったんだぞ?
     それが何だ? 俺を裏切る? 許さん、絶対に許さんぞッ!」

先程までとは一転して激昂する。
顔を赤く膨れあがらせ、口角から唾を飛ばして続けざまに怒鳴りつけた。

(; ー )「……」

(#,゚Д゚)「お前をそこまで育ててやったのは誰だと思ってる。
     養ってやった恩を忘れて裏切るのか? 俺はお前の親だぞ? 飼い主だぞ!」

(; ー )「う、あっ……」

答えないしぃに、ギコはなおも言い募る。

(#,゚Д゚)「なあ、しぃッ! 答えろゴルァ!!
     お前、俺に逆らって生きていけると思ってるのか? ゴルァッ!!」



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:32:40.94 ID:1Dy1ZWzo0
(; ー )「……っ!」

(#,゚Д゚)「おいッ、聞こえてるのか! しぃッ!! お前の親は誰だ? 飼い主は?
     俺だろうが! この裏切り者が、お前など捨ててやってもいいんだぞ!
     実の親に見放されて、その上俺に捨てられても生きていけるのか?」

(*;ー;)「う、うぅっ……ああ……!!」

(#,゚Д゚)「いいか? お前はペットだ。身体を売る芸しか持ってない愛玩動物なんだよ!
     それがここから逃げ出して、生きていけるとでも思うのか!!」

喚き続けるギコの視線からしぃを塞ぐように、ジョルジュが踏み出した。
二人の間に割り込む。
  _
(  ∀ )「――親か。親、ね」

一歩一歩、ギコに向かって歩きながら呟いた彼の声は、冷たく、低かった。
顔を上げ、吠える男の膨れあがった顔を見据える。
  _
(  ∀ )「こんな子供さらってきて、女のナリさせて身体売らせておいて『親』だ?
     黙って聞いてりゃ、笑えねえ冗談もたいがいにしやがれ」

明確な怒気が充満した声。
顔を高潮させたギコとは対照的に、その顔は怒りに蒼ざめている。
  _
(  ∀ )「いくら注ぎ込んだ、だ? んなこた知るかよ。
     お前がやってんのはタダの犯罪だ。虐待だよ。
     どんなに金があろうが、地位があろうが、許されることじゃねえ」



86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:35:18.56 ID:1Dy1ZWzo0
だが、ギコは傲然と笑い返す。

(#,゚Д゚)「許されるも許されないもない。
     正しいのは、俺だ。俺がすることが、正しいんだよ。
     俺は、天下のタカラ・ホールディングスの社長だぞッ!!」

日本有数のグループ企業のトップに立つ男。
確かに、日本でもっとも裕福な部類に入る人間だろう。

だが、下衆だ。
  _
(  ∀ )「そうかい、じゃあ――」

ジョルジュの左手が動く。銃口がギコに向いた。

(;,゚Д゚)「っ!」
  _
(# ゚∀゚)「――見せてくれよ。その社長サマとやらのお力で、俺を止めてみろ。
     あいつを引き留めてみろ。できるんだろ? やってみろよ」

(;,゚Д゚)「貴様……!!」

ギコが歯噛みする。だが、突きつけられた銃口は重い。
何も言わず、ただ彼を睨み付けた。彼も、その目を睨み返した。
  _
(# ゚∀゚)「言ったよな。人間はモノじゃねえ、って。
     あいつはな。しぃは、自分の意志でここから出ることを選んだんだよ」

背後の遠くで、啜り泣きの声が聞こえる。


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:37:27.88 ID:1Dy1ZWzo0
憤っていた。
そして、哀しかった。
  _
(# ゚∀゚)「……お前がどれだけ、どんな目に遭わせようが、あいつは負けなかった」

この男は、巨大な幼児だ。財力と権力に物を言わせて、ただ他人を支配し、自分の
思い通りに事を運びたいだけだ。

そしてそれは、かつての彼自身と同じ心理だった。
それだけに、一層目の前の男を憎悪した。
  _
(# ゚∀゚)「気のせいだよ、下らねえ妄想だ。
     お前は、しぃを飼い慣らせてなんかいない。支配なんかしちゃいない。
     それどころか、逆だよ。お前はな……あいつに、見限られたんだよ」

(;,゚Д゚)「何だと……!」
  _
(# ゚∀゚)「お生憎様だな。お前は人間ひとり、子供ひとりさえ自由にできねえのさ。
     飼い主だ何だといい気になって、滑稽なモンだ」

せせら笑った。

(;,゚Д゚)「……」

ギコの視線が揺らぎ、一瞬泳ぐ。
その目がジョルジュの背後で床に座り込んだしぃを捉え、歪む。


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:39:15.87 ID:1Dy1ZWzo0
(;,゚Д゚)「しぃ、貴様ッ!」

だが。

(* ー )「……っ」

伏せていた、泣き腫らした両眼を上げ、嗚咽を堪えながら無言でギコを見る。
そして、小さく、だがはっきりと、首を左右に振った。

(*゚-゚)「……」

拒絶された。

目の前の男に己を否定されたばかりではない。
自分が所有しているはずの、人間以下でしかないはずの「もの」にまで。

今、この瞬間までは、拒絶の言葉など受け容れはしなかった。
ただ命令し、それを受け容れられなければ「罰」を与えてきた。

それでも、ついに最後までしぃを所有することはできなかった。


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:40:54.97 ID:1Dy1ZWzo0
人間を、その意思までも所有することなど不可能だ。

普通の人間ならとうの昔に知っているべそれに気付くには、余りにも遅かった。
ギコは言葉を失い、ただ項垂れた。

(;, Д )「っ……」

その肩を、進み出たジョルジュが散弾銃の銃身で小突く。
  _
( ゚∀゚)「おい。落ち込むのは後で勝手にやってくれ。
     あんたには、最後にやってもらうことが残ってる」

銃口を向けたまま、顎でドアを指した。
  _
( ゚∀゚)「鍵を開けろ。このまま、玄関まで付いてきて貰うぜ。
     なに。天下のタカラ・ホールディングスの社長さんにゃ、チョロい仕事だろ?」

振り返り、しぃに声を掛ける
  _
( ゚∀゚)「さ、今の内に着替えろ。行くぞ」

しぃは口元を押さえたまま、頷いた。


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:42:47.46 ID:1Dy1ZWzo0

                      - 5 -

しぃを伴ったジョルジュ。背中に銃口を向けられたギコ。
ドアを開き、三人は部屋を出た。

先頭にギコ。二歩下がり、彼の背中に散弾銃の銃口を向けたジョルジュ。
そして、彼に付き従うしぃだ。衣服は、普段の給仕服に着替え終えている。

(;, Д )「……」

彼に背を向けたギコは、深く項垂れている。
その表情は見えない。
  _
( ゚∀゚)「悪いな。玄関まで、このまま行ってもらうぜ。
     ……そこの階段を降りるんだ」

ジョルジュは痺れた左腕と痛む右手で散弾銃を保持し、社長に告げた。
視線は先にある吹き抜け、そこから玄関ホールに続く階段。先ほど通った道のりだ。

努めて、声を張っていた。
次の発砲に右肩が保つのかすら分からない。
  _
(; ゚∀゚)(ほんと、大人しくしててくれよ。
     ヘタしたら、死んじまうぜ……)

暴徒鎮圧用のゴム弾とはいえ、至近距離では充分に人間の命を奪うだけの打撃力を
備える。実際に撃たれて死んだ者もいるほどなのだ。


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:44:46.46 ID:1Dy1ZWzo0
だが、生命の危険がある以上、確実な抑止力になる武器を選択する必要があった。
生半可な脅威では、ドクオとブーンを抑えることはできない。そう考えての選択だ。

そして、事実、ドクオは退かなかった。

(,, Д )「……」

ギコは、無言で足を出す。厚い絨毯の上を肩を揺らし、よろけながら一歩ずつ前進した。
時折その歩みは止まるが、銃口が背中に当たると怯えるように肩を震わせ、また歩き出す。

ギコが階段に足を掛けようとしたその時。
階下から、荒く複数の足音が響いた。

ギコが微かに顔を上げる。ジョルジュも、その肩越しに階段を見下ろした。

(; ^ω^)「社長。上は……っ?」

先頭は、ブーンだ。
額から流れる汗を拭い、荒く息を吐いている。

ジョルジュの策で訪れた「配達員」をホールに残し、ブーンは屋外を捜索していた。
宅配便のバンを見つけた後も、周囲の通りを見回っていたのだった。

そしてその後ろに、二人の男が付き従っている。
彼らもブーンと社長を、次いでジョルジュを見上げた。

( ´_ゝ`)(´<_` )「!」


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:46:50.29 ID:1Dy1ZWzo0
遅れて状況を認識し、良く似た顔を強張らせる。
彼らが一度は見逃した相手が、彼らの探し出すべき相手だったことも含めて。

(; ´_ゝ`)「お……お前……」

(# ^ω^)「何の冗談だお。オモチャでウチの社長を脅すつもりかおッ!!」

ブーンが吠える。
息は荒い。先ほどまでの疲労に加え、沸騰した怒りも呼気に含まれている。
声と共に、大きな靴音を立てて階段を一段、大股に上った。
  _
( ゚∀゚)「悪いな、オモチャじゃないんだ。
     ホントかどうかは、お前の同僚にでも聞いてくれ」

対するジョルジュの声は、冷静だった。投げ遣りにすら聞こえる。
実際には、そこにあるのは冷静さばかりではない。
憔悴を押し隠し、そう装っているだけに近い。

(# ^ω^)「ドクオを……どうしたお」
  _
( ゚∀゚)「床掃除を頼んだだけだ。
     まだ、その辺に転がってるんじゃねえかな?」

(# ω )「……お前」


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:48:19.11 ID:1Dy1ZWzo0
(# ゚ω゚)「お前……やっぱりあの時、殺しておくべきだったお……っ!!」
  _
( ゚∀゚)「……へ。殺したら、化けて出たかもな。
     そうしたら、これぐらいじゃ済まないぜ?」

銃口をギコの背から離し、ちらりとブーンたち三人に向けた。

(; ゚ω゚)「ひ、っ!」

(; ´_ゝ`)「うわ、わ――っ!」

身体を仰け反らせ、一段下に下がる。
その後ろで、兄者と弟者が彼の身体をかわしながら左右の手摺りにしがみ付いた。

銃口を下ろす。
細められたブーンの目を覗き込み、静かにジョルジュは続けた。
  _
( ゚∀゚)「お前の相棒は死んじゃいない。
     社長も、今のところは無事だよ。俺たちを通してくれさえすれば、な」

ギコは動かない。部屋を出た時からずっと俯いたままだ。
ブーンは怒りと怯えに満ちた、そして双子は恐怖の眼差しで、彼を見上げる。

(,, Д )「……」


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:50:19.06 ID:1Dy1ZWzo0
社長と銃口。それらを挟み、二人と三人は対峙する。
静かな太陽の光の中で、緊張に凍った沈黙だけが空気を支配した。

(; ゚ω゚)「う……ぐ、っ」

両拳を握り締め、ブーンが唸る。
その眼の中から、まだ恐怖も、そして怒りも消えてはいない。
隙を窺っている。

だが。

やがてブーンは、ゆっくりと、握り拳を解いた。
ぎりり、と歯を鳴らし、階段の脇に避けた。双子も、それに倣う。

(; ´_ゝ`)(´<_` ;)「……」

道が、開いた。

ジョルジュはギコを促し、階下への階段に歩を進めた。
いつ襲いかかってこないとも限らない。空いた右手で、しぃの手を取る。
身体に引き寄せ、前を向いたまま言った。
  _
( ゚∀゚)「離れるなよ。それと、いつでも逃げられるようにな」

(;゚ー゚)「……うん」



100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:51:53.16 ID:1Dy1ZWzo0
警戒は解かないまま、一歩ずつ、慎重に階段を踏む。
ブーンが立つのと同じ段に降りる。彼に視線は向けずに、ただ告げた。
  _
( -∀-)「お前の相棒は、しぃがいた部屋に倒れてる。
      さっさと病院連れて行った方がいいぜ」

(; ゚ω゚)「お前……お前、覚えとけお。
      次、見かけたら必ずブチ殺してやるお……!」
  _
( -∀-)「次なんか、ない。
      お互い、それが一番だよ」

双子の片割れが、怯えを多分に含んだ眼で見る。

(; ´_ゝ`)「そんなガキ一人のために……理解できん。何なんだよ、お前」

ジョルジュはしばし沈黙する。
少し頷き、答えた。
  _
( -∀-)「探偵だよ。元、人間のクズで人殺しのな」

(´<_` ;)「……」

三人は、動かない。
ただ彼らの雇用主と、傷付いた男と、メイド服姿の少年と、無言で擦れ違った。




101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:53:58.28 ID:1Dy1ZWzo0
階段を降り、ホールに立つ。
ジョルジュはそこで初めて天井を仰ぎ、大きく息を吐いた。

左腕の力を抜き、階上を見上げる。
そこには三人の男が、すれ違ったままの姿勢で立っている。
大きな窓から差し込む陽に目を細め、また下ろした。

ギコは、まだ動かない。
ただ俯き、黙しているように見える。

(,, Д )「……、…………」

黙ってはいない。
ただ、聞き取れないほどの声で、何事かを呟いていた。
ジョルジュはそれを見て肩を竦め、しぃの手を引いた。

散弾銃を下げ、大股にホールを横切る。
そして、玄関のドアを、大きく開け放った。

陽の匂いがする風が吹き込む。

風はジョルジュの前髪を揺らし、ホールを通り抜けた。

誰も、動かない。
  _
( ゚∀゚)「じゃあな。社長さん」

その言葉を最後に室内に残し、彼は中庭に踏み出した。
遅れて手を引かれた少年が、一度社長の方を振り返り、そして玄関の外に消えた。


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:55:51.08 ID:1Dy1ZWzo0
外は、明るかった。

柔らかい陽光の下、並ぶ庭木がその細かい葉を揺らす。
敷石は、緩くカーブしながら屋敷の入り口の鉄柵まで続いている。
壁沿いに大小様々の植木鉢が、控えめな色彩の草花を収めて並んでいた。

ジョルジュは目を細め、屋敷の内側からのその景色を見渡した。
奇妙な感傷を覚えていた。

あの日……彼がしぃと知り合った日。あの日、彼は鉄柵の外側から、この屋敷を覗き込んだ。
そしてしぃは、この中庭に舞い込んだビラを拾い、ジョルジュの後ろ姿を追い、彼と出会った。

今は、鉄柵は開いたままだ。
  _
( ゚∀゚)「……へっ」

不意に目を閉じて笑う彼を、しぃが不思議そうに見上げた。

(*゚ー゚)「ジョルジュさん、どうしたの?」

( ゚∀゚)「いや。懐かしいな、と思ってさ。
     そうだよな。俺がここを通りがかったのが、最初なんだよな」

しぃにとっては、この庭の風景は日常の記憶に埋もれているものだ。
それでも彼の言葉に、この屋敷を出る決心をさせた出来事を瞬時に回想する。


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 00:57:34.16 ID:1Dy1ZWzo0
奇怪な、ペットの探し物のビラ。
そして、小さくなっていく男の背中。

(*゚ー゚)「うん。……そうだね」

それはほんの気紛れの、ただの小さな逃避の旅に終わるはずだった。
だが、彼の行動が全てを変えた。

ジョルジュは左手を、ぽん、としぃの頭に置く。
疲労と深い感慨を誤魔化すように、急に明るい声を上げた。

( ゚∀゚)「んじゃ、とっとと帰ろうぜ。
     お前には言いたいこともあるし、渡したいものもあるんだ。
     やらなきゃいけないこともな。これから、ちょっと忙しくなるぜ――」

ばん、と、背後から音が聞こえた。
玄関のドアからだ。



――その音を立てたのは誰か、問うまでもなかった。



    「待て」

太い胴間声。


106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:00:09.81 ID:1Dy1ZWzo0
(;゚ー゚)「ジ、ジョルジュさんっ!」

ジョルジュよりも早く振り返ったしぃが、顔色を変えた。
切羽詰まった声に、ジョルジュも振り返る。
声の主は、振り返らずとも分かっている。ギコ社長だ。

だが、違う。
  _
(; ゚∀゚)「おい、マジかよ……!」

違うのは、歓喜とも興奮とも付かない異様な感情に歪んだその顔。
形容しがたい色に光る瞳は、先程までの無気力とは全くかけ離れている。
両脚は乱れた歩調で、大股に敷石を踏む。

そして、その両腕に抱えたもの。
大きな、意匠の凝らされた木製の銃床に据え付けられた、長い銃身。

猟銃。

日光に暖められた全身が一気に冷え、頭頂から順に冷えていく。
  _
(; ゚∀゚)「お前、何のつもりだよ。
     ここでそんなモン撃ったら、大騒ぎになるぜ?」

だが、ギコは聞いていない。しぃの方を睨み付け、顔を歪ませて笑った。

(,, Д )「く、くくっ……くっ」



108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:02:11.69 ID:R0QB5kvY0
やー やっぱ一筋縄で行かない展開か!


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:02:51.87 ID:1Dy1ZWzo0
ギコは目を見開く。

据わった両眼はジョルジュを見ていなかった。
誰も、見ていない。しぃに向いてはいるが、焦点が合っていない。

(#,゚Д゚)「……あってはならんことだ。
     俺のペットが、俺の命令を聞かんというのは……分かるか?
     しぃ、お前が俺に逆らうなど、決して許されん事なんだよッ!!」

唾を飛ばし、突如怒号を発した。

(;゚-゚)「っ!!」

(#, Д )「最後だ。
     詫びろ。いつものように、地面に這いつくばって許しを乞え。
     今ならまだ許してやる。それができんのなら――」

猟銃を振り上げ、脇に構えた。躊躇わず銃口をしぃに向ける。
その胸に、ぴたりと照準した。

(#, Д )「――殺す」






                                 <最終話(後)に続く>
 
 


110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:03:32.59 ID:R0QB5kvY0
乙。


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:05:14.09 ID:ulPgLF1VO



112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:05:50.58 ID:mHT8tSSH0



113 : ◆BXpnga8YvJwe :2010/06/27(日) 01:06:47.46 ID:1Dy1ZWzo0
ありがとう
続きは明日っていうか今日の夜に

っていうか、前書き
「バカスwwwwwww」とか煽って欲しかっただけなんだ もう何ともないから
ただいろいろヘコんでて、腰を据えて書くほど集中できなかっただけ ごめん

んじゃあまた

あ、大丈夫だと思うけどスレは落としてね、立て直すから


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:09:04.64 ID:bnOOFOLEP
乙!


115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:10:26.84 ID:1Dy1ZWzo0
ああ、アゴは物理的にヘコんだんだった

じゃあおやすみ


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/27(日) 01:30:40.20 ID:Rmrl3Go+O





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